プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:13「第二次・特異点探索」

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1人目

「Prologue」

【ジャバウォック島の冒険編 その1】原文:霧雨さん

 シャルル遊撃隊と流星旅団の残党が次に向かった場所。そこはジャバウォック島の地下、実験施設がごとき威容を見せる未知のエリアだった。
無機質な地底世界を冒険する6人。そこでSPMの霧切響子とファルデウス・ディオランドに出会うも、霧切からは尋常じゃない殺意を向けられてしまう。
 不倶戴天の敵、江ノ島盾子が希望ヶ峰学園を爆破したと勘違いしている霧切は、
昏き復讐の焔にとらわれていた。
しかし事態は急変する。ジャバウォック島に封印されていた魔獣、
シュレディンガー・ビーストが解き放たれてしまったのだ。
透明化と奇襲攻撃を繰り出す魔獣に追いつめられるも、フィオレを筆頭とする8人の活躍によりこれをどうにか退けた。

 魔獣討伐後、一行は分担してジャバウォック島の調査を開始するも、
先の魔獣討伐を受けて島の防衛システムが次なる魔獣マクスウェル・メイガスを解放した。
無尽とも思われる魔力を武器にした攻撃により、一行は苦戦する。
そこに、江ノ島盾子を探していたというメサイア教団大司教3位、カルネウスと出会う。
教団内部で冷遇を受けていたという彼は、
しかしカルネウスは敵。裏切る可能性もある。かといって彼の言う真実も知りたい。

 マクスウェル・メイガス討伐のため、そしてこの島に眠る真実のため、
ここにシャルル遊撃隊とカルネウスの共同戦線が組まれたのだった。

【終戦・アマルガム編】

 八雲みたまの師であるリヴィア・メディロスが率いる中立の調整屋の一団
「ピュエラ・ケア」が、暴走した黒江を止めるためにCROSS HEROESの前に現れる。
いろはやCROSS HEROESの呼びかけに応じて、黒江は徐々に正気を取り戻す中、
レナード・テスタロッサの降伏を受けたジェナ・エンジェルは冷静に状況を見極め、
アスラやウラヌスに撤退を命じる。アスラと悟飯が一触即発のムードになる中、
ウラヌスはやちよに強い恨みを抱き、復讐を誓う。

 最終的に、CROSS HEROESの活躍によりアマルガムとの戦いが終結するが、
ジェナ・エンジェルたちの陰謀はまだ終わっていない。彼らは新たな計画を胸に去り、
今後の戦いが予感される中、CROSS HEROESは次なる試練に備える。

【黄金色の伝説編】

 幼少期に「ハンドレッド」という闇の組織に襲撃され、祖父を失った
鳳桜・カグヤ・クォーツは、謎の「通りすがりの男」に助けられる。
その後、カグヤは彼のように世界を守る存在になりたいと願い、訓練を重ね
「仮面ライダーレジェンド」として成長する。

 ある日、ハンドレッドの再侵攻に備えるカグヤの前に、突然、空飛ぶ海賊船
「クロコダイオー」と共にゴールドツイカー一家が現れる。
ゾックス・ゴールドツイカーとその妹フリントがカグヤの前に立ちはだかり、
世界海賊として挑発する。

 カグヤは彼らを敵と見なし、仮面ライダーレジェンドとして彼らと対決することを決意。ゴールドツイカー一家も負けじと戦闘態勢を整える。こうして、黄金の輝きを纏う
仮面ライダーレジェンドと、世界を跨ぐ自由な海賊一家との戦いが幕を開ける。

【放浪の石川五ェ門編】

 神霊アマツミカボシに操られた少女・天宮彩香を救うため、
石川五ェ門は秘剣・斬鉄剣で戦いを挑んだ末、アマツミカボシを退けることに成功するが、斬鉄剣は粉々に砕けてしまう。己の未熟さを痛感した五ェ門は、斬鉄剣を修復するため、
再び放浪の旅に出た。

 彼は伝説の刀匠・千子村正を探し求め、各地を巡る旅の末、
険しい山奥にその鍛冶場があることを突き止める。道中、五ェ門は悪鬼や魔物と戦い、
試練を乗り越えてついに村正の元へたどり着く。

 若々しいが老獪な風格を持つ千子村正は、斬鉄剣の残骸を見て、
その刀の凄まじい過去を感じ取る。そして、神さえも断つ力を秘めたこの刀に興味を抱き、五ェ門のために斬鉄剣を修復することを決意する。村正は、千の刀を超えた究極の一刀を
鍛え上げることを誓い、五ェ門の旅は新たな段階に進む。

【記憶の扉に鍵をかけて編】

 暁美ほむらとたりあは、グランドクロスとの戦いを終え、ほむらが作り上げた
偽りの見滝原の世界に戻ってくる。精神体のたりあは、彼女の疲れを気遣い休むことを
提案するが、ほむらは新たな戦いに備える覚悟を口にする。
たりあは、ほむらが一人で多くの苦しみを背負ってきたことを感じ取り、
彼女を助けたいと思う。

 ほむらはこの場所が自分の願望から生まれた幻想であることを説明する。
ほむらは人々が何も知らずに平穏に暮らしていることが幸せだと信じているが、
たりあはその偽りの幸せに疑問を抱く。

 夜が更け、たりあは自分の過去を思い返す。彼女は自身の半身・ペルフェクタリアとの
別れを悔やみ、もう一度会いたいと願うが、その思いはまだ叶わない。
ほむらが自分を助けてくれたように、たりあもペルとの再会を信じながら、
静かにほむらの寝顔を見守っていた。

【特異点の一幕編】

 一方、カルデアの特異点・リビルドベースの食堂では、門矢士が
一人で食事をしていたところに、藤丸立香とマシュ・キリエライトが食堂に現れる。
二人はどこか不安げな様子で、最近見た「不思議な夢」について相談を持ちかける。

 立香が見た夢の中で岩窟王エドモン・ダンテスと共に亡霊と戦っており、
そこでは暁美ほむらという少女と、平坂たりあと呼ばれる少女が戦っていた。
士はその夢が単なる幻想ではなく、並行世界に飛ばされた可能性が高いと指摘する。
暁美ほむらは士も知る並行世界の旅人であり、彼女が守ろうとしている
「平坂たりあ」という名前が士にとっても重要な意味を持つことを語る。

 また、士は「グランドクロス」という存在についても言及し、
かつてショッカー大首領が率いた悪の組織「大ショッカー」との繋がりを示唆する。
そして、グランドクロスが今も暗躍しており、彼らとの戦いが避けられないことを
予感させる。

 士の説明を聞いた立香とマシュは、彼の助言を受けて新たな決意を固め、
これからの戦いに備えることを誓う。士は静かに食事を続けながら、
二人の覚悟を見守りつつ、これから始まる冒険に向けての準備を促すのだった。

2人目

「超古代文明と妖怪の関係/これからの方針」

「よし、これで完了だな」

GUTSセレクトのメンバーは幻想郷の人達や妖怪達の協力もありナースデッセイ号やガッツファルコンの修理を終わることができた。

「まさかこんなに早く修理が終わるなんてな」

「これもにとりさんや幻想郷の皆さんが協力してくれたおかげです。ありがとうございます!」

「いやいや、お礼を言いたいのはこっちの方だよ、幻想郷の復興作業にいっぱい協力してくれたし。何よりも外の技術に触れられる機会なんて中々ないからさ」

「そうか、幻想郷は俺たちの世界で忘れ去られた者が流れ着くから、私の時代の技術とかはまだないのか」

「まっ、そういうことだね」

「……しかし妖精に妖怪ですか……まさかこの時代にも存在していたなんて……」

「え、トキオカ隊長は妖精や妖怪が実在してた頃を知っていたんですか?」

「あぁ……超古代文明の調査をしてた時に知ってね、どうやら超古代文明人は当時の妖精や妖怪達と友好な関係を築いてたようだ」

「そうだったんですか」

「と言っても3000年ぐらい前だから当時の妖精や妖怪は寿命とかで死んで今の幻想郷にいるのはその子孫とかだろうけどね」

「……あ、そうだ。急な頼みで悪いんだけどさ、私をあんた達の仲間に加えてくれない?」

「え!?いいんですか!?」

「あぁ、あんた達としてもヒソウテンソクを今後も使えた方が良いだろうし、何よりももっと外の世界の技術に触れてみたいからさ!」

「にとりさん…ありがとうございます!」

こうして、幻想郷の河童の妖怪、河城にとりがCROSSHEROESに加わったのであった。



「……さて、これからに関してだが……我々GUTSセレクトは一旦元の世界に戻ろうと考えている。本部にこれまでのことも報告したいし、何よりも流石に2回連続で別の世界(特異点と幻想郷)に行ってる以上、これ以上我々が別の世界にいる状況が続けば元の世界で怪獣が出現した時に対処ができなくなる」

「けど、いいんですか?あれを放っておいて……」

そう言ってユナが上空の暗黒魔界を指さした。

「暗黒魔界……悪魔将軍が言ってたとおりならこれまでに俺たちCROSSHEROESが戦ったどんな敵をも上回る脅威になる可能性があるらしいが……」

「だからこそです、暗黒魔界がこれまでの敵を上回る可能性がある以上、全戦力を向かわせるのは逆に危険です。なので今回悟空さん達Z戦士の皆さんや正義超人の皆さんなどが先発隊として突入し、それの以外のメンバーは一旦戻ったほうがいいんじゃないかなということになったんです」

「確かに……DDの皆さんは悪霊との戦いで大きなダメージを受けてしまいましたし、僕もまだ全ての力を取り戻してないし、何よりもCROSSHEROESも今全員いるってわけじゃないですからね……」

ケンゴの言うとおりDDは悪霊の軍団から人里を守るための戦いで壊滅的な損失を受けしまい、ケンゴもまだウルトラマントリガーの力を全て取り戻しているわけではない、何よりもCROSSHEROES自体、リ・ユニオン・スクエアや特異点の方にメンバーや戦力の多くを残しているため今幻想郷にいるメンバーだけでは暗黒魔界との全面対決をするにははっきりと言って戦力不足なのだ。

「そうだ。まずは先発隊が暗黒魔界に突入して情報を収集、その後先発隊が集めた情報を元に作戦を立てつつ並行してさらなる戦力強化を行い、今まで以上の戦力で再び暗黒魔界へ突入するのが一番現実的だろう」

そう話をしているとにとりがあることを言い出した

「暗黒魔界かぁ……だったら魔理沙やアリスにその先発隊とやらに入らないか誘っておこうかな」

「魔理沙?アリス?」

「あぁ、私の知り合いの魔法使いだよ。確か前に聞いた話じゃ魔界にあの二人の知り合いがいるらしいから誘ったら多分力貸してくれるんじゃないかなって」

「なるほど……ではにとりさん、我々が元の世界に戻るまでもう少し時間がありますので、それまでにその魔理沙さんとアリスさんに暗黒魔界への先発隊として加わってくれないか頼んできてくれませんか?」

「あいよー!任せといて!」

そう言うとにとりは魔理沙達のところへと向かった。

「さて、にとりさんが行ってる間に、我々は帰還メンバーの確認と元の世界へ戻る準備、それと紫さんに帰還用のスキマを開いてくれるように頼みに行きましょう」

「「「「「「ラジャー!」」」」」」

3人目

「悦びに咲く花」

 アマルガムとの決戦の舞台となった戦場は荒れ果てた荒野と化し、
静寂に包まれていた。兵どもが夢の跡。
爆撃の音も、銃声も、超人たちの死闘も、巨大人型兵器の乱舞も、遠くへと消え去り、
ただ散乱した残骸が赤々とした空を照らしている。

 ――トゥアハー・デ・ダナン。

 CROSS HEROESのメンバーたちは、拠点であるダナンに帰還し、
ようやく訪れた平穏に肩の力を抜いた。彼らの身体には無数の傷が刻まれているが、
それよりも深く、戦いの疲労が彼らの心を蝕んでいた。

 一方、捕虜となったレナード・テスタロッサと
アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニンは、尋問室に送られる。
尋問室に設置されたモニターには、司法取引に関する資料が映し出されていた。

「レナード・テスタロッサ、アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニン。
あなた方には司法取引の機会が与えられています。これが最後のチャンスです。
協力すれば、刑の軽減が可能です。もちろん、拒否すれば、
あなた方はさらなる追求を受けることになるでしょう」

 検察官の言葉は冷徹であった。レナードはアマルガムの上層幹部であり、
カリーニンに至ってはミスリルの武官でありながら背任行為とスパイ罪に当たる。
その被害は計り知れない。本来であれば即座に極刑を言い渡されているところであろう。
テッサにとってレナードは実の兄であり、宗介にとってのカリーニンは育ての父。
私情を挟むべきではないとは言え、司法取引の席が設けられたのは格別の恩情である事は
間違いない。

「……」

 作戦室に集まったCROSS HEROESのメンバーは、モニターに映し出された
二人の様子を見つめていた。画面の中で、レナードとカリーニンは
静かに尋問に応じる準備をしている。彼らが語る内容が、どれほどの重みを持つか、
メンバーたち全員がその重要性を理解していた。

「黒江くんは一旦、自分たちが神浜に連れ帰ろう。魔法少女の根本的な治療は、
やはり調整屋たる八雲に経過を診てもらった方が良いだろうからな」
「お願いするわ、十七夜、みふゆ」
「こちらの事は任せてください、やっちゃん」

「黒江さん、ゆっくり休んでね」
「環さん……うん」

 ドッペル化から解放された黒江ではあったが、イレギュラーな状況が重なった事もあり
ここまで連戦を重ねてきた事も考慮して十七夜とみふゆを伴って神浜へと戻り、
一度静養を取る事となった。

 作戦室には緊張が張り詰め、誰もが次の一手を考えていた。司法取引が成立すれば、
事態は大きく動くことになる。だが、どのような形で進むかは、まだ誰にもわからない。

「艦長、ナースデッセイ号の機影を確認。GUTSセレクトです」
「彼らも、無事だったようですね……」

 幻想郷に向かっていた面々を乗せ、リ・ユニオン・スクエアに帰還した
ナースデッセイ号が、トゥアハー・デ・ダナンと合流した。

 ペルフェクタリア、日向月美、心の怪盗団/モルガナチーム、
GUTSセレクトを始めとしたメンバーたちの帰還。幻想郷を訪れた彼らは
博麗霊夢ら幻想郷の住人たちとの出会いを通じて、それぞれに新たな力や知恵を得ていた。
彼らは未来の脅威に備えるため、戦いの顛末とこれからの事について語った。

「そうか……父さんやピッコロさん、ベジータさんは幻想郷から暗黒魔界へ……」
「そちらも厳しい戦いだったようですね……」

 天津飯やヤムチャはアスラ・ザ・デッドエンドとの戦いで重傷を負い、
悟飯も生死の狭間から立ち直ったことでアルティメットの力を取り戻すことに成功した。

「俺と餃子は天津飯とヤムチャさんを送り届けてくる。悟飯が本来の力を
取り戻したんなら、百人力さ」
「仙豆があったら、良かったんだけど……」

「孫悟飯……これほどの力を秘めていたとは……」

 ペルもまた、クリリンの言う、悟飯の潜在能力を肌にひしひしと感じていた。
トラオムで共闘した時とはまるで別人だ。

「まあ、暗黒魔界にはジョーカーやキン肉マン達も行くようだから大丈夫だろう。
ワガハイたちはこれから特異点に向かうつもりだ。メメントスや野良シャドウの事も
気になるからな……」
「特異点なら、セッちゃんの平行世界間ゲートで行けるよ」

『オイラの出番だッチュン!』

 セッチャンが頭上を騒がしく飛び回る。

「ぶっちゃけ、CROSS HEROESももはや何でもアリの集まりになってきたなぁ」

 そう言うジュランも、キカイノイドである時点で大分規格外の存在ではある。

「ペルちゃんは、ディケイドと知り合いだったんだ」
「そうだ。私のいた世界で共に戦った」

 ソウゴ、そしてペル。二人を結びつける存在。通りすがりの仮面ライダー。

「不思議ね。別の世界に暮らしてたペルちゃんとディケイドが知り合いで、
それがこうして同じ場所に集まるなんて」
「これもまた、星の巡り合わせと言うものなのかもね、ツクヨミくん」

 ツクヨミの兄・スウォルツはアナザーディケイドの力を手に入れ、
クォーツァーの一員であったウォズも現在はCROSS HEROESに所属している。

「奴もつくづく、常識外れな男だ。今更何をやらかしても驚かんがな……」

 腕組みをしてソウゴの傍らに立つゲイツも、
士との初遭遇は有無を言わさぬライダーバトルから始まった。

(門矢士……あの戦いの後に、別れたきりか。よもや、こんな形で奴と再会する事に
なるとは……)

 それぞれが、意図せずして数奇な運命により結びついている……

「よし、特異点行きのメンバーと静養が必要なメンバー、CROSS HEROES本隊の守りに
回るメンバーを整理し、次なるミッションに備えよう!」

 すぐさま、行動に移るCROSS HEROES……一方、その頃……

「はあ、おいし……」

 某所。メサイア教団の分隊拠点が何者かによって壊滅した。

「ちょっとおなかすいちゃったから、たべさせてね」

 足元に転がるメサイア教団兵の亡骸に根を張り、養分を吸収するのは……
渾沌結社グランドクロス幹部、「殲滅少女」ブーゲンビリアだった。

「な、何故、俺達を……!!」
「めさいあきょーだん、しっぱいつづきでそろそろおしまいっぽいからね? えいだ……
あー、これいっちゃいけなかったんだったっけ」

「えいだ……? エイダム大司教の事か! い、一体……」
「わたしがしゃべったっていったら、おじいちゃんたちにおこられちゃうから……
おじさんたちも、しんで?」

 ブーゲンビリアの右腕がガトリング砲に変わる。

「う、うわああああああああああああッ……」

 兵士たちの悲鳴も、弾雨の中へと溶けて消えていく……
銀髪と白い肌を鮮血の赤に染め上げながら、ブーゲンビリアは屍の山の上で
「食事」に舌鼓を打つ。

「そろそろおねえちゃんとまたたたかいたいなー……」

 ペルとの再戦の日に備え、ブーゲンビリアは各地で無差別に獲物を狩っては
その養分を自身の力として蓄え続けていた。
ブーゲンビリア。その花は、飼育する環境下によって花弁の色を変えるのだと言う……

 
 ――花言葉は、「あなたしか見えない」。

4人目

「救済問答3:傀儡/消えゆく人の在処」

 完璧超人、ストロング・ザ・武道の知識と慧眼の累積は、大帝のおかれている状況を見抜いた。
「まったく、かのカール大帝ともあろう者が情けない。」
「なんとでも言うがいい。余ももっと早い段階で気づくべきだった。」
 檄を飛ばす武道。
 ため息交じりの大帝。
「だが、そうまでして教団は何がしたいのか。何か見当くらいはつくだろう。」
 そういわれると、大帝は即座に返答した。
「うむ。連中が何をなそうとしているのか、予想はついている。」
「というと?」
「私にはある異能がある。わが声と意思に従わせる、天声同化(オラクル)という名の力が、な。」
 天声同化。
 それは、カール大帝のカリスマ性の到達点。
 彼に賛同するものを問答無用で従属させる異能。
 遠い世界において、

「だが、それは過去の戦いで壊れてしまってな。教団の者たちはこれを修復するために動いていた。」
「ほう、つまり教団の連中はお前の名声とその天声同化のみを目的としていたということだな。」
「……そういうことになる。」
「ふん、連中の口がうまかったというべきか。利用されっぱなしでは大帝としては悔しかろう。」



 数時間前 港区某ホテル

「もう帰ってきたのかルクソード。というよりもどうした?そんな新聞を大量に持って。」
「まずはこれを見たまえ。」
 十神がアマルガムとの戦いを終え帰還したルクソードに、ある資料を見せられる。
 それは、新聞のある1ページだった。

「『世界中で行方不明者続出』『謎の子供たちに連れ去られる大人 被害者の共通点不明』『次々と起きる失踪問題に政府混乱 暴走続ける『メサイア教団』との関連性は?』……なんだこれは。」
「見ての通り、失踪事件の記事だよ。」
 世界中で勃発していた、人類規模での無差別失踪事件。
 メサイア教団の暴威や丸喜の救済、次々と迫る魔の手の裏でゆっくりと、新たなる脅威の影が迫っていたのだ。
「確かにちょっと前からネットニュースとかでは見ていたんだが……まさかここまでとは。」
「だが、私はこれに未来の可能性と危険性を感じている。そこで独自に調べたのだが。」
 そういって、ルクソードは次に独自に調べたという資料を十神に見せた。

「すべての発端はエジプトのある遺跡。そこで”ある企業”が発掘作業を始めてから、失踪事件が始まった。」
「なんだルクソード、原因はファラオの呪いとでも言いたいのか?」
「ある意味では似ているかもな。」
「連中は何を掘り起こそうとしている?」
「私もそこまでは知らん。だがもう一つ、失踪事件が起きた現場には謎の立方体(キューブ)を持った『藍神』という名の少年が常にいた。」
「キューブ?」
「おそらくは、その少年が持つキューブが失踪事件のカギだろう。これがメサイア教団の手に渡ってみろ。即座にあれは教団にとって都合の悪い人間を消す装置と化すぞ。」
 教団にとって都合の悪い人間を消す行為。
 それは、まるで。

「……まるで過去のキラ事件がごとく、だな。そうなる前に少年の持つキューブを回収する必要があるといいたいのか。」
「ああ、その通り。おそらくは今頃、教団もゆっくりと動きだしているころだろう。」



