憎悪

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  • バッドエンド
  • 性的描写無し
  • 残酷描写有り
  • 自由に続きを書いて
1人目

クソ……クソッ!!

どこにもやれない感情が暴れ出す。
この感情はなんだろう。

怒り?哀しみ?
いや、違う。これは──。

「これは憎悪。心の底からの。これは復讐。アイツへの」
心で言ったつもりだが、いつの間にか口から漏れ出ていた。

しかし、俺の言葉は誰も聞いていなかった。
風が吹き消したのか、それとも誰も俺なんかに興味がないのか。

まあ後者だろうなと思う。
別に悲しくなんてない。そんなこと、前から分かっていたことなんだ。

俺は夜の街を歩く。ただただ歩く。
ホームセンターにふらりと入ってみると、出刃包丁を見つけた。
その輝きに魅入る。

美しい……この包丁には赤が似合う。真っ赤な、例えば血のような色が。
『アイツ』の顔が思い浮かんだ。

「ハハ、ハハハハハハハハハッ!」
包丁を2本ほど買ったあと、夜の街で高笑いをする。



その声は、誰も聞いていなかった。
その人物を、誰も気にしていなかった。

2人目

プツン。
リモコンを押した。
レンタルで借りたシリーズ物のDVDを取り出し、
私は、そのままTVのニュースにコーヒーを飲みながら切り替えた。
ニュースは〇〇県の殺人事件をやっていた。チャンネル変えても物騒な話しばかりである。こんな事が起きているのに私は呑気に復讐物のミステリーを見いていた。

と言うのは、私の身の廻りにもこのようなことが起きたのである。
友人一家が殺人に巻き込まれ亡くなったのだ。まさか自分の近しい人でこんな事件に遭うなんてと驚嘆した。

私はしがない派遣社員だ。しがないと言ってもなんとか食い繋いでいけるくらいで上々だ。派遣の中でもランクは良くて、やはり動きが楽という事で派遣を選んでいる。つい先日、会社側から社員にならないかとお話しを持ち掛けられたのだが、私は友人一家の事で頭が持ち切り、それ所ではなかった。丁重にお断りさせていただいていた。会社自体、好きなのだが会社にいる人もあまり好きではなかった。派遣という立場を選びながらのこの感想である。気まぐれな所もあるのでこんな調子で生きている…

葬式から法要まで友人の親戚の家に何度も足を運んだ。そこで友人の母の姉叔母さんに友人一家の様子を聞いていた。
「この様な形で亡くなってしまうなんてちょっと信じられない」
叔母さんは没落していた。叔母さんの家ではお茶菓子が用意され一連の葬式イベントに気疲れしていた。私は少しでも何か友人の為と思いその家に足げなく通った。

友人は一見、普通に見えるのだが聞いた話し叔父さんは医者だったのだそうだ。なんだかここの伯母さんの家も裕福に見えるので良い家柄なのだろう。私と友人に関しては結構、大学で一緒にいて気が合い仲は良い方。大学で仲良い友達を見つけたので珍しい友達を見つけたのでした。
ただあまり家の事は知らなくて気を使いながらもこうした人間関係であったと振り返って反省した。

叔母さんは事件が信じられなくて警察だけじゃなく興安所みたいな所でも調べてもらっていた。
興安所の方もこの件に関してはそういう惨殺犯の一件で見ている。というのは犯人が友人の元恋人だったのだ。なので警察も興安所もそのように片付けていた。

3人目

「わ、私は…何もやって…ませんっ」
 凄惨な事件から数日が経っていた。
 場所は取り調べ室。とある女が強面の刑事を目の前に、今にも泣き出しそうなくらいくしゃくしゃに顔を歪めていた。
 だん、と凄まじい音が反響する。担当の刑事が机を拳で叩きつけたのだ。
 女は飛び上がらんばかりに驚いた。
「だったら何故っ、あんたはあの家の敷地内にいたっ?!犯行に使われた包丁から検出された指紋もあんたのものと一致している」
 これ以上どう言い訳するんだ?、と強面の刑事の顔がさらに恐くなった。扉のそばで二人のやりとりを記録していた別の警察官が男の動きを牽制する。
 ……。
 女はまた沈黙してしまった。
 俯いたまま微動だにしない。目にたっぷり涙を浮かせ、手錠をかせられた自身の手首をずっと見ていた。
 その姿に刑事は一度だけ深いため息を吐いた。
 「…怒鳴って悪かった。
 けどこれはあんたのためでもあるんだよ。あんたもずっとこのままなのは不本意だろう?
 一度だけ、頷いてくれればそれで良いんだ」
 刑事の言葉は悪魔の囁きのように女の周りを取り巻いた。「大丈夫だ。認めてさえくれればあとはこっちで上手くやる。あんたもその方が罪が軽くなるんだから…悪い話ではないだろう?」
 女は恐る恐る顔を上げた。刑事の少しおどけたような目とばっちり目線が重なった。
 女は何度か深呼吸した後、何か覚悟を決めたのかゆっくりと口を開いた。
 「ーーー私は、確かにあの日あの場所にいました。そして…この、目でっ…彼の姿も確認しています」
 震える声で事実を語っていく女を前に、担当刑事の表情にはありありと勝利を確信する感情が浮かび上がっていく。
 「ーーー犯行で使われたんだろうなと思える包丁も、確認しました。そしてそれは…彼の部屋とっ…リビングに…一本ずつ、落ちてたんですっ」
 刑事が何やら口を挟もうとしていたが、女の方が早く続きを語る。「私はあの日…彼と寄りを戻したかった。その話し合いのためにあの家を訪れたの。
 …それなのにっ、どうして彼が殺されていなければならなかったというのっ?!!」