ぬいぐるみがしゃべった

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1人目

 私の妹、小4のあやのセンスは壊滅的だ。彼女の蛍光ピンクの壁紙の部屋には、明らかにつまらないラノベや、なぞの骨董品らしき牛っぽい置物や、よくわからない異国の動物の剥製が転がっている。ドアプレートにはなんかの目が8個くらいついてる。一度お前の感性はだいぶやばいから母さんに児童精神科に連れてってもらえと言ったら、これのよさがわからないおねえちゃんのあたまのほうがいかれてるから、病院に行くべきはお前だといわれた。どうやら妹にとって、あのインテリアたちは、我々正常な脳みその持ち主にとってのスタバやインスタやコメダの店内くらいおしゃれなものらしい。
 そんな妹の部屋に、一つだけまともなデザインをしたものがある。それは、みるくちゃんのぬいぐるみだ。去年の総選挙で5位くらいだった、かわいらしい、白い猫っぽいキャラクター。基本オーバーオールを着ていて、ピアノが上手なお友達がいる。体重はりんごだいたい3個ぶん。今までことごとく一般的な見た目のものをクソダサいからと言って絶対に部屋に入れなかったのに、これだけはあやが4年生に上がったくらいからずっと置いてある。それも、お気に入りのもの専用場所、ベッドサイドにだ。その前までそこに置いてあったくそでかい木彫りのカタツムリは飾り棚の二段目に降格していた。
 

 あや視点

 ■■■■が喋りだしたのは、いつのことだっけ―

 歩道橋の際に、ミルクちゃんのぬいぐるみが落ちていたので、道路に落として引かれるとこを観察する遊びをしようと思ったけど、何らかの法にひっかかありそうだと思ったからやめた。一応交番に届けることにして、謝礼でほくほくに作戦を変えたけど、おまわりさんに、紛失届でてないし事務処理がめんどくさいから、それお嬢ちゃんが持ってきなと言われ指示通りおとなしく帰った。この時はまだ、私もお姉ちゃんも、このぬいぐるみの皮かぶったゴミクソ異界知的生物に、人類もとい私のお気に入りセレクトショップ、でんきの缶詰とお姉ちゃん激推しコンテンツ(名前忘れた)の存続の是非という重責が押し付けられるとは思ってもみなかった。なんでこんな面倒なことに巻き込まれちゃったんだろう。私はまだ四年生でお姉ちゃんは哀れな自称進の1年生なのに… でも、ちょっと楽しいことも結構経験できた。