森の停留所にて

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1人目

ある話、昔から入ってはいけないという森に「森の停留所」という建物があるという噂がある、そこでは訳アリの子たちを匿い、治療するそうだ。
今日も森の停留所で待っている人がいる。

今日は珍しくお客さんが入ってきた。
カランコロンと心地の良い音が部屋中に響き渡る。
「はじめまして、ようこそ森の停留所へ」
お客さんは10代っぽい女の子、服はきれいだが殴られたであろう跡や走ってきたときについてるような傷があった。
「はじめまして、えっと」
「リラックスして、大丈夫。とりあえずここに座って。」
カウンターの診察席まで案内する。まずなんで来たのか、彼女の状況把握そして改善方法を模索しよう。

2人目

診察席に案内され、小さなテーブル席に座った彼女は珍しそうに周りを見渡した。
(綺麗、、、、)
カウンターの診察席は古い本屋さんのような、とても落ち着く場所だった。
「紅茶は飲めるかい?」
優しい声色をした白衣を着た男は、ティーセットをテーブルの上に置き、彼女の向かい側の席に座った。
「はい、、母がよく飲んでいたので、、、確か、アールグレイ、、みたいな名前でした、、」
少し苦い顔をしながら温かい紅茶が入ったティーカップを見つめた。
「そうか、、、君も一緒に飲んでいたのかい?」
白衣の男がそう質問すると彼女は精一杯の笑顔で
「いえ、母は私のことを見ないようにしているので一緒に飲んだことはありません、、一度も、、」

佐々木 千春 
16歳 学生
父、母、二つ上の姉の4人家族

紅茶を飲みながら少し身の上の話を聞かせてもらった。
彼女はとても穏やかで言葉の節々に人を思いやれる優しさを感じられた。しかし、
「私、今自分が納得できる死に方、死に場所を探しているんです。」
彼女の周りの環境はとても穏やかではなく、辛く、暴力的だった。

3人目

そもそもの始まりは彼女が小学校を上がる前からだったという。
医者をしている父親と実家が医者一家の母親の元に生まれた彼女の家庭はとても厳しく、特に母親はいい意味では教育熱心。悪い意味では勉強を強制するような人なのだそうだ。

「母は私が医者になるのを望んでいたみたいで…」

そう呟いた彼女の目線はティーカップの中に注がれており、その目には深い悲しみがありありと見えた。

「でも私、不出来なんです。何をやっても上手くいかなくて……だから、母は私に失望してるんだと思います」
「なるほど。お姉さんはどうなんだい?仲良くはないのかな?」

白衣の男の問いはごく自然な疑問だったのだが、しかし彼女はその問いかけにぴくりと肩を揺らすとそっと目を逸らす。
どうやら母親とのわだかまりだけが理由では無いようだ。
男はふむ、と小さく頷くと脳内で1つの仮説を立てた。
こういった家庭の場合、大体は優秀が故に望まれているものへのプレッシャーに押しつぶされたり、もしくは自分の能力の至らなさに悩んだりするパターンが多く見受けられる。
彼女の場合は後者なのだろう。

「お姉ちゃんは…悪い人ではないんです。寧ろ優秀でいい人で…」

そうか細い声で答える割には、どうにもそわそわと落ち着いていない。
カチャリと音を立てティーカップを置いた彼女が、左の手の甲をしきりにすりすりと右手で触れているのを見て男は、あぁやはりと心の中で息を吐いた。
きっと彼女は母親だけではなく、姉からもひどい仕打ちを受けているのだ。