プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:17
「Prologue」
【世界同時布教編】原文:霧雨さん
ジャバウォック島より帰還したシャルル遊撃隊と流星旅団の別動隊。
そして、存在しなかった世界より帰還した銭形警部。彼らを待ち構えていたのは、
教団の頂点に立ち、女神の力と己らの武力を以て為す狂気「世界の純化」を掲げた
魅上の「全世界同時布教」であった。
見せしめとばかりに、犯罪者の隠れ蓑であった島を謎の爆撃で破壊して見せた
彼らの要求は「魔術王の護符」という謎の宝。
それが如何な力を持っているかは知らないが、彼らに安々と渡すわけにはいかない。
そして何より、あんなものを見せつけられて指をくわえてみているわけにもいかないCROSS HEROES。
次なる舞台は、教団の待つ悪徳の船「パール・グロリアス号」。
物語は激動と決戦の渦へと突き進んでゆく―――!
【幻想郷出立編】原文:AMIDANTさん
「悪霊事変」から数日、人里で復興を続ける日々にも、遂に終わりが来た。
「サイクス」と「ザルディン」が、命蓮寺の「聖白蓮」との協力を取り付け、
暗黒魔界へと渡る為の方舟「星蓮船」を動かし暗黒魔界へと導く事と相なったのだ。
また偶然にも遭遇した「古明地こいし」が、何やら「悟空の無意識」に惹かれて
同行する事に。アビダインの改修も終わり、各々が準備を進める。
しかしそれ以上に急かすアビィから、2つの不安要素が明らかになる。
1つ目は魔界で辛うじて生きていたというアシュラマンの為に、先に悪魔将軍等
悪魔超人達が先に向かい、それから連絡が取れてないという事。
唯一の連絡役であるBHを初めとして、何かが起こったのは間違いない。
2つ目は岸辺露伴の献身(?)によって明らかになった、
「悪霊量産機の全世界配備計画」という悍ましき物。
たった一つの「悪霊量産機」、もとい「廃棄孔」で以て幻想郷を震撼させた「悪霊事変」の恐怖による統治が、表の世界で起こらんとしているのだ。
悪魔超人達の安否確認、そして悪霊量産機の対処…
本来の目的であった「暗黒魔界の強行偵察」は、最早一刻の猶予も無くなったと言える。
事態を把握した一行は食事の間も惜しんで準備を終わらせようとする。
その最中、突如として現れた「丸喜拓人」が彼等に協力を申し出る。
対価は「話し合い」、正確には彼の「認知訶学」が齎した「偽りの1年」の反芻だ。
彼の真意が今一つ読めない中、決断を迫られる心の怪盗団。
ところが「キン肉マン」がこれを快諾、周りを巻き込む形で事態を収束させ、
「丸喜拓人」を協力者として向かい入れた。
「絶対に、相容れないよ?」
「だとしても言葉を尽くす、良いではないか。悪戯に戦わんのに越した事は無い。」
正義超人の、分かり合う為に戦うという精神。
忘れかけていた志を再び宿しながら、彼等は暗黒魔界へと旅立った。
――これから彼等を待ち受ける苦難は、想像の遥か上を行く。
悪魔超人達を助け出す事は出来るのか。
その最中で起こる「話し合い」が、どの様な結末を迎えるのか。
そしてこいしの語る「悟空の無意識」が、一体何を齎すのか。
五里霧中の最中、彼等は進む――
【特異点防衛:SIDE完璧超人編】原文:AMIDANTさん
次なる征服の地として特異点を選び、強襲したミケーネの神々。
彼等とCH、カルデア等の面々が特異点の人々を守る為に応戦を繰り広げる最中、
突如として戦闘獣等を破壊しながら乱入した完璧・無量大数軍。
そのリーダー格たる武道は、ミケーネの神の意思を問いただし、聞いた上で告げる。
「貴様等は『神』等という高尚なモノでは無い、ただの侵略者…『賊』に過ぎん。」
「貴様等『賊』にくれてやるのは_『罰』であるっ!」
カール大帝の遣いとグリムリパーが見守る中、完璧超人と神の軍勢が、今激突する。
「呻る混乱と打破の希望」
全国布教の混乱は激しく、世界各国の政府は一同に会議を始めた。
その議題なんて、教団以外の何があろうか。
「先も言いましたが、我々の意見としましては魔術王の護符の一件については黙殺すべきかと。」
「あのですね、相手は神秘か超兵器か、核爆弾よりも強力な何かを以て島一つを地図から消したんですよ?黙殺がばれたら、ここだって吹き飛ぶ!」
「だったら護符を探し出して、黙って渡せと!?それだって所在が分からなければ意味がないだろう!そもそも、本当に存在するかどうかも……!!」
「教団側の挑発か、ありえるな。ない物を探している我々を、見えないところで嘲笑うために……悪趣味な。」
「仮に見つけて渡したとしても我々が生かされる保証はない!連中が嘘をついている可能性もある以上、用済みと分かればこっちが消される……!」
「国民を守るためにも、奴らのたわ言に耳を傾ける必要はない!」
長い討論の果て、各国政府の下した結論は「教団の取引、その黙殺」だった。
具体的に言うなら「魔術王の護符の件は期日まで無視し、相手側が何かしらの声明を出したり使者を送り込んだりするなどのアクションを起こせばこちら側も抵抗する」というもの。
この行動には二つ懸念点がある。
一つ、先ほどの布教で島を消してしまった謎の爆撃。こちら側の意図がばれれば、教団は間違いなく攻撃してくる。
それを放った何か、その正体が爆撃機か空中戦艦か、はたまたミサイルなのかはまだ分からない。
そしてあの見違えるほどの狂気に満ちた魅上の顔、あれは間違いなく「やる」顔だ。
だがこれはまだいい、それは各国の軍部に任せれば爆撃元は特定できる。
そこに自軍の武力を送り込めば、抵抗はできよう。
真に問題となるのはもう一つ。
教団の本拠地、である存在しなかった世界。その位置が政府には分からない。
魅上を捕えるにしても、抗戦の懸念点である爆撃をすぐにやめさせるにしても、場所が分からなければどうにもならない。
そも、存在しなかった世界は虚数空間の最奥に存在する。
対策なく入ったら即死する毒沼に嬉々として飛び込む愚か者ではない。
そして残念ながら、通常の科学技術では虚数空間への潜航はおろか解析も不可能。
神秘の力を頼るにしたって、わずか二週間程度では十分な準備はできないだろう。
だがしかし、だ。
もし仮に、この地上においてメサイア教団の本拠地の場所をよく知っている者がいるとすれば―――。
そしてその虚数空間から無事に生還する方法を一つ知っている者がいるとするのならば。
◇
警視庁 会議室
雀蜂が去った後、すれ違い様に扉を蹴り開けるものが一人。
「一体何事だぁあ!!」
無人島より帰還した、銭形警部だ。
警視庁の危機を聞きつけて、駆け付けたはいいが、もうその場に雀蜂兵の姿はなかった。
「くそぉ、逃げられたか……!!」
悔しさで拳を握りしめる。
そこに残り会議を続ける警部一同は一斉に銭形を睨む。
「貴方は……?」
「私は、ICPOの銭形だ。」