 存在しなかった世界 城の一室にて

「よく来たアルキメデス。」
「何用ですか?ビショップ。」

「地上で起きている無差別失踪事件は、知っているな?」
「ああ、あれはソロモンの指輪とは何の関連性もないように見えるが……。」
「違う。失踪事件のピースとなる人物、『藍神』という少年の持っているキューブの回収を任せたい。かのキューブの能力さえあれば我らが女神の武装としてこれ以上のものはない。」
 ルクソードの予想通り、メサイア教団側も動き始めていた。
 港区で激戦を切り広げたアルキメデスを筆頭として、謎の少年「藍神」の捜索に動くつもりだ。

「ところでビショップ、あなたは?」
「私は今は無理だ。来たる2週間後の『本格布教』に入るため、虚数艦の量産体制に入る故な。目障りなCROSS HEROESがいる故、ただ一人で向かうのも苦だろう。援軍も送り込ませるが、かまわないな?」
「わかりました。すぐにでも出撃の準備をいたしましょう。」



 そのころ 東京某所

「ぎゃあああああ!!?」
 その日、また人間が消えた。
 消えた人間はその辺のチンピラ。取るに足らない小悪党だ。
 だが、そんな彼が仲間の目の前で悲鳴を上げながら消失されてはただ恐怖するしかない。

「なんなんだよ、お前!!」
 チンピラを消したのは、どこにでもいる少年。
「くそっ、不気味な力使いやがって……!!」
 恐怖し混乱するチンピラ仲間。
 その中心、ぶちのめすはずだった少年は傲岸に立っていた。
「君たちのようなクズでも存在を認可してやっているのは、いったい誰のおかげだと思っている?」
 傲岸に告げる。
 その一斉とともに―――とんでもないことが起きていた。
「「「!?」」」
 恐怖するチンピラの周囲を、無数の子供たちが囲う。
 子供たちの姿はまるで影のように無表情で、どこか不気味だ。
 やがて少年と影の子供たちの目が輝き―――残りのチンピラもこの世界から消失した。

「……もうすぐ、必要な人数に届く。」
 彼らを消した少年と子供たちはその場を去る。
 そんな少年の手には、謎のキューブが握られていた。

5人目

「忘れない日々」

 ――特異点。

 地下に広がる迷宮、メメントス。
そこは、人々の無意識に潜む欲望や恐怖が形となり、シャドウとして
実体化する場所であった。モルガナ達が危惧していた通り、
前回の探索から幾許かの時が経過した事によって、メメントスから再びシャドウたちが
地上に出現し、地上を侵食し始める。

「う、うわああああッ……ば、化け物が……!!」
「邪魔よ。さっさと失せなさい」

 逃げ惑う一般人の側を横切り、仮面で素顔を覆う鮮血の貴婦人――カーミラは
シャドウ達に悠然と向かう。

「キシャアアッ……!」
「シャドウ……腐った地下迷宮から這い出てきた者たち…人間の醜さが染みついているわ。
どれだけの欲望がこいつらを形作ったのかしら。けれど、牙を剥く相手を誤ったようね」

 その仮面に、シャドウ達は因縁の相手を想起したのか、興奮気味に飛びかかっていく。

「まるで獣ね……」

 カーミラの爪が鋭く伸び、シャドウを一振りで細切れにする。

「ギェェェェェェェェェッ……」
「良い悲鳴だこと。悪くないわ。さあ、もっと私を愉しませて頂戴」

「ギ、ギィィィ……」
「――シャドウ。影なる者たち。影には影を……と言う事か。
サーヴァント……我らもまた、歴史に刻まれた影法師であるが故に」

 ドッ、後退るシャドウの背後から、気配も感じさせる事無く匕首を突き立てる。
荊軻だ。古代中国・秦の時代、始皇帝暗殺を企て、
あと一歩と言うところまで迫った音無き暗殺者だ。

「この場所、強い魔力を感じるわ。シャドウたちはただの下僕に過ぎない。
メメントスの地下奥深くにはもっと強力な存在がいるはず……
あの仮面の坊やたちがいれば、調査も出来るのだけれど……」

 そして、キャスター・メディア。ギリシャ神話に由来する、魔術師。
「魔女」とさえ称される超高度な魔術技術を有する。
魔力弾をマシンガンのように撃ち出し、その場から一歩も動くこと無くシャドウ達を
次々と掃討していく。

「グギャエエエエエエッ……」

 各々の特技を駆使してシャドウたちを討ち進めるが、メメントスから漂ってくる瘴気は
地上にいる彼女たちの心にも影響を及ぼし始める。
メメントス探索に向かった悟空たちの時と同様、自らの過去の記憶や後悔が形を取り、
襲いかかる。

「またか…私が今まで殺してきた者たちの姿が……だが、私は決して後悔などしない」
「過去の私に囚われるなど、愚かしいことよ。私はもう、弱い私ではないのだから」
「私が憎むべきは裏切り者たち……でも、それに囚われていては前に進めない」

 彼女たちは、メメントスが生み出す幻影にも打ち勝つだけの強さを持ち合わせていた。

「!? これは……」

 シャドウたちはより強力な形態へと変貌していく。
メメントスから這い出てきたシャドウ達を支配する巨大なシャドウ
「アバドン」が出現した。

『愚かなる者どもよ。貴様らが何を成そうと、私の支配から逃れることはできぬ。
ここは人間の欲望と絶望が渦巻く場所。この世に人間が蔓延る限り無限に力を増す
私を止めることなどできるか!』

「大物のお出ましか」
「こいつを倒せば、またしばらくは静かになるかしらね」
「終わりにしましょう」

 3人はアバドンとの激しい戦いを繰り広げるが、シャドウは再生し続ける。
絶望が彼女たちを包み始めたとき、メディアがある決断をする。

『ぐははははは、無駄! 無駄! 無駄ァァァァァァッ!!』
「このままでは終わらないわ。あまり使いたくはないのですけどね……」

 そう言うメディアが取り出したるは、一振りの歪な形をした短刀。

『そんなナマクラで、私が倒せるとでも思っているのかァ!?』
「いいえ、これで十分です。術理、摂理、世の理。その万象、一切を原始に還さん……」

「本気なの? そんなことをすれば、あなた自身も…」
「だが、他に方法はない。私たちがここで倒れれば、地上の人々も
全てシャドウの餌食になる」

 カーミラや荊軻の会話を他所に、メディアはその短刀を以って、
アバドンへと向かっていく。魔術師としては最高峰であっても、
その身体能力は普通の人間と然程の差は無い。

「仕方がないわね。特別よ」

 溜息混じりにメディアの後方支援に回るカーミラ。腕を振り上げ、
大量の血液による大波を発生させ、アバドンの目を眩ませる。

『ぬうううっ……!?』
「取ったッ!!」

 その隙に、メディアがアバドンの至近距離にまで肉迫する。

「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)ッ!!」

 アバドンの表面に突き立てられる刃。それは、あらゆる対象に備わった
強化効果を魔術によって打ち消してしまう効果を持っていた。その発動条件には
対象を直接斬りつける必要がある。つまり、魔術を以って戦うのが主であり
白兵戦はまったくの不得意であるメディアにとってはハイリスク・ハイリターンと言える
切り札なのだ。

『うおおおおっ、わ、私の力が抜けていく……き、貴様ァァァァァッ……』

 苦しみながらも、メディアに一矢報いようとするアバドン。

「よくやってくれた。この刃が通るなら、こちらのもの」

 何処からともなく宙を舞う巻物がアバドンを包み込み……

『な、何だこれはっ……』
「此処より己の死は恐れず、生も求めず……『不還匕首(ただ、あやめるのみ)』ッ!!」

 アバドンを覆っていた強化状態が打ち消された事で、荊軻の一撃必殺の宝具が炸裂した。

『ぐおおおおおおおおおおおおおおおッ……!!』

 噴水のように吹き出す黒い血液……

「血の宴を始めましょう」

 そして、トドメとばかりに、カーミラの宝具が発動する。

「血よ、血よ、血よ! 永遠の美、久遠の宴……老醜は時の果てに!
『幻想の鉄処女(ファントム・メイデン)』ッ!!」

『う、うおおおおおおおおおおおおおっ……』

 少女の姿を象った巨大な拷問器具が観音開きとなってアバドンを囚える。
その内側には無数の針が敷き詰められており、それが閉じられた時……

『ぐぎゃあああああああああああッ……!!』
「ふふ、あはははは……たまらないわ、その断末魔……!!」

 罪人に執行される裁き……戦いの後、メメントスから出現したシャドウ達の勢いは
収まり、地上には再び平和が訪れる。

「無茶をするものね、貴女も。けれど、その勇気には敬意を表するわ。裏切りの魔女」
「鮮血の伯爵夫人からそう言われるとは、光栄ね」
「これで一時的な平和は訪れた。しかし、またいつシャドウが現れるかわからん。
私たちはこの先も戦い続けるしかない……が、まずは勝利の祝杯だ」

 瓢箪酒を勢いよく煽る荊軻。
本来の彼女は、酒を愛し、月夜に照らされる花の美しさを愛でる、義侠なのだ。

「それにしても……珍しい取り合わせね。この3人」
「確かに。でも、まあ、たまには良いんじゃないかしら。こう言うのも」
「これも何かの縁。マスターの元に戻ったら、乾杯と行こうじゃないか」

 カーミラ、メディア、荊軻……心なしか、彼女らの声は似ているように聞こえた。
生まれた時代も境遇もまったく異なるはずなのに、それをひとつに繋ぐ何かが
あるように思えたのだ……

6人目

「数多、帰還せり/黒焔宿る青眼の主、海馬瀬人」

「なるほど、失踪事件……。」
 八雲紫の力を借り、幻想郷から十神のいるホテルの一室に帰還した天宮兄妹。
 そこで、モリアーティとルクソードから事情を聴いていた。
 その内容はやはり、世界中で起きている失踪事件の話。

「要するに、その中心人物である『藍神』って人を探しに行けばいいってこと?」
「ああ、そして彼の持つ『キューブ』を回収していただきたい。メサイア教団に奪われてしまえば―――」
「都合の悪い人物だけを消す装置として悪用されるから、か?」
「そうだ。それでキラ事件の再来だなんて担がれてみろ。教団の勢いは加速するぞ。」

「何、今回は私も同行するとも。」
「モリアーティも?」
「ああ、今後増援が増えるだろうとはいえ、現状君たちだけでは心もとない。」
「……。」
 アマツミカボシの力を宿し、幻想郷でさらなる力を得た天宮兄妹。
 だが、それでも彼ら2人だけではメサイア教団という巨大勢力に抗うには心もとない。

「それにこちらにも用事がある。港区にいたアルキメデスという英霊を倒すためにな。」
「アルキメデス、確か発明家で……光の反射で船を焼いたとかいう。」
「そう、そのアルキメデスがメサイア教団の英霊として召喚され、現在藍神を探しているとの情報も入っている。それ故、対英霊要因ということで彼にもついてもらう。」
 ビショップの発明によって召喚された、英霊アルキメデス。
 彼も藍神捜索に出向き、牙をむているのなら英霊が動くのは道理。
 月夜もこれには同意した。
「わかった、よろしく頼む。」

「あの、私もついて行っていいでしょうか?」
「君は……ああ、東風谷早苗君か。」
 いつの間に外の世界にいた早苗。
 モリアーティがどういうことかと聞き出す。
「紫さんに頼んで、一時的に外の世界に行くことになったんです。」
「だがいいのか?外の世界は君も知る通り神秘が薄い。ある程度弱体化するだろう。」
 外の世界は幻想郷と比べて、明らかに神秘の濃度が薄い。ろうそくに火をつける程度なら魔術ではなくライターを使ったほうが効率的と言われるほどに。
 現代文明を享受した結果、かつては星の数ほどあった魔法の数が、今では片手で数えられるほどの量まで減ってしまった。
 人類の飽くなき開拓の功罪が、ここにきて効いてくる。

「いや、早苗には後方支援に回ってもらう。後ろで強化術式とか簡単な支援攻撃とかしてもらえれば上々だ。」
「なるほど。ならば天宮兄妹は全力で早苗君を守るように。」
「任せて。」



 そこはいずこか。
 夢か現か、幻想か現実か。
 そんな狭間にいるような。

 神聖な、場所だった。
 まるで神代の神殿にいるような。

 そこを、少年が歩む。
 この先に、大切なものがあるという確信を持って。
「……。」
 まるで行き慣れた場所のように、恐怖なく歩んでゆく。
 事実、彼の予想は合っていた。
 その奥、白い外套に身を包んだ男が立っていた。

「待っていたぞ――――遊戯!今日こそ貴様との決着をつける!」

 彼の名を―――。

「ふん、お前にこの俺が倒せるのか―――海馬!」
 海馬瀬人。
 かの海馬コーポレーションの社長にして、世界に3枚しかないという「青眼の白龍」というカードの所持者。
 そして――――眼前の決闘者、武藤遊戯の永遠のライバル。

「勝者のままいずこへと姿を消した貴様を、俺の前に呼び出すのは容易なことではなかった……!」
 海馬が言う。
 それは、今から半年前の話。
 エジプトのある遺跡で、「戦いの儀」なる最後の儀式が行われた。
 名もなきファラオの魂を冥府に返すための最後の戦い。
 光と闇、2つの心が戦い、やがて決着はついた。
 そして、仲間たちに見送られながら現世をさまよっていたファラオ、■■■は冥府へと帰っていった。

 ―――はずだった。

「本来貴様を倒すべきなのはこの俺だったのだ……!」
 ファラオの魂を冥府に返してハッピーエンド、というわけではない。
 そんな結末では納得いかぬものがここに一人いる。
 負けっぱなしで去られては、胸焼けするほど悔しいように。

「だが俺は貴様をこの場に呼び寄せた!その執念の結晶こそが、この新たなデュエルディスクなのだ!!」
 そうして、海馬は左腕を掲げる。
 それは彼の執念の結晶。
 勝ち逃げを許し、それでもなお譲れぬプライド。
 かの魂を現世に引きずりおろすために作り上げた、恩執の力。

 カードゲーム・デュエルモンスターズ専用デバイス「デュエルディスク」の最新型を掲げ、彼の戦いが始まろうとしていた。

「行くぞ―――遊戯!!」

「「決闘(デュエル)!!」」

7人目

「より強く、折れぬために」

――村正の鍛冶場――

 鍛冶場に響くのは、力強く打ち下ろされる金槌の音と、
赤く燃え盛る炉の炎の音だけだった。五ェ門は村正の仕事を黙って見守り、
斬鉄剣が再び蘇るのを待っていた。

 村正は無駄な言葉を一切発せず、ただひたすらに金槌を振るい続ける。
その動きには一瞬の迷いもなく、まるで剣そのものが何を求めているのかを
知っているかのようだった。

「この刀は、ただの鋼じゃねえ。アンタの魂が込められている……
だから、剣が折れたとき、アンタも同時に折れたんだろう?」
「……拙者は、未熟だった。斬鉄剣をこのような姿にしてしまったのは拙者自身。
それがこの結果を招いたのだ」

 村正は五ェ門の言葉に頷きながらも、手を止めることはなかった。
彼は鍛冶の過程を通じて、五ェ門の内面を読み取っていた。剣と心は一体であり、
五ェ門の心が再び強くなることで、斬鉄剣もまた蘇るのだ。

「剣に宿るのは技術だけじゃねえ。魂だ。アンタの魂が折れねえ限り、
この剣も何度だって蘇る。だからこそ、アンタには覚悟が必要だ」
「……覚悟?」

「そうさ。斬鉄剣を蘇らせるには、過去の失敗を乗り越え、未来に進む覚悟が射る。
でなけりゃ、この刀の真の力を引き出す事は出来ねえだろうよ」

 村正の言葉に促され、五ェ門は過去の戦いと、自らの心に向き合った。
アマツミカボシとの戦いで感じた恐怖、彩香を救うために払った代償、
そして、斬鉄剣が折れた瞬間に心が砕けたこと。
それらすべてが、今の五ェ門を作り上げていた。

「過去の傷は、癒えることはない。しかし、それを糧に、
さらに強くなることはできる……」

 五ェ門は瞑想しながら、自らの内面と対話を続けた。
彼の決意が固まるにつれて、村正の鍛冶場にも変化が生じた。
鍛冶場の炎が一層激しく燃え上がり、剣が徐々にその形を取り戻していく。

「見えてきたな……アンタの新しい道が。だが、斬鉄剣が蘇るまでには
まだまだ時間がかかりそうだ。アンタも、そこでただ突っ立てるだけじゃ
仕方があるめぇ。刀だけじゃなく、それを振るう者も鍛えておかなきゃあな」
「……道理」

 村正は斬鉄剣を鍛え直す間、五ェ門に山奥にある修行場を教える。
五ェ門はその場所で己を鍛え直すことを決意し、村正から手渡された巻物を手に、
修行場へと向かった。

「この鍛冶場から少し離れた場所に、かつての戦士たちが
修行を積んだと言われる修行場がある。そこでならアンタ自身と向き合い、
剣だけでなく心を鍛え直すことができるだろうぜ」
「感謝する。村正殿。必ずや斬鉄剣に相応しい剣士となって戻る」

 険しい山道を進むと、五ェ門は壮大な滝に辿り着いた。滝の水は勢いよく流れ落ち、
岩を砕くような轟音が響き渡っていた。

「この滝……まさに修行にふさわしい場所だ」

 五ェ門は滝の下に立ち、冷たく激しい水流に打たれながら、瞑想を始める。
滝の冷たい水が体に打ちつけるたびに、彼は心を研ぎ澄ませ、
己の内面にある弱さや迷いを削ぎ落としていった。

「斬鉄剣が蘇るその時まで、拙者もまたこの滝で鍛え直す……!」
 
 滝の音に包まれながら、五ェ門は剣の型を繰り返し、
心と体を一体にするための修行を続けた。

「ふんッ! はああッ!!」

 しかし、山を包む怪しい瘴気が、濃さを増しつつある事に、
五ェ門はまだ気づく由も無かった……

8人目

「炉心狂蝕:無尽恒炉魔人-マクスウェル・メイガス その5」

 数分前 第3実験棟
 シャルル遊撃隊+カルネウスチームは

「いいか、奴は遠くに同じ個体があるってのは、分かってるな?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「そこがミソなんだ。まったく姿かたち、能力までもが例外なくが同じの同一個体。つーか2体で1体だ。」
「2体で1体。」
「んで、そいつらは見えない魔力の線がある。その線を通じてお互いに魔力を流しあっている。共有ってやつだ。」
 マクスウェル・メイガスの能力の正体は魔力の相互供給。否、魔力”共有”。
 一方が追いつめられれば、もう一方が有り余る魔力を生成し流し込んで回復させる。
 そうすることで、無限無尽の魔力を持っていると見せかけることができる。
 それは同一個体だからこそできる芸当。
「まるでおもちゃのトランシーバーだな。」
「あー、同じ個体でしか通信できねぇって話か。ま、その規模はそれ以上だがな。」
「で、お前はそれをどうするつもりだ?」
「俺に策がある。」
「……その策を、教えてくれ。」
 カルネウスは、ホルスターから拳銃を取り出す。
 6連装のリボルバー銃、その弾倉には6発の弾丸が込められていた。
 刻印は、識っている者が見ればわかる呪詛系の魔術が刻まれていた。
「言うまでもなく、俺の呪弾を使う。この弾丸なら、魔力共有をしているパスを内側から破壊できる。そして……」
「修復される前に、倒すってことだな?」
「おうよ。あとはお前らが俺を信じてくれたらの話だ。」
 シャルルマーニュは、仲間たちと顔を見合わせる。
 リク、江ノ島、デミックスは3人とも頷いた。
 そして、カルネウスに最後の質問を投げかける。
「分かった。どうにかできそうか?」
 その問いには強い肯定で返そう。
「……へっ、何言ってやがる。」
 強い決意と、確固たる確信を持って。
「こういう状況下でできるかどうかは関係ねえ、やらなきゃ全員おっ死ぬぜ―――!!」
 そういい放ち、カルネウスは6発の呪弾をマクスウェル・メイガスに撃ち込んだ。
 6発撃っても1周に至らないリボルバーの弾倉を3周させる程の早撃ち。
 事実、紙一重だった。
 カルネウスらを捕捉した魔獣の触手。
 彼らを串刺しにせんと、音速もかくやの速度で触手を伸ばした。
 カルネウスは攻撃に気づき、できるかどうかを無視して己の責務を果たした。
 その結果、音より早い鋼鉄の槍の速度を、光の速度で弾丸が凌駕し―――。

『e381b0e3818be38281e38080e38193e38293e381aae3818ae38282e381a1e38283e38194e381a8e3818d』
「ダメか……?」
「いや、効いてる。」
『!>?』
 致命的な傷を負わせた。
 呪弾を受けたマクスウェル・メイガスの触手が、眼球砲台が、突如全方位に暴れ始めた。
 カルネウスが放った呪弾は正しく命中し、絶大な効果を示した。
 呪詛の弾丸を受け、相互に働く魔力供給のパスをズタズタに破砕され、悶え苦しむ天球儀。
『e381aae38293e381a0e38193e3828ce381afe38080e38193e38293e381aae381afe3819ae381a7e381af!!』
「どうやら効いてるみたいだ!」
「一気に畳みかけるぞ!!」

『e3818ae38282e38184e38182e3818ce3828be381aae38288e38080e38193e381aee382b4e3839fe382afe382bae381a9e38282!!』


 第Ⅱ実験棟 ファルデウスチーム

『e381bee3828ae38287e3818fe381b1e38199e3818ce38080e38286e3828be38195e38293e38080e38288e3818fe38282e38193e38293e381aa!』
「太陽みたいな部位が……縮んていく!!」
「彼らも、謎を解いたのか!」

 苦戦を強いられていたファルデウスたちも確認する。
 カルネウスの呪弾を受け、もう一体のマクスウェル・メイガスが暴れる様を。

「でも、いったいどうやって……?」
「今はそんなことを考えている時間はねぇ!回復される前にやるぞ!」

 無尽の魔力にできたほころび。
 極限まで近かった無限に、傷がつく。
 無限は有限と化し、有限は0に迫る。

 マクスウェル・メイガスとの決着の時は近い―――!

