プライベート CROSS HEROES reUNION 第2部 Episode:18

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1人目

「Prologue」

【Lycoris Recoil 後編】

 神浜を襲う異形の怪物。その核に刻まれた呪いと再生能力を打ち破るべく、
リコリスと魔法少女たちが総力を挙げて立ち向かう。
鈴音、ももこ、フェリシア、レナ、鶴乃、かえで、そしてヨダカの翼を得て
空を翔ける黒江――それぞれの想いと力が集結し、怪物の核へと一斉攻撃が放たれる。

 鈴音の渾身の剣撃によって怪物はついに殲滅され、瘴気は夜空から消える。
だがその直後、鈴音が突如としてたきなに刃を向け、戦場は再び凍りつく。
刃と銃――千束が割って入り、互いの急所に武器を向けたまま一触即発の緊張状態に。
しかし、千束の冷静な洞察と鈴音のわずかな迷いが拮抗を崩させることはなかった。
剣を下ろした鈴音は静かに神浜を去っていく。

 明けゆく空の下、リコリスと魔法少女たちは再び日常へ戻っていく。
千束とたきなは喫茶リコリコで普段通りの日常を過ごし、
フェリシアたちもそれぞれの平穏な朝を迎えた。
しかし、戦いの火種はまだ燻っていた――

 その裏で、トゥアハー・デ・ダナンの司令室に届いた匿名の通信。
送信者不明のそのデータには、「バミューダ・クリスタル」という
未知のエネルギー鉱物に関する機密が記されていた。
その性質は、後にメサイア教団の空中要塞「ユートピア・アイランド」における
機雷兵器に利用されることとなる。

 この情報をもたらしたのは、千束たちの裏方を担う天才ハッカー・ウォールナットこと
クルミ。彼女が収集した極秘データにより、バミューダ・クリスタルの冷却安定化特性が
判明。それが後の作戦で、七海やちよの水魔法と連携する“突破の鍵”となるのだった。

 そして物語は――「メサイア教団」の有する天空要塞
ユートピア・アイランドへと繋がっていく。

【ユートピア・アイランド編】原文:霧雨さん

空中に出現し、犯罪者の住まう島を
一つ塵に変えてしまった巨大な『島』、ユートピア・アイランド。
謎の破壊兵器の正体を突き止め、そこに住まうメサイア教団の大司教が一人、
ビショップを倒すべくCROSS HEROES分隊は天空の島に向かうのだった。
そこに待ち構えていたのは、人理の裏切り者である英霊アルキメデスと
ビショップが発明した発明品の数々、そして爆発的なエネルギーの結晶体
『バミューダクリスタル』で出来た機雷群。
迫る機雷群を、ヤムチャの操気弾と一計を講じて突破。島に上陸することに成功。
対する教団側も、教団兵士とビショップの発明である
改良型絶対兵士『ヘイルメス』部隊を襲撃させる。
さらに英霊アルキメデスも到着し、戦闘は激化するかと思われた。
だが、アルキメデスはビショップの命令を無視し、宝具を撃とうとしていた――――。

【ユートピア・アイランド:CROSS HEROES編】

 世界に突如現れた浮遊要塞「ユートピア・アイランド」。
それはメサイア教団が生み出した、超高度から「純化」と称して
地上を爆撃する移動兵器だった。各国が騒然とする中、CROSS HEROESの主力たちは
異世界に出動中で不在。人類は未曾有の危機に直面していた。

 病院で療養中だったウルフマンは、過去に受けた敗北の記憶に苦しみ、
闘う資格を見失っていた。五分刈刑事の忠告を振り切り、
単身戦闘機を奪取してユートピア・アイランドへ潜入。現地でスパイダーマン、
人造人間17号と合流し、要塞内部で暴れる。

 一方、Dr.ヘドが生み出した新たな戦士――ガンマ1号がロールアウト。
彼は正義のスーパーヒーローとして、戦地へ飛翔。ユートピア・アイランド内で、
教団幹部・アルキメデスと遭遇し、科学同士の頭脳と肉体の激突が始まる。

 同時に、Z戦士たちは空中を覆う無数の機雷の突破に苦戦。
だが、ヤムチャの機転と奮戦により突破口が開かれ、CROSS HEROES本隊が支援に向かう。水属性の魔法少女・七海やちよの冷却魔法が結界を打ち破り、
ルフィとゾロが空中から突撃。巨大ロボ・レオパルドンも参戦し、激戦はさらに拡大する。