彼は慣れた手つきで警察手帳をみせる。
銭形と松田。2人の人間、如何な苦境も跳ねのけ正義を貫き続けた者たちがここで出会った。
「あ、ICPOの……。」
「名刺を渡しあう暇はない、だが今回はここに入ったというテロリストをとらえに来ただけではない。」
「というと……?」
そのセリフの後、銭形は真剣な表情で言った。
「――私は魅上の、連中の居場所を知っている。」
「「「え!?」」」
そうだ。
この銭形警部は存在しなかった世界に先んじて突入し、その居場所を知っている。
「そ、それはどこに……!?」
「う~む、とはいえ何と説明すればいいか……。」
言葉に詰まる銭形。
散々怪獣や超人といった神秘の存在を見せつけられ信じる気にはなっていても、こればかりはどうしようもない。
「こことは明らかに違う、異空間が存在する」と一口に言っても通常の方法ではどう説明すればいいのか……。
彼が眉間を指でつまみ、悩んでいると。
「私はどんなことを言われても信じますよ、銭形警部。」
たった一人、彼の言葉を信じる者が現れた。
パソコンのモニターに移されたアルファベット「N」の字。
その声の主――ニアだ。
「その声は……?」
「初めまして銭形警部。私は『N』という者です。皆さん、今回の事件はどんな可能性でも考慮しましょう。固定概念を捨て、神秘や異世界と言った通常はありえないものでも信じる事。それこそが魅上確保、そして教団解体につながるのですから。」
「伝説の凸凹トリオ! の巻/出撃!! スーパーヒーロー・ガンマ1号!」
――病院。
窓の外に広がるのは、どこにでもある都会の風景だった。
高層ビル群が並び、行き交う車のヘッドライトが細い線を描く。
だが、それはあくまで見た目の話。この世界は今、異質な闇に包まれつつあった。
テレビのニュース映像が無機質な音声を響かせる。画面には崩壊した島の映像。
黒煙を上げる建物の残骸、地図上から忽然と消えた島の姿――。
「メサイア教団め……!! 好き勝手やりやがって……!!」
ウルフマンは険しい表情で病室のテレビを見つめていた。
彼の体には無数の包帯が巻かれ、右腕にはギプス。
動かせば激痛が走るが、今の彼にとって痛みは些細な問題だった。
それ以上に彼の心を苛んでいるのは―― 「戦えない」 という事実。
丸喜パレス――かつてキン肉マンたちと共に戦った特異点での戦い。
ウルフマンは完璧超人クラッシュマンに敗北した。その記憶が未だに頭を離れず、
傷の痛みよりも深く彼の心を締めつける。
戦士としての誇りが傷つき、彼は恐怖を克服できずにいた。
「クソッ……ッ!」
ベッドの上で、ウルフマンは歯を食いしばる。
指先がシーツを強く握りしめ、シワが深く刻まれた。
今、自分はただのリハビリ患者だ。
世界が混乱し、正義を貫く者たちが前線で戦っているというのに、
自分は病室で悔しがることしかできない。それが耐えられなかった。
かつては日本代表の 正義超人だった男が……。
すると、病室の扉が音もなく開く。
「焦るなよ、ウルフマン」
低く、落ち着いた声が病室に響いた。
そこに立っていたのは、サングラスにルーズに着流したスーツ姿の厳つい男――
五分刈刑事。人間でありながら、正義超人たちを陰ながらサポートしてきた
破天荒なベテラン刑事である。彼のスーツにはタバコの香りが染みつき、その眼光は鋭く、ただの警官とは違う異様な貫禄があった。
その後ろには二人の影。
一人は痩せぎすで、どこか頼りなさそうな白髪の髑髏男―― キン骨マン。
「お見舞い持って来ただわさ~」
そしてもう一人は、その舎弟・イワオ。
フルーツバスケットを誇らしげに掲げながら、ウルフマンのベッドの横に置く。
「お前ら……」
ウルフマンの表情が一瞬だけ緩む。
傷の痛みはもはやどうでもいい。それよりも、教団の暗躍、政府の動向、
そして戦えない自分――その全てが苛立ちの種だった。
五分刈刑事はタバコを口元に咥え、ふっと煙を吐いた。
表情は変えないが、内心では何かを思案しているのがわかる。
「……まぁ、お前さんの気持ちは分かるつもりさ」
彼は病室の壁に寄りかかりながら、ぼそりと呟いた。
「だが、今回の相手は今までの連中とはわけが違う。あのなんたら教団とやら、
島ひとつ丸ごとふっ飛ばしやがった。そんな奴らに通常の警察なんぞが
通用すると思うか? 軍隊だって太刀打ちできるか分からん。
そんな奴らに立ち向かえる奴らがいるとしたら……心当たりはひとつしかないがね、俺は」
ウルフマンは黙り込んだ。
理解はしている。だが、納得はできない。
「……俺は何もできねぇのかよ?」
彼の声には、悔しさが滲んでいた。
「キン肉マンたちは今も別の世界で死ぬような思いして戦ってんだぜ。
なのに、俺だけがこんな所で……」
ウルフマンはベッドの柵に肘をつき、俯く。
リハビリ患者としての現実が、彼を突きつけるように押し潰す。
五分刈刑事は静かに歩み寄り椅子に腰を下ろすと、視線をウルフマンの
包帯だらけの腕に向けた。
「お前は焦ってる。でもよ、それが今、一番危険なんだ」
ウルフマンは苦しげに眉をひそめた。
「……危険?」
「お前、まだ自分の恐怖を克服できちゃいねぇんだろ?」
五分刈刑事の言葉に、ウルフマンの顔が引き締まる。
「お前をそこまで痛めつけた奴の事が……まだ忘れられねぇんじゃねえのか?」
ウルフマンは無言のまま拳を握る。痛みよりも深く刻まれた敗北の記憶。
あの瞬間、完璧超人の圧倒的な力を前に、自分の力では何もできないと感じたあの絶望。
その記憶が、今でも脳裏にこびりついている。
――Dr.ヘド研究所。
白く輝く研究所の奥深く、巨大なシャッターがゆっくりと開いていく。
機械仕掛けのアームが動き、冷却装置の蒸気が床を這うように立ち込める。
そこに立っていたのは、一体のアンドロイド――ガンマ1号。
そのボディはスリムでありながら、洗練されたデザインと圧倒的な強度を
兼ね備えている。 赤いマントがなびき、鋭い眼差しが前を見据えていた。
そして、彼の前には、白衣をはためかせた男が立っていた。
「ついに完成した……!」
Dr.ヘドは目を輝かせ、手にしたタブレット端末を操作しながら
ガンマ1号のデータを確認していた。 最新の人工知能、エネルギー効率の最適化、
戦闘能力の向上――どれを取っても過去のアンドロイドとは比べものにならないほどの
出来栄えだ。
「ふふっ……これこそ、僕の最高傑作……!」
Dr.ヘドは誇らしげに笑い、ガンマ1号に歩み寄る。
1号は静かに彼を見下ろし、冷静な声で問いかけた。
「あなたが私のマスターか?」
「そうだとも!」
Dr.ヘドは満足そうに頷いた。
このロールアウトしたばかりのガンマ1号を、早速実戦に投入する時が来たのだ。
「ガンマ1号、お前には世界に正義を示してもらう。
僕はお前をただの戦闘兵器とは考えていない。お前は正義のヒーローだ!」