9人目

「黄金色の伝説②界賊パワーとゴージャスパワー」

 ゾックスは軽快にステップを踏みながら、戦場をまるでダンスフロアのように
自在に動き回っていた。その軽やかな動きは相手の隙をうかがいながら力を蓄える……
と言うわけでもなく、その踊り自体にさしたる意味は無かった。
カグヤはその異様な光景に戸惑いを覚えたが、その体捌きに関心を向けている。

「ふっ……ゴージャスなダンスじゃないか」
「はっ!!」
 
 ゾックスはギアダリンガーを銃口を真っ直ぐに向け、発射されたエネルギーを浴びる。35番目のスーパー戦隊……海賊戦隊ゴーカイジャーの力を模倣してフリントが開発した、金色のスーツに全身を包まれたゾックスの姿があった。

「海賊のパワー……ツーカイザー!!」

 彼は自信に満ちた態度で、レジェンドに向かって拳を突き出し、堂々と名乗りを上げた。
その声は戦場に響き渡り、ツーカイザーの圧倒的な存在感が周囲を圧倒する。
カグヤはその名乗りに一瞬たじろいだが、すぐに覚悟を決め、
レジェンドマグナムを構えて応戦の構えを取った。

「この世界を守るために、負けるわけにはいかない!」
「欲しいもんは奪う、それが界賊だ! 行くぞォ!!」

 レジェンドとツーカイザーの戦いが始まる。
ツーカイザーの動きは軽快でありながら、一撃一撃が強烈であり、
カグヤも負けじと全力で応戦する。

 金と金。仮面ライダーとスーパー戦隊。世界と世界を超えた対決が幕を開けた。

「あの金キラライダー、アニキと互角かよ……」

 兄の戦いの行方を見守るフリント。その激しい戦いに息を呑む。

「やるじゃねえかよ、次はこれだ!!」


【回せええええええええええええええええええええええッ!!】


「俺の出番だ!」
「頼むぞ、カッタナー!!」

 ゴールドツイカー一家の次男、SDサイズの赤い鎧武者の姿で空中を飛び回り、
レジェンドを撹乱するのは、カッタナー・ゴールドツイカー。
SDトピアを訪れた時に受けた呪いによって双子の弟・リッキーと共にこのような姿に
変えられてしまった。現在では人間の姿とこの姿を自在に使い分ける事が出来るのだとか。

【シィィィィィィィィィィィンケンジャァァァァァァァァァァァァァ!!】

(ソレ! ソレ!)(手刀×2)
(ソレ! ソレ!)(手刀×2)

(手刀)(ソレ! ソレ! ソレ!)

 先程とは打って変わり、日本舞踊を取り入れた雅な舞と共に、


【ヨーソロー! シィィィィィィィィンケンに、レボリューショォォォォォォン!!】


「さらに変わった……!?」
「クールに侍、シンケンフォーム……いざ参る!」

 33番目のスーパー戦隊、「侍戦隊シンケンジャー」を思わせる赤い陣羽織を纏い、
ギアダリンガーをソードモードに変化させたツーカイザーが
目にも止まらぬスピードでレジェンドとの間合いを詰める。

「ふっ! はっ!!」

 至近距離に潜り込まれ、レジェンドマグナムによる銃撃を封じられたレジェンドは
次々に繰り出されるツーカイザー・シンケンフォームの斬撃を寸でのところで避わすが、
ついに一撃を浴びてしまい、袈裟斬りの火花が散る。

「うっ……!!」
「まだまだ!!」

 吹っ飛び、地面を転がるレジェンドにさらなる追撃を加えようと接近するツーカイザー。

「やっちゃえ、アニキィ!!」

「もらった!」
「どうかな……!?」

 それはレジェンドの作戦だった。受け身を取っている間に、レジェンドは既に
次なる一手を打っていた。

【LEGEND RIDE】

「うわっ!?」

 レジェンドライドマグナムにレジェンドライドケミーカードを装填する事で
受け身の回転が止まったと同時に光弾を発射してツーカイザーを牽制し、
その光は人の姿へと変質していく。


【GO GO GO GORGEOUS GAIM】


「増えたァ!?」

 驚くフリント。レジェンドの最大の特徴とも言える能力。それは平行世界から集めた
仮面ライダーたちの力を複製したレジェンドライドケミーカードを実体化させる力。
このように、レジェンドライドマグナムを介する事で分身体を召喚する事も可能とする。

「うぉぉぉぉうるぁぁあああああああああッ!!」

 仮面ライダーゴージャス鎧武。姿形は鎧武と瓜二つだが、金色の装飾……
右腰の「ボトムゴージャスター」、胴体左側の「ゴールデンゴージャスター」を
纏う事でさらに目を引く綺羅びやかさを示している。

「ぬうっ! 愉しませてくれるじゃねえか……!!」

 ゴージャス鎧武の無双セイバーとツーカイザーの
ギアダリンガー・ソードモードの刃による鍔迫り合い。侍と戦国武将の剣戟の押収だ。
レジェンドとツーカイザーの戦い。どちらも一歩も譲らない、一進一退の戦いが続く……
 
「ふふ、これはなかなか面白い場面に遭遇したものだ……これは好機か」

 その戦いを見つめる、謎の影の正体は……?

10人目

「救世問答4:認知/暗黒魔界に向けて:ウーロンその3」

露わになった、オラクルと呼ばれる大帝の存在意義。
そしてそれを狙った、メサイア教団の真意。
人の善意に付け込み利用する、唾棄すべき邪悪が。

「しかし、いやだからこそ、か。」

それを憐れみながらがも、何処か怒りの色を孕んだ目付きになる武道。

「自身の価値を知っておきながら、斯様なカルト集団の詭弁を鵜呑みにし自らを引渡すとは、失態だな。グロロ~…」

静かな嘲笑と共に紡がれる、罪の羅列。

「全ては己の怠惰が招いた必然、手を取るに足りえる相手かを怠った事のな。」

最初から、此方の動向を見透かされる事は理解していた。
しかし改めて自分の置かれた状況と、それに対する自身の杜撰さを浮き彫りにされれば、己の怠惰を誤魔化し様が無い。
どう言い訳出来ようか?いや、出来る筈が無い。
『果報は寝て待て』が出来るのは、万事を尽くした者のみの特権なのだから。

(救済を諦めきれぬと思いながら、己がこうではまるで道化だ。)

返す言葉も無い大帝。
そうして少しの静寂の後、さてと前置きして武道は続ける。

「そも、そのような些末事で同情を貰いに来た訳でもあるまい。」

途端に、場に只ならぬ雰囲気が漂い始める。
通信礼装越しに分かる、張り詰めた空気。
いよいよ、本題だ。

「お主は今その間違いに気付き、改めて手を取るべき相手を見定めようとしている。だろう?」

その言葉に、間違いは無い。
故に大帝は、一切の取り繕いもせず、本心を露わにする。

「あぁ。我は無様な間違いを続けてきた愚物だ。だが、だがなストロング・ザ・武道よ。」

肺に籠った息の限りを吐露し、一息付いて、告げる。

「それでも尚、我は救われぬ今の世界が許せぬのだっ…!」

虚ろで儚く脆い、まるで樹葉が擦れ合う様な微かな…然し、決意と祈りを込めた力強い言葉。
通信礼装越しに伝わる、妄執とも言うべき執念。
戯言や妄言の類で無い事は、武道とて百も承知だった。

「…許せぬ、か。」

武道は呟く様に言葉を零す。
憤怒を覆い隠す仮面の奥で、尚も覗く怒りの目付きを僅かに和らげながら。

『_僕はこんな現実を認められない。許したくないんだ。』

脳裏に過ぎる、同士(にんげん)の咆哮(ねがい)。
それが、姿形は似ても似つかぬカール大帝と重なってチラつく。

(…いるのだな、お主と同じ様に、世界に絶望し裏切られながら、尚も諦めぬ者が。)

思わず胸が熱くなる。
滾り昂ぶる魂の咆哮。
そんな気概を以って、何を為すか。
武道はここにきて漸く、カール大帝という存在に興味を持った。
同胞としてなのか、或いは対抗意識によるものなのか。
それとも、単純に気に入ったとでも言うのか。
それでも尚、武道の内心はソレを歓迎していた。

「よかろう、カール大帝。我らが掲げる救済を話すに足りえる存在と認める。」

長く続いた静寂を破る一声は、怒りも懐疑の色も含まない、凛とした物だった。
或いは、武道が正真正銘本気だという意思表示だったのかもしれない。
大帝は、そんな武道の言葉に、ただ黙って耳を傾ける。
そして、その口から紡がれたのは。

「我らが使うは人の集合無意識の操作、願い叶える救済は『人が人のまま、理不尽無く救われる世界』である。」
「_それ、は。」

図らずも、それは嘗ての聖杯戦争でカール大帝が天声同化(オラクル)を以て望んだ救済。
ただ自分らしく生きられる。
たったそれだけの、しかし何よりも優しい救済と同一と言って良い代物だった。




「ひぃ、ひえぇぇぇ!!?」

無数に並べられた、丸太で出来た十字架の群れ。
森林の生い茂る即席墓地に、悲鳴が一つ。
振り上げられた、悪意滴る三つ腕の黒い凶手。
その主は_

「あ、悪霊!?」
_▬▬▬▬▬ッ!!!

先の悪霊事変で多くの命を葬った、悪霊そのもの。
異変の解決と共に消えた筈のソレに、脂汗を掻きながら後退る。
恐怖に縛られ拙くなったそれは、悪霊から逃げるなど叶わず_

「た、助けっ…!?」
「変化ッ!」

その手が振り下ろされる刹那。
ドガンッ、と轟音が鳴り響き、悪霊の背中に赤黒い火花が咲く。
直後に立ち上る黒煙の中から、くるりと身体を翻して着地する影が一人。

「あ、貴方は…ウーロンさん!?」
「うん?そーだが…俺も有名になったなぁ。」

そう、誰あろうウーロンだった。
ロケットに変化して墓地に急行した彼は、先の現場を目撃。
流れる様に悪霊の背中で爆発を巻き起こし、見事核を打ち砕いた。

「あ、有難う御座います…本当に助かりました…!」

未だ抜けきらぬ恐怖も手伝って、頭を下げる男。

「…礼を言うのはまだ早ぇみてぇだぞ?」
「えっ?」

だが彼の安堵は、続くウーロンの一言によって再び恐怖へと変わる事となる。
その言葉通り、男の前に立つ墓標の隙間や小高い丘の向こうから顔を除かせるのは、薄暗い赤の輝きを放つ核。
骨張った胴体、先ほど見た3つ腕。
その先端は鋭く尖り、男を狙う様に蠢いている。
_悪霊の群れだ。

「悪霊!な、なんで…!?」
_▬▬▬▬▬!!▬▬▬▬▬ッ!!!

耳障りな不協和音が辺りに響く。
二人が目にしたのは、墓地を包囲するかの様に蠢く悪霊の群れ。
その数、10や20では到底収まらない。
詳しい考察に入りたいが、しかし状況が許さない。
困惑冷めやらぬ様にじり寄る悪霊の集団に、ウーロンが選択をするように力を全身に込め…

「ハァッ!!!」

眩い光と共に、黒髪の戦士が露わになる。

ーーーーーー
D-CHANGE
ーーーーーー
  孫 悟空
ーーーーーー
  LV.3
ーーーーーー

色濃く、実物と見間違う事間違いないエネルギーで形成される鋼の肉体。
ソレを覆いつくす気迫が如き戦士の風貌。
そんなエネルギー体のパワードスーツを纏ったウーロンが腕を前方に掲げれば、その掌から眩く光る球が形成される。
ソレは、瞬く間に巨大な光球へと姿を変え。

_▬▬ッ!?
_ゴォッ!!!

その光に恐れ慄き、後退るには遅く。
砲弾めいて撃ち出されて気弾に、進路上の何体もの悪霊が瞬く間に飲み込まれ…

_ドッ。
_ゴォーーーォン!!!!!

墓地の外まで飛ばされた瞬間、光瞬いて爆炎へと交わり、灰燼に帰した。
その重火力は、周囲の空間すら黒焦げに焼いていく。

_ゴォ……!!

立ち登る黒煙は、さながら核爆発。
命を屠って余りある威力を目の当たりにし、悪霊はまるで人の様に怯える素振りを見せる。

(_やっべぇ、悟空の力半端ねぇなぁーーーッ!?)

最も、当の下手人が内心一番ビビっているので実の所格好が付いてないのだが。
曰く、気弾を発射するイメージに手間取った結果、先の過剰な気弾が出来たそうな。
閑話休題。

「…よっし、次にぶっ飛ばされてぇ奴は誰だ!?」

すっかり調子付き、余裕綽々の表情を向けるウーロン。
このまま悪霊を殲滅せんと一歩踏み出し。

『オイオイオイオイ。』

その声に、ウーロンがピタリと足を止める。
何故ならその声は、その熱気は、その駆動音は。

『随分と巡り合わせが良いじゃあねぇか、豚野郎。』
「…クレイヴ!?」

11人目

「セラフィータを訪ねて」

「解析完了、ウィルスの類は検出されませんでした」

 ダナンの解析班の技術者が淡々と報告を上げた。
冷静なその声にも、ゲイルとヒートは僅かに安堵の表情を浮かべた。
ジェナ・エンジェルから手渡された端末に何か細工がされていないか、不安があったのだ。

「これで安心して使えるな」

 ヒートが呟き、ゲイルは端末を手に取り再び画面を見つめる。
そこには、点滅する座標が示されていた。
エンブリオンの一員、セラフィータの居場所がそこにあるというのか。だが心のどこかで、
これが罠ではないかという疑念が消えない。これまで敵対し続けてきた
ジェナ・エンジェルの情報は信じるに足るものなのか、それが引っかかる。

 ヒートはゲイルの険しい表情を横目で見て、彼の心中を察した。

「俺がここまで追い求めてきたのは、ただ一つだ」

 ヒートの声は低く、だが力強かった。

「これが罠かどうかなんて関係ない。俺たちは進むしかねえんだ。違うか?」

 ゲイルはヒートの言葉に深く頷いた。彼も同じ思いだった。
ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。数々の敵との戦い、仲間との別れ、
そのすべてが彼らの背中を押している。引き返すことなどできるはずがなかった。

「準備はいいか?」

 ヒートが確認する。彼の目には不安はなく、ただ決意が宿っていた。

「もちろんだ」

 ゲイルは短く答え、端末をしまった。

 二人は静かにデッキを歩き始めた。目の前に見える海は、果てなく広がっていた。
トゥアハー・デ・ダナンの巨大な船体も、その広大な海の中では小さな存在に過ぎない。
それでも、彼らは信じていた。彼らの前に広がるのは無限の可能性であり、
待ち受ける困難をも越えて、必ずセラフィータに辿り着くことができると。

「ジェナ・エンジェルが渡した情報が正しければ、ここから向かう場所は
長く危険な道のりだ。途中でどれだけの障害があるかもわからねえ」

 ヒートが再び口を開いた。

「だが、これまで一度たりとて諦めたことはない。それが俺たちの誇りだ」

 ゲイルはヒートの言葉に黙って頷いた。彼の中には静かに燃える決意があった。
彼らはすでに数々の危機を乗り越え、数え切れないほどの戦いを経験してきた。
今さら恐れるものなど何もない。

 二人はしばらくの間、言葉を交わさずに歩き続けた。
海のざわめきが遠くから聞こえ、その音が静寂の中で不思議な安らぎを与えていた。
やがて、二人はトゥアハー・デ・ダナンのヘリポートに辿り着いた。
そこには、すでに準備が整えられたヘリコプターが待っていた。

「ここからが本番だ」

 ゲイルは小さくつぶやいた。

「行くか、ゲイル」

 ヒートは彼を見つめ、力強く言った。

「行くんですね、ゲイルさん……」
「ああ。ここを離れる事は済まないが、目的を果たした暁には必ず戻る。
黒江にもよろしく伝えてくれ」

 見送るいろはに対してゲイルは頷き、二人はヘリに乗り込んだ。
プロペラが回り始め、ヘリはゆっくりと浮上し、
静かにトゥアハー・デ・ダナンの甲板を離れていく。下に広がる海が小さくなり、
空と一体化していった。

「セラフィータ…必ず見つけ出してみせる」

ゲイルは心の中でそう誓った。
二人の新たなる冒険は、今始まったばかりだった。

12人目

「それぞれの次行く場所へ」

「……そうか、ついにアマルガムとの決着を着けて、かなめちゃんを無事救出することができたんだね」

「あぁ、いろいろとあったがなんとかな……」

トゥアハー・デ・ダナンの格納庫では、幻想郷から戻ってきたGUTSセレクトのメンバーとウルズチーム、マジンガーチーム、ゲッターチームのメンバーがお互いなにがあったのかを話し合っていた。

「……それにしても……アレはいったいなんなんですか?」

そう言いながら甲児はGUTSセレクトが幻想郷から持ち帰ってきたヒソウテンソクを指さした。

「……マジンガーに似てるわね、顔と大きさは違うけど……」

「しかもなんか全身金ピカだな……」

「あ、えっと……」



「それについては私が説明するね」

そう言いやって来たのは河城にとりであった。

「誰だあんた?」

「あ、紹介するね。彼女は幻想郷出身の河童で僕達CROSSHEROESに協力してくれることになった河城にとりさんです」

「よろしく!」

「へー、あんたが幻想郷の……って河童!?」

「河童というと……きゅうりが好物で、頭に皿を乗せ、背中に甲羅を背負っている日本の妖怪か!?」

「うそ…!?どう見ても人間の女の子じゃない!?」

「まぁまぁ気にしなさんな」

「……河城にとりと言ったか?このロボットについて何か知ってるのか?」

「もちろん!このロボットは私達河童とDDが共同で開発したスーパーロボット、その名はヒソウテンソクだ!」

「ヒソウテンソク……それがこのマジンガーもどきの名前か」

「もどき言うんじゃないよ!……まぁ見た目や一部の武装が似てしまったのは認めるけどさぁ……」

(武装も似てるんだ……)

「けどなんでこんなにマジンガーに似てるんだ?」

「私に聞かれても困るよ、デザイン考えたのはDDの方なんだからさ」

「そ、そうなんだ……」

(……後でスネークさんに問いただしてみよう……)

「……あ、話は変わるんだけどさ、実はにとりさん以外にも幻想郷の人達が何人かCROSSHEROESに協力してくれることが決まったんだ」

「ホントか!?」

「はい、と言っても早苗さんは天宮さん達と一緒に別行動中で、にとりさんの知り合いである魔理沙さんを始めとした残りの皆さんは暗黒魔界への先発隊の方に加わったから今ここにいるのはにとりさんだけなんですけどね」

「メンバーが増えたのは心強いな」

「そうね、アマルガムが壊滅したとはいえ、まだまだ戦いは続きだろうしね」

そうこう話をしていると、トキオカ隊長がやって来た。

「皆、お話中のところ済まない。これからのことについて話がある」

「これからのことについてですか?」

「あぁ、どうやらこのあとゼンカイジャーの協力のもと、一部のメンバーを特異点に行かせることが決まりまして、それで他に特異点に行きたいメンバーがいるかどうか確認を取ろうとということなったんです」

「なるほど」

「特異点か……」

するとそこにかなめがやって来た

「あの……その特異点に私も行っていい?」

「千鳥…」

「私……特異点に飛ばされてた時に宗介共々カルデアの皆さんと士さんにお世話になったからさ。無事であることの報告も兼ねてお礼を言いに行きたいんだ」

「……なら俺も行こう、俺も特異点で世話になったやつがいろいろといるからな」

「宗介…」

「……それに特異点は危険がいっぱいだ、だからお前を守るためにも俺も特異点に行かせてくれ。
……今度こそ、お前を守り切るためにも」

「……ありがとう宗介!」

「……ならば我々他のウルズチームはここに残るとしよう」

「そうね、テッサとトゥアハー・デ・ダナンを守らないといけないし」

「ついでに司法取引の方も代わりに見といてやるよ」

「すまない、感謝する」

「……甲児、俺たちも特異点に行くぞ」

「え、鉄也さんどうして?」

「ラグナロクに関する情報を得るためだ。複数の世界が融合している特異点なら何か情報が得られるかもしれないからな」

「それは助かります。我々GUTSセレクトはこのあと一旦本部に戻ってこれまでのことの報告とかをしないといけないから今回の特異点に同行できないからね」

「複数の世界が融合してる世界か……いろんな世界の技術とか手に入れれそうだし私とヒソウテンソクもそっちに行こうかな?」

「なら俺たちゲッターチームはここに残るぜ」

「戦力の偏りは少ないほうがいいだろうしな」

「ありがとうございます。では早速このことを伝えてきますね」

次向かうところを決めた彼ら、果たしてその先になにが待ち受けているのか。

13人目

「特異点への航海:戦士たちの船出」

 特異点への出発。トゥアハー・デ・ダナンの艦内に集まったのは、
特異点に向かうためのメンバーたちだ。

 過去に特異点へと飛ばされた経験を持つ相楽宗介と千鳥かなめ。
メメントスの調査へと向かう心の怪盗団、チーム・モルガナ。
遥か太古の昔に引き起こされたと言う現象、ラグナロクの謎を求めるマジンガーチーム。
かつての戦友、仮面ライダーディケイドと平坂たりあの行方を知るかも知れない
藤丸立香を尋ねるペルフェクタリアと日向月美を始めとする面々……

