犯人は誰だ? ――すまないが、君が決めてくれ

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1人目

 現在、高校2年生になる村山電希(むらやまでんき)は、
とてつもない程の正義感と好奇心の持ち主で、あらゆる事件に
首を突っ込む、お騒がせ野郎である。
 しかし、彼が関わった事件は、なぜか電光石火の如く解決し、
次第に彼は【サンダー村山】として、その名を世間に広く
知られる存在となっていた。

 さて、今回の事件は至ってシンプルだ。
 3月3日の放課後、3-Sの教室で、とある生徒が殺された。
 生徒の名前は、須国心太(すぐにしんた)。
 3-Sの生徒の一人である。

 死因は毒殺。
 その毒は、現場となった学校の理科準備室にある
【マゼルナー】という薬品と、最高級ブランド【センブリー】
が誇る、ほのかな甘みとすっきりした後味、そして絶望的な
苦味が特徴の麦茶。 この二つを合わせて作られたものだ。

 心太は飼育委員であり、中でも先日ついに100歳を迎えた
ギネス記録更新中のウサギ、【トルネード】によく懐かれている
ことで有名だったという。

 しかしトルネードは、最近入所してきたばかりの新人、
【サイクロン】にボスの座を奪われかけ、ついに究極の奥義である
『天翔兎閃』(あまかけるうさぎのひらめき)を使用してしまった
せいで、今は学校内にある隔離施設【デルナ】にいるらしい。

「まずは、容疑者を絞っていくか…。 ポイントはやはり、
毒の調合に必要な二つのもの…あるいは、既に調合された
毒そのものを、入手できたかどうかだな」

 電希はそういった考えのもと、容疑者を電光石火の勢いで
絞り込んでいった。
 以下が、その容疑者の一覧である。

 恋津ジャナイ(こいつじゃない) ♂
 2-S担任の教師。 担当科目は理科。
 日本とアルゼンチンのハーフ。  電希の叔父さんでもある。
 毒について、やたらと詳しい。 たまに、人体実験もする。
 たまに、実験に関わった人が消えたり消えなかったりする。
 でも、世界はそうして廻ってる。

 御追割煮(ごついわりに) ♂
 2-G担任の教師。 担当科目はそろばん。
 190㎝、85㎏で、体脂肪率は0、03%。 温和な性格。
 倒したモンスターは、大体が仲間になりたそうな目を向ける。
 相棒のスライム【タクヤ】は、全身を震わせて冷たく輝く息を
吐くことがあるため、いつもマスクをしている。 でも、効果は無い。

 芝井多呂香(しばいたろか) ♀
 3-M担任の教師。 担当科目は寸止め。
 大阪出身。 怒るとすぐに手を出してしまう性格だが、
直前で止まることが多い。 というか、止めないとほぼ死ぬ。
 長い間、接客業をしていたが、半殺し44名、その他4名の
被害を出した後、憧れの教師に転職した。
 
 孔雀鷹美(くじゃくたかみ) ♀
 3-Tの生徒。 超が付くお嬢様で、高飛車な態度が目立つ。
 その気になれば、ちょっとだけ空を飛べる。
 料理研究家の母を持ち、本人もかなりの腕前。
 ただし、火を使う料理の場合、なぜか本人までが燃えるため、
『火の鳥』の異名でも知られている。

 土尼茂愚流(つちにもぐる) ♂
 3-OS(オス)の生徒。 地面に潜った状態で戦う『モグ空手』
の中でも最高である、『真っ黒焦げ茶色帯』の段位を持つ。 
 地面から上半身だけを出した『壱式』が基本の構えだが、
首から上だけを出した『零式』こそが、真の切り札。
 『奪・三・振』の信念を持つが、野球には全く興味が無い。

「くそっ! どいつもこいつも、これといった特徴もない
生徒や先生ばかり…。 本当に、この中に犯人がいるのか?」

 この5人以外にも、まだまだ容疑者が出てくる可能性もある。
 電希は改めて、捜査を再開することにした。