Dr.ヘドは、力強く拳を握る。
彼の目には、ただの科学者としての野心だけでなく、純粋な正義への憧れが宿っていた。
「ヒーロー、か……」
ガンマ1号は腕を組み、しばらく思案するように目を閉じた。
その言葉は確かに彼のプログラムに刻まれている。
そして、彼は静かに目を開くと、Dr.ヘドに向かって一歩踏み出した。
「了解しました。正義のために、出撃致します」
その言葉を聞いたDr.ヘドは満足げに頷き、手にした端末を操作する。
「よし、ガンマ1号! 戦場へ向かえ! そして、この世界にお前の力を示すんだ!」
「はっ!」
次の瞬間――ガンマ1号の足元に設置されたプラットフォームが青白い光を放ち、
重力制御装置が作動する。彼の体が軽やかに浮き上がり、次の瞬間、
音速を超える勢いで空へと飛び立った。
岩陰をかすめ、雲を切り裂きながら進むその姿は、まさに新たなるヒーローの誕生を
告げるかのようだった――
「見ていろ、メサイア教団! 今こそ、僕が作り上げた
正義のスーパーヒーローが悪にトドメを刺す! さあて、1号と来たなら
それを助ける相棒、2号ヒーローも定番だよなぁ! 早速取り掛かろう」
「常識の通用しない世界へようこそ」
「皆さん、どんな可能性でも考慮しましょう。固定概念を捨て、神秘や異世界と言った通常はありえないものでも信じる事。それこそが魅上確保、そして教団解体につながるのですから。」
ニアは言葉を続ける。
警部一同、その場にざわめきだけを残して考察を始める。
突き詰めれば、ここまでの物語はあり得ないことが重なって生まれた奇跡だった。
神秘の実在、お台場の消失、人智を超えた力を持つ英雄(ヒーロー)たちの活躍。
どれも日常ではありえない奇跡の集結。
ならば、自分達のような超能力も神秘も持たない人間ができることは何だ。
自分達もその『物語』に参戦している。
しかも過去の亡霊の狂気、その具現を逮捕しろという。
かといって今さら彼らを否定するのは人倫として間違っている。
「では銭形警部、何があったのかを正確によろしくお願いします。」
「あ、ああ……。」
そうして、銭形は今までのことを全て話した。
教団信徒を追って虚数空間に落ちた事。
そこで出会ったカグヤという女性の事。
彼女の頼みで、教団本拠地の存在しなかった世界を訪れた事。
魅上は、そこにいた事。
そして命からがら逃げて、無事に帰還したこと。
「……とても信じられん、その話がすべて真実だと?」
「ああ真実だとも、俺だって今でも頭の整理がつかん。まさか本当にあんな世界があったとはな……。」
誰も彼もが信じがたい話に、頭の整理が追い付いていなかった。
(存在しなかった世界、虚数空間という毒沼の奥に沈みこんだ悪の王国。その毒沼は対策なく触れるだけで即死と来た。なるほど……魅上が強気に出られるわけだ。)
位置というアドバンテージでは教団に分がある。
虚数空間という厚い壁を攻略しない限り、自分たちに勝ちの目はない。
「銭形警部、そのカグヤという人物の連絡先は持っていますか?」
「すまん、あの時はそんな暇はなかった。」
「そうですか、それは残念です。ですが彼女が魅上の有利を崩す方法を握っているのは事実。もしもう一度出会えたのならば、その時は私を紹介してもらってもよろしいでしょうか?」
「それは構わんが……。」
◇
爆撃から数分後 アメリカ某所 某軍事基地
「あの爆撃の正体を探れ!」
「時間はないぞ!次の爆撃の可能性がある以上、いち早く阻止すべきだ!」
米軍指令室は大慌てだ。
先の爆撃、その正体を探らんと動いている。
結論から言って、爆撃の調査は案外すんなり終わった。
その正体を看破した航空写真と衛星写真が、解決の糸口となったのだ。
だが、その正体は彼らを驚愕させるのには十分だった。
「え……嘘だ。俺達を騙そうとしているのか?」
「何があった!?」
「大佐……その、いえ。これを見てください。これはどう見ても……!!」
職員の一人が、大佐と呼ばれた男に衛星が撮った写真を見せる。
それは、大西洋上に浮かぶ一つの島。
これだけでは爆撃したという証明にはならない。
「これがどうしたっていうんだ?」
「それが……大佐。これも見てください……。」
そうして、大佐に航空機が撮った写真を見せる。
その写真を見た大佐は愕然とした。
「そ、そんな馬鹿な。映画じゃないんだぞ!?」
「いやしかし、これはどう解釈しても……!」
衛星写真、航空写真。
その2枚が写した信じがたい事実。
それは、一つの島だった。
赤褐色の鋭い棘が生えた巨大な岩を切り取って、そこに無数の機械を埋め込んだような風貌。
なるほど、島というにはありふれたものだ。
ただし、高度5000メートル上空に浮かんでいるという条件付きだが。
「上に説明する身にもなってみろ、『爆撃機』の正体が空中島(ラピュタ)だったなんてどう説明すればいい!?」
「航空写真で見えた艦名はユートピア・アイランド……何とも皮肉な。」
艦名――『ユートピア・アイランド』。
メサイア教団はビショップが見出し、島一つ切り出して建造した超巨大な空中戦艦である。
「歪んだ天空の城」
――国連本部・緊急安保会議室。
ニューヨークの国連本部。
歴史あるこの建物の中にある最高機密会議室では、各国の代表が集まり、
緊迫した空気の中で討議を行っていた。
スクリーンには、ユートピア・アイランドと名付けられた空中要塞の映像が
映し出されている。高度5000メートルに浮かぶその姿は、
まるで神話や伝説の空中都市のように不気味な威圧感を放ち、世界各国の安全保障を
脅かしていた。
「状況は深刻だ。すでに民間人が居住していた島が消滅し、被害は甚大だ!」
米国代表が声を荒げる。
「この脅威に対抗するには、我々の通常戦力では到底及ばない。
正義超人たちの力を借りる以外に方法はない!」
「CROSS HEROESに連絡を取ったのか?」
英国代表が尋ねる。
「もちろんだ!」
国連安全保障理事会の議長が深いため息をつきながら報告する。
「すでにCROSS HEROESには、正義超人たちの緊急出動を要請している。
彼らの力があれば、この危機を回避できる可能性が高い……しかし――」
「しかし?」
各国の代表が一斉に議長を見つめる。
「彼らは現在、別の世界に向かっているため不在との事だ……」
会議室が一瞬、静寂に包まれた。
「……別の世界?」
フランス代表が呆然とした声を漏らす。
「まさか、また人造人間セルやDr.ヘル、残虐超人たちのような"多次元的脅威"か?」
ドイツ代表が険しい顔をする。
「その通りだ」
議長は重々しく頷く。
「CROSS HEROESの正義超人たちは、別世界で発生した深刻な危機への対応に
向かっている。現状は、この戦線には関与できない」
「馬鹿な!」
イタリア代表が机を叩いた。
「彼らが不在なら、どうやってこの脅威に対抗するというのだ?