 今回のミッションは、ゼンカイジャーのサポートメカ、セッちゃんの
時空間ゲートを使って次元の歪みを通り抜け、特異点へと到達することだ。

「いよいよか……」

 トゥアハー・デ・ダナンの艦橋には、特異点行きのメンバーが集結していた。

「特異点かぁ、一体どんな所なのかねぇ」
「ボス、遊びに行くんじゃないのよ」

「ボロットじゃ、時空間ゲートを通り抜ける前にバラバラになっちまうんじゃねえのか?」
「何だと、兜! 俺のボロットを馬鹿にしやがるつもりか!?!?」

 マジンガーチームが特異点に向かうのは、今回が初めてのこととなる。

「けど、巨大ロボットも結構いるな……セッちゃんの時空間ゲートに
収まり切れるのかい?」
「ぬぬぬ、ちょっと厳しいかもっす……大丈夫そ?」

 マジーヌが心配する声と共に現れたのは、今回のミッションの鍵を握る
ゼンカイジャーのサポートメカ、セッちゃんだ。

『こ、根性! 根性でどうにかするッチュン!!』
「なぁに、心配すんな。俺達のゲッターで手伝ってやるぜ。特異点には
一度行ったことがあるからよ。時空間ゲートとやらをゲッタービームで
無理矢理おっ広げてやらァな。餞別代わりって奴だ」

 特異点・黒平安京との戦いに乱入したゲッターチーム。
ゲッターロボと言う存在は、時空にワームホールさえも発生させる事をも可能とする。

「みんな、準備はいい? これが成功すれば、特異点に向かって
次元の裂け目を通過できるわ!」
「ああ、全員の準備は整っている。後はゲートの起動だけだ。」


『時空間ゲート、オープンッ!! だッチュン!!』


 セッちゃんが時空間ゲートを目一杯にまで拡大させる。
確かに現状では人間サイズの者たちしか入りきれないが……

「よぉぉぉし、そのまま堪えてろよ、トリ公! 隼人! 弁慶!
ゲッターにエネルギーを集中させろォ!!」

「了解だ!」
「任せておけィ! 穴には太いのをぶち込むに限るわい!!」

「ゲッタアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
ビイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィムッ!!」

 セッちゃんが発生させた時空間ゲートに向かってゲッタービームが注ぎ込まれる。
見る見る内にゲートの規模が拡大していく。

「このゲート、本当に大丈夫なのかよ……当たり前みてえに時空歪んでんだけど」
「心配しすぎよ、竜司。これしか方法はないんだから、信じるしかないでしょ!」

「歪んだ空間なんてのは、パレスやメメントスで慣れっこだろ、ワガハイたちは。
さぁ、行くぞ! 特異点に行けばワガハイたちは怪盗服で戦える。
ゲートに飛び込んだらワガハイは車になるから、上手いこと乗り込めよ!」

「ハ、ハードですね……」
「ここまで来たら、覚悟を決めてもらうわよ、吉澤さん」

 時空間ゲートが開き、異次元への道が目の前に現れる。
巨大な渦を思わせるそのゲートは、不安定なエネルギーで揺れているが、
セッちゃんの計算通りに安定させられていた。

『おうわあああああッ……ゲ、ゲッターロボって言うものはオイラの想定を遥かに上回る
とんでもないロボットだッチュン……無理矢理拡張されたゲートを制御するのも
一苦労だッチュン!! さあ、みんな! このゲートを通って特異点へ
向かうんだッチュン!!」

「全員、出発の準備を! どうかご無事で!!」


「とぉぉぉぉぉうっ!! モルガナァァァァァァ……! 変ッ! 身ッ!!」

 
 いの一番にゲートに飛び込んだモルガナは猫の姿から怪盗の姿へと変わり、
さらにはモルガナカーモードにチェンジした。

「ちくしょう、行くしかねえか!!」
「here we go!!」

 竜司、杏、真、吉澤……モルガナに続き、イセカイナビを起動させて
ゲートに飛び込んだ怪盗団メンバーも次々に怪盗服の姿へと変わっていく。
モルガナカーの屋根の上に着地し、窓から中へと飛び乗っていく。

「しっかりやれよ、甲児!!」
「ありがとう、ゲッターチーム!! 行くぞォ! マジィィィン! ゴォォォゥッ!!」
「スクランブル! ダァーッシュ!!」

 ゲッターロボの後押しを受け、マジンガーZ、グレートマジンガー、ボスボロット、
ビューナスAがカタパルトから発進する。

「行くぞ、千鳥、アル」
『ラージャ』
「問題ない……なぁんてね」

「? 誰かのモノマネか?」
「たっはぁー……これだわ。もういい、さっさと行っちゃって」

「了解した。ウルズ7、レーヴァテイン、出るぞ」

 かなめを同乗させた宗介の愛機。

「最後は私達か。行くぞ、日向月美」
「うん。行こう、ペルちゃん」

「ふたりとも、気を付けて」

 ペルと月美を見送る、いろは、やちよ、悟飯たち……

「向こうに行ったらよ、黒髭のおっさんやドレイクたちによろしく言っといてくれ!」
「俺の甥である東方仗助と言う男が向こうにいる。きっと力になってくれるはずだ」

「いろはちゃん、ルフィさん、承太郎さん……行ってきます!」

 こうして、それぞれの目的のために特異点へと向かうCROSS HEROESの面々であった。

14人目

「幕間:虚数の姫、カグヤ」

「?」
「どうした爺さん?」
「あのウサギみたいなゆるふわはどこへ行った?」
 トキトキ都にて、ビルスとゼルレッチが違和感に気づいた。
 一人この場にいない。
 ここに集った超越者5名、そのうちの一人カグヤがいなくなっている。

「カグヤさんならさっき『特異点がどういう場所か見に行く』『もしかしたら直せるかも』って言ってそのまま……。」
 タイムパトロールの一人が、そんな伝言を言った。
 それを聞いてゼルレッチは顎ひげを触りながら思慮にふける。
「わしらが見ないうちに行ってしまったか。」
 対するビルスは団子を食べながら、虚数姫の帰還を待つ。
「何。見定めようじゃないか。虚数の姫とやらの実力ってのを、さ。」

 特異点 神精樹のあった森

「うーん、あたし一人じゃちょっと難しい?」
「ここ作った人はやるね。地底かな。人間の認知に基づく世界がくっついているうえにあらゆる世界が混ざり合いすぎている。しかも変な術がかかっているのかな。それも、作った人の気分次第で世界を天国にも地獄にも変えてしまえるみたいな。」
 そんなこととはつゆ知らず、カグヤはいつの間にか買ってきていたドーナツを食べながら特異点の様子を見降ろしていた。
 ただ顕現しただけで、特異点の内実を一発で看破してしまう。
「虚数空間の力で融合解除はできなくはないけど、そしたら世界が数個壊れる。それじゃあいろいろ拙いなぁ。」

「おやおや、これはこれはお美しいそこの方。」
「ぽへ?君は?」
 そこに立っていたのは、細身の道化師風の男だった。
 顔にピエロのメイクこそないが、代わりにピエロ風のヘルメットをつけている。
 腰にはレイピアと、周囲には巨大な腕の武装が4つ。
「私、メサイア教団はアディシェス騎士団団長。名をブラキオラス。近しい者は私を鉄腕の者と呼びます。」
 ブラキオラス。
 ギリシャ語で腕を意味するその男は丁寧な口調でカグヤに名乗った。

「そっか。メサイア教団ってあれでしょ?世界の裏側に住んでいて、昔の救世主のまねごとをしているとかいう。」
「いかにも。だが一つ訂正をしていただきたい。かわいらしき少女。真似事ではない。意思の後継だ。偉大なるキラ、我らが夜神月様の無念!それを晴らさんと……」
「へぇー。意思の後継、かぁ。その割にはやっている事は山賊集団と大差変わりないけど。」
 挑発する。
 普段のふわふわしたものいいとは思えないほどの煽り。
「山賊ゥ?我らの崇高な布教活動をあんな小悪党と一緒にされては困りますな!」
「いやいや、その悪党集団があなたたちだよ?あなたたちが崇拝している夜神月って人も知っているけどさ、やっていることは結局懺悔の機会も与えないで悪い人だからって理由で殺している悪い人じゃん。そんな殺人鬼を神様扱いして何がしたいの?」
「減らず口を……!」
 上品な物言いは崩していないものの、その内心ブチギレているであろうブラキオラス。
 彼の武器でもあろう、4つの巨大な「手」が動き出す。
 魔力を燃料にして、自在に動かせる戦闘用魔術礼装を構える。

「こちらが下手に出れば調子に乗りやがる……なめるんじゃあないぞ小娘!2500対1!勝てると思うな!」
 一斉に武器を構える教団騎士団2500人。
「あたしね、虚数空間の管理者なの。今君たちが隠れ潜んでいるあの世界はみんなで頑張って虚数空間の奥底に封印したのね。まぁどうやってあの世界を見つけ出したのはこの際聞かないわ。だけど……。」
 す、と右手をピストルの形に変え、涼しい顔で魔力を込め始める。
 彼女の細い指、その先端一点に黒い虚数がこもってゆく。
 大きさにして直径2ミリ、真球形の虚数弾の出来上がり。それを―――手首を動かし、ただ撃った。
「管理者として、眠っている世界を掘り起こし悪事を働くあなたたちを許しはしない。」
 わずか2ミリほどの虚数魔弾。
 それだけなのに、周囲一帯の兵士が恐怖する。
 それはブラキオラスも例外ではない。
 魔力量の差が、肌で感じられるほどに違いすぎる。
 月とすっぽんなんてもんじゃない。これじゃあパチンコ玉と彗星ほどの違いもある。

 だが、ここでうろたえては教団騎士団の名折れ。
「は、はっ!たった一人で我らに立ち向かうと?確かに先の威力の攻撃、肌で感じるほどのすさまじい魔力量!感嘆に値します。ですが当たらなければ「後ろ。」……え?」
 勇むブラキオラスの背後兵士。その全員が、消失していた。
 逃げたのではない、消えたのだ。
 呆気にとられる彼。
「皆をどこへやった?」
「……。」
 対するカグヤは買ってきたドーナツを依然食べている。
「どこへやったと聞いている!」
 仮面の奥で顔を真っ赤にしている道化。
 口の中のドーナツを飲み込んだ後、カグヤは何かを思いついたように話し始めた。
「さっきの白い特殊部隊のこと?それなら今頃虚数空間の中であたしの栄養になったよ?今頃消えているんじゃない?」
「出鱈目を抜かすなッ!2500人の人間を一撃で消しきれるわけがない!」
「言ったでしょ?あたしは虚数空間の管理者。この程度は造作もないよ。やらないけど本気を出したら、この特異点ごとみんな消しちゃえるから。でもそうしたら……大好きな人間むぎゅってできないし、何よりおいしいご飯食べられないからね。」
「ふざけr」
 その刹那、ブラキオラスの体は猛烈な力に包まれた。
 はたから見ると、宇宙模様のスライムに全身が飲み込まれているように見える。
 だがそれはすべて虚数空間へ至る粒子。
 全方向に圧され、同時に倍の力で引き延ばされ、さらに倍の力でまた圧縮されるか如き虚数の力。
「行きつく先は虚数の海。1ヨクトも残さず消してあげる。」
 全細胞が悲鳴を上げ、物理的な悲鳴を上げる暇もなく、彼の肉体は地上から完全に消え失せた。

「さて、無理に戻せないことは分かったしこのまま帰ってもいいけど……彼らの顔も見ておきたいからにゃ~。」
 そういいながら、カグヤはぷかぷか浮かびつつ特異点の町、杜王町へと向かうのだった。
「お土産買ってから帰りたいし。」

15人目

「隠密・望月千代女」

 時は、CROSS HEROES別働隊が時空間ゲートを潜り、特異点へ突入するよりも
少し前の事……

「これは……奇妙な……」

 カルデアより偵察任務に出ていた甲賀流のくノ一……クラス:アサシン、望月千代女が
荒野にたどり着いた時、周囲は静寂に包まれていた。
メサイア教団所属のアディシェス騎士団が進軍している事を遥か遠くより突き止めた
千代女は隠密行動にてその全容を探るべく現地に向かったのだが……

「いない……たったのひとりも……」

 先ほどまでここに存在していたと思われる騎士団の姿は一切残されていなかった。
地面を踏み締めて進む最中の軍靴の痕。手つかずの武器弾薬、設置途中のテント。
2500人もの騎士が進軍していたと思われる形跡。
それだけの人数の騎士団が全滅するほどの大規模な戦闘が行われた様子もない。
人間だけが、文字通り消えているのだ。

 千代女は慎重に地面を見回しながら、戦闘があった形跡を探していた。
しかし、手がかりは無い。

「……ふむ、これは何とも異様な光景。拙者が察知していた気配の数からして、
二千はくだらぬ軍勢だった。それが一瞬にして消え去るなどとは……
神隠しだとでも言うのか……」

 千代女は、その言葉を自らの口から出してもなお、信じられない思いで
周囲を見回していた。荒野は静まり返り、風がかすかに草を揺らすだけ。
武器や弾薬がそのまま残されているにも関わらず、騎士団の兵士たちだけが
忽然と姿を消している。彼女はその場に立ち尽くし、知恵を巡らせながら考え込んだ。

「これほどの規模の消失……何者の仕業だ……?
件の丸喜……完璧超人……竜王……思い当たる節は無くも無いが……」

 一つ、確信めいた考えが彼女の脳裏をよぎる。魔力反応や殺気と言ったものも残さず、
大量の人間を一瞬にして消し去る事の出来る者……
そんなものがもしもいたとしたのなら……

「いや、まさか……二千もの兵を一瞬にして……」

 千代女はその思考を振り払うかのように首を振り、再び周囲の痕跡を調べ始めた。
しかし、やはり何も見つからない。焦燥感が胸を満たしつつも、
冷静に状況を分析するべく、千代女は呼吸を整えた。

「拙者の察知能力では、どうやらこの地に潜む危険はないようだ。
だが、これだけの人数が一瞬にして消えた事は紛れもない事実……
やはり、何らかの外力が働いたとしか思えぬ」

 望月千代女はその場から身を翻し、カルデアのマスターたる藤丸立香たちに
報告するためにリビルド・ベースへと戻る決意を固めた。彼女の足音は地面に軽く響き、
風に紛れて消える。くノ一としての卓越した隠密技術を駆使し、
音もなく荒野を抜けていった。

「この異常事態、お館様に早急に伝えねばならぬ……この規模の消失はただ事ではない」

 リビルド・ベースへと戻る途中、千代女の心はざわめいていた。
この消失劇は、ただの偶発的な出来事ではないという確信が、
徐々に彼女の中で形を成していた。そしてその背後には、何者かの強大な
意志が関与しているのではないかと、疑念を抱かざるを得なかった。

「何者がこの地で何を企んでいる……?」

 リビルド・ベースにたどり着いた千代女は、藤丸立香に状況報告を始めた。

「――千代女、只今戻りましてございまする。先ほどの偵察任務において、
異常事態が確認されました。所属不明の軍勢、その数二千超……それが瞬きの前に
全員、消失しました。戦闘の痕跡はなく、ただ人間だけが消えたようです。
原因は現在のところ不明ですが、何者かの意図的な介入と考えられます」

「ともあれ千代女さんが、無事でよかったよ」
「ありがたきお言葉……」

「ですが、二千名もの軍勢が消失とは一体……?」
「詳細はまだ分かりませぬが、何者かの外力が働いた可能性が高いです。
あまりにも規模が大きく、単なる魔術や兵器では説明がつきません」

 立香は一瞬沈黙し、思案するように声を落とした。

「それだけの大規模な現象が起きたのなら、何らかの大きな反応がキャッチ出来たはず……
なのにリビルド・ベースの計器類にも何も観測されていない……」
「まるで最初から”存在しなかった”かのように……」

「拙者のこの身に宿る『おろちの呪』も、まったく励起する様子も無く……」

 長い前髪と眼帯によって隠された千代女の右目。そして全身を駆け巡る鱗の痣。
伊吹大明神の祟りに遭い、生涯苦しみ続ける事になったそれは、
サーヴァントとなった現在においても消える事は無かった。それ故に強大な宝具として
力を行使する事が可能になったわけだが、そこにも反応は無いようだ。

 立香もマシュも、首を傾げる他に無かった。
この特異点特有の不可思議な現象と言う線もあったが、誰にも気づかれる事なく
それだけの現象を自在に引き起こせる者……それが今まさに、悠然と杜王町へと
向かっているのだ。

「~~♪」

 鼻歌交じりの超越者が、特異点の大地を闊歩する……

16人目

「到着、特異点!そして再開へ…!」

「よし!あたしたちも行くよ!ヒソウテンソク発進!」

「!」

ヒソウテンソクはにとりを肩に乗せて、特異点行きのゲートの中に入った。

「よし、これで全員か?」

「しっかし……まさかゲッターロボ」

「あぁ、あの時もこんなことができるなんて想像できなかったよな」

「これもゲッター線が成せる技か……奴らがゲッター線を恐れてたのも頷けるな……」

「………」

「…竜馬?」

「あ、いや……なんでもねえ……」

竜馬は内心悩んでいた。自身が来て以降、リ・ユニオン・スクエアではゲッター線が降り注ぐ量がどんどんと増加しており、それは今でも続いている。
そしてそれはすなわち、これまでに戦った清明や神々のようなゲッター線を恨むものや危険視するもの、恐れるものなどからこのリ・ユニオン・スクエアが滅ぼす対象として狙われる可能性を高めてしまっているということだ。
それだけではなく、竜馬はかつて新型炉心を搭載したゲッターのテストを行った際に、全ての人類がゲッターロボと一体化し、進化のために互いに殺しあってパーツを奪いあう地獄のような光景を……ゲッターがもたらしてしまう可能性のある最悪の未来をみてしまっていた。
もしもこのままゲッター線がリ・ユニオン・スクエアに降り注ぎ続ければ、やがてこのリ・ユニオン・スクエアあのような地獄みたいな世界になってしまうかもしれないのだ。

(もしも俺が来たせいでこの世界があいつらみたいな奴らがこの世界を滅ぼしに来ちまったら……俺があの時見たクソみてえな地獄になっちまったら……それは俺がこの世界に災厄を招いたのも同じようなものだ……)

竜馬は仲間たちや自分達の世界の人類をゲッター線がもたらす最悪の未来やゲッター線を滅ぼそうとする者達から守るため、隼人と弁慶を元の世界に置いて、たった一人永遠に続く戦いの旅に出たのだ。
そんな彼にとって、自分が来てしまったせいでリ・ユニオン・スクエアのゲッター線が増加してしまっているこの状況は、元々は自分達の世界の問題であったゲッター線による悪しき可能性をリ・ユニオン・スクエアに押し付けているようなものであり、全てを自分一人で背負う覚悟で行った竜馬の果てしなく長い孤独な戦いを全て無意味にするのも同然のことであった。

『……あ、あの……』

「ん?」

『そ、そろそろゲート閉じたいから、ビームを撃つのをやめてほしいチュン……もう限界チュン……』

「あ……わりい……」





一方特異点の方では、先程ゲートを通ったメンバーが続々と到着していた。

「ここが特異点か……」

「なんだか……まるで気味が悪いわね……」

「様々な世界を取り込んでるらしいからな、複数の世界の場所や景色が混ざっているのだろう」

「そういえばお前たちはここに来るの初めてだったな。
よし、ワガハイ達がリビルドベースまで案内してやる。付いて来い!」

そう言うとモルガナことモルガナカーは一同をリビルドベースまで案内した。






「着いたぞ、ここが特異点におけるワガハイ達CROSSHEROESの拠点らリビルド・ベースだ」

「これが…リビルドベース…!」

「めっちゃデカいじゃねえか!」

「クォーツァーの拠点を改造したと聞いたが……まさかここまでの大きさだったとはな……」

「よし!早速中に入ろうぜ!」

そう言うとボスボロットは入口に向かって走り出した。

「っ!おい待て!そこには…!」




グニュ…!

「……え?」

ズボッ!!

「「「ウワァアアアアアアアアア!?」」」

なんとボスボロットは落とし穴にハマり、落っこちてしまったのである!

「ぼ、ボスー!?」

「あちゃー……言わんこっちゃない……」

説明しよう!特異点ではモンスターがあっちこっちでうろちょろしているため、留守の間に攻撃されないように、リビルド・ベースの周辺には落とし穴を始めとした様々なトラップを仕込んでいるのだ!

「この俺でも見抜けないほど巧妙に隠された落とし穴……作ったやつはかなりの技術があると見える」

「感心してる場所じゃないでしょ!?早く助けないと!」

一同は総出で落とし穴に落っこちたボスボロットを助け出そうとする。




するとそこへ…

「手伝ってやろうか?」

「っ!その声は…もしかして…!」

ペルの耳に聞こえた聞き馴染みのある声、その声がした方向へ振り向くとそこには…!

