サミュエルの冒険

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サミュエル・F・ダンヒルは自称「冒険家」だ。世界中を飛び回っては動画を撮り、それをyoutubeにアップすることで次の旅費を稼ぐ生活をもう10年続けていた。
そんな彼は今、絶体絶命の危機にあった。モンゴルから北へ、ほとんど定住民の存在しないロシア国境の森。既存の文明と接触してこなかったために、独自の文化を保っているとかいうロンガロンガ族との接触を目指し、ウランバートルを発ったのがひと月前。そして今、サミュエルは彼らの檻の中で、彼らの頭目の裁断を待つ身の上になっていた。
残念なことに、彼らの言葉が理解り案内できると言って、結構な枚数のドル札をサミュエルから受け取った地元大学生のユンは、何か彼らの怒りを買ったらしく、既に極寒の大地へ全裸で旅立たされていた。この寒さでは、恐らく1時間と保たなかっただろう。そもそも、言語でコミュニケーションできる奴が居るなら、既に文明の光が届いているはずだろう、と過去の自分の迂闊さを呪ったところで、状況は何一つ好転はしないしユンも還ってこない。
最悪なのは、当然だがここにはあらゆる現代的通信網が到達していないことだった。自分の苦境をSNSに投稿することも、警察だか軍だかに連絡を取ることもできない。今なら、彼を不法入国者だと看做すようなロシア軍人だろうと天の助けに見えるだろう。