国連軍や各国の軍隊では、あの空中要塞には太刀打ちできない!」
「だからこそ、他の戦力を探すしかない」
議長が腕を組みながら続ける。
「CROSS HEROES本部には、正義超人以外のメンバーもいる。
彼らに協力を仰ぐしかないだろう」
「だが、超人たちがいないとなると……」
インド代表が難しい表情を浮かべる。
「そもそも、CROSS HEROESの構成メンバーにおいては不明な点が多い。
正義超人、ミスリル、マジンガーZ、GUTSセレクト……公になっている者たちの他にも
素性が明らかにされていない者たちも少なくないというぞ」
「その点においては非公表を貫いているようだ。CROSS HEROESは国連認可の組織……
独自の運営・行動をある程度は許可されているとは言え、これはあまりにも……」
「噂ではこの世界の者ではないとか?」
オーストラリア代表が懐疑的な表情で尋ねる。
「悪魔超人たちをも退けたアイドル超人たちがいれば話は違った……
だが現状では、彼らの戦力を活かすしかない」
スペイン代表が肩を落とす。
「仕方ない」
議長は静かに言った。
「CROSS HEROESのメンバーが持つ限りの戦力を総動員して、
ユートピア・アイランドの情報を収集し、適切な戦術を立てる。
我々に残された時間は少ない」
「……それしかないな。」
各国代表は納得するしかなかった。しかし……
「……日本代表。聞く所によれば、メサイア教団とやらはキラ事件において
逮捕されたはずの魅上照が率いていると言う。それに加え、不可解な事件が同時多発的に
発生しているそうだね。この件について、どうお考えかね?」
「う、うう……そ、それにつきましては、現在、鋭意調査中であり……」
正義超人たちは不在。だが、それでも地球の危機は待ってくれない。
この瞬間、CROSS HEROESに課せられた使命は、さらに重いものとなった。
空に浮かぶ絶望の城へと挑む準備が、静かに進められようとしていた。
――トゥアハー・デ・ダナン、CROSS HEROES指令室。
警報が鳴り響く指令室。CROSS HEROESの主力メンバーが次々と集まり、
巨大スクリーンに映し出された映像を睨みつけていた。
高度5000メートルに浮かぶ空中要塞――ユートピア・アイランド。
赤褐色の鋭い棘が生えた巨大な岩盤。それに無数の機械が埋め込まれ、
まるで悪魔の巣窟のような異様な光景を作り出している。
だが、何よりも問題なのはその島が自由に移動し、
「純化」と呼ばれる超高高度からの爆撃を加えられるという点だった。
「……あんなものが頭の上に浮かんでるんじゃ、落ち着いていられないわね」
七海やちよが険しい表情で言った。彼女の蒼い瞳がスクリーンをじっと見つめ、
両肘を組んでいる。
「……」
静寂が訪れる。皆、事態の深刻さを理解していた。
「空に浮かぶ島……まるでおとぎ話みたいだけど、現実なんですね……」
環いろはが不安そうに呟いた。彼女は魔法少女として戦い続けてきたが、
ここまでの大規模な敵に対峙するのは初めてだった。
「空島を思い出すなァ、ゾロ!」
「あァ……あの島にも神を気取った馬鹿がいたっけな……」
ルフィやゾロが暮らしていた大海賊世界にも、空中で凝固した雲海の上に浮かぶ
「空島」と呼ばれる伝説の大陸群が存在した。
その隣に立つ孫悟飯が腕を組み、冷静に状況を分析する。
「空中要塞……地上からの攻撃は届かないし、普通に飛んで行くにしても
相当なリスクがありますね。僕達なら舞空術で向かえますが……」
Z戦士が修行していたカリン塔や神様の神殿などの高度は、成層圏周辺にまで
達すると言う。
「あのメサイア教団の事だ、何を仕込んでるか分からん……敵の懐に単独で
突っ込むのは得策じゃあ無いと思うがな……」
承太郎らスタンド使いの定策……それは、「相手の手の内を先に見破る事」。
敵のスタンドの効果、範囲、性能……或いは先に自分のスタンド能力を知られる事。
それらを看破しないままに敵陣に足を踏み入れるのは圧倒的な不利を呼ぶ。
まして、これまでも人智を超える常識外れな事象を度々引き起こしてきたメサイア教団だ。
どんな罠があるか分からない。
「承太郎さん……」
「奴らがみすみす自分たちの手の内と居場所を俺達に晒すような真似をしたのは
何故だと思う? あんな馬鹿げた事をしでかせば真っ先に
俺達CROSS HEROESが動くだろうと考えないわけはないのに、だ」
「確かに……」
「幸い、このトゥアハー・デ・ダナンは潜水艦だ。深海を行けば、
奴らに察知される事は無く近づいていく事は出来る……その点では、俺たちはまだ
イニシアティブを握っている、と言う事だぜ……」
「――だったら、偵察は俺達に任せてくれ!」
天界からCROSS HEROES本体に戻る途中だったクリリンらZ戦士たちは
現状の連絡を受け、一路ユートピア・アイランドの哨戒任務へと向かった。
「Zeal Shooter その1」
大西洋5000m上空。
異形の魔城が、空を征く。
「すっげぇ……。」
Z戦士の一人、クリリンがただ呆然とそれを見ていた。
今まで、いろいろなことがあったけど、これには流石に驚かされる。
空を征く天空の城?