「久しぶりだな、ペル」

「門矢…士…!」

ペルがかつてともに戦った男、仮面ライダーディケイド/門矢士の姿があった

17人目

「繋がりの物語、その『終わり』と『始まり』」

 ――その出会いは、殺意と策謀に彩られていた……

 リ・ワールド。究極の魔法少女となった鹿目まどかによって再編成された世界。
世界でただひとり、まどかの存在を記憶する暁美ほむらはリ・ワールドの平和を
守り続ける魔法少女としての使命を果たしていた。大ショッカーの野望を打ち砕き、
新たなる世界へと通りすがった門矢士/仮面ライダーディケイドが
「世界を破壊する悪魔」であると知らされたほむらは、その光の矢を引き絞る……

『世界の破壊者、ディケイド。この世界を貴方の好きにはさせない。
まどかが守ろうとした、この世界を……』
『まぁたそれか。誰に何を吹き込まれたか……まぁ、大体分かるが。
身に降る火の粉は払わせてもらう。変身!!』


【KAMEN RIDE DECADE】


 壊す者と、護る者。両者一歩も譲らぬ白熱した戦いを繰り広げている最中、
「彼女」は現れた……


『仮面ライダーディケイド。暁美ほむら。死んでもらう。この世界を救うために……』

 アベレイジ。
世界の均衡を乱すほどの超パワーを持つ技術、人物……
そう言ったものたちを接収、管理し、世界を救う事を目的として掲げる……
さながら『天秤』の役割を担う組織。ペルフェクタリアはその幹部の一翼を担っていた。

『アンチェイン』

 平坂たりあを守護する「記憶の番人」として潜在意識の中で眠る魔殺少女が
束縛の鎖を解き放ち、顕現する呪文……

『相克剄……!!』

 魔力と暗殺拳の複合……ディケイドアーマーをも透過するその一撃は
士自身に深刻なダメージを負わせる。鹿目まどかの面影を残すその少女に動揺するほむら。
かくして、リ・ワールドを巡る戦いはアベレイジとそれに対抗する戦士たちに二分され
激化の一途を辿っていく。

『やめてくれ! もうたりあを戦わせるのはやめてくれ!! 穏やかな生活の中に
返してやってくれ!!』
『さようなら、ペル。愛していたよ』

 ディケイドやほむらとの出会い、そして集う戦士たちとの繋がりの中で
自我の芽生え、アベレイジへの疑念を募らせていくペルは、組織の首魁……
「天秤の男」レベラ・リブラのその真の目的……鹿目まどかの力の断片を宿す
たりあを「神子」として覚醒させ、円環の理へ至り、因果律を掌中に収めんとしている事が
発覚する。ペルはたりあの解放を願ったが、リブラの手によってたりあの身体から
引き剥がされてしまう。

 依代であったたりあから分離させられ、実体を持たないペルは「コンファイン」によって
触媒をコアとする事でどうにか完全消滅を免れるが、それも長くは続かない。
ディケイドやほむら、そして仲間たちの戦いの延長線にはすべてアベレイジの影があった。
たりあを取り戻すため、そして世界を救うため、彼らはアベレイジの拠点へと乗り込む。

『管理だ、救済だ……そんなもの、わざわざお前たちに道案内してもらう必要は無い』
『おのれ、ディケイドォ!! お前は……お前は一体何なんだァ!?』

『通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ、変身!!』
『わけがわからないよ……』
『貴方には、一生かかっても理解する事は出来ないでしょう……インキュベーター』

 鳴滝、キュゥべえ……アベレイジの野望に同調する者たちもいる中、
ほむら、ディケイドたちは拠点の最深部にまでついに到達する。

『ペルフェクタリア! あの光の矢に取り憑くのよ!』
『そ、そうか……! コンファイン!!』

 ほむらが放った光の矢に憑依する事で、たりあを封印する壁を突き抜け、
ペルはたりあを取り戻す。

『かくなる上は、こやつらをここで殲滅せねば……リブラよ、貴様の命を以ってな』
『う、うおああああああああああああああッ……』

 リブラもまた、渾沌結社グランドクロスの傀儡として擁立された者のひとりだった。
追い詰められたグランドクロスはリブラの肉体を依り代として
無量大数にも近い負の怨念を注ぎ込み、滅亡の化身『フェイルア・リブラ』を生み出す。

 持てる全ての力を結集した戦士たち、そして二人の力をひとつに溶け合わせた
ペルとたりあの活躍によってフェイルア・リブラを並行世界へと繋がる門
「カオス・ジ・アビス」へと叩き落とし、封印する事に成功するのであった。

『さようなら、ペル、たりあ。愛しているよ……』
『さようなら、わたしの……ううん、わたしたちのもうひとりのお父さん……』

 無差別テロによって両親を失ったたりあの身柄を保護したのは、リブラだった。
神子の覚醒を促す事が本来の目的だったとは言え、天涯孤独となったたりあを育て、
そして疑似人格からペルフェクタリアを生み出し、アベレイジの幹部たちと
過ごした日々は、家族にも等しい関係だった。最後の最後でグランドクロスの支配から
解放され、人格を取り戻したリブラはふたりの娘たちに別れを告げ、消滅した。

 ペルは、アベレイジの遺産「ソウルベッセル」をコアにする事で自らの肉体を獲得し、
世を乱す魔を討つ「魔殺少女」として新生。世界を守る使命を担う戦士の一員として
戦う事を誓うのであった。

『行くのか。門矢士』
『ああ、俺の旅はこれからも続く』

『この世界は、私が守る』
『そうか。じゃあな』

 戦いが終わり、平和を取り戻したリ・ワールドを去っていく通りすがりの仮面ライダー。
約束と共に、旅人の背中を見送る魔殺少女……それが、彼らの最後の記憶……
そして、現在……


 ――リビルド・ベース。
 
「門矢士……」 

 ペルは驚いた表情を浮かべながら、士の方へ数歩近づいた。

「こんな形で、またお前に会うとは思わなかった……」

 話には聞いていたとは言え、いざ本人を目の前にすると上手く言葉が出て来ない。
士は落ち着いた様子で肩をすくめた。

「まあな。特異点にはいろんな世界の問題が集まってくる。それを解決するために、
俺も来たってわけだ。人気者には暇が無い」
「……なるほど。お前らしいな」

 ペルの声には微かな笑みが浮かび、その硬い表情が少し緩んだようにも見えた。

「それにしても随分と久しぶりだな、魔殺少女。事情は大体聞いてる」
「……すまない」

 士に謝罪の言葉と共に、頭を下げる。

「私は……約束を違えた」
「……」

 世界を守る、と言う約束……それは渾沌結社グランドクロスによって
儚くも破られてしまった。

「なら、どうする? 諦めるのか?」
「それは……」

「お前は今、ここで生きている。お前が約束を守ろうとする心を捨てない限りは、
何度でもやり直せる」
「……ありがとう。門矢士」

「お前、少し変わったな。最初に遭った時は危うく殺されかけたからな。
まだ古傷が痛むぞ」

 ぽん、ぽん、と右脇腹を叩いて見せる。相克剄を受けた箇所だ。

「!? そ、そうなのか……あの時は……その……私、は……」
「冗談だ。シャレが通じないところは相変わらずだな」

「ぬ、うう……嘘は嫌いだ……」

 ペルと士のやり取りを端から見守る月美。

(ペルちゃんがあんな表情するの、初めて見た……)

 月美よりも古くからの付き合いの間柄。ペルのまだ知らない一面を垣間見る……

18人目

「化け物の定義/炉心狂蝕:無尽恒炉魔人-マクスウェル・メイガス その6」

 恐怖を与える化け物、怪物の類と呼ばれる存在には明確な定義がある。
 怪物は言葉を発してはならない。
 怪物は不死身でなければならない。
 怪物は超常の力を持っていなければならない。
 怪物は人間の常識の外にいる存在でなければならない。
 怪物は正体不明でなければならない。

「……そんな馬鹿な。」
「アディシェス騎士団が、壊滅!?」
 存在しなかった世界は、揺れていた。
 虚数姫カグヤの顕現。ないしは同胞2500人の壊滅。
 怪物の類を超越した能力に、戦慄していた。

「化け物かよあいつ……!!」
「自分でいろいろ言っておいて、”再現”しやがった!!」
「それが、あの娘のやり方かよ……!!」
 矛盾した行動に義憤する。
 彼女の行動の不可解さに、誰も彼もがおののいていた。
 そんな中、一人の教団員が力なくこぼす。
「あの女、再現……、もしや”あれ”に人の常識はないのではないか?人の形をした人外の類ではないか?」
「馬鹿言え、あれはどっからどう見ても人だ!我らと同じ人の形をした、ちょっと変な能力を持っているだけの人間なんだよ!!」

 事実、その教団員の予想は合っていた。

 ―――虚数姫カグヤは人類を愛している。その事実は変わらない。
 だが、彼女の視座は人間の常識、或いは人の語る正義とは別の方角にある。
 然るに。カグヤは宇宙、ないしは世界単位の視点で物事に当たっている。

 そんな彼女に牙をむくのなら、どうか注意されたい。
 彼女の鏡がごとき性質は、その人物ないし組織の在り方を全力で模倣してくるだろう。
 悪を討ち倒すのならば彼らを倣おう。
 彼らの思想を模して、そのうえで倒してやろう。
 悪党の考え方、思考パターンを再現し、その通りに動き、抹殺する因果応報機構。
 それが、カグヤの敵に対する在り方だ。



 ジャバウォック島第Ⅲ実験棟

「あと一息だ!」
 長かったマクスウェル・メイガスとの戦いも佳境に突入する。

『e38193e381aee4b880e69283e381a7e590b9e3818de9a39be381b6e3818ce38184e381840d0a!』
「でかいのが来る!」
「また光線を撃つつもりか!」
「違う、あの魔力の動きは……自爆か!?」
 強烈な一撃が、放たれようとしている。
「あの魔獣、俺たちを道連れにしようとしている!!」
『さは世界ごな吹く飛ぶがうう』

「ちょっと待って。今、なんて?」
『貴様だこひ許しあぞ 我らが怨敵』
(何か、言葉を……?)
 自爆の刹那。かすかに、言葉らしきものを言おうとしていた。
 魔獣の学習能力もさることだが、この修羅場においてなおその意味を解釈せずにはいられないのは人間の悪癖か。
「呆けるな!避けろ!」
『きけにれえおひ 貴様りや道連ろだ』
「あ……!!」
 確実にとどめを刺そうと、数本の鋭い触手が全員の心臓めがけて矢のように放たれる。
 マクスウェル・メイガスの最後の悪あがきだ。
 あまりの速度、回避も防御も間に合わない。
「避けろ!」
 そんな風に迫る触手に、弾丸が数発。
 放たれた弾丸は例外なく、触手を破砕し攻撃を無力化した。
「た、助かった……!」
 皆の窮地を、カルネウスが助けた。
「本当に助けてくれたなんて……。」
「そんな訝しんだ目で見んなよ。お前らがどう見ようが俺は味方だぜ?」
 崩れ落ちる魔獣。
 無尽に感じられた魔力も、今となってはただの抜け殻だ。

「ひとまずは、倒したが……。」
『こちらも倒しました。でもいきなり弱体化なんて……一体どんな魔術を?』
「それは……。」
 言ってもいい。言ったって構わないのだが懸念事項がある。
 恩讐の昏き炎に飲まれつつある霧切響子の存在だ。
 精神的に動揺している人間を前に、「仇である組織の人間、カルネウスが味方になった」と下手に言えばどうなることか。
『どうかしました?』
「ちょっと待っててくれ。」
『あ、はい。』

「今言ったらまずいか?」
「あの精神状態だ。また暴走されてもな……。」
 どれほどの聖人、善人であれ、裏切り、絶望の類に”絶対に”屈さぬ”精神的超人”はそう簡単には現れない。
 昏き炎に飲まれている段階で、霧切は絶対に精神的超人じゃない。
 今は説得の甲斐もあってある程度抑えつつあるが、今カルネウスの存在を話せば『シャルル遊撃隊が教団側についてしまった』とあらぬ誤解を招いてしまう可能性がある。
 そうなれば、最悪すべてに絶望し暴走する霧切を殺さなければならなくなるかも。
「あいつのことを気にしているのか?あの紫髪の子。」
「カルネウス?」
「こういうのは黙っててもいつかはバレる。そうなったほうが一番本人が傷つくだろ。だったら直接説明したほうがいい。つーか、俺が説得する。」
 その提案をしたのは他ならぬカルネウス本人。
 どうやら彼は本気で、CROSS HEROESの側につくと決意したようだ。

「そのことなんだが、いろいろあった。第Ⅴ実験棟に来てくれ。直接話したほうが説明が簡単だしな。」
『……分かりました、第Ⅴ実験棟ですね。』

19人目

「雲合霧集のボーイズ・アンド・ガールズ」

「……しばらくぶりだったな、門矢士」

 その瞬間、遠くから足音が響いた。相良宗介と千鳥かなめが姿を現す。

「お前たちか……」

 相良宗介と千鳥かなめとの再会。特異点・聖杯を巡る竜王の城での戦い……
クォーツァー・アマルガム連合の介入で離れ離れになって以来、長い時間が経っていた。
平成ライダーの力が通用しないクォーツァーの首魁、常磐SOUGOとの戦いで
次元の裂け目に引き込まれた士は、BBの虚数空間に辿り着き
宗介もまた、アマルガムの幹部レナード・テスタロッサの前に大敗を喫し
かなめの身柄を奪われてしまった。

 現在においてはクォーツァーは特異点における戦いによって壊滅、
アマルガムもまたミスリルとCROSS HEROESの共同戦線によって決着の時を迎えた。
再び顔を合わせた彼らは、かつての戦いの日々を思い出しつつも新たな決意で
手を取り合う。

「……そうか。そっちも色々あったみだいだな」
「あれからお互い顔を合わせないままだったでしょ? だから、士さんの事を聞いて
改めて話がしたいと思って」

 かなめを他所に、宗介はその鋭い目で士を一瞥し、すぐに周囲の状況を確認し始める。
彼にとって、常に警戒を怠らないことは当然の行動だった。

「ソースケ、そんな怖い顔してたら皆さんに悪いじゃない」
「俺は至って普通だ」
「アンタの『普通』は世間様にとっちゃ『異常』なのよ」
「む……」

 士は、かなめと宗介のやり取りを聞きながら、軽く肩を竦めた。

「相変わらずのようだな、相楽宗介。お前が一緒だと、どこに行っても気が抜けない」
「そういうお前もだ、門矢士。あの状況で無事に生きているとは思わなかった」

(そうか……彼らも苦い敗北を味わいながらも、己の使命を捨て去ることはしなかった。
ならば、私も……)

 敗北は終わりではない。そこから再起し、もう一度歩み始めることが肝要なのだと、
ペルは気持ちを新たにする。

「でも、こうしてまた再会できて、少しだけ安心した。
もうこっちの方は落ち着いたのかしら?」

 かなめの声には、これまでの戦いの日々を思い出しつつ、平和を願う気持ちが
込められていた。だが、士はその問いに対して少し険しい表情を浮かべて答えた。

「そうしたいところだが、一難去ってまた一難。問題がひとつ片付けば
次の問題が顔を出しやがる。お前たちがこうして特異点にやって来たのは
少しは気晴らしになったかもな……」
「問題……何かあるのか?」

 クォーツァーが壊滅した後も、特異点では未だに強大な勢力が
それぞれに睨み合いを続けている事、特異点の性質による異世界からの召喚は現在も
散発的に発生している。そして、今最も危惧するべきは……

「む……」

 宗介やかなめ、ペルらが士との喜び合う空気の中、
CROSS HEROESの来訪を聞いてやって来たのは――藤丸立香とマシュ・キリエライトだ。

「見慣れない方々もいらっしゃいますね……あ、あの方々は……」
「藤丸さん! マシュさん! 覚えてる!?」
「かなめちゃん! 相楽くん! 良かったぁ、無事だったんだね……」

 立香とマシュもまた、士や宗介、かなめらと共に聖杯探索をしていた間柄だ。

「あの女……」

 ペルフェクタリアは、2人を……特に藤丸立香の事を見つめながら
心の中で揺れる思いを押し殺していた。彼女には、もう一つの目的があった――
それは、死の淵で見た夢の中に現れた藤丸立香に、平坂たりあと暁美ほむらに関する謎を
問い質す事だった。立香は何故ペルの夢の中に現れたのか。
そして、なぜたりあやほむらが彼女に関係しているようなヴィジョンを見たのか。
ペルは静かに藤丸に歩み寄り、その澄んだ瞳を真っ直ぐに見つめた。

「お前に聞きたいことがある」

 藤丸は少し驚きながらも、ペルの真剣な表情に応じて頷いた。

「何を……?」

 ペルは一瞬言葉を飲み込んでから、問いを口にした。

「夢の中で、お前の姿を見た。そして、その中には、たりあや暁美ほむらもいた。
あれはただの幻ではないと思っている……お前は、何か知っているのではないか?」
「ペ、ペルちゃん、初対面の人に失礼だよ……!」

 月美は慌てて立香を質問責めにするペルを引き離した。

「す、すみません、突然……」
「い、いえ、こちらこそ……」

 ぺこぺこと頭を下げる月美。マスターを守護する者として
突然距離を詰められた事に対し警戒していたマシュも、月美の態度に構えを和らげる。
だが、ペルは月美の腕に包まれながらもじっ、と立香の顔から視線を逸らす事なく
凝視している。たりあやほむらに関する謎が、立香を通じて
何か解き明かされるのではないか――そんな直感に後押しされ、普段の彼女らしくもなく
前のめりになっている。

 立香はペルの言葉を聞き、疑問を抱いた。自分と初対面のはずの彼女が
なぜ立香の経験について知っているのかが理解できなかった。

「ちょっと待って。どうしてあなたが、私の『夢』――いいえ、私の魂が
別世界に迷い込んだことを知っているの?」
 
 立香がこの話を相談した者は限られている。その現象を度々観測している
カルデアのスタッフ……ダ・ヴィンチやホームズ、マシュ。
そして特異点とCH両方の事情に関わる門矢士くらいのものだ。

「……そうだな、お前にとっては初対面だ。だが、私にとっては違う」
「どういうこと?」

 ペルは静かに、だが確信を持って話し始めた。

「私は、お前の姿を『夢』の中で見た。そしてそれがただの夢ではない事にも
気づいていた。だから聞きたかった。この特異点に門矢士、そしてお前がいると言う事を
聞かされたからだ」

 立香は驚きながらも、ペルの言葉に耳を傾けた。
それは立香がこれまでに何度か体験した奇妙な夢の世界に違いなかった。

「……君が言う『夢』は、私にとっては夢じゃない。実は、何度か経験したことがあるの」

 ペルは立香の言葉を聞いて、驚きを隠せなかった。彼女が夢の中で見た光景が
立香自身の魂が他の世界を飛び越えた瞬間だったのだとしたら
ペルが感じていた不思議な感覚と一致する。

「私が経験したのは、ただの夢とは違う。魂が肉体から離れ
別の世界の出来事を目の当たりにする。その時に一緒にいた平坂たりあさんや
暁美ほむらさん……士さんにその事を相談したら、彼女たちと実際に出会った事がある、
って言ってた。それが、君の見た夢と繋がっていたのかもしれない」
「そうだ。本来なら平坂たりあの側に立ち、真っ先に守っていたはずの存在……
それがここにいるちんちくりん、ペルフェクタリアだ」

 ぽんぽん、とペルの頭に手を乗せる士。

「ちんちくりんではない……お前が大き過ぎるんだ。私は成長期だ」

 煩わしそうにその手を跳ね除けたペルは戸惑いつつも、
士と立香の説明に納得する部分があった。自分が夢の中で見た光景や感じたものは、
実際に存在している世界と繋がっていたのだ。

「だが、それが本当なのだとしたら……たりあは暁美ほむらと一緒にいるのか……
今も何処かの世界で……もう一度、もう一度あの場所に行く事は出来ないのか?」

20人目

「幕間:白髪の復讐者、邂逅/虚数姫のピクニック」

 数十分前、リビルド・ベースにて

「異常事態、何もなしー。」
 買い出しを終えた罪木オルタが。食べ物を詰めた袋を手に戻ってきた。
 中身はしばらく分の食材と子供サーヴァントのためのプリンと、自分用の安物のたばこ。
 彼女がいない間、何があったのかも知らず。
「さて、子供サーヴァントにプリンでもふるま……あ゛?」
「先ほどの偵察任務において、異常事態が確認されました。所属不明の軍勢、その数二千超……」
(人が消えてる、だぁ?)
 どうも聞き逃せないセリフを、聞いてしまった。
 罪木オルタは隣の部屋、藤丸立香と望月千代女、マシュの3人の会合に聞き耳を立てていた。

「ですが、二千名もの軍勢が消失……」
(なんだ、あたしのいねー間に超化学を持ったエイリアンでも襲ってきたってか?)
「あまりにも規模が大きく、単なる魔術や兵器……」
(そのエイリアンは連中の体内にブラックホールでも仕込んだって言いてぇのか?)
「リビルド・ベースの計器類にも何も観測されていない……」
(一瞬で一個旅団級の勢力全員を消しきれるってどういうこったい。)
「拙者のこの身に宿る『おろちの呪』も、まったく励起する様子も無く……」
(聞いてる限りじゃ神隠しの類でもなさそうだしエイリアンのUFOが落ちてきた様子もない。となると、どんなバケモンだ?)