 ウルフマンは満身創痍ながら、友情パワーと仲間への信頼を胸に、
強敵ヘイルメスと激突。恐怖を乗り越え、渾身の「不知火・雲竜投げ」で撃破する。
ウルフマンは過去の敗北を超え、正義超人として完全復活を果たす。

 その最中、司令塔に座するビショップはなおも余裕の表情を崩さない。
ユートピア・アイランド内部には、さらなる仕掛けと兵器が隠されていた――。

【ユートピア・アイランド:Side『P』】原文:AMIDANTさん

 悟飯を筆頭としたCH分隊が機雷群を抜ける最中で、
ユートピア・アイランド側に異変が起きる。メサイア教団の識別信号を出していた
戦闘機から、ウルフマンとスパイダーマンが侵入を果たしたのだ。
一体何処から現れたか…その答えは、まさかのプーアルであった。
戦闘機に化けれるどころか、見事な擬態をする存在がいるとはメサイア教団すらも
露知らず、見事に潜入を果たす。
そうして表の動乱全てを尻目に、易々と最奥部まで進んだ彼が見たのは、
蜘蛛の様な兵器だった。

 一方、CH分隊とは正反対の方角から機雷群が破壊された。
爆炎の光から現れたのは、なんと完璧・無量大数軍に囚われていた筈の
ネプチューンマンだった。
それも機雷のマグネットパワーを吸収し、全盛期とも言える威風を伴って。
雄々しきソレを前にして、ウルフマンの中で燻っていた英雄魂が、再び火を灯した。
一度は地の底に沈み、しかし熱い闘志を以て不死鳥の如く蘇る、ウルフマン。
己のトラウマに囚われ抗ったウルフマンと、仲間だった者達に囚われ抗った
ネプチューンマン。
違うながらも瓜二つな境遇に、二人の意志が共鳴する…

「貴様等御自慢の兵士だそうだが…私達に叶うかな?」

 両雄、並び立つ。
メサイア教団の誇るヘイルメスの強大な力も、ウルフマンとネプチューンマンには
及ばない。最早敵無しとなった『友情』が最高潮に至った時、
二人がヘイルメスに仕掛けたのは、なんと『クロスボンバー』だった。
嘗て『友情』を失ったアイドル超人の『辛酸の象徴』だったタッグ技。
それが今、『正義』と『友情』の証としてメサイア教団のヘイルメスを下す。
ネプチューンマンをきっかけとした復活劇は、CHの士気を最高潮に引き上げていた。

「この件に適任と言えど、彼もまた『裏切り者』…向かわせるに当たって、
『監視役』を付けるのは当然の事ですよ。」

_その背後に、グリムリパーの完璧な鎖が絡みついている等、彼以外は知る由も無く…

【暗黒魔界編:第一次魔界大戦その1】原文:AMIDANTさん

サイクス達が約束を取り付けた白蓮寺にて、聖暈船がその姿を露わにした。
聖暈船に導かれ、遂に暗黒魔界の一角、『法界』へと出たCH一行。
そうして遠くに映る魔界の大地へ足を踏み入れんとした時、待ち構えていた魔界の者達から襲撃を受ける。
戦いの中、異常な強靭さに疑念を覚えた悟空。
そんな彼に答え合わせで現れたのは、やはりと言うべきか『ターレス』であった。
彼の語る『最強の神精樹』とは、一体_?

2人目

「集合意識の化身、プラナ/魔迎暴弓、血弓のガルード」

 エジプト地下遺跡

「貴様、何の用だ。」
「用?そうだな。分かりやすく言うなら、キミを消しに来たんだ。海馬瀬人。」
 海馬の眼前に現れた、謎の少年藍神。
 彼は何一つ悪びれることもなく、淡々と己の目的を話し始めた。
「消す……。兄様、もしかして世界中で起きている一連の行方不明事件は。」
 その目的―――海馬の消去。
 彼等は知らずとも、世界中で発生している行方不明事件は藍神の仕業。
 その動機とは。
「そうか、お前たちの意識にはそう映ったのか。世界のあらゆる出来事は、人間の集合意識によって決定される。キミが童美野町で独裁者として君臨しているのも、全ては世界中の人間の『そうであれ』という無意識な集合意識がそうさせているに過ぎないのさ。全ての人間が同調し創造/想像し得た、歪で愚かしい人理のためにね。」
「人理だと?」
 藍神は続ける。
「彼らが消えているようにキミたちが認識したのも間違いだ。実際は消えてはなくてこことは少し異なる低次元に移動しただけ。お互いに認識できない次元にね。」
 認識、集合意識、無意識間を、その波動を歩む者たち。
 見たところ、藍神はその中でも筆頭格の存在らしい。
「ボクらは、この物質次元に現れた新たな存在『プラナ』。ボクらの集合意識の波動は常人の七倍。全てはこの世界を変えるためだ。そして、キミは我らの計画を乱す存在。」
 第■の■■■■■■がもたらした新人類、プラナ。そう呼ばれる子供たちが藍神の背後に出現する。
 集合意識の化身たる存在、それが彼らという存在の正体だ。
「―――さぁ、低次元に消え去れ!」
 プラナ達の意識が、海馬に向けられる。
 彼を低次元へ消去しようとその意識を変革する。