現実ではありえないそれが、今事実としてそこにあった。
映画やアニメでしか見たことのないおとぎ話。
「あの城に教団がいなかったら、観光で行きたかったな……。」
『ようこそ我が城ユートピア・アイランドへ。歓迎しますよ、CROSS HEROES。』
「お、おまえは!」
『私はビショップ。この島の主です。どうぞよろしく。』
「……お前か!島を破壊したのは!」
『ほう、流石にそれには気づきますか。でも仕方ありませんよねぇあの島には悪党しか住んでいないんですから。死んで当然のゴミクズを潰して誰が困るというのです?』
「くっ……!」
「落ち着け悟飯。挑発に乗るな!」
『とはいえ、我々にも大義がある以上タダで撃ち落とされるわけにもいきませんし、少しアトラクションでも楽しんでいただきますか。』
そうして、ビショップは指を鳴らす。
それと同時に―――天空の城が、牙をむいた。
放たれるのは、無数の赤褐色の結晶体。
それらは三角錐を無数に組み合わせた刺々しい見た目をしており、陽光に照らされて透き通る光を放ちながら空中に浮かんでいた。
「何だこれ……?」
クリリンが結晶体めがけて、一発の気弾を放った。
「あっ!ダメ!」
何かを悟った悟飯が叫んだのもつかの間。
気弾は命中し、結晶体が閃光と熱を放った。
ドグォオアアアアアンンッッ!!
「ぐわっ!」
「爆発!?」
結晶体が、爆発した。
その威力は、クリリンたちの知る気弾の直撃による爆破よりも明らかに上だ。
この時の彼の判断は正しかった。
仮に、不用心に近距離攻撃をしていようものならば、結果はさらに凄惨なものになっていただろう。
一つの機雷爆破に連鎖されるように、爆風に飲まれた機雷もさらに爆発する。
爆発は爆発を呼び、まるで大きな花火のように展開されてゆく。
それだけじゃない。
爆発と同時に、無数の光線が飛び散る。
線上に押し固められた、純粋なエネルギーの塊。
「うわっ!」
反撃まがいの光線弾幕を躱し、防御し続ける。
咄嗟の防御と回避でダメージは最小限に抑えられたものの、あんな威力の爆発が目測でもあと1000以上は残っている。
◇
「おお、さすがはCROSS HEROES、予想以上にお早い到着に素晴らしい対応力だ。」
「随分と余裕ですね、ビショップ殿?」
ユートピア・アイランドの指令室、大将ビショップと英霊アルキメデス。
両者ともに、こちらへと迫るZ戦士たちを見ていた。
「いかがします?撃ち落としますか?」
「いやいい。だが仮に奴らが空中機雷群を突破したのなら、お前が迎え撃て。ただしその際は奴らの実力も知りたい、くれぐれも殺してくれるなよ?他大司教の仇もある、いたぶってやれ。」
事細かに、アルキメデスに迎撃のオーダーを伝える。
「了解しました。」
ビショップはまるでこれから戦う相手を弄ぶように対抗するつもりだ。
ただそれは油断しているからではない。彼らの実力を量り、この先彼らのそれを上回る兵器を生み出すためだ。
これこそが、科学者ビショップの悪辣な一面。
誰よりも科学を愛し、そのためなら犠牲すら厭わぬ殺戮技巧。
「さて、CROSS HEROESの皆さん。この超力鉱物『バミューダクリスタル』で出来た機雷群、突破できますか?ふふふ。」
◇
「空中機雷……あんな威力のものが、あんなにも!?」
冷や汗が出る。
唾を飲み込み、覚悟を決めるクリリン。
「もしかして、この結晶……まさか。」
その傍ら、澄明な孫悟飯は察してしまった。
あの夜に落ちた『爆弾』。
この正体は、きっと、この結晶の大きい個体を爆弾に変えて落としたもの。
そして、あの結晶体でぐるっと覆われたあの島。
あれが仮に都市圏に落ちてきたら?
「俺達なら、あの島の鉱物に攻撃して撃ち落とすとか……!」
「だめです。あんなものが落ちたら島一つじゃ済まない!!それに鉱物を半端に破壊してさっきみたいな光線が飛び散ったら、周りへの被害も甚大になる!むやみに攻撃したらだめだ!」
「くっ……あの島そのものが、超巨大な爆弾みたいなものか……!」
「英雄は可愛げのないものさ」
――大西洋上空、異形の魔城ユートピア・アイランドの周囲に展開する無数の機雷群。
Z戦士たちは、その圧倒的な数の前に息をのんでいた。
「うおおおっ!!」
クリリンが仲間たちと共に機雷の隙間を縫うように飛行する。
機雷の数は目測でも千を超え、まるで空そのものが赤褐色の結晶体に
覆われているようだった。 気弾の爆風で誘爆すれば、あっという間に死地へと変わる。
緊張感が張り詰め、彼らの額には汗が滲んでいた。
「悟飯! お前が先導しろ! 俺たちが後ろからカバーする!」
「わかりました!」
孫悟飯が先頭に立つ。目を細め、無数の機雷群の動きに集中する。
機雷はただ静止しているだけではない。ゆっくりと回転し、わずかに位置を変えながら
こちらを包囲するように動いていた。悟飯はその動きを見抜き、機雷の隙間を縫うように
進んでいく。 クリリン、ヤムチャ、天津飯、チャオズもそれに続いた。
「くっ、すごい数だな……!」
(承太郎さんの言う通りだった……メサイア教団がこれ見よがしに姿を晒した理由……
そうしたとしても僕達を抑え込めるだけの準備があった……!)