「けっ、あたしの脳みそじゃ考えるだけ無駄だな。」
 そう吐き捨てるように言った後、プリンのふたを開けて小さい皿に盛り始めた。

「……そういや、あの子と話してなかったな。」
 罪木オルタは、並行世界にしか存在しえぬ抑止の英霊。
 たった一夜一時の幻。
 だが、それでもなお、召喚されたからには縁は必要だ。
「あの子たちの分のプリンあったかな……。」
 などと、気を利かせて藤丸たちの分のプリンの用意があったかを確認する。
「さて……あったあった。ちょうど3個分余って……。」

「あなたが、罪木オルタさん?」
「おわぁあ!?人を脅かすんじゃねぇよ!!」
 まるで驚かされた猫のように背筋を伸ばす復讐者。
 その背後にいたのは、気になっていた藤丸本人だった。
「アタランテから話は聞いているよ。」
「―――あの緑のアーチャー……なるほどね。そうだよ、あたしがその罪木オルタだ。どうかしたか?」



 そのころ、杜王町ではというと
「おいしい~!!」
 二千人の軍勢を一斉に消去したエイリアン―――ならぬ、虚数の超越者カグヤ。
 彼女は能天気にも、小高い丘でピクニックにいそしんでいた。

「あの人たちへのお土産は後で渡すとして、まずはこの街を堪能しないとね~。それにしてもほっぺたとろけるくらいおいしくて幸せいっぱい胸いっぱい~!あの店員さんをぎゅってしてあげたいくらい!!」
 ウサギみたいにその場をぴょんぴょん跳びながら、能天気に食事を堪能する。
 一人ではとても食べきれない量のサンドイッチだのおにぎりだのを傍らに、たった一人のピクニックを楽しんでいる。
 まるで無邪気な子供のように。
 数十分前に、あれほどの暴威をふるったとは思えないような笑顔を振りまいて。
「ここって天国かな?だってこんなにぽかぽかで草木のいい匂いが気持ちいいんだもん~。」
 そういって横たわるカグヤ。
 現在はふわふわした笑顔を振りまき能天気にしているが、敵としてはこれ以上ない脅威。
 虚数空間という異空間。遍く星がごとき世界を観測し、虚数の裡に封印する彼女の力は人智をはるかに超越した怪物だ。

「なんだあの水色髪の子。」
「明らかにあの人、なんだろう……場違い?というか……。」
「見る感じ敵意は感じないけどよォ……。」
 その様子を、仗助と康一は陰から見ていた。
 どう見ても明らかに浮いている。
 杜王町という存在を一枚の絵とするのなら、あそこにいるカグヤという存在は絵に垂らされた一滴の染み。
 周りの風景とは明らかに言雄なる世界の異物。

「ところで、さっきからじろじろ見てないでさ。」
 そんな世界の異物が、異変に気付いた。
 突如仗助たちの方向を見て、声をかける。
(気づかれたか!?)
「いぃ!?仗助くん、目の前……!」
「めのま……!?」
 声も出ないほど驚くのも無理はない。
 仗助が瞬きをしたその瞬間、彼の目の前、眼前1メートル12センチ前方にさっきまで横になっていたはずの女性。カグヤが立っていた。
 否、ここまでくると高速移動の域をはるかに超越している。
(なんだこの子!脚速いなんてもんじゃねぇッ!)
(瞬間移動だッ!この人は瞬間移動のスタンド能力を持っているんだッ!!)
(虚数空間経由でそっちまで移動したんだけど、びっくりしちゃってる。普通に移動したほうが心象良かったかな?)
 瞬間移動、とでもいうべき超高速移動をしたにもかかわらず、カグヤは敵意もクソもないふわふわした声で話しかけてきた。

「びっくりさせちゃって、ごめんね?」

21人目

「事件は会議室で起きているのではない」

 虚数姫、杜王町に現る――その頃、リビルド・ベースの会議室は、
いつもとは異なる重々しい雰囲気に包まれていた。
怪盗団のメンバーや藤丸立香たちが集まり、状況の深刻さを共有している。

「ふーむ……やっぱりメメントスはまた活性化してたのか。
これはかなり厄介なことになるぞ」

 モルガナの言葉に、その場にいる全員が静かに頷いた。
立香が肩の重さを感じる中、ペルフェクタリアと日向月美も神妙な面持ちで
話を聞いている。

「ウチのサーヴァントたちが頑張ってくれたおかげで、被害は出ずに済んだけど……」

 荊軻、カーミラ、メディア……カルデアのサーヴァントたちが
見事にシャドウの群れを鎮圧したことに感謝しつつも、
根本的な問題が解決されていないことに危機感を抱いていた。

「シャドウは一時的に鎮圧されたものの、時が経てば再びメメントスの奥深くから
湧き出してくる可能性が高いです。これまでの経験からして、
大元の歪みを解消しない限り、この異常事態は続くでしょう」

 マシュの分析は正しい。現に、メディアたちが倒したシャドウの首魁、
アバドンなども出現した……確実にシャドウも強力になってきている。

「やはり、直接メメントスの中に入って調査するしかないだろうな……
ワガハイたち怪盗団としても、これは見過ごせない」

「前に私がパンサーやフォックスと一緒に潜った時は、
人々のトラウマが以前より強力に具現化して襲いかかってきた。
今回はさらに激しい戦いになるかもしれない」

 真の言葉に、その場にいる全員の緊張が高まった。
メメントスは、ただの迷宮ではなく、人間の負の感情や歪みが具現化する場所だ。
そこに潜ることは、心の奥底にある恐怖やトラウマと向き合うことでもある。
悟空やピッコロ、バーサル騎士ガンダム、カルデアのサーヴァントたち……
メメントス探索に同行した者たちも、苦しい戦いを強いられた。

「負の感情の具現化か……魔殺少女としては、看過出来ない所だ」

 ペルの冷静な声が響き、日向月美も隣で静かに頷く。
彼女たちも虚数空間やメメントスのような異常空間に入るリスクを理解していた。

「私も行くよ。みんなが助けを必要としているなら、迷う理由はない」

 立香は月美の決意に感謝しつつも、慎重に計画を立てるべきだと考えた。

「ありがとう、月美さん。だけど、メメントスの奥に潜む何かがまだわからない以上、
十分な準備をして挑まないといけない。もしも強大な敵が潜んでいたら……」

 モルガナは鋭く頷き、全員を見渡した。

「その通りだ。ワガハイたち怪盗団は、メメントスの攻略には慣れているが、
今回は特異点に発生したメメントス……これまで以上に用心が必要だ」

 全員が頷く中、立香は深呼吸して、次の指示を出す準備をした。

「よし、それじゃあ怪盗団のメンバー、マシュ、ペル、月美、そして私達カルデアで
チームを組んでメメントスの調査に当たりましょう。
事態を一刻も早く解決するために、全力で!」

「うん、そうだな。無関係の人々を混乱に巻き込むわけにはいかない。
ワガハイたちで必ずこの異常事態を解決する!」
「おっしゃあ、やってやろうじゃねえか! ジョーカーたちも向こうで
頑張ってるだろうしよ!」

 意気込み満々のスカルの威勢の良さもあって、緊張感の中にも一瞬の決意が交錯し、
全員がそれぞれの役割を確認し合った。
そして彼らは、メメントスの奥深くへと足を踏み入れる準備を進めるのだった。
そこに……

「ねーねー、ちゃんマスー!? 仗助知んない!? 遊ぼうかと思ったんだけどさー!」

 会議室の扉を派手に開いて、清少納言ことなぎこが乱入してきた。

「な、なぎこさん、今大事な会議中なんだけど……」
「んあ!? 何か知らない顔が混じってんじゃん、ウェーイ! 新しいお仲間!?」

 目に入ったペルにぐいぐいと絡んでくるなぎこ。

「な、何だ、こいつは……!!」
「ちっちゃくてかわいいねー! あたしちゃんの事はなぎこって呼んで?
キミの名前は???」
「ペ、ペルフェクタリアだ……あと、ちっちゃいって言うな……」

「へー! 何か長い名前だねー! 何かあだ名が欲しいなー……
ペルペル? ペルフェ??」
「み、みんなからはペルちゃんって呼ばれていますが……」

 なぎこの暑苦しいまでの猛プッシュにたじたじの月美が話しかけると……

「そうなん!? じゃあ、あたしちゃんもそれで! つか、キミも初めてじゃんね!?」

 シリアスなムードも、パリピ系平安女子の陽キャオーラですっかり霧散してしまった……

「ひええ……い、今どきの女子高生って、こんなんなんだ……」
「いや、今どきと言うか平安時代の人間だぞ。授業で習っただろ、清少納言って……」

「せ、清少納言って、あの……!?」
「まー、もうその名前は使ってないけどねー。昔の話、昔の!
名前は……日向月美ちゃん? おけまるー、今を生きるもの属性でやってこーぜー☆」

 戸惑う月美の肩を抱いて、自撮りするなぎこ。

「ぶははははははは、つきみん、すんごい顔してるー! デコって遊んじゃお」
「つ、つきみん……」

22人目

「本当の自分自身出逢うため - オルタとペルソナ -」

 会議を終え、第2次メメントス調査に向かうメンバーが選定される。

「クィーンとヴァイオレットは地上に残っててくれ。
スカルとカルデア、CROSS HEROESの連中がいれば、戦力的には問題ないだろう。
地上も地上で、神隠しだなんだのって妙な事件が起きてる。油断はすんなよ」

「分かったわ。前回、私やパンサー、フォックス達が潜ったフロアに
開かずの扉があった……もしかしたら、変化があるかも知れないわ」
「お気をつけて……」

 クイーンととは裏腹に、もう一方のヴァイオレットは
ぽつりと見送りの言葉を零すものの、やや俯いている。
モルガナは心の中でその理由を察していた。

(ヨシザワはこないだのこともあるしな……今は無理をさせない方がいいだろう)

 ペルソナ使いとは、自分自身の中にある「もうひとりの自分の別側面(=ペルソナ)」と
向き合い、受け入れることでその力を行使することが出来る。
幻想郷での戦い以来、ヴァイオレット(ヨシザワ)は、
ペルソナ使いとしての自信を揺るがされていた。
丸喜拓人につくか、心の怪盗団につくか。その選択に彼女は精神的に疲弊しており、
今の不安定な状態でメメントスに潜るのは危険だとモルガナは判断していた。

「メメントス、か……俺も手を貸してやろう」
「ディケイド……」

 ペルフェクタリアと日向月美に続き、門矢士がメメントス探索に参加する。

「久しぶりに、お前のお手並みを見せてもらうとしよう。魔殺少女」
「いいだろう」

 士とペル。二人の共闘はリ・ワールドでのアベレイジ決戦以来となる。
古くからの戦友同士、互いに視線を送り合う。

「では、カルデアから派遣されるサーヴァントを発表しますね。まずは……」

 マシュから、カルデア側の参加がメンバー発表される。

「ふむ、僕がグランドキャスターとして呼ばれていれば、メメントスなる場所も
簡単に制圧できたかもしれませんが……まぁ、大船に乗った気持ちでいていただいて
構いませんよ? ライダーだけに、なんて」

 太公望。古代中国においてその名が伝わる軍師であり、
「封神演義」においては幾多の神々を封じ、乱世を治めた道士として語り継がれている。
彼は切り整えられた黒髪に、涼やかな中華服を身に纏い冷静な表情を浮かべ、
状況を分析しつつ、その発言には余裕と自信が垣間見える。
その逸話からしてクラス:キャスターとして召喚されていればその知性と術の冴えを
遺憾なく発揮できていた所ではあるが、今回は本人の言葉通りクラス:ライダーとして
召喚されていた。その糸目の奥に潜むるは……

「何か胡散臭えな、アンタ……」
「はっはっは。酷いなぁ。よく言われますけども……おや?」

「すやぁ……」

 竜司と太公望がそんなやり取りをしていると、彼が使役する、獏に似た姿をした神獣
「シフソウ君」の背中に跨り、涎を垂らして寝ている者がいる。
  
「あ、ああーっ! 困りますよ、そんな所で眠り込んでしまわれては!
まぁシフソウ君の背中の寝心地は僕も太鼓判を押す所ですけどね!?」
「すみません、マスター。太公望さん。私オルタが眠りに就いてしまって
まったく起きないんです。一度でいいからこの子の上に乗ってみたいと言って……
ちょっと、私オルタ! 起きなさいってば!!」

 セイバー・沖田総司にそっくりだが、白髪に褐色の肌……
カルデアのサーヴァントには、稀に『オルタ』が存在する。
ペルソナと同じく、それもまた本人を構成する別側面であり、別個の独立した存在。
沖田総司・オルタ。沖田が揺すって起こそうとするが、微動だにしない。

「困りましたね……沖田オルタさんも出撃メンバー候補なのですが……」
「とほほ……これが私の別側面の姿なんて思うと、嘆かわしい……
私はこんなんじゃないですから!」

 が、しばらくすると、オルタはむくりと起き上がり、

「主は一度眠り込んだらそうそう起きねえぞ。しゃーねえ、俺の出番か」

 口を開けば、少女とも少年とも言える中性的な容姿でありつつも、低く響く声。

「お前……オルタじゃないな?」
「ああ。煉獄だ」

 士の指摘通り、それは沖田オルタの愛刀・煉獄であった。意志を持つ妖刀であり、
眠りに就いた主に代わって肉体の主導権を預かっている。その有り様はまるで……

「……」
「んん? どうしたィ、お嬢ちゃん。そんなに見つめちゃって」

 たりあの記憶の番人として、潜在意識の中で鎖に繋がれていた頃の自分を想起したのか
ペルはじっと煉獄の事を見つめていた。

「……いや。なんでもない。お前も同行するのなら、よろしく頼む」
「それなりの働きはするつもりだぜ。任せな」

「うう、緊張するなあ……」

 3人目は、キャスター:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
カレイドステッキ:ルビーを用い、クラスカードを駆使して魔法少女として戦う。

「行ってらっしゃい、イリヤ♪ 美遊には私がついてるから」
 
 美遊の肩に手を回すクロエ。

「クロ! 私がいない間に美遊に変なことしないでよ!」
「変なことってぇ~?」
「こ、このォ……!!」

「イリヤ、がんばってね……」
「美遊……! うん、すぐに戻ってくるから」

 イリヤ、クロエ、美遊。いつも3人一緒のチームではあるが、今回は離れ離れだ。

「宇津見エリセ。よろしく」
「う、うん……」

 ランサー:宇津見エリセ。前髪の一部が魔術礼装を兼ねた赤いエクステになっていて、
古代日本の神事服に、蒼い勾玉の首飾り……そして何より、霊的な力を漂わせている。
退魔師の家系である月美にとっては、近しいものを感じていた。

(それにしても……)

 だが、一番目を引くのは……

(すごい格好……!)

 極めて露出度の高いその出で立ち。しかし、当のエリセはまったくの無自覚であった。

「何か……?」
「い! いえ! 何も! 何も見てませんので! 大丈夫です!!」
「……?」
「ああーっ! 動かないで! 何か大切なものが! 危険が危ない!!」
「…………???」

 角度によってはまるで無防備でさえあるボディライン。
曰く、エリセの恩師の影響であるとかそうでないとか……

「何だかクセの強い奴ばっかりだが、そろそろメメントスに向かうぞ!」

 2本足で立って喋るネコも十分クセが強い気がしなくもないが、モルガナの号令のもと、
一同はメメントス入口へと向かう……

23人目

「復活の剣士/漂う不穏」

「……なんだこれは。」
 銀髪の剣士が、そこにいた。
 辺古山ペコ。
 ドクター・ボンベの施術を受けたことにより、完全復活とはいかずとも日常生活ができる分に動けるようにはなっていた。
 彼女がここにいる理由も、最初はただのリハビリがてらだった。
 教団の魔の手に落ち、絶対兵士にさせられていた己を救ってくれた者たち。CROSS HEROES。
 彼ら彼女らの恩義に報いるべく、せめてこの身をまた戦えるようにと願いながら今はその傷を少しずつ治していた。
 この「散歩」も、あくまでも治療の一環。
 今はまだボロボロの肉体をまた動かせるように、と鍛えなおしている。
 その努力の甲斐あって、ある程度の長距離移動は可能となった。
「さて、これ以上は骨を痛める。酒場に戻るか……ん?」
 気が付くと、彼女が到達したのは無人のキャンプ地。
 少し前にこの地に出現した超越者、のちに『虚数姫』の名で語られる存在によって悉くを『捕食』されたアディシェス騎士団の基地。

「おかしい……人がこんなにいないことがあったか?」
 人の気配が全くない。その静寂が不安をあおる。
 ペコはどうしても気になって、ひと際大きいテントの中に入る。

 内部にはやはり人の様子はない。
 あるのはテーブル、コーヒーカップや食いかけのカップ麺、資料、地図、ホワイトボード、武器、そして「教団」のシンボルたる旗。
「……ここは教団の突撃部隊の拠点だったか。」
 一度は絶対兵士に落ちたこの身、色褪せた記憶の断片は忌まわしいシンボルを覚えていた。
 この拠点は憎き敵、メサイア教団のもの。
 理由はどうあれ、まだ自分の生存に気づいていないのは幸いか。
(この地にまだいたとは。何かしらの目的があろう。だが、なぜ悉く人が消えている?)
 相手は中規模の一個連隊。その全てが一挙に消え去っている。
 そのくせ戦闘の跡が一切ないし、血痕の類もない。
 不気味なんてものじゃない。
 こんなもの、土地神の怒りを買って神隠しにでもあったか、宇宙人に連れ去られたかでもない限りこの規模の人間が消えるなんてあり得ない。
(こんなことが起きれば抵抗の跡くらいはあるはずなのに、それすらもない。こんなバカげた話があるか。)

「あの、あなたは?」
 声に気づき後ろを振り返ると、そこには一人の小柄な少年がいた。
 両の目が髪で隠れている、赤髪の少年。しかしてその気は常人のそれではない。
 彼こそはカルデアのサーヴァント、風魔小太郎。
 暗殺者の英霊にして、先ほどまでそうしていたペコ同様無人の拠点の調査をしようとしていた。
「私は、辺古山ペコ。見ての通り今はただの散歩人だ。ここを見かけて、どうしても気になってな。そういうお前は誰だ?」
「僕は……(どうする、この人物から敵意は感じない。だが……。)。」
「どうかしたか?」
「すみません、名前は名乗れませんが、あなたは敵ではなさそうだ。良ければ、ここの話を聞かせてほしいです。」
「……ああ、分かった。分かる範囲で良ければ。」



 リ・ユニオン・スクエア 東京 天王洲アイルに至るモノレール
「脚の心配はもういいみたいだな、十神白夜よ。」
「ああ、もう脚の心配は不要だ。けがは完治したといっていいだろう。」
 足が治り、ご満悦のはずの十神。
 だのに、その顔はかなり重い。
「だがどうした、脚が治った途端に移動だなどと。」
「……おかしいと思わないか?なぜ我々が今の今まで無事なのか。戦闘能力もありよく移動しているルクソードはともかくとして、今までホテル周囲から一歩も出ていない俺が攻撃されていないのは妙だ。」
「言われてみると、確かにトラオムの消滅から現在東京を防衛しているアルケイデスらの帰還まで君個人に対しての攻撃がなかった。」
「今まで俺たちは、ダナンやアビダインなどの艦やGUTSセレクトらの協力者たち、世界観を移動できるお前たち経由で特異点の『基地』に武器や物資の支援を行っている。その管理者たる俺がノーマークなのはあまりにもおかしい。考えてみろ、戦争ならまず敵の補給路をつぶすのが定石のはず。」
「……だが、今までそのような報告も襲撃の気配もない。確かに、怪しいな。」
「ああ、少なくともちょっかいをかけに来る教団の『部隊』はアルケイデスらが対応している。大規模な侵攻はない以上、俺も杞憂で済めばいいと思った。」
「だが少しでも可能性はつぶしておきたいと?」
 十神は続ける。
 ここまでの動きは、平穏はかなり怖い。
 不穏すら感じている以上、その因子は断っておきたい。

「松田さんたちに頼んでホテルの宿泊客を洗ってもらった。そうすると、ある宿泊客の荷物から暗殺用の銃と毒物、そして教団のバッジが発見された。あれは……。」
「状況証拠から察するに教団の暗殺部隊か。護衛に回していた英霊や我々に気配を察知されないような工夫を施していたか。」
「ああ、このままだったら俺は間違いなく暗殺されていた。幸いその宿泊客は逮捕されたが……それも長くは持たないと考えるべきだ。」
「教団の影響による上層部の腐敗。釈放されるのも短くはないと?」
「それだけじゃない、大規模な教団の暗殺部隊が一人二人だけとはとても思えん。そんな連中がヤケを起こして毒物をホテルの食事に混ぜこまれてみろ、それこそ惨劇だ。」
「なるほどな。」

「無辜の被害者を増やすわけにはいかない。だからこれからは数日おきにホテルを移動しながら『箱舟』を待つ。」
「箱舟?」
「十神財閥が買っておいた船。1週間立てば到着する。少なくとも今の状態よりは明らかに安全という自負はあるさ。」

 そのやり方は、何の偶然か。過去『世界最高の名探偵』がやった動きに類似していた。

24人目

「無明の闇を往くための意志、その在り処」

 ――メメントス入口。

 一同が入口に到着すると、その場所は以前よりも
不気味な雰囲気に包まれていた。暗く渦巻く闇が、まるで生き物のように
入口を覆っている。一般人が近づかないよう、周囲は厳重に仕切られていた。

