ニンジャ活劇!走れサーペンタインアイズ!
サマタヤナ生命保険株式会社。本社ヘッドクォータービルヂング。最上階のエグゼクティブルームの最高級チェアに深々とみをゆだね、男はくくくと笑った。苦節35年。サマタヤナに身を捧げ、あらゆるライバルを蹴落とし、やっとこの椅子を得ることができたのだ。汚い手を数え切れぬほど使ったし、使われた。彼の家族は一人娘を残し、ライバルの手で廃人とされていた(無論、そのライバルはそれをとても後悔することになったが)。だが、ここから彼の帝国は始まるのだ。
時代錯誤的にブリリアントな樫材の重厚な扉が音もなく開き、彼の秘書が入ってきた。「社長、マズいことになりました。」上機嫌だった社長の眉がピクリと動く。
「ニンジャです。ニンジャが攻めてきました。猛烈な勢いで各階を制圧しています。」
「馬鹿な!ニンジャだと!誰の差し金だ!?われわれの傭兵はどうなっている!?」
秘書は額をハンケチで拭きながら、携帯コンソールを素早く操作する。
「30階までの傭兵たちは全滅です。なんて強さだ。残るは」
そういった瞬間、天井から一人の男が舞い降りた。
「残るは、社長のあんたの個人的ボディーガードである俺だけというわけだ。」
クサリヘビめいた鱗模様がプリントされた、タクティカル迷彩作務衣を着た男が降り立った。彼もまたニンジャである。メドゥーサを直視した勇士を冒涜的な芸術作品としたかのような、苦悶の表情を浮かべる石仮面の奥からは、爬虫類めいて細い瞳孔が残忍な光を放っている。
キャバァーン!キャバァーン!ヌマタ社長はそのニンジャ、サーペンタインアイズに多額の追加ボーナスを入金した。
「危険手当だ。金額に見合う働きを期待しているぞ、サーペンタインアイズ=サン!」
「気前のいいことだ。アンタのそういう所は好きだぜ。迎撃に出ようか?」
「いや、お前が私の近くに居なければ、誰が私を守れるというのだ!私の近くに居ろ!」
瞬間、秘書が緊迫した様子で叫ぶ!
「アイエエエ!ニンジャ!窓に!」
瞬間サーペンタインアイズはスリケンを投擲!窓を蹴破りエグゼクティブルームへエントリーせんとするニンジャを迎撃する!
「イヤーッ!」
CLAAAAAAAAAAAAAAASSSHHHHHHHH!!!!!!!
敵対ニンジャは窓を蹴破る勢いのまま体を回転させてスリケンを弾き飛ばし、そのままエグゼクティブルームへ着地を決めた。
「ドーモ。スルホニックアシッドです。」
先手を打ち、体のあちこちから薄黄色の結晶が飛び出た奇怪なニンジャがアイサツした。手練れである。
「ドーモ。スルホニックアシッド=サン。サーペンタインアイズです。」
アイサツはニンジャにとって神聖不可侵の行為。アイサツをされれば返さなければならない。
「社長、私の後ろに下がれ。」
爬虫類めいた邪眼を油断なく光らせながら、サーペンタインアイズは社長とスルホニックアシッドの間に位置取る。
スルホニックアシッドはバク転を3回して距離を取り、奇怪な結晶クナイ・ダートを投擲する!サーペンタインアイズは油断せず、ヘビ・ウィップを振るって遠隔迎撃する!
SPLASH! ヘビ・ウィップに破壊された結晶クナイは爆散し、辺りに刺激臭のする液体が飛散する!
「アイエエエエエエ!」
液体に侵された秘書が悲鳴を上げながら、熱湯に落とされた哀れなモルモットめいて跳ね回る!
「なるほど、ドク・ジツが貴様の武器か。スルホニックアシッド=サン。」
「ふふふ……我が結晶クナイは生物だろうが非生物だろうが相手を選ばず焼き、萎れさせる。貴様の武器も無事ではないようだな?」
スルホニックアシッドの言うように、サーペンタインアイズのヘビ・ウィップはブスブスと音を立てながら、クナイを弾き飛ばした場所から腐り折れてしまった。