Please kiss me!

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ぴりっとした衝撃が唇にはしった。触れてみると指先には赤色。ああやってしまった。寒さが身にしみるようになってきた12月某日。からからに乾いた冬の空気は乙女にとっては攻略しかねる最大の敵の一つで。どうやら私の唇はあえなく敗北してしまったようだ。かさついた薄紅色をなでながら、鞄に忍ばせてあったリップクリームを手に取る。長年奥底に眠っていたこいつもついに脚光を浴びる時が来るとは。キャップを開くと春に購入したときと大差ないそれが顔を出した。傷のついた部分にそわせるとひりりとした痛み。べたべたと張り付く、いつもと違う皮膚の感覚に心地悪さを覚えていると、ふいに「ひぃちゃ〜ん」と呼ぶ声がした。その鈴を転がしたような声の持ち主は私には明らかだった。はぁい、と返事をしながら後ろを振り返る。瞬間。眼前に広がる透き通った肌色。長くのびたまつげ。そして唇には柔らかな感触。