「前よりも不気味になってないか?」

 竜司が肩をすくめ、顔をしかめる。

「なんか嫌な予感がするぜ」
「気を引き締めろ、スカル。ここは今までのメメントスとはまるで別物だ。
ワガハイですら何が起こるやら検討もつかない」

 モルガナが冷静に注意を促す。

「ネコの言う通りだ。気を抜くな」

 士が腕を組んで入り口を見つめる。

「このメメントスはお前たちの知っている世界じゃない。
俺たちを待っているのは、ただのシャドウだけじゃないかもしれないぞ」

 それは第一次メメントス調査隊からの報告からしても自明の理だ。
寧ろさらなる混沌が待ち受けている可能性さえあるだろう。
これまで幾つもの世界を巡ってきた士にとっては、それは当然とも言える。
世界が変われば、その理も変わる。善が悪に、白が黒に、光が闇に。常識が非常識に。
そんな旅を気の遠くなるほど繰り返してきたのだ。

 今回が特異点及びメメントス調査初参戦となるペルフェクタリアと日向月美も、
メメントスの異様な空気に気を引き締める。二人の瞳が入口の暗闇を見据え、
戦いに備えていた。

「何が来ようと、退けるだけだ」

 ペルフェクタリアは冷静な口調で言い、拳に纏わせた魔力装填を確かめる。

「ここには、まだ解き明かされていない秘密があるかもしれない」

 月美が右手の御札を握りしめ、戦闘準備を整える。

「退魔師として、この闇を見過ごすわけにはいかないわ」

 すると、突然地下へと続くメメントスの入口から漂う冷気が一同に吹き付ける。
まるで内部から自分たちを誘い込んでいるかのようだった。

「行くぞ」

 モルガナが前に進み、皆がそれに続く。一歩踏み入れると、メメントス内部は
前回とは大きく変わっていた。闇の奥から聞こえてくる不気味な声や、
幻のような影が行き交う異空間。霧が足元を覆い、視界は悪く、空間全体が
歪んでいるかのように感じられた。煉獄が沖田オルタの姿で周囲を見渡し、
低く響く声で口を開いた。

「ふむ……このメメントス、思ったよりも手強い場所みたいだな。
まあ、それなりの腕は見せてやるよ」

 イリヤがその言葉に反応して、心配そうに煉獄を見上げた。

「えっと……沖田オルタさん、じゃなくて煉獄さん、ですよね? 
大丈夫なんですか? 沖田オルタさん、寝てるみたいですけど……」

 煉獄は短く鼻で笑い、

「ああ、主はぐっすりだ。しばらくは俺が体を預かることになったってわけさ。
心配するな、俺の腕があれば十分よ」

 太公望はそんな煉獄のやりとりを聞きながら、笑みを浮かべて口を挟んだ。

「はは、意志を持つ武器とは珍しい。いや、これはもはや武器という枠を超えているのかもしれませんね。まさに存在そのものが戦力です。いいですねぇ。
頼りにしていますよ、煉獄さん」

 太公望は涼やかな表情を保ちながら、煉獄の存在を興味深そうに観察している。
煉獄は太公望をじろりと見て、

「おい、あまりジロジロ見るんじゃねえよ。俺は戦うためにいる、見せ物じゃないんだ」

 と軽く苛立ちを見せるその目には好戦的な光が宿っていた。

「おっとっと。味方同士でいざこざはご勘弁を」

 おどけるように両手を前に出す太公望。エリセがそのやりとりを見て、
静かに近づきつつ首を傾げた。

「……意志を持つ武器か。物質に意思が宿る……まるでボイジャーみたい」

 彼女のサーヴァント、ボイジャーは20世紀中期に打ち上げられた
無人衛星探査機を祖とする少年だ。経緯こそ異なるだろうが、その在り方には
似通った所があるのかも知れない。

「どんな力を持っているのか、興味はあるけれど……」

 彼女の目は煉獄の姿をじっと見つめる彼女の首飾りの勾玉がわずかに揺れ、
月美と同様に何か霊的な反応を感じ取っているようだった。

「何だよ、エリセもか。そんなに見つめられると照れるぜ……
俺は力のある奴と戦うのが好きだ。お前にもその力を見せてもらうことになるかもな」

 煉獄は冗談めかして言いながらも、その言葉には真剣さが滲んでいる。
エリセは少し微笑んで、

「私も戦うためにここに来たの。お互い、力を出し合いましょう」と静かに応じた。

 イリヤはそのやり取りを聞いて、小さく頷きつつも、
まだ少し不安げな表情を浮かべていた。

「うん、みんな頼もしいけど……大丈夫かな……。私もがんばらなきゃ」

 太公望はそんなイリヤの様子に気づき、優しい口調で励ます。

「大丈夫ですよ、イリヤさん。あなたが持っている力は
間違いなくここでも役に立ちます。私がお守りしますから、安心してください」

 イリヤはその言葉に少しだけホッとした表情を見せ、

「ありがとうございます、太公望さん……私も、皆のために力を尽くしますね」と
力強く答えた。

 カレイドステッキ・ルビーは、イリヤの頭上をひとりでに飛び回り、
ピカピカと光を放ちながらしゃべり始めた。

『イリヤさん、なんかすっごい緊張してるみたいだけど〜?』

 ルビーが茶目っ気たっぷりに声をかける。イリヤは少し不安そうにルビーを見上げ、

「うん、やっぱり緊張するよ……だって、メメントスってすごく不気味なところだし、
みんな強そうな人ばっかりだから……私、ちゃんと戦えるかな……」

 と、小さな声で呟いた。ルビーはそれを聞いて、くるくると宙を回りながら
元気よく言う。

『何言ってんですか! イリヤさんは今までだってすっごい大変な戦いを
乗り越えてきたでしょ〜? 大丈夫! ルビーちゃんが
ついてるんだから、どんな敵が来たってへっちゃらですよぉ!』

「でも……」
『イリヤさんってば、いつもそうやって自分を過小評価するんだから〜。
私が知ってるイリヤさんは、困難にぶつかっても絶対に諦めないし、
何より優しい心でみんなを守るんだから。それって、すごく大切なことですよ?』

 イリヤはその言葉に少し驚いたような表情を浮かべる。

「優しい心……? それが大切?」
『そうそう! 戦いで強いっていうのは、力だけじゃないんですよ〜。
イリヤちゃんがみんなを想って戦うその気持ちが、どんな敵よりも強い武器に
なるんですってば! だから、自信持ってくださいな〜!』

 イリヤはルビーの励ましに少し微笑み、

「ありがとう、ルビー……うん、私も自分を信じて、みんなのためにがんばる!」と
力強く言った。

 ルビーは嬉しそうにくるくると宙を舞い、

『そうこなくっちゃ! 愉快型魔術礼装カレイドステッキは伊達じゃないんですからね〜!イリヤさんと私が力を合わせれば、どんな敵だってバッチリ倒せますって!』

 と、得意げに反り返る。

「うん! 一緒にがんばろう、ルビー!」

 イリヤも元気よく応じ、緊張が少し和らいだ様子で微笑んだ。

「よし、みんな、ワガハイとスカルの近くに集まってくれ」
『イセカイナビ、起動します』

25人目

「最終戦争(ラグナロク)と二つの伝説」

「調査部隊、ただいま戻りました」

特異点の調査を行っていた騎士ガンダムとアルガス騎士団、アレクとローラ姫がリビルド・ベースに戻ってきた。

「騎士ガンダムさんにアルガス騎士団の皆さん!」

「それにアレクさんにローラ姫も!お久しぶりです!」

「おぉ!甲児殿達ではないか!」

「お元気そうで何よりです!」

「ん?甲児殿、そちらのお方はいったい…?」

「そういえばあんた達とは初めてだったな。俺は剣鉄也、グレートマジンガーのパイロットで甲児の叔父だ」

「なんと!甲児殿のご親戚の方でしたか!」

「そうかしこまらなくていい、同じCROSSHEROESの一員として、これからよろしく頼む」

「はい!こちらこそ!」

「……ところで、甲児達はどうしてこの特異点に来たんだ?」

「あぁ、実は……」

甲児達は特異点に来た理由を伝えた。






「……なるほど、ラグナロク……甲児殿もその言葉を聞いたんですね」

「もって……まさか騎士ガンダムさんも!?」

「はい……前にサタンガンダム……いやネオブラックドラゴンと戦ってたときに……」



『クク…ハハハハハハ!いいぞ!それでこそ我が宿敵にふさわしい…!わざわざジークジオンの命令に従った甲斐があったわい…!』

『ジークジオンの命令だと!?』

『あぁそうだ!やつは復活したばかりのこの我をムーア界に召喚して命令して来たのだ!なんでも最終戦争(ラグナロク)とやらが始まる前に貴様らガンダム族と勇者アレク、そしてCROSS HEROES共を皆殺しにしてこいとな…!』

『ラグナロク…!?いったいなんなのだそれは!?』

『さぁな、だがもはやそんなことはどうでもいい!我のやることはただ1つ……騎士ガンダム!貴様をこの手で殺すことのみ!』



「なるほど……となるとそのジークジオンはラグナロクのことを既に知っててそれに向けて動いているというわけか……」

「はい、恐らくは……」

「けどよ、なんでそのシードイオン?とかいうやつがラグナロクについて知ってるんだ?俺たちの世界じゃ3000年以上昔の出来事だぞ?」

「ボス、ジークジオンですよ」

「おっといけね」

「……我々が元いた世界であるスダ・ドアカでは大昔に当時のガンダム族……すなわち我々の先祖達がジークジオン率いるジオン族のモンスター達と戦い、最終的にジークジオンを封印することに成功したという伝説があります。
……もしもそれが起こった時期がラグナロクが起こった時期と被ってたとしたら……」

「ジークジオンはラグナロクが起こった当時のことを知ってるかもしれない……ということか……」

「恐らくは……」

(ラグナロク、大昔に起こった全ての世界を巻き込んだ戦いか……それに騎士ガンダム達が元いた世界が元いた世界で大昔に起きたとされるガンダム族とモンスター達との戦い……そういえば私とローラ姫が元いた世界にも勇者ロトとその仲間が大魔王ゾーマを倒し平和を取り戻したという伝説があったな……)

ラグナロクの話とスダ・ドアカワールドの伝説を聞き、自分達の世界の伝説を連想したアレク

(……もしかして……いや流石にそれはないか……?)

そして彼の頭の中にある可能性がよぎったが、それが当たってることを知るのはもう少し後の話である。

「……そういえばここに戻る途中で古い遺跡のようなものを見つけたな」

「古い遺跡?」

「はい、恐らくはこの特異点に取り込まれた世界のものだと思いますが……」

「古い遺跡か……もしかするとラグナロクに関する情報が手に入るかもしれないな……すまないが今からその遺跡まで案内してくれないか?」

「わかりました」

「けどカルデアの皆さんや月美ちゃん達がメメントスに行ったんでしょ?私たちが遺跡に行ったらもしもここが攻めて来られたらまずいんじゃ……」

「なに、宗介やにとりさん、それにゼンカイジャーの皆が残ってくれるから大丈夫さ」

「だといいんだけど……」

こうしてマジンガーチーム、バーサル騎士ガンダムとアルガス騎士団、そしてアレクとローラ姫は特異点で発見した遺跡へと向かうことになったのであった。

26人目

「真実なんて、いつの時代もろくでなし」

 ジャバウォック島 第Ⅴ実験棟に至る橋

 ―――いつもより、時の経過が長く感じる。
 長く、永く。その一歩があまりにも心許なく。
 橋の木々を軋ませるその一歩が、とても弱く、短く感じる。
「……。」
 私以外のシャルル遊撃隊の3人とカルネウスは先んじて、第Ⅴ実験棟へと向かう。
 緊張のあまり、誰もしゃべらない。
 前を歩くカルネウスに此方を裏切る様子はない。
 ただ周りを警戒して、同じ方向に歩いている。
「……怖い?」
「ちょっと、な。」
 私を気遣ってか、デミックスが話しかけてきた。
 彼の気遣いが、どこか頼もしく思えてしまう。
「真実なんてものはな。いつもの時代もクソだって相場は決まってんだよ。知ってるかい?世間を騒がせる陰謀論者は、ありもしねークソみたいなことを真実調に語って金儲けと来てんだよ。かといって歴史の裏側に隠された真相とやらは大体面白みのない話かゴミクズみたいな鬱展開だ。真実っていう事象に関わったところで誰も幸せになんてなりゃしねーんだよ。」
「へぇ。」
 カルネウスも気を利かせてか、或いはこの重苦しい空気を打破しようとしたのか口を開く。その話がどうも考えさせられる話だからそこまで空気は軽くならなかったが。

 後で知った話、どうも彼は傭兵上がりの魔術使い、らしい。
 戦場で多くの人間や彼の識る世界の裏側とやらも、いっぱい知ってきたんだろう。
「だが、立ち向かうのなら話は別だ。」
「……それは。」
「正直になんな。お前もホントは知りたいはず。お前がいったい何者なのかを。どんな使命を帯びて生まれてきたのかを。」



 江ノ島邸。
 邸の名を冠するにはあまりにも無機質な一軒家。
 一軒家にしては少し大きめで、プールが備え付けてあったりと上流階級の家である事実をまざまざと突き付けてくる。
 絵にかいたようなものではない、近代的な豪邸とでもいうべきか。
「ここが私の、生まれた家。」
 憂鬱な気分になる。
 というよりも、変に緊張してきた。
 高校入試の面接でもここまで緊張はしない。
「あとは俺達が行く。リク、カルネウスを見張っていてくれ。」
「分かった。」
 個人としてはカルネウスは信用できる。こちらに対する裏切りの様子はないし。
 だが後々ファルデウスたちも来る以上、まずはリクに見張らせておいた方がいいと判断したんだろう。

「行こう。」
 シャルルの言葉に従い、私は無言で頷く。
 まだ怖い。
 この先に待つ真実を知ってしまえば、どうなってしまうのか。
 というより、私は。
 この先、無事に帰ってこられるのか――――?



 江ノ島邸 玄関前

「両親や周囲の人間、果ては世界に甘やかされて育った人間が、いざ思い通りにならない事態に突き落とされたときどうなるか知ってるか?大泣きするで済めば幸せなほうだ。ゼッテー心を病む。最悪、そいつの人間性は荒れ狂い、自分の思い通りにさせてくれなかった全事象を攻撃し始める。そして自分の人生を破滅させる。」
「……冷静に考えると、そんなものか。」
「結局、人生ってのはバランスだ。甘やかすのも厳しすぎるのも人には毒だ。最も、何事も0か100かで決めがちなのは、人の悪癖だがね。」
「あんたの哲学はよくわかった。でもなんで、このタイミングで教団を裏切った?」
 一通り、彼流の人生哲学を語ったカルネウスは、リクの質問に淡々と答えた。
「ンなもん、3つの理由で片付く。一つ、俺は教団のクソ上司に冷遇されてた。二つ、もう教団にいても旨味がないと判断した。そして、あんたらについていったほうがおもしれ―と思った。これで満足か?」
 あまりにも俗物っぽい、ありきたりな理由。
 逆に安心する。
「……裏切る理由が、俗っぽい理由で助かったよ。」
「笑ってくれてありがとよ。」

「さて、と。お客さんだ。」
「ファルデウスたちか……って、違う。いや、あいつは……!」
 橋の奥から、黒い影が迫る。
 否、陰にしては実態がありすぎる。
 黒いコート、その手には、見覚えのある一冊の魔術書。
「……あの野郎もうかぎつけたか。」

「これはこれは。幻想郷ぶりですねぇリク。そして、裏切り者のカルネウス。」
 厭味ったらしい口調とセリフ回し。
 影を感じさせる陰湿な在り様。
 間違いない、奴だ。
「ゼクシオン……!!」

27人目

「二者穿一」

 地上ではラグナロクに関する伝承を求めて、勇者アレクやバーサル騎士ガンダムが
特異点に出現した古い遺跡の調査に向かい、ジャバウォック島では
CROSS HEROESと行動を共にするメサイア教団の大司教・カルネウスの前に
ゼクシオンが出現していた。

 一方その頃、第2次メメントス調査隊は……

『メメントスに 到着しました 地下10Fです』

 イセカイナビが起動し、空間が歪む。その現象が収束すると
一同の前には地下鉄のホームに似た空間が広がり、ぽつんと「待合所」が設けられていた。

「いきなり飛んだな。ショートカット、ってワケか」
「クィーンから前回潜ったログを共有してもらっといた。
これで少しは対策が立てられるはずだ」

「敵の気配が無いな……」

 門矢士が静かに呟く。その瞳は深い闇を覗き込むように鋭く光り、過去に幾多の世界を
渡り歩いてきた彼の経験が、この場でも重くのしかかる。

「待合所はセーフルームみたいなもんだ。このフロアにいる限りは敵の襲撃は無い。
メメントスを調査するには欠かせない場所さ」

 待合所内、メンバーが集まり、向かい合わせになって座っている。
椅子の数は10人近い調査隊のメンバー全員が座っても十分に余裕があった。
静かな空間に、モルガナが議題を切り出す。

「メメントスは一般市民の潜在意識の集合体だ。特異点は今もあちこちの世界から
人間たちや建物を無作為に取り込み、さらにはシャドウが地上に出現して
人々に襲いかかる事例も増えてる……つまり、メメントスとシャドウに対する
恐怖と言った感情が徐々に『認知』され、日に日に高まる事でさらに活発化、
複雑化を辿っているってわけだ」

 メメントス調査においては手慣れているモルガナとスカル。開かずの扉もまた、
この地下迷宮には付き物のギミックだ。

「人に知られる事で、力を増す……ふむ、神秘性を尊ぶ魔術とは真逆ですなぁ」

 『認知』と『魔術』。対局に位置するふたつの概念に、太公望は顎に指を当てる。
待合室の下のフロアには、前回は進めなかった開かずの扉があるはず。
一行は椅子から立ち上がり、電源も入っていないエスカレーターを階段のように
一段一段踏みしめるように降っていく。

「あれか……!!」

 メメントスは訪れる度にその内部構造を変える。パンサーやクィーン、フォックス、
悟空やピッコロ、バーサル騎士ガンダムやサーヴァントたちが壮絶な死闘を繰り広げた筈の
フロアも、何事もなかったかのように綺麗になっている。
ただ、その中にあって変わらずに鎮座する開かずの扉だけが、調査隊を待ち受けている。

「……」

 ゆっくりと近づいていく。すると、彼らを迎え入れるかの如く自動的に反応し
重く固く巨大なる扉が起動する。

「開いた……!!」
「お待ちかねだった、ってワケか。この先はまるで未知数だ。油断するなよ」

 モルガナが先頭に立ち、扉を潜った途端……

「!?」

 一本道の通路が真っ直ぐに伸びている。それを塞ぐかのように、
まったく同じ姿をしたニンジャ達が調査隊を待ち受けていた。面頬に素顔を覆った
黒尽くめの集団は、暗闇の中で真っ赤な瞳を爛々と輝かせている。それは、明確な殺意だ。

「て、敵だ!!」

 スカルの言葉を遮るように、ニンジャ達は爆弾付き手裏剣を一斉に投げつけてきた。

「変身」【KAMEN RIDE】
「ルビー!」『は~い 皆さんに変身バンクをお見せできないのが小説の辛い所』

 次々と炸裂する爆薬。たちまち調査隊の姿は見えなくなったが……

「……!!」

 マフラーで全身を覆いながら回転する事で、爆炎の火の粉を振り払って現れたのは……
ペルフェクタリアだった。それとまったく同時に飛び出してくるのは、煉獄。

「速いな……」
「やるじゃねえか、嬢ちゃん。先行して敵の動きを撹乱する役を買って出たな」
「背中には日向月美たちがいる。ならば私がやる事はひとつだ」

「……」
「た、助かったぜ、月美!」
「退魔師の家系とお聞きましたが、いやはや、これは将来有望だ」

 仲間たちの守りは月美たちや太公望が守護壁によって果たしてくれる。

(太公望さん……私よりも速く、そして片手だけで強固な障壁を……)

 背後を確かめるまでもなく、前だけを向ける。ペルには確たる信頼があった。
イリヤやディケイドの変身シークエンスによる自己防衛機能もその一環だ。

「はぁ、びっくりした」
「御膳立てはしてやったんだ、見せてもらうぞ、魔殺少女」


「最速一番槍は頂いたッ!!」


 縦横無尽、背丈よりも長尺の刀を鞘から抜いた瞬間さえも知覚させない煉獄の抜刀術で
敵陣中央に綻びを生じさせる。それはもはや四次元をトリミングする空間殺法だ。
ペルは煉獄が築いた空白の陣地で背中合わせになりつつ、ニンジャ軍団を見据えながら
静かに構えを取る。その身体は小柄だが、無駄な動きが一切ない。
彼女は拳法と魔法を組み合わせた独自の戦闘スタイルを持ち、その一挙手一投足には
凛とした美しさと破壊力が共存していた。

 目の前に迫るニンジャたちが一斉に攻撃を仕掛けてくる。
彼女は冷静にその動きを見極め、最初に接近してきた敵の動きを読み、拳を構えた。

「見切った」

 ペルと煉獄は同時に前後に分かれて踏み込む。
その動きはまるで影のように滑らかで、ニンジャの攻撃が届く前に拳を繰り出した。
鋭い打撃がニンジャの胴体に炸裂した瞬間、拳から魔力が放出される。
強烈な衝撃波が敵を薙ぎ払い、背後にいた数体のニンジャまで巻き込んで吹き飛ばした。

「次……」

 素早く次のニンジャにターゲットを移し、回転しながら肘打ちを繰り出す。
肘に込められた魔力が炎のように燃え上がり、接触した瞬間に爆発的な力を放つ。
その衝撃でニンジャは吹き飛び、ペルは流れるように次の動作に移った。

「――!!」

 ニンジャの執拗な打ち込みをすべて指先で受け止める。
体表面を魔力コーティングする事で刃を寸での所で防いでいるのだ。

「疾ッ!!」

 その隙に右足で強烈な回し蹴りを繰り出し、ニンジャを一掃する。

「まだ終わらない」

 次々と攻撃を繰り出すペル。拳を打ち込むたびに、そこから放たれる魔力が
周囲に衝撃を与え、敵を一体また一体と打ち倒していく。
その拳の速さは圧倒的で、魔力によるサポートでさらに威力を増し、ニンジャたちの動きを完全に封じていた。

「させるか」

 背後から忍び寄ったニンジャに気づくとペルは素早く身体を反転させ、
逆手で魔法を発動。穿つ槍が如き冴えた魔力光が敵を貫き、その動きを止める。

「これで……終わりだ」

 彼女は再び拳を構え、ニンジャに強烈なストレートを繰り出す。
拳が接触した瞬間、強大な魔力が爆発し、その衝撃でニンジャは地面に叩きつけられ
完全に動きを止めた。ペルフェクタリアは静かに息を整えながら
戦闘の余韻を振り払うように立ち上がる。その戦い方は、誰にも隙を与えない
圧倒的なものだった。だが、刺客たちの気配は未だ潰えていない……

「ったく、数だけは一人前だことで、まあ……」
「すべて斃すだけだ」

 対する煉獄もペルも、戦意は十分だ。

28人目

「衝撃!明かされるラグナロクの真実《前編》」



「着きました。ここが我々の発見した遺跡です」

マジンガーチーム、バーサル騎士ガンダムとアルガス騎士団、アレクとローラ姫は特異点のとある遺跡にやって来た。

「ここか……」

「確かに古そうね……」

「入口はかなり大きいな……これならマジンガーやビューナス、ボスボロットでも余裕で入れそうだ」

「よし、早速入ってみよう」

一同は遺跡の中へと入っていった。





暗い通路を進みどんどん奥の方まで行くと、巨大な氷の壁を発見する。

「行き止まり…?」

「いや待て、よく見るとなにか空間があるぞ」

氷越しのため上手く見えないが確かに氷の向こう側にも空間があるようだ。

「となるとこの氷をなんとかする必要があるな」

「よし、ここは我が……はぁ!!」

闘士ダブルゼータが獅子の斧を氷に向けて振り下ろす

「っ!?」

がしかし、なんと氷の壁には傷一つ付かなかったのだ。

「馬鹿な!?我々アルガス騎士団の中で一番のパワーを持つ闘士ダブルゼータの攻撃で傷一つ付かないだと!?」

「物理的な攻撃は効かないということか……」

「それなら熱で溶かすまでだ!甲児!」

「あぁ!ブレストファイヤー!!」

「ブレストバーン!!」

甲児が乗るマジンガーZと鉄也が乗るグレートマジンガーによる熱線の同時発射、その名は『ダブルバーニングファイヤー』。
これを食らえばどんなものでもドロドロに溶けてしまう。
当然普通の氷ならあっという間に蒸発するはずだが……

「なにっ!?」

なんとこれを食らってもなお氷の壁は一切溶けなかったのである!