「兄様!」
「ッ! うろたえるな!モクバ!」
 だが、この程度の攻撃で屈するような男ではない。
「見よッ!」
 掲げた最新鋭のデュエルディスクが、青い光を放つ。
 青白い光を浴びたプラナの子供たちが、次々に消えていく。
 そのうち、この場に来ていた男が彼のトリックを見抜いた。
「あのデュエルディスクが奴の自我を増幅させ、我らの力に抗っているだと!?」
 強い自我、強固な意志、変え難い決意こそは、人類の集合意識に抗う最大の武器。
 海馬は『どんな手を使ってでも、名もなきファラオと雌雄を決する』という意志を武器に変え、プラナの波動に抗いきった。
 これにはさすがの藍神も、驚きを隠せない。
「ほう耐えたか、面白い。ならば、魔術の札で裁きを与えるまで!」



 数分前 暗黒魔界 鬼岩の山中腹にて
「ガルード様、報告いたします。斥候の天狗部隊が先ほど壊滅状態に。」
 豪胆な鬼だった。
 筋骨隆々、3メートルはあるだろう赤鬼。
 そいつが屍の玉座に座り、頬杖をつきながら報告の鬼の話を聞いている。
「雑魚どもが。ならば俺の『弓』を持ってこい、すぐに!」
「はっ!」

 そして今、ガルードと呼ばれた鬼が岩山の狙撃ポイントに立つ。
 これまた禍々しい金属の弓を手に立ち上がっている。
「この『血弓のガルード』様の領域内に土足で入ってくるとは、愚か者ども。」
 禍き弓に、これまた毒々しい色味の、一見槍と見間違える程の大きさを持つ魔金属の矢をつがえる。
 その剛力を以て強引に引き絞り、迫るアビダインと聖暈船を睨み、狙う。
「この程度でくたばってくれるな、少しは楽しませてくれよ!」
 放たれる嚆矢。
 大きさにして2メートル半はある魔矢がマッハ16の速度と尋常ならざる正確さで迫る。
 狙いはアビダインとその後方の聖暈船の心臓部、竜骨。
 両者を貫通し、破壊することで効率的な殲滅を実行する気だ。

「!」
 矢の接近を察知したザルディンが、槍六本を変形させ龍の形にする。
 その上に乗り、迫る矢を―――斬撃の疾風で破壊する!
「甘い!その程度で撃ち落としたつもりか!」
「ちっ、勘のいい野郎どもが。だが……!」
 その刹那、巨大な矢が爆裂した。
 魔力による起爆、その中から八千本はあるだろう呪鉄の矢が二つの船を襲う!
「まずった、フレシェットだ!」
 ザルディンが青ざめる。

 フレシェット砲弾。
 それは、内部に数千本の鉄の矢を装填した史上最悪レベルの代物。
 魔力を込め、呪いの金属でできた数千本の呪矢を巨大な矢という外殻で覆い、ガルードはその膂力を以て放った。
 全ては確実に、船を轟沈させるために。

「うおおおおおおあああああああああ!?」

3人目

「特別編:繋がりの物語・引き裂く禍津星」

 私の名はペルフェクタリア。魔殺少女。世界を脅かし、人の心を蝕む魔を殺す存在。
ただし、私が守りたかった世界は、もう無い。すべては、私の油断だった。

 アベレイジとの戦いで私が後ろ盾としていた組織。
壊滅寸前にまで追い込まれ、機能不全に追い込まれたものの、徐々にその復旧が
進められていた。そんなある日、ひとつの任務を請け負った。

 異変の始まりは、ただの小さな亀裂だった。
空に走ったひとすじの歪み。それは私の棲まう世界、リ・ワールドの大空に
最初の兆しとして現れた。その歪みから漏れ出した黒き光は、次元を侵し、
世界を蝕んでいく――

