夢か現実か

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1人目

 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ。
枕元で目覚ましのアラーム音が鳴り、目が覚めた。
「もう7時か。」俺は横になったまま最小限の動きでそれを止める。
 眠い。昨日も夜遅くまで起きていたということもあり、まだ寝足りない感じがする。いや、だめだ。今日はちゃんと起きるんだ!
 そう自分に言い聞かせて布団から出ようとするが、結局睡魔には勝てず「やっぱ…あと5分だけ…」そう言って再び眠りについた。

 高校卒業後の春休み、俺は入学する大学の近くのアパートで一人暮らしを始めた。最近は受験の時に見られなかったアニメを毎晩夜中まで一気見している。そのせいで二度寝が習慣になりつつある。

 「ほわぁ〜〜」あれから少しして、俺は大きな欠伸をして目を覚ました。その目に映っていたのは部屋の天井ではなく、綺麗な青空だった。

2人目

「………………ッ!?」

驚き、混乱して上半身をガバッと起こした俺は、視界に広がる、見渡す限りの草っぱらにさらに混乱させられる。混乱の極致にあっても日常の習慣は抜けないもので、枕の横に置いてあるはずのスマホを左手が探すが、左手に帰ってくるのは湿った土と草の感触だけだ。自分の寝ていた”ベッド”を見れば、折れた草の跡しかない。あの買ったばかりの折り畳みベッドは何処にも見当たらない。さっきまで感じていた布団の感触は嘘のように消え去って、身ひとつになってしまった。

「夢、夢か。夢だな。」

つまり、夢だ。
俺は立ち上がって現状を確認する。ぽかぽかと暖かい陽気の元、360度木一本すらない見渡す限りの草原、どこまでも続くような遮るもののない青空に、綿みたいな雲がぽっかりと浮かんでいる。昼寝をすればさぞ気持ちが良いだろう。どこかから拉致されて来たんじゃないかという不安さえなければぐっすりと寝られるだろう。
そして俺はと言えばスマホも何も持っておらず、凡そ最も文明的なものと言えば、素肌の上に着せられた、病院を思い起こさせる薄青い貫頭衣一枚きりだった。

3人目

 俺はその衣を脱ぎ捨てて、真っ裸になった。

 風吹く草原の中に悠々と立って、そのあとになにが起こるかなどという危惧をいだくことのない自由を肌で感じた。

 「ああ、無性に踊(おど)りたい!ダンスがしたい」

 脳内には大音量で、フレデリック「オドループ」が鳴りつづける。気付けば俺は、裸で狂ったように踊りだしていた。

「踊ってない夜を知らない
踊ってない夜が気に入らない
踊ってない夜を知らない
踊ってない夜が気に入らないよ」



 一時間ほど踊り続けていると、流石に息が切れて身体がへばってきた。人目のないのを確認して、俺は雑草に背中から大きく倒れた。仰向けのまま、果てのない青空を見上げた。まばゆい白雲の流れる間に、淡い太陽が見え隠れする。

「夢にしては出来すぎた空じゃないか」

 衣を布団代わりにして、俺はすやすやと気持ちよく眠りに誘われていった……。