「そんな…ダブルマジンガーの同時攻撃でも溶けないなんて…!?」

「クソ…!いったいどうすればいいんだ!?」

パワーで壊そうとしても駄目、熱で溶かそうとしても駄目……この氷の壁をどうやれば突破できるのか悩み始める一同……

「っ!皆さんこれを見てください!」

そんな中、ローラ姫が1枚の石板を見つけたのだ。

「これは……石板?」

「はい。しかもこの石板、私達が知ってる言語で文章が書かれています」

「なんだって!?」

一同は石板に書かれてた文章を読み始めた。そこにはこう書かれていた。

"3つ以上の世界の力が集いし時、氷の封印が解かれ、最終戦争(ラグナロク)の秘密が暴かれる"

「っ!これは…!」

「まさか本当にラグナロクに関する情報が眠ってる遺跡だったとはな……」

「ですが3つ以上の世界の力が集いし時とはいったい……」

「……そうか!そういうことか!」

「わかったのか騎士アレックス!?」

「はい、これは推測過ぎないのですが……恐らくは元いた世界が異なる者達、それも最低3つ以上の世界の者達の力をこの氷に向けて同時にぶつけるのではないでしょうか」

「なるほど……確かにそれならこの石板に書かれている条件を満たしてるな」

「それに今ここにいるメンバーが元いた世界の数は丁度3つ、ここにいる皆で同時攻撃すれば…!」

「よし、だったら話は早い!」

「あぁ!皆…ゆくぞ!!」

『『『おう(はい)!!!』』』

「ビッグバン!パァーンチ!!」

「サンダーブレーク!!」

「光子力ビーム!!」

「ボスボロットの拳を食らえー!!」

「電磁スピアー!!」

「ハァー!!」

「なんとぉー!!」

「おりゃあー!!」

「ギガソーラ!!」

「てりゃあー!!」

「ベギラマ!」

その場にいたCROSSHEROES全員での同時攻撃が、氷の壁に向けて炸裂!

すると…!!

「っ!氷の壁が…!」

条件を満たすことができたのか、攻撃を受け止めきれずに氷の壁が粉々に砕け散ったのだ!

「やったぞー!」

「あぁ、これで先に進めるな」

「あの石板に書かれてたことが本当なら、この先にラグナロクに関する情報があるはずだが…」

一同は更に奥の方へと進む



そこには…!

「っ!これは…!」

一同が目にしたのは、まるで野球のドーム球場を彷彿とさせるような広い空間と、その壁にぎっしりと描かれた無数の壁画の数々であった。

「す、凄い…!」

一同が大量の壁画に驚いてると、甲児はそのうちの一つに目をつける。

「っ!あれは…ゼウス!?」

そこには光の神ゼウスがハーデスを始めとしたミケーネの神々と戦っている絵が描かれていた。

「見て甲児くん!こっちの壁画にはトリガーが描かれているわ!」

さやかが見つけた壁画にはウルトラマントリガーと闇の三巨人、エタニティコアとユザレの姿が描かれており、トリガーにいたっては闇の巨人だった頃の姿と光の巨人になり闇の三巨人を裏切った時の姿の両方が描かれていた。

「ミケーネに闇の巨人と超古代文明が描かれているということは……恐らくはここにある壁画は全てラグナロクに関係するものということか」

「っ!アレク様これって…!」

「あぁ、間違いない…!我々の世界に伝わる勇者ロトの伝説を描いたもの…!」

「それにその隣にある壁画に描かれてるのは、スダ・ドアカに伝わりしガンダム族の伝説ではないか!」

「アレク殿達の世界の伝説と我々の世界の伝説がここの壁画に描かれているということは……」

「……我々の世界に伝わりし二つの伝説は、ラグナロクの一部だったということか…!」

その後も、彼らは様々な壁画を発見する。
キン肉マン達とは異なる超人達を描いたもの。
幻想郷にいる者たちの先祖と思わしき様々な妖精や妖怪を描いたもの。
古代エジプト文明の王ファラオと大邪神との戦いを描いたもの。
柱の男と呼ばれる存在を描いたもの。
ジョイボーイと呼ばれる男を描いたものなどなど……
ラグナロクの最中に起こったとされる様々な出来事が壁画に描かれており、中にはCROSSHEROES各メンバーが元いた世界で伝説になっているものもあった。

そして……

「お、おい皆!」

「どうしたボス?…ってこれは!?」

ボスが発見したその壁画は他の壁画より大きなものであり、そこには様々な姿の戦士達が悪と戦う様子が描かれていた。
そしてその壁画の下にはこう書かれていた。

"CROSSHEROES" っと…!

29人目

「英雄と英霊/退魔師と邪霊使い」

 特異点に出現した遺跡に刻まれた「ラグナロク」と「CROSS HEROES」を結ぶ
関係性とは果たして、何か?
メメントスでは新たなる扉が開かれた矢先に、突然のニンジャ軍団による襲撃を受け、
調査隊のメンバーたちは次々と数を増やすニンジャたちに囲まれる。

「ンなろォ、いきなり不意打ち仕掛けてきやがってェ!!」

 スカルは月美と太公望の障壁のおかげで無傷で済んだものの、
怒りを露わにし、拳を握りしめた。敵の奇襲に対して激昂しながらも、
反撃への気概に満ち満ちて、未だ燻る硝煙の残り香を振り払って前に躍り出る。

「ふぅ……よかった……間に合って……」

 月美は守護壁が役に立ったことに安堵するが、彼女の心の中には次々と押し寄せる不安が渦巻いていた。次々と現れるニンジャたちの気配に、再び緊張感が高まる。

「ふむ、奇襲とは、まったく油断ならぬ相手ですな。さぁ、次も来ますよ」

 冷静なる太公望は、悠然と周囲を見渡し、敵の次なる動きを察知していた。
彼の余裕に見える言葉とは裏腹に、敵は無尽蔵に現れ、攻撃の手を休めることはない。

「おいおい、こんな数、いくらなんでも多すぎだろ!?」
「これもメメントスが活発化した影響か……?」

 スカルのぼやきと、モルガナの分析が飛び交う中、ニンジャたちは
次々と攻撃を仕掛けてくる。

「数が多いだけの雑魚相手に手こずるな。俺達はまだ入口に立っただけだ」

 パンパンと軽く手を叩きながら、ディケイドが前線に立つ。
彼の隣にはイリヤが静かに戦いの準備を整えていた。

「ここ……どこまでも暗くて、冷たい……でも、私は負けない!
クロや美遊も待ってるし……!!」

 眼前には無数のニンジャが待ち構えているが、自分を奮い立たせるように言い聞かせ、
イリヤはカレイドステッキ・ルビーを気合を込めて握る。這い寄る恐怖を振り払うように。

(イリヤちゃんも、ペルちゃんも、エリセちゃんも、私より年下なんだ……
だったら、私だってしっかりしなくちゃ!)

 肉体年齢的には小学生のイリヤやペル、中学生のエリセ。
そして女子高生の月美。見事なまでに分かれた年代差。一応は年長者に当たる者として、
月美も戦う覚悟を新たにした。 

「お前たちの力を見せてみろ。俺の力と合わせれば、こいつらなんぞ……楽勝だ」

 懐からカードを取り出し、士が仮面の下でニヤリと笑う。

「……うん、やってみる!」

 彼女は自信を取り戻し、カレイドステッキ・ルビーを高々と掲げた。
士がライドブックを開く音に合わせ、イリヤも呪文を唱え始める。

「夢幻召喚(インストール)、セイバー!」

 眩い光と共に白百合の如きドレスを纏い、力強い眼差しで前を見据える少女騎士の姿。
イリヤは地面に突き立てた剣の柄に両手を添え、士に笑みを返す。
7騎の英霊の力を封じ込めたクラスカード、その中の1騎「セイバー」の力を宿したのだ。

「上出来だ。さて……俺も負けてられないな」

 ライダーカードをネオディケイドライバーに装填。

【KAMEN RIDE, GHOST!】

 ディケイドの体はまばゆい光に包まれ、仮面ライダーゴーストへとカメンライドした。


【カイガン! ムサシ! 決闘! ズバット! 超剣豪!!】


 歴史上の剣豪、宮本武蔵の魂を宿した二刀流のフォーム。
ディケイドとイリヤ。英雄と英霊。剣豪と騎士王。奇しくもその戦い方は
類似するものがあった。

「さぁ、行くぞ。俺たちで片付けてやる」
「うん、負けない!」

 二人の息が合ったその瞬間、ニンジャたちが一斉に襲いかかってくる。
イリヤは光の剣で敵を迎撃し、ディケイドは二刀流で次々に敵を切り裂いていく。

「はああああああッ!!」
「おおおおおおおッ!!」

 イリヤの剣技が光となり、無数のニンジャを一閃。光の刃が闇を切り裂き、
敵の群れを後退させる。


【FINAL ATTACK RIDE GO GO GO GHOST!!】【OMEGA DRIVE!!】


「でぇぇええええええええええええああああああああああああああッ!!」

 ディケイドはムサシの力を使い、二刀流を振り抜いて
巨大な✕の字を描いて強力なエネルギーを放出する「二天双刃クロス斬り」で
イリヤが空中に舞い上げたニンジャたちを一気に殲滅した。

「フライシュッツッ!!」

 エリセが飛び上がり、ニンジャたちの群れに向けて黒き魔弾の雨を繰り出す。

「蒼き激流よ、清濁溶け合いすべてを呑み込め――『水瓶の怒涛』ッ!!」

 月美の霊符が大量の水流を放ち、ニンジャたちをまとめて押し流していく。
エリセと月美はメメントスでシャドウの群れに対峙しながら、
互いの力の本質に気づき始める。

「エリセちゃん、その力は……」
「そう、邪霊の力……退魔師のあなたにとっては、寧ろ討つべき相手なのかもね」
「そ、そんなこと……」

 生まれつき、悪霊に取り憑かれる体質のために、エリセは邪霊の力を操る事が出来た。
一方で月美は日向家の退魔師として代々から受け継いだ力を操る。
邪霊の力と、その邪霊を討つための力……その対比が彼女たちの心境に影響を与える。

「……? 星羅が……」

 戦闘中、エリセは月美の神刀・星羅に神の力を感じ取り、
同時に月美もエリセの天逆鉾が宿す神聖な力を認識する。
互いに異なる神の力を扱う二人の武器が、不思議な共鳴現象を起こしている……

「あなたの刀……ただの剣じゃないのね……」
「エリセちゃんの槍も……神の力を感じる……」

「おい、ぼーっとすんな!!」
「!?」

 モルガナの声で我に返る月美とエリセに襲いかかるニンジャ軍団。

「しまった……!?」
「させるかよォ!! ペルソナァァァァァッ!!」

 スカルのペルソナ、キャプテン・キッドが激しい雷魔法「ジオダイン」を巻き起こし、
ニンジャ軍団を焼き払い、エリセたちの窮地を救う。

「へっ、これでさっきの借りは返せたよな?」
「あ、ありがとう……!」

 ニンジャ軍団の爆弾付き手裏剣の奇襲を、障壁で防いでくれた月美への礼なのだろう。
スカル――坂本竜司と言う男は、義理に厚い男であった。

「別に……助けてとは言ってない……」

 だが、一方のエリセは背を向け、残るニンジャ軍団に向かって行った。

「いっそ、さっきの攻撃で……私も……」

 一心不乱にニンジャ軍団を薙ぎ払うエリセの呟きは、誰の耳にも届かなかった。

「お、おい! 何だよ、あいつ! 協調性ってもんがねえのかよ!」
(エリセちゃん……)

 エリセの態度に憤慨するスカル。だが、月美は孤独に戦おうとするエリセのその背中に
漂う物悲しさを感じ取っていた。


『僕は、同族殺しさ』


「……!!」

 月美の脳裏に、アビィ・ダイブの言葉がリフレインする。討つべきは、誰なのか。
この力を振るうのは、何のためか……
エリセの力のルーツが、世に災いをもたらす邪霊にあるとすれば……

「戦力としては申し分ない……ですが、些か綻びがあるようですねぇ。
底に穴が空いたままでは、船はやがて沈む……」

 太公望は、月美たちの些細な蟠りを見過ごさなかった。

30人目

「Epilogue:虚数の姫は華やかに笑う/アヴェンジャー×セイバー×アサシン」

「う~ん、おいしぃ~!!」
 杜王町のある丘で、唐突な3人のピクニックが始まった。
 主催の虚数姫カグヤは、山ほどあるパンを大量に食べている。
 だが、当の仗助と康一はとてもじゃないが……緊張と驚愕のあまり食える状況ではない。

「2人とも食べてる?ほら~食べないとおっきくなれないぞ~?ぐいぐい~。」
「あ、ああ……。」
(うぅ、このぐいぐい行く感じ、どうも調子折れるぜ……。)
 自分たちとは明らかに性格のベクトルが違う上に、そのベクトルの強さが常軌を逸脱している強さ。
 要するに、とんでもなく明るすぎる。
 自分たちの識る人物に、ここまで明るすぎる人間はそうそういない。

 何とか口を開いた仗助は、カグヤに質問を始める。
「な、なぁ、その……君、名前なんだ?教えてくれるか?」
「あたし?あたしはカグヤ!いい人たちの味方だよ!よろしくね~!」
 カグヤ。
 少なくとも現実に生きる者なら、童話の竹取物語でしかその名前を聞かない。
 或いは幻想郷に住むものなら違っていたかもしれないが、現時点で幻想郷の存在を知らない仗助たちだ知る由もない。

「なぁカグヤ、さん?これって……?」
「さぁ?見ていなかっただけじゃない?」
 すっとぼけるカグヤ。
 だが康一はさっきの瞬間移動の一部始終を見ていたようで。
「僕は見ていたけど、その……地面から、にょきって出てくるのってどう考えても……?」
「ぷ~。見られてたんだ~。分かったよ、教えてあげる。」

「あたし、虚数空間を操れるの。みんなに分かりやすく言うなら、」
(やっべぇ!この子もスタンド能力者かよ!?)
(虚数空間って……その能力を考えると億泰くんみたいな能力、ではなさそうだけども……。)
 康一の想像している友人、虹村億泰も似たような空間干渉系のスタンド能力を保有している。
 が、彼女の能力は「空間を削って、その間をくっつける」能力ではない。
 もっと言うなら、「世界というキャンバス、テクスチャに虚数空間という染みを作って、それに触れたものを例外なく引きずり込む」というもの。
 世界中に小型のブラックホールを作りまくっているようなものだ。

「そんなに驚かないでよ~ちょっと空間に干渉しているだけだよ?」
「いやいやいやいやいや!おっかねぇ能力だよ!!」
「僕にも似たような能力を持った友達がいるんだけど……空間に干渉するとかって、怖いよ!?」
「そっかぁ……ぇへへ、いい友達になれそ。」
 ふわふわした笑みを浮かべながら、そんなことを言い始める。
 この場に億泰本人がいたら、どんな反応をしていただろうか。閑話休題。

「……で、絶対あたしとは違うと思うけども、君たちも異能力を持っているの?教えてよ!」
「教えるって……。」
「あたしも名前と能力を教えたから、いいでしょ?それとも、ぎゅ~で手を打ってもいいよ!」
「ぎ、ぎゅ~って、まさか……。」
「抱きしめるの!(ノーテンキ丸出しの笑み)」
 仗助は冷や汗をかきまくっている。それもそうだ。
 カグヤは仗助たちと同じ高校生(そもカグヤは人間ではないが)にしてはあまりにも妖艶。
 胸もとても大きく、瑞々しい体つきをしている。人通りが少ないとはいえ、そんな少女に抱きしめてあげると言われればさすがに気が引ける。下手したら事案ものだ。

「いや抱きしめなくていい!分かったッ!お、俺は東方仗助!能力は物を直す能力!んで、隣にいるのは俺の友達で広瀬康一!」
「は、はい!の、能力は擬音を操る能力なり色々……はは……!」
(悪い奴ではないんあろうけどもよォ~、やっぱ調子狂うぜ……。)
(悪人じゃなさそうだけども……なんだろ、ぐいぐい行かれると……ちょっと困るというか。)
「仗助くんに、康一くんだね!ほらほら冷や汗かかない!よろしく、握手しよ!」
 ものすごく純粋な笑顔を浮かべ、手を差し出すカグヤ。
 まるでこの世のすべての善性をかき集めれば、どんな悪党にも勝てると本気で思っているような笑顔だった。



 リビルド・ベースの一室

「抑止の守護者、だと?」
「あたしを英雄と一緒にすんなよ。抑止力の使いっ走り、やっていることは戦争後のゴミ掃除みてぇなもんだ。なった経緯も笑い話にもなりゃしねぇ、このタバコと同じくクソ不味い話だよ。」
「だが……本来の世界のお前は、えっと。」
「ああそいつぁ。あたしが……並行世界の人間ってやつだからか?」

「……へぇ、で、辺古山ペコさんよ。教えてくれや。そっちのコロシアイってやつにはあたしはいなかったのか?」
「……。」
 ペコは黙して語らない。
「恐らくは『いたけど希望ヶ峰学園爆破事件に巻き込まれ絶命』ってオチか。」
 呵々、と乾いた笑いを浮かべる復讐者の抑止英霊・罪木オルタ。
 だが、その顔はどこかさみしそうに見えた。



「どうでした?彼女は。」
 ペコに罪木オルタの様子をうかがう風魔小太郎。
 対する彼女の回答は浮かない。

 出会うはずだった運命に出会うこともなく、ただ迫害を受け続け。
 自ら命を終わらせ、怨敵への復讐こそ為したが。
 魂は地獄に落ちることなく、ただ迫害の果てという地獄を見続けた。
 個人単位ではなく、集団単位になった程度で、人一人が私刑を為したところで、人の本質は変わらないという事実に気づいた。

 当然、そこから導き出される結論は―――。

「率直に言うなら。抑止の守護者たる罪木蜜柑・オルタという存在は、心を負傷しているとしか思えない。しかもその傷も治っていないと来た。きっと……その、抑止の守護者とやらと化したその過程で、想像以上の地獄を見てきたのだろう。或いは……その”仕事”をしているうちに摩耗してしまったとしか。」
「……。」
「本質はきっと変わらず"優しい人"なのだろう。だが……私はあのやさしさに付け込まれるということが一番怖い。」

「いつの日か、彼女が致命的なまでに暴走しなければいいのだが……敵味方の区別がつかなくなるほどに。」