「見たな、小娘……ならば、死んでもらうぞ!」
「また新たな悪か……叩き潰す!」

 暗黒結社バダンが開発した、時空破断システム。
世界の壁を破壊する悪魔の兵器によってリ・ワールドへの侵攻を計っていた事を
突き止めた私はこれを迎撃するが、戦いの最中に発生した時空の渦に飲み込まれ、
異世界へと転移してしまう。そこには……

「レェェェェェェェェェェッツ!
マァァァァァァァァァァァァイト・ガァァァァァァァァァァァァイン!!」
『銀の翼に、望みを乗せて! 灯せ、平和の青信号! 勇者特急マイトガイン!!
定刻通りに、只今到着!!』

 超AIを持つ正義のロボット、マイトガイン率いる勇者特急隊隊長、
「嵐を呼ぶナイスガイ」旋風寺舞人。

「ゼ・ク・ロ・スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!! ZXッ!!」

 暗黒結社バダンによってパーフェクトサイボーグに改造されるも、
9人のライダーとの出会いによって正義の心に目覚めた10人目の仮面ライダー。
村雨良こと仮面ライダーZX。

「何でか知らねえが、お前は俺を知ってるらしいな。チビスケの子守りは
第六駆逐隊のひよこどもだけで間に合ってんだがよ」

 気を失った私を保護した、横須賀ではなく、呉鎮守府に所属する艦娘。
リ・ワールドで共に戦った艦娘とは違う、平行世界の同一人物、天龍。

「世界が変わっても、悪い奴はいるものね」
「それを討つが、我らの変わらぬ使命と言うわけですな」
 
 私と同じく、異世界から転移してきた、進化の秘法にて世界を焼き尽くさんとした怪物デスピサロから世界を救った勇者一行の一員、サントハイムの王女・アリーナや
バトランドの戦士・ライアン。

「私も知らない、ウルトラマンだと……?」

【ウルトライブ! ウルトラマン、ギンガ!】

「ギンガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 かつて怪獣から世界を守ったウルトラマンタロウさえも
その存在を知らなかった新世代の戦士……
「ニュージェネレーション」ウルトラマンギンガに変身する青年、礼堂ヒカルなど……
世界を守る戦士たちとの出会いが私を待っていた。

 しかし、世界に存在するのは必ずしも正義だけだとは限らない……

「一般将校は黙っていろ! ここはティターンズの拠点である!!」

 艦娘のような海軍とは一線を画す、連邦軍の強硬派エリート軍閥・ティターンズ。

「勇者特急隊! またしてもわたくしの邪魔をして!」
「今日こそわしの自慢のメカで叩き潰してやるわい!!」

 巨大ロボットを操り、ヌーベル・トキオシティを騒がす凶悪犯罪の数々を引き起こす
美しき女窃盗団の頭領カトリーヌ・ビトンや悪の天才科学者ウォルフガング……

「旋風寺舞人! お前の正義面には反吐が出るんだよ!!」

 舞人の永遠の好敵手、雷張ジョー。ウォルフガングが開発した新型ロボットを駆り、
マイトガインを苦しめる……

「祭りの場所は……ここかァ……!」

 ミラーモンスターと契約し、仮面ライダー王蛇の力を手にした死刑囚、浅倉威……

「分かっただろう? 人間とは愚かなる生き物だ。
すべての生命は、生きる限り戦いも憎しみも捨て去る事が出来ない……
ならば、永遠の静寂の中で……」

 タロウや怪獣たちの時間を奪い、無力な人形・スパークドールズに変えてしまった
闇の巨人、ダークルギエル。

「旋風寺舞人、ペルフェクタリア。そしてここに集うヒーローたち!
お前たちも所詮は我々を愉しませるだけに用意された駒にしか過ぎなかったのだ。
予言しよう。ヒーローが世界と共に滅びる、悲劇のエンディングをな!」

 ヌーベルトキオシティの犯罪者たちをも影で操っていた高次元の存在、ブラックノワール。   その在り方は、まるで……

「あらゆる組織が成し得なかった、世界征服の夢をこのわしが、バダン帝国が、
見事やり遂げてみせる! 貴様らの屍の上にな!!」

 ショッカーから連なる9つの悪の組織を影から操っていたバダン総統……
正義と悪の戦いはついに、最終局面を迎える……

「行くぜ、ギンガ! ギンガエスペシャリー!!」
「ルギエル。悲しみや過ちが起きたとしても、それを乗り越え、
より良い未来を次の世代へ受け継いで行く……それこそが、決して終わることのない……
永遠の命なのだ」

