オカルトで有名なあの場所が発展してた
「……きさらぎ駅、ですよね?オリさん間違えてないですよね?」
「んー?あぁ、きさらぎ駅、数年前に再開発が行われてな。普通の街並みどころか都会とさほど変わんねーよなぁ」
「はぁ、なんか拍子抜けですね」
「飯さえ食わんけりゃ大丈夫だから。最近、黄泉の国の現代化と現世化が進んでっから、作法とかはそんな気にしなくて良いし。あとオレがいるしなんとかなるって」
セツは、初めて"オカルト現場"に行くということでワクワクしていた。しかし、実際のきさらぎ駅は、なぜかビルが建ち並び、人間のようなモノも、たくさん行き交う街となっていた。
オリという、ガラの悪い怪異探査団長は、さも当然のように現代化とか言っているが、オカルトやら怪異やらにそんなのはあって欲しくはなかった。
「んー、じゃ、どうすっかな。今回はきさらぎ駅って怪異のー、異常波測定っつーメーモクで来たわけだが。セツ、異常波測定って何かわかるか?」
「俺の記憶だと、当該怪異が、現世に及ぼす害が増減してないか測定する、ですよね」
「そ。厳密に言えば、怪異の存在する波長と、現世が存在する波長が近づいてないかの確認だな。波長が合えば合うほど現世と怪異やら空想やらがごちゃ混ぜになっちまうからよ」
「で、確認方法は?」
「うーん、見た目だな。いいか?怪異っつーのは生まれたときから常に変わり続ける。なぜなら、怪異ってのは現世の噂を種に生まれる。そいで、それが広まると成長する。で、人の噂に尾ひれが付けば着くほど、形が変わっていく」
「はい」
「だが。怪異が力を持ちすぎると、独自に成長する。それの怖いところは、現世と怪異の世界が逆転する可能性が生まれるってことだ。それを避けなければ、現世で混乱が起こることは間違いない。まぁーあとは術使えば分かるけど、めんどくさいんだわ」
「……きさらぎ駅、再開発まで行ってますけど」
「こりゃダメだな。異常波が現世に近寄ってる」
「契約は、ここまでっすよ」
こちらの動揺を尻目に、オリさん戦闘準備を進めていた。
「セツー、とりあえず荷物下げといて。あと人払いよろしくね」
「言われなくてもそうしますよ!!」
「抜刀」
──生と死の狭間で
その呼吸は荒く、胸中には熱い感情が渦巻いていた。剣先が月光を捉え、血と汗の匂いが夜の空気に溶け込む。彼の瞳に浮かぶのは、恐怖だけではなかった。幼き日々に失ったもの、戦場で交わした約束、そして生きることへの渇望――それらすべてが、今この瞬間の一撃に託されようとしていた。
獣の異様な触手が再び闇を裂いて迫る。彼はその凶悪な動きに、一瞬、心が凍りつくのを感じた。だが、同時に、己の内に宿る熱い想いが鼓動を速める。過ぎ去った日々の記憶、別れた者たちの笑顔――それらは彼の盾となり、胸の痛みをかすめる絶望に抗して、鋼の意志へと変わっていった。
「生きる…ために!」
叫びとともに、オリは全身の力を剣に託した。振るわれる刃は、ただの武器ではなく、彼の魂そのもの。触手が迫る度に、彼は己の心の奥底にある恐れと向き合った。血が滴り、痛みが全身を走る中で、彼は己に問いかける。
――何のために、この苦しみを背負うのか。
突如、獣の咆哮が辺りに響き渡る。目の前の闇が、まるで生き物のように蠢む中で、男の心は一つの光に満たされた。恐怖が走り、体が痺れるその瞬間、彼は全てを賭ける一撃を放った。
剣が鋭い閃光を放ち、怪物の闇の中心を貫く。肉が裂け、叫びが闇に溶け込む。触手が、悲鳴とも嘲笑ともつかぬ声を上げながら、次々と崩れ落ちていく。全身に走る激痛と同時に、心は一瞬、静寂の中に解放されるような感覚に包まれた。
その瞬間、闘いの激しさと、自身が背負った過去の重みが溶け合い、彼はただ一つの真実を知った。生きるとは、ただ戦うことではなく、絶え間なく自らを乗り越え、希望を紡ぎ出すことなのだ。
やがて、闇は静まり返り、獣の残骸が淡い月光の下に散らばる。男は、血に染まった剣を静かに見つめながら、胸中に熱い涙を浮かべた。勝利の歓喜と、失ったものへの哀惜。その複雑な感情が、彼の瞳に深い輝きを宿らせる。
今、彼は知っている。たとえ闇が再び迫ってきたとしても、この心の灯火は消えることはない。絶望の中にあっても、生への執念と愛する者たちの記憶が、いつか新たな朝を迎えるための力となるのだと。