廃村の秘密
とある廃村にテロリストのアジトがあると一報が入ったため調査のために軍人数名が派遣された。
だがテロリストのアジトは見つからなかったとの報告があったのだが、派遣した軍人のうち二人がまだ帰還していなかった。その時に同行したメンバーに聞いても「いつの間にかいなくなってて探したけど見つからなかった。」と言っていた。
部隊の隊長は何かに巻き込まれたに違いないと新たに5人ほどその廃村に調査するように命令した。
「ここがその廃村だな。」
俺は隊長から命令されてとある廃村の調査に来ていた。テロリストのアジトがあると噂されていて一度違うチームが調査に来ていた。だがその部隊はテロリストのアジトを見つけることが出来なかっただけではなく、二人も行方不明者を出す結果に終わった。
隊長は何かに巻き込まれたと思ったのか再調査を俺たちのチームに命令したのだ。
「とりあえず一軒一軒見て回る?」
コイツは一応俺の相棒であるクリートだ。今回二人一組での調査を命令されたため連れてきた。
しかし底を踏み抜く歩き方が、どうも癪に障る。
「その歩き方は何だ?マーチングバンドかよ」
「君は警戒心が足りないんだ、もっと慎重に」
育ちの違いというか、生来の気品なのか。クリートの言動には華があった、俺と同じ軍属だろうに。
この廃村には死の気配がある。ビジュアルではなく、焦げ付いた底のある生活感が、俺たちの心拍を刺激し続けた。
「一つ、確認いいかい」
溜め息一つの後、クリートが尋ねてきた。
「ここでの、僕らの役目は」
「仲間の救出と、敵の排除」
上昇した脈拍のせいか、食い気味に答えた俺。
「そうだね、じゃあ敵の定義は」
支給品のライフルは、20年前の型式だ。軍縮による資金難らしいが、命を預ける銃なんだぞ。
「俺ら囲んでる奴等だろ!」
さぁロックンロールだ。ポンコツ銃のレバーを引いて、俺たちは戦闘体勢入った。
崇拝するロックバンド、そのベーシストが演奏の秘訣を語っていた。
"頭の中の音楽を信じろ"
ラジオで流れた言葉は、10歳のガキを感動させ、人生の選択肢を枝分けた。
「くたばれ!ファッキンビチクソ野郎!」
クリートが呆れた様子で、首を傾げていた。
「我々は軍人だ!武器を捨てて投降しろ!」
先週から続いた豪雨で、どうにも地面の状態が悪い。帰隊後の事を考えると滅入るが、今は照準のために腰を据え、地の底を踏み抜いた。
まず敵に包囲されたら、成す術はない。例え素人の射撃だとしても、数撃ちゃ当たるんだ。
じゃあ今は何してるかって、そりゃ最後の抵抗さ。
「フォー!」
俺の雄叫びと共に、クリートも射撃を開始した。
「一々うるさい」
銃撃戦は10秒以内で決まると、訓練生の頃教わるだろ。でも実際はもっと早い、というか勝敗の基準が曖昧で、俺も判別が難しい。
「止め、止めろ!もう死んでる」
クリートの声で手を降ろすと、確かに敵は倒れていた。
しかし経験の浅いクリートが、ある鉄則を守っていない事は明白だった。
「トドメは俺の仕事か?」
「いいや」
クリートが1発、敵の胸部に撃ち込んだ。
「仕事の醍醐味ってやつか」
殺人に対する抵抗感は、人間ならあるはずだ。しかし俺たちが職業軍人である以上、殺し合いの連鎖を止めてはいけない。
「こいつら、やけに装備がいいな」
「テロリストにしてはね」
敵がいる以上仲間の生存は望めない、こんな言葉を決して口には出せなかった。
「ねぇ、ちょっと!」
クリートは敵のマスクを剥ぎ取り、こちらへ来るよう手招きした。
「おいおい嘘だろ」
そいつは俺たちが探す筈の、仲間の1人だった。