悟飯がトゥアハー・デ・ダナンを発つ前に承太郎と交わした会話が脳裏をよぎる。
安易な攻撃は、自らの破滅に直結する。ここで選択を誤れば、爆風は都市圏まで届き、
何千、何万の命が巻き添えになるかもしれない。
これまで、数々のぶっちぎりの強敵を打ち破ってきた悟飯達。
純粋な力だけでは解決できない。これは、守るための戦い……
――「ユートピア・アイランド」指令室。
「ふふ、これだけの機雷を破壊せずに突破するのは、流石の奴らとて骨を折るだろう」
ビショップは奮闘するZ戦士たちをモニターで監視しながら、
不敵な笑みを浮かべていた。 隣には、淡々とその様子を見守る男――
英霊アルキメデスが立っている。
ビショップは手元のタブレットを操作し、機雷群の動きや爆発の軌道を分析していた。
「奴らには今まで、散々邪魔立てをされた……その答えが、これだ。
連中のお得意の馬鹿げたパワーを封じ込めてしまえば、ひとたまりもあるまい」
「回りくどいな。ひと思いにやればよいものを」
アルキメデスが低く問う。だが、ビショップはゆったりと首を振った。
「いや、まだだ。もう少し遊ばせよう。どれだけ踏ん張れるか観察したい」
ビショップの口元がさらに歪んだ。彼の目的は、Z戦士たちの実力を測ることだった。
彼らの反応速度、機転、判断力、すべてのデータが、彼の研究の糧となる。
次なる兵器を創り上げるための、最良の素材として――
過去にナッパやラディッツのクローン戦士、バイオブロリーに留まらず
シャドウサーヴァント……異世界の戦士までをも再現、
そしてこのユートピア・アイランド……
彼の頭脳と科学技術はメサイア教団の異常性をさらに加速させるものとなっている。
何故、彼ほどの天才がメサイア教団などに身をやつしているのか、
その真意は、未だ誰も知らない……
――その頃、トゥアハー・デ・ダナンが、静かに太平洋の水底を潜航していた。
冷たい金属の船体が海上から降り注ぐ陽光を反射させている。
「先行した悟飯さんがクリリンさんたちと合流したようですが……」
「よもや彼らの攻撃に匹敵するほどの威力を持つ機雷を撒いているとは……」
悟飯は一足早くZ戦士と合流し、斥候を買って出たのだ。
「敵の防御は厳重です。いくら彼らでも突破は厳しいかと……」
オペレーターが焦った声で報告する。モニターには、爆発の閃光が次々と広がる様子が
映し出されていた。
(焦るなよ、悟飯……こう言う時こそ、熱くなっちまったら負けだ)
艦橋に立つ承太郎が、悟飯達の戦況を見つめながらつぶやいた。
帽子の鍔越しのその視線は、悟飯たちが懸命に機雷を避ける姿に向けられている。
「……あの機雷をどうにかしないと、私達も援護に向かえない……」
いろは達が悟飯達と合流するためには、ユートピア・アイランドに取り付く
飛行手段が必要だ。だが、現状の制空権は完全にユートピア・アイランドに握られている。
今の状態で出撃したとしても、あっと言う間に撃墜されてしまうだろう。
CROSS HEROESが攻勢に出るためには、機雷の突破が必要不可欠だ。
「へへ、CROSS HEROESめ、いいザマだぜ」
「俺達は高みの見物と行こうぜ」
懸命に戦う悟飯達をせせら笑い、ユートピア・アイランド内に配置された
メサイア教団の兵たちは余裕を決め込んでいた。だが……
「……ん? あんなところに戦闘機が? 何処の所属だ……」
ふと、隊列から離れたところに一機の戦闘機が駐留していた。
「おい! 何処の隊だ! コクピットハッチを開け……うわあああああっ!?」
「ん? 何の騒ぎだ……」
「き、貴様……ぐわああああっ!!」
「おぉぉぉうりゃあああああああああああああああああっ!!」
「な、何いいいいいいーっ!?」
異変に気づいて戦闘機に殺到するメサイア教団兵を千切っては投げ、千切っては投げ……
怪力無双、傍若無人の男の影……
「どけどけええええええええええいっ!! ウルフマンだああああああああっ!!」
「せ、正義超人がどうして我が隊の戦闘機に……」
傷だらけの土俵の英雄……正義超人・ウルフマン。CROSS HEROES最大の窮地に、
まさかの復活。
「はっはっはっは……はっはっはっはっは……」
「今度は何だ!?」
高笑いがこだまする。
「すり替えておいたのさ!!」
戦闘機の本来のパイロットであるメサイア教団兵から戦闘機を奪取し、
秘密裏にユートピアアイランドに潜入していたのは、ウルフマンだけではなかった。
「よくも島の人々を虫けらのように殺したな! 許せんッ!!
メサイア教団の野望を粉砕する男……スパイダーマンッ!!」
そう、ミケーネ帝国の地上侵攻を食い止めた異次元よりの使者……
ピーター・パーカーとは異なる、もうひとりのスパイダーマンである。
「お前たちが消しちまったあの島にいたのは、人間たちだけじゃない。
自然や動物たちもいたんだ。メサイア教団だか何だか知らんが、面白半分に壊すなよ」
「うっ……!?」
たじろぐメサイア教団兵の背中に立つ男……静かな声の中に怒気が籠もる。
「自然は大切にな」
「ぶげっ」
裏拳一閃、教団兵を卒倒させる黒髪の男……人造人間17号。
「し、侵入者だと!?」
ウルフマン、スパイダーマン、17号……
愉悦と享楽に任せて凶行を繰り返すメサイア教団への強き怒りを燃やす
意外なる伏兵たちが、難攻不落ユートピア・アイランドに波乱を巻き起こす。
「おい、あの島、ちっと様子がおかしくないか?」
「ええ、敵の指揮系統が乱れたような……それに、この気は……」
「なるほど、機雷で外から中央突破出来ないのなら、味方を装って潜入か。まったく、
次から次に出し物が尽きんものだな、CROSS HEROES……」
「Lycoris Recoil⑧夜の帳が下りる時」
夜の神浜の空は、どこまでも暗く重かった。
ビルの合間に吹き抜ける冷たい風が、道路の脇に積まれたゴミ袋を揺らし、
ガサガサと不気味な音を立てる。その静寂を突き破るかのように、
千束とたきなの乗るバイクのエンジン音が響き渡った。
「次の交差点を右折……!」
クルミの声がインカムから響く。
「わかりました!」
たきなが返事を返し、ハンドルを切る。バイクは唸るように車体を傾け、
鋭いカーブを描いた。
「……たきな、来るよ」
千束の声に、たきなが視線を前に向ける。
廃ビルの屋上から飛び降りる影――天乃鈴音。その姿は白い彼岸花の花弁が
風に舞い散っているかのように優雅で、しかし恐ろしい気配が漂っていた。
「っ……!」
着地の瞬間、鈴音のブーツがアスファルトをわずかに擦る音が響いた。
その動作は音もなく、闇夜に溶け込むような見事な着地だった。
「千束、準備は?」
「もちろん!」
千束が銃を構え、狙いを定める。パンッ! 鋭い銃声が響いた。
だが――キィィンッ!