「その通りだ。それこそが、正義の系譜。今こそ、9人の仮面ライダーの力を、
ZXに結集させるんだ!!」
「おう!!」

「ライダー! シンドローム!!」

「舞人さん、負けないで!」
「サリーの想い、受け取った! 行くぞ、ガイン! 例えこの命燃えつきても、
悪が滅びるまで俺達は戦い続ける! 動・輪・剣!!」

「艦娘として生まれたからには、死ぬまで戦うだけだ! そうだろうが! 龍田!!」
「生きるも死ぬも、ずっと一緒よ、天龍ちゃん」

「暁も!」
「雷だって! そうでしょ、電!?」
「み、みんな一緒に生きて帰るのです!」
「это верно……む、すまない、つい言葉が」

「デスピサロに負けずとも劣らずの難敵ばかりですな、姫様」
「相手が強いほど、燃えるってもんだわ! ブライ、クリフト! 遅れないでよ!」
「姫様、このクリフト、何処までもお供致します!」

 かくして、正義の戦士たちは全ての悪を打ち倒し、並行世界の平和を取り戻した。

「ありがとう、みんな……」

 私は呟く。異世界で出会った仲間たちに別れを告げ、
たりあが待つ、リ・ワールドへと帰っていく。
そこに待ち受けていたのが、「奴」であるとも知らずに……

「!? な、何だこれは……一体、どうなっているんだ……」

 世界が色を失っていく。遠くから聞こえる悲鳴もやがて聞こえなくなる。

「ようやくお帰りかい、魔殺少女。丁度良かった。もうすぐ終わるところさ。
この世界がね。異世界旅行は楽しかったかな?」
「貴様の仕業か……!! 何者だ!?」

 空中に浮かび上がり、世界の終焉をせせら笑う男。その名こそ……

「禍津星穢。覚えなくて良い。どうせ君もここで滅びる。
グランドクロスの裏切り者ちゃん」
「!? グランドクロス……リブラから聞いたことがある……」

「そう。下請けの後始末をしに来たスポンサー……ってところさ。
まったく手間をかけさせてくれちゃって……」
「ふざけるなあああああああああああああッ!! うああああああああッ!!」

 叫ぶままに、私は禍津星に殴りかかっていた。
これが、今日まで続く私の戦いの口火であったのだ。

4人目

「幕間:弥海砂の墓標 その1」

 SPM本部

『……まさか、本当に浮遊島(ラ・ピュタ)があったとは。』
「私もまだ、驚きを隠せてないです。」
 ニアとファルデウスが電話をしている。
 浮遊島ユートピア・アイランド。
 現在戦闘が行われている話題の島に、SPMのメンバーは赴いていない。

『でも、良かったのですか?あの島を捨て置いて。』
「我々には我々のすべきことがある。世界中の警察、特に下層部や中層部の中でも教団否定派を動かし地上にある教団のアジトを潰したり、教団信徒の暴走の鎮圧、事情徴収。いろいろ忙しい。少数精鋭である現状、今は我々ができることをいたしましょう。」
『なるほど。』
『ところで、霧切響子はどうですか?』
『霧切さんは……まだですね。復讐心をぬぐいきれてない。時たま鏡の前で『教団を殺せ』って言ってますよ。心の傷は相当大きいらしい。』

「で、要件はこれだけですか?ファルデウス。」
『いえ、少し懸念すべき点がありまして。ニア。あなたの率直な意見をお聞きしたい。』
 
 一呼吸おいてから、ファルデウスは今まで考えていたことを聞いた。
『記録によれば、全ての発端であるキラ。即ち夜神月は裁きを行う際に『デスノート』というものを用いて裁きを実行したとあります。であれば、魅上がもう一度そのデスノートを使うことはありますか?というより、デスノートが再び使われることはありますか?』
 デスノート。
 人物の顔を思い浮かべながら名前を書くだけで、その人物を死に至らしめられる死神の書物。
 過去、キラ―――夜神月や魅上らはこれらを用いて犯罪者裁きを実行したが、最終的にはニア達が勝利し夜神月は死神リュークの手により介錯、ついにキラは絶命した。

「結論から言えばそんなことはないでしょうし、そもそもやりたくてもやれないのでしょう。何しろ話に聞いた『存在しなかった世界』からこちら側を一方的に覗き、その上でこちら側からは手出しができない。そんな環境にいながらノートによる殺人が現在まで一度も発生していない。」
 冷淡に自分の意見を言いきった。
 と言っても、冷静に考えれば「その通り」としか言いようがない。
 存在しなかった世界はこの現実世界や特異点、幻想郷とも異なる虚数空間の最奥に存在し、地上側からはなかなか手が出せない位置にある。
 乗り込むというのならそれこそ、虚数属性の防護を纏わせた軍艦なり戦闘機なりを用意するしかないが、魔術的にも物理的にもコストがかさむ以上、現実的ではない。
 余程のことがない限り安全としか言えない環境に身を置いている上に、さらに教団側には『地上の様子を一方的に覗き見る魔術』を持っている。
『でも、ノートによる殺人は対象人物の顔を見ながらでないと……あっ、そうか。記録にあった『死神の目』を、魅上が獲得できる状態にあるのにも関わらず殺人が発生してないというなら。』
「そうです。そして事実、あの時の魅上には死神の目があった。」
 それだけではない。
 デスノートの所有者には、残り寿命の半分と引き換えに顔を見ただけでその人物の名前が分かる『死神の目』を獲得できる権利がある。
 魅上は、寿命を厭わずそれを用いて悪人を裁いていた。
 安全な場所、遠見の魔術、死神の目。
 まさにこれ以上ないほどデスノートを運用するのに適した環境に身を置いていながら、デスノートによる裁きは夜神月の死後一度も発生していない。
 ならば考えられるのはただ一つ。
「兵を送り込んで手がかりをバラまき続けるより、安全圏から主要人物を殺人した方が効率的です。それを実行するのに最高の環境があるのにノートを使ってこないのなら、もう『使いたくても使えない状態にある』としか言えないでしょう。例えば死神のトップともいえる存在に、キラ事件を二度と起こさせないよう回収を命じられたとか。理由も想像できます。」
『とにかく、そういう事なら良かった。』
 ファルデウスも「ありえないだろうな」と内心では思っていたのか、再認が出来て安心したような声色だ。

「それともう一つ、『二人目』のキラである彼女の事ですが……。」
「弥 海砂の事ですか?」
 弥 海砂。二人目のキラである少女。
 彼女は一連のキラ事件の後、行方知れずになっていた。だが―――。
「記録によれば、廃人になった数日後病院内で死亡したとありますが、一体何があったのでしょうか。」
 ニアは少し考えたのち、淡々と言った。

「夜怒りで眠れなくなってもいいなら、ある程度の推察を交えてお伝えします。」

5人目

「CROSS HEROES reUNION EPISODE:ZERO」

「ううッ!! ああああッ!! でやあああああああああッ!!」

 ペルは、殴った。拳を、叩きつけた。叫びながら、怒りのままに。
だが――それは、まるで虚空を打つかのように。

「ははっ……いいね、いいねえ……その眼、気に入ったよ」

 禍津星穢――その男は涼しい顔のまま、指を鳴らす。
直後、空気が震えた。世界が悲鳴をあげるように、空に無数の裂け目が生まれる。
地が軋み、空が落ち、街が泡のように崩れ去っていく――

「な……何が……っ」

 立っていられない。全身を襲う、異様な重圧と震え。
この世界に戻るまでの転移は、ペルの肉体と魔力を限界まで消耗させていた。
……ペルは異世界で、戦い過ぎたのだ。
異世界で出会った仲間たちと共に、戦い抜いて、ようやく――その結果が、これか……

「疲れてるんだろう? そりゃあ当然さ。君はよく頑張ったよ」
「黙れぇぇぇぇぇぇッ!!」

 渾身の一撃。だが、あっさりと禍津星の腕に受け止められる。

「おしまいだよ、魔殺少女」

 次の瞬間、禍津星の手から放たれた光が、私の胸を貫いた。

「――ッ!!」

 世界が、赤く染まった。
気がつけば、ペルは地に伏していた。世界の崩壊は止まらない。
都市は沈み、空は黒く、魂の悲鳴があらゆる方角から響いていた。孔を穿たれた体内から、
彼女の動力源である魔力コアが露出している。

「じゃあね。そこで世界の終わりを見届けるが良い! はははははははは……」

 高笑いとともに消え去っていく禍津星を、地に伏せたペルはただ見送る他に無かった。

「ごほっ……」
「ッ、ペル!!」

 その声に、意識が引き戻された。
……たりあ。 ペルの、全てだった少女。彼女は瓦礫の間から駆け寄ってきて、
ペルの体を抱きかかえた。

「もうだめ……このままじゃ、ペルが……!」
「に、逃げろ……たりあ……お前まで……」

「……わたしが、守る番だよ。ペルが、ずっとわたしにしてくれた事……」

 たりあは涙を浮かべながら、ペルを抱きしめた。
その瞬間、彼女の身体がふわりと光に包まれ、ペルの身体ごと時空の縁へと放った。
世界の滅びにも耐えられるだけの、護りの光……

「たりあ……何を……」
「無事でいて……ペル……」

「たりあ……ダメだ……! たりあ……! たりあがいなければ、私は……
どうすればいいんだ……!! たりあーーーーーーーーーーーーーッ………」

 そして、リ・ワールドは――崩壊した。
街は飲まれ、命は絶え、ただ、禍津星穢の嘲笑が虚空に響いていた。

 ――一方、その頃。ペルと時同じくして異世界へと転移し、
「交響界事件」に巻き込まれた、ひとりの魔法少女――暁美ほむら。
記憶を失い、異世界に飛ばされた彼女は気づけば、戦乱に満ちた世界で目を覚ましていた。そこには――鹿目まどか、巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子。
かつての仲間たち……だが、彼女たちもまた、記憶を曖昧にしたまま、戦っていた。

 彼女たちは、「幾つもの異世界から召喚された英雄たち」……
神話、機動兵器、忍法、魔法、異能、そして魂の願いすらも入り混じる、混沌の戦場。

「私……何を……忘れてるの……?」

 繰り返す悪夢の中で、ほむらは思い出す。
――アベレイジとの戦いの後。ほむらは世界を守り続けていた。
まどかのいない、この世界を。まどかが残した、この世界を。
仲間も、希望も、すでに遠いものだった。やがて、彼女のソウルジェムは深く、
濁った黒に染まり始める。
そんな彼女を狙っていた存在がいた――インキュベーターたちである。

「ほむらのソウルジェムが濁りきるその瞬間、君たちの“神”――
鹿目まどかは再び現れるだろう。
その機を逃さず、彼女を観測し、エネルギーに変える。僕たちの勝利だ」

 だが、さやかと百江なぎさがその陰謀を察知していた。

「……大人しく黙ってると思った? アンタにもう……まどかを利用させない!!」
「円環の理の守護者を舐めてもらっては困るのです」

 そう。美樹さやかも、百江なぎさも、もはやこの世の人間ではない。
いつか魔法少女となり、絶望とともに魔女に成り果てた者たち……彼女たちは
円環の理の中で、神となった鹿目まどかと共に世界の秩序を守護する存在となった。
力尽きたほむらを迎え入れるために、現世へと降り立ち、インキュベーターの動向を
探っていたのだ。

 かくて、インキュベーターの企みは潰えた。
しかし、禍津星穢の世界崩壊は、すべてを変えてしまった。
リ・ワールドに復帰した魔法少女たちが見たものは、この世の終わりだった。

「何!? 世界が……壊れる……!?」
「どう言うこったよ、さやか!?」

「分からないのです……」

「……まどかを、今度こそ救うために――私は、選ぶ……」
「ほむら、ちゃ……!?」

「!? 暁美さん、あなた、一体何を……」
 
 ほむらは円環の理から、まどかを引き裂いた。
神である彼女の一部を、「人間」として取り戻す。その代償として、因果は捻じれ、
秩序は破壊される。

「ダメ、ほむらちゃん……! わたしが……裂けちゃう……!!」
「まどか……もう離さない……何処にも行かせない……例え世界が滅んだとしても……
貴女だけは……」
 
 ――そして、ほむらは魔法少女も、魔女も超越した……悪魔となった。
自らソウルジェムを砕き割り、新たなる力・ダークオーブを生み出し、
世界の理をも書き換える力を手に入れた。すべては、まどかへの愛のために……

 彼女は見滝原の魔法少女たちをも巻き込み、世界の外に新たな次元を創造する。
それが、偽りの見滝原。

 崩壊したリ・ワールドからの脱出。
禍津星穢の破滅からの逃亡。
まどかを護るための檻であり、聖域であり、そして、愛の最果て。

「この街では、誰もまどかに手を出せない。誰にも、させない。
すべてを忘れて、ただ、平和に……わたしが、守る。絶対に」

「ほむら、ちゃん……?」
「貴女は……平坂たりあ……そうね……貴女もまどかの力の一端を宿す者……
だとすれば……」

 こうして禍津星穢は去り、次なるは日向月美が暮らす世界へと侵攻……
傷ついたペルフェクタリアは失意と共に時空の狭間へと落ち延び、
平坂たりあは精神体のみとなって偽りの見滝原へ。

「私は……もう、迷わない。何度だってまどかを守る。そのためなら――」

 少女は神の魂を裂き、円環の理からまどかを引き離した。
世界の法則を壊し、円環の秩序に逆らい、光の神を引き裂く。
まどかの神性と人間性を分離し、彼女の願いすらも打ち砕いて。

「――私が、悪魔になってでも、あなたを救う」

 かくて、暁美ほむらは悪魔となった。
禍津星の滅びの現象から逃れ、全ての因果を捻じ曲げ、偽りの街・見滝原を創造する。
彼女の悪魔的魔力によって、世界の終焉を逃れた少女たち――
それは、ほんの一握りの残滓だった。

 リ・ワールドは死んだ。
だが、その残滓に宿る祈りと、かすかな希望だけが、繋がりの物語を継いでいく。
いつか途切れた、交錯する英雄たち……CROSS HEROESの物語として。

6人目

〈第一次魔界大戦:Revenging soul〉

魔界へと辿り着いたアビダインと聖暈船、二隻の船に立ちはだかるは、強大な力を奮う魔界の者達。
そして死んだ筈のターレスだった。

「全く、陸まで通す気は無かったんだがな。」
「…まさか、オメェ。」

言外に法界で落とす気だったと言うターレスに思う所があるのか、どこか神妙そうに零す悟空。
対し、ターレスは悪意に満ちた笑みで以て返す。

「クックック…お察しの通りさ。」

憤怒と憎悪の入り混じった声色に、気を張り詰める悟空達。
対しターレスは、懐から禍々しい色合いをしたこぶし大の物体を取り出す。
ソレに、悟空達は見覚えがあった。

「ソイツでアイツ等を凶暴にしたのか、懲りねぇ奴だ。」
「あぁ、これも確かに『神精樹の実』だ。」

色こそ違うが、やはりそうだ。
神のみが食す事を許される、禁断の果実。
この宇宙にいた彼も、今ここにいる別世界の彼も、幾度と無く食い、力を付けてきた代物だ。
そしてまた、ためらいも無く齧る。

_ゾワァ

瞬間、周囲一帯に掛かる異様な圧。

「…今まで食ってきた奴の比じゃねぇな?」

さしもの悟空達も驚いたのか、冷や汗を一滴流し、顔を顰めた。

「こっちは驚いてくれたようだな。そうさ、コイツは格が違う。」

ターレスは嗤う。
膨れ上がった圧も相まって、不気味さが際立つ。

「コレこそ、俺が真に求めていた力…貴様等も、最早俺の敵じゃない。」

醜く歪んだ口から紡がれた、傲りの塊。
酷く不愉快な声色に対し、悟空は。

「……」

しかし悠然と腰を落とし、戦いの構えを取る。
静かに相手を見据える顔付きにあるのは、ただ、闘志のみ。
ソレが面白くないのか、ターレスは不機嫌そうな顔つきで首を鳴らし。

「…貴様の舐め腐った態度も、今日を以て終わりだ。俺の復讐を以てなッ!」

瞬間、空を裂いて悟空に殴り掛かるターレス。

「コイツ、前よりずっとはえぇ!?」

悟空は咄嗟に両腕を交差させ、どうにか凌ぐ。

「流石に見切るか。だが、まだほんの挨拶代わりだっ!」

言うが早いか、続けざまに拳と足蹴りが飛んで来る。

「ウォリャァ!!」
「ぐっ、うぐぅ…なんつぅパワーだ…!?」

悟空を襲うマシンガンの如き連撃は、次第に加速している。
悟空は防戦一方だ。

「どうした、守ってばかりか!?」
「こ、の…っ!」

あらゆる方向から仕掛けられる嵐の様な猛攻に、防御すら覚束なくなる。
そして…遂に悟空の腕が弾かれた。

「隙だらけだ。」
「やべっ_」

突き抜ける一閃。

_ズドンッッ!!
「かはっ…!?」
「悟空!!?」

肉を穿つ、鈍い音。
鳩尾に深々と刺さった拳に、悟空の眼孔が揺れる。
その隙へ、ターレスが付け込んだ。

「がっ、はぁっ、うぐぁ!!?」

速度の増した連撃が、悟空を襲う。
二十、三十発と直撃する殴打撃、肉体の軋む痛々しい打音。

「ハァッ!!!」
_ズドォンッ!!
「がぁーーーっ!!?」

そして最後に打ちこまれた鋭い蹴りが、痛烈な音を立てて悟空の身体をぶっ飛ばした。
風を切って、甲板スレスレを跳ばされる悟空。

(やっ、べぇ…アビダインに、ぶつかる…!)

明滅する意識の中、悟空は焦る。
身体の向かう先は戦艦の装甲だ。
岩山に突っ込むのとは、訳が違う。

「「今行くぞ悟空ーっ!うぉぉりