プライベート 雪が降った日は

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完結済
500文字以下 5人リレー
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  • ハッピーエンド
  • 暴力描写無し
  • 性的描写無し
  • 残酷描写無し
1人目

どんより雲の隙間からうっすら太陽の光も差している1月11日。千波は空を見上げた。
「あっ、雪が降ってきた!」
真綿のような結晶達がお気に入りのコートに一つ、また一つとついていく。
「ほんとだね。」と優しい笑顔で話しかけられる。

2人目

そして、会話が弾む。
「雪の日!静かでいいよね!」
「何もかもが穏やかに見える!」
千波が答えると、彼は静かに頷いた。

そして、彼は言う。
「雪が降ると時間がゆっくり進むように感じるんだよね。」
千波はふっと笑った。
「確かに!普段見逃しているもの…雪が教えてくれる気がする…!」

二人は、しばらく歩き続けた。雪が静かに降り続けている。そう、彼の名は、

3人目

静流。
彼は名前のように静かにそして優しい眼差しで恋人千波を見つめる。
出会いから3年。何気ないことに大笑いする時もあれば大げんかして離れていた時もある。
色々あったけど今もこうして通い慣れたこの道を2人で肩を並べて歩いている。

4人目

「ねぇ!しずるー!」
千波が歩きながら、ふと思いついたように静流に声をかけた。
「なんで雪が降ると時間がゆっくり流れる感じがするんだろう?」
静流は少し黙って歩きながら、静かに答えた。
「普段、慌ただしく過ごしていて見逃してるものが、雪の中でははっきり見えるからじゃないかな。」
「見逃しているもの?」
「そう。雪が降って、急ぐことなく歩いていると、普段気づかない小さな美しいものが見える。」
「例えば?」
「名前だよ。」
「名前?」
静流は歩み進めながら続ける。
「普段は気付かないけど、雪の中を歩いてると、君の名前がすごく大切に思えるんだ。」
急な静流の言葉に千波は喜びを隠しきれずはにかんだ。そういうサラッと千波のことを想って言葉をかけてくれるところが静流の素敵なところの一つ。
「やっぱり名前って、大切なんだね。」
千波は自然体で話していたが、自分の言葉に少し照れて、はにかんだ笑顔を浮かべた。
「ね!しずる!」
「雪がまた一段と降ってきたね!」
そう言いつつも、雪の結晶に手を伸ばしながら歩き続ける千波を、静流は静かに見つめていた。
2人は暫く黙って歩き続けた。

5人目

千波の心には静流の言葉が深く深く。ただ深く滲んでいるようだった。

二人は再び歩き出し、雪が降り続く中、 結晶達が周りを包んでいく。
やがて、2人の前から甘い香りと共に焼き芋屋さんの屋台がやってきた。
おじさんと2人はすっかり仲良しだ。
「おじさん!こんにちは!焼き芋一本ください!」
「はいよ!2人とも今日もお出かけかい?」
「今日はしずるの誕生日なの!」
「おぉ!おめでとう!じゃあおじさんからのプレゼントでこの焼き芋はサービスしとくよ!」
「わぁ!おじさんありがとう!」
「ありがとうございます。」
2人は仲良く受け取る。
気がついたら雪が止んでいたので近くのベンチで焼き芋を半分こして食べる。
「2人で食べるとやっぱり美味しいね!」
そんな話をしながら今年も2人で誕生日が祝えたのだ。
「ああやっぱり静流とはずっと一緒にいたいなぁ」と心の中で想いながら焼き芋は2人で食べるのであった。静流が同じ想いだと知らずに。
「あっ!雪が降ってきた!」
「さて!ちなみ!!!お家帰ってケーキ食べよっか!」「うん!」 
来年の1月11日はまた雪が降るのだろうか。そして隣には静流はいてくれるかな。完