次の瞬間、鈴音は流れるような動作で剣を振り、千束の弾丸を正確に弾き返した。
まるで弾道を見切っていたかのような正確な動きだった。
「まーた防がれちった……!」
千束が目を見開く。
「たきな、追いかけるよ!」
「分かってます!」
バイクがさらに加速し、鈴音の影を追いかける。だが、鈴音は飛ぶように
ビルの影を駆け抜け、まるで迷路のような街路に姿を消していった。
「なんて速さ……それに向こうはバイクと違って小回りも効く……死角に潜られたら
どうしようもない……」
たきなが焦る声を漏らす。その頃、別ルートから包囲に回った
ももこ、レナ、かえでも、鈴音の気配を探りつつ神浜の裏道を駆け抜けていた。
「おいレナ、こっちだ! この先で合流できる!」
「……分かってるわよ!」
レナが声を張り上げ、ついていく。
かえでは不安そうに周囲を見回しながら、魔法の力で風に感じ、鈴音の気配を辿る。
「……でも……」
その気配は不安定で、まるで意図的にかき消しているようだった。
「魔力の気配遮断か……相当の手練れだぞ、こいつは……」
リコリスと魔法少女の包囲網を巧みに掻い潜り、翻弄する天乃鈴音。
――神浜の高架道路。
『千束、もう少しでターゲットが現れる』
クルミの声が響く。
「OK、まかせて!」
次の瞬間、鈴音が横道から飛び出した。
神秘的な雰囲気を漂わせながら、鈴音は剣を構えて立ち止まる。
「たきな、急停止!」
たきなが素早くブレーキをかける。
スキール音が鳴り響き、バイクが地面を削って急停止した。
「……よくここまでついて来られたわね」
鈴音が低く笑う。その声は挑発的で、どこか冷たい響きを帯びていた。
「……何が目的なの?」
千束が銃を構えたまま問いかける。
「目的? 試してるのよ、あなたたちのことをね」
「試す?」
「魔法少女でもないあなた達の実力……どこまで通用するのか、確かめたかったのよ」
「私たちを……"試す"ために?」
「もうひとつ聞きます……その白い彼岸花は、一体……」
「吸いたがっているのよ、こいつが。あなたたちの返り血をね。
この彼岸花が血で真っ赤に染まったとき……私の願いは叶う」
「願い……って」
「後ろ!」
千束が叫ぶ。その瞬間、闇の中からメサイア教団の刺客が飛び出した。
刃が鈴音へと振り下ろされる。
「キィエエエエエッ!!」
――キンッ! 鈴音は鮮やかに剣を振り、刺客の刃を弾き飛ばした。
「指輪回収班を潰したのは貴様だな!? 第2小隊からの連絡も途絶えたままだ……」
「まったく、邪魔ばっかり……!」
鈴音は忌々しげに呟き、跳躍してビルの上へ。
「行くよ、たきな!」
「了解!」
バイクを発進させようとするたきなの前に立ち塞がるメサイア教団兵。
「邪魔しないで欲しいんだけどなぁ。アンタたち、何者? 新手?」
「お前たちが知る必要は無い!!」
「諸共死ねぇ!!」
「あっそ。あの子を相手にするよか楽に終われそう」
「舐めるな小娘ぇッ!!」
メサイア教団兵の鉤爪が千束に迫る。
「遅いッ」
千束が素早く身を屈めて攻撃を避わしつつ拳銃を構える。銃声が闇を切り裂いた。
弾丸は刺客の胴体を正確に直撃、その衝撃で吹き飛ばして動きを封じる。
「ぐぉあっ……!!」
非殺傷性のゴム弾とは言え、当たれば行動不能に至らしめる程度の威力はある。
「さすが……」
鈴音は低く呟くと、千束とたきなの戦いを高台から見物していた。
「私は千束ほど優しくはありませんので」
たきなは情け容赦なくバイクのアクセルを全開にし、教団兵を真正面から轢き飛ばす。
「ごわあああッ!!」
「こ、この女、躊躇いもなく……」
「手加減でもして欲しかったんですか? 仕掛けてきたのはそちらです」
如何なる悪党でも「いのちだいじに」をモットーに不要な殺人を禁じる千束と、
必要とあらば相手が誰であろうがリコリスの使命の名の下に
見敵必殺(サーチ&デストロイ)を完遂するたきな。
互いに真逆の主義を掲げるリコリスの最強コンビ。
「まったく次から次に物騒なのが出てくる出てくる。とんでもない街に
お引越ししちゃったのかも、私達!」
「……やるじゃない」
鈴音はリコリスの戦いぶりに、低く呟いた。
「よっしゃ、追いついたァ! どっかーーーーーーんッ!!」
フェリシアのハンマーが鈴音の頭上に振り下ろされる。
ひらりと避わすものの、フェリシアに続き、ももこ、レナ、かえで、さな、鶴乃、黒江……
それぞれが戦闘態勢に入り、鈴音の包囲網が完成しつつあった。
「足を止め過ぎたか……やれやれ、どうやら"本番"はこれからみたいね」
「さあ、どうするの? あたしたち全員をひとりで相手にしてみる?」
「それは流石に骨が折れるかもね……けど」
「!?」
チカ…チカ…街灯の灯りが不自然に明滅し始める。点滅のリズムが次第に速くなり、
まるで不吉な警鐘のように暗闇へ警告を鳴らしていた。
夜の神浜の街が不気味にざわめいた。遠くのネオンがちらつき、暗闇に呑まれていく。
張り詰めた空気が次第に重くなり、肌にまとわりつくような嫌な感覚が漂い始める。
寒さとは違う、何か底知れぬ禍々しい気配が空間を蝕んでいった。
「……何……? これ……?」
ももこが息を詰まらせ、背筋が粟立つのを感じた。
かえでも、魔法少女としての本能が警戒心を鋭く刺激され、無意識に身構えた。
「嫌な感じがする……呪い……魔女かウワサみたいな……」
レナがわずかに震える声で呟く。
「……そろそろ来ると思ってたわ」
不気味な静寂の中、天乃鈴音にはその怖気の正体が分かっていた。
「これだけの戦いが起きていれば、奴は必ず引き寄せられる……まるで野次馬ね。
主の性格の悪さが窺い知れるわ」
地面から紫黒の靄が立ち上り、空気が腐ったような悪臭に満たされる。
「何だってんだよ……!」
フェリシアは恐れに負けじとハンマーを強く握り締めた。
「Lycoris Recoil⑨ 呪の函、開く刻」
神浜の街に吹き込む夜風は、まるで死者の吐息のように冷たく、鋭かった。
目抜き通りから少し離れた裏路地――かつて誰かの生活の痕跡があったはずのその場所も、
今はただの忘れられた影の世界。廃棄された建物、剥がれかけたポスター、
汚れたガラスの奥にちらつくネオンの反射が、どこか現実感を削いでいく。
不気味な沈黙が神浜を包む中、空気がひときわ重くなった。
霧のように立ちこめる紫黒の靄は、まるで地面の奥から噴き出す瘴気のようで、
一歩踏み出すごとに靴裏にまとわりつき、身体の芯から熱を奪っていく感覚に襲われた。
その異変に、ももこたち魔法少女もリコリスたちも息を呑んだ。
「……何……? この感じ……」
鶴乃が誰にともなくつぶやいた声が、冷気を孕んだ空気に吸い込まれていく。
一同の視線が自然と靄の中心へと集まる。風は止まり、遠くの街灯がちらつき始めた。
電子ノイズのようにチカチカと明滅する灯りが、街の心臓の鼓動を狂わせるかのように、
不規則に点滅を繰り返す。張り詰めた空気の中で、誰かが小さく息を呑んだ。
やがて、地面がぬめるように蠢き、異様な影が浮かび上がった。
それは形容しがたい“存在”だった。人のような、獣のような、影のような……
定まった形を持たず、見る者の記憶の奥底から何かを引きずり出してくるかの如き、
そんな本能的恐怖を呼び起こす、禍々しき気配。
天乃鈴音が、一歩前に出た。
その銀白の髪が靄に溶け、陽炎のごとき衣がゆらりと揺れる姿は、
光の消えた世界にあってもなお、確かな存在感を放っていた。
「……やっぱり、来たのね」
静かに、しかし確信に満ちた声だった。
「……これは一体……?」
たきなが尋ねる。銃を握る手に、わずかな汗がにじんでいた。
「……“呪の函”。私が取り逃がした“災厄の欠片”よ。
誰があんなものを作り出したんだか……」
その名に、ももこの眉がぴくりと動いた。
「呪い……まさか……」
神浜の街で怪異と戦い続けてきた魔法少女、ももこ。この怖気には心当たりがある。
「いつぞやの、リンボとか言う……」
ももこの語る“リンボ”の名。神浜全土を地獄へと変えた者たち――
ももこのみならず、この場にいる魔法少女たちもその当事者であった。
その気配の重さに、誰もが直感的な危機感を抱いていた。
「呪の函……それが……今、開いたってことですか……?」
さなが呟いた言葉に、鈴音は小さくうなずいた。
「正確には、漏れ出しているのよ。完全に開いたわけじゃない。
けれど……それでもこの有様。もし、完全に封印が破られたら……
この街は“呪い”に飲み込まれるわ」
その言葉の直後、靄の中で、呻き声が響いた。ヒュゥゥ……ウウウゥ……
それは風でも、機械音でもない。“声”だった。
無数の魂が絡み合い、痛みに、怒りに、恨みによって蠢く声。
自我の断片が押し込められ、出口を求めて絶叫し続ける者たちの叫び。
その怨念の波動が、空気を震わせ、地面を揺らす。
地上に立つ者たちの皮膚に焼き付くような“呪い”の感触。
言葉にできない悪寒が、背骨の奥底から這い登ってくる。
「……うう、立っていられない……!」
「ちょっと、しっかりしなさいよ!」
かえでが膝をつき、レナが即座に支える。
「身体が、縛られるような……!」
「これは“呪詛”よ……魔法の理をも侵す、“負の概念”そのもの……!」
鈴音が歯を食いしばった。
彼女が感じるその恐怖と怒りは、過去の失敗に対する贖罪でもあった。
「……私が取り逃がしたから……あれがまだ残っていたから……!」
拳を握る鈴音の指に、悔恨に由来する強い力が込められていた。
そして――その時、空気の流れが変わった。すうっと、白い光が視界の端を横切る。
どこからともなく、ふわりと舞い降りた一枚の花びら。
それは鈴音が忍ばせていた白い彼岸花の花弁だった。
「花が……!」
『素晴らしい……! 何と悍ましい呪い……』
ひとひら、またひとひらと、夜風に乗って降りてくる。
その花弁たちは、まるで引き寄せられるように、紫黒の靄へと吸い込まれていく。
「……吸われてる?」
黒江が目を見開いた。
「白い彼岸花……!」
そう、それは鈴音の纏う衣に咲く、象徴の花。
だが、その花弁が、呪の靄に惹かれるように流れ込んでいくのだ。
『この怨念、この執着……まさに我が理想の具現……』
白い彼岸花の花弁が、次々と呪の函へ吸われていく。
それはまるで、函を開く、最後の鍵。
「ウワサと呪いが合体したってのか……最悪じゃね―か!!」
『ウオオオオオオオッ……』
かくて、呪の函は砕けて散った。穢れなき乙女の鮮血を欲する白い彼岸花のウワサと
世に災厄を振りまくリンボの遺産……両者が合わさり、神浜の街を滅ぼし尽くす悪鬼へと
変貌する。
「なんて事……」
白い彼岸花に見限られた鈴音。その願いを叶える術を失った上に、
呪の函を呼び起こしてしまった。
「こんな……こんなはずじゃなかった……これじゃあ、私は……」
――その時だった。
遠くから、エンジンの唸る音が響いた。
静まり返った神浜の夜に、そのけたたましい音は異様なまでに大きく感じられた。
「え……この音って……」
千束がわずかに顔を上げた次の瞬間――ギャアアアアアアン!!
とてつもない爆音とともに、白のバンが道をぶち抜いて突っ込んできた。
地面を擦るようなスライドターン。車体を斜めに構え、紫黒の靄の手前で急停止。
バンのドアが勢いよく開き、中から身を乗り出したのは――中原ミズキ。
「やっほー! 間に合ったわね、千束、たきなっ!」
その声に、千束がぱっと表情を明るくした。
「ミズキ! 何でここに!?」
「クルミに言われてね。やれやれ……またとんでもない騒ぎに首突っ込んでるわね、
アンタたち……! って、何なのよ、あのバケモンは! アトラクションじゃないの!?」
そう言いながら、ミズキはバンの後部ハッチを開く。中にはびっしりと並べられた
コンテナが何段にも積まれていた。その中身は、改造銃、榴弾、閃光弾、スモーク、
そして大型のガトリングランチャーまで――まるで武器庫だった。
「すごい……! まるで戦争支度ですね」
たきなが目を丸くする。
「リコリスが本気出すって聞いたら、これくらい当然でしょ?」
ミズキは勝ち誇ったように笑うと、コンテナをぽんと叩いた。
「千束、たきな。今こそ“本気の火力”ってやつ、見せてやんなさい!」
「うん、ありがとうミズキ!」
千束は頷き、たきなと視線を交わす。
白い彼岸花を取り込んだ呪の靄がうねり、空が泣き出しそうな夜の帳の下で――
リコリス最強コンビが、この神浜の街で再び“街を守る者”として立ち上がった。
「さぁて、ゴーストバスターズの出動だァい!」
「……あなたにも、責任を取ってもらいますから」
たきなの視線が、鈴音に向けられる。