ひとつまみの嘘

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1人目

「行ってきまーす」

春、それは新しい生活が始まる季節。
桜が舞い散る中新しい学び舎に向かって歩を進めていく。
ふと忘れていたことを思い出し、スマホで電話をかける。
ぴったり3コール鳴った後それは繋がった。

「おはよー。あのね、ついに今日から潜入だね」

「……そう、だな。…任務の内容は覚えているか?」

「もちろん。『天ノ川学園の裏で蠢く陰謀を突き止め、学園の平穏を守る』でしょ?」

「………わかっているならいい。幸運を祈る」

もっと話したいこともあったが、ブツっと電話を切られたので仕方なくスマホをしまう。
マスターは相変わらず無愛想だが最後に幸運を祈るあたり多少心配はしてくれいるらしい。
ツンデレとは恐れ入る。ご馳走様です。

突然だが私、麻生田安乃寧はエージェントなのである。
先の任務を全うするため今こうして制服に袖を通して学園に向かっているのだ。

潜入するとなればバレる訳にもいかないので入学試験はもちろん真っ向勝負。
試験の出来が自己採点して微妙だった時は焦ったけど、なんとか合格して本当に良かった。

それはそれとして今日から私も華の現役高校生。
どんな友達ができるのか、どんな出会いがあるのか、これからの生活にちょっとワクワクしている。
そうこうしているうちに周りに同じ制服を着た生徒も多くなってきた。

(て、テンション上がってきた〜!3年間よろしくお願いします!)






(前言撤回やっぱつれぇわ…)

高まったテンションは教室に入ってからあえなく萎んでいった。
周りでは初対面ながらも初々しく交流するクラスメイト達。
そしてその輪の中に入れていない安乃寧。
そう、何を隠そう安乃寧は陰キャなのである。

先程まで内心はしゃいでいたのが嘘のようだ。
高校生になったら何か変われるのかなとか思っていたけどそんなことは無かった。
変わるためにはやはり自分から動くしかない。が、

(それができたら陰キャになんてなってないんだよねぇ…トホホ…)

一旦寝たフリをして耐える安乃寧。
しかしそんな陰キャの平穏を破るイベントが扉を開けてやってくる。

「皆さんおはようございます。僕はこのクラスの担任の赤部光一(あかべこういち)です。早速ですが皆さんに自己紹介をしてもらいます。出席番号が早い順から…では、麻生田さんからお願いします」

(終わった…)

2人目

ゆっくりと立ち上がり後ろへ振り向く
「はじめまして、麻生田安乃寧と言います。よろしくお願いします。」
あたり触らない挨拶をするとすぐに席に座った。
担任の赤部はすこし困った顔したがすぐに次の番号の生徒の名前を呼んだ。

私の席は窓際の一番前だ。
出席番号に元ついて決められた席だが、いささかい居心地悪い。
次の生徒は、意気揚々にあいさつをし、好きなものや趣味を話している。

やはり、名前だけじゃだめだったかと一人反省会していく中
かわるがわるクラスメイトの自己紹介が進んでいく。
本来なら、次々に行われる自己紹介を聞いてはお友達探しをしたいところなんだが、
今の私はその気になれず、窓の外の空を見上げていた。

そうしてると、しばらくして急に優しく肩をたたかれる。

「大丈夫ですか?やはり、トップバッターは嫌でしたよね」
赤部が私のほうを見下ろす。

「いいえ、別に。順番が変わったところで変わりはないと思います。逆に最初に済ますことができてラッキーと感じるくらいです。」
と苦笑いする。

「そういってもらえると僕も助かります。...... もう自己紹介が終わりそうですね」
赤部はそういうと最後の生徒が席に座るのをみて話を切り上げる。

「これから新入生に向けた式典がありますので、先生の指示に従って移動をお願いします」
赤部は生徒に声掛けし、ほかの教師とともに誘導をしていく。

私も生徒とともに立ち上がり移動し始める。
誘導している先生方を横目にふと思う。

             『私』は『あの先生』が『苦手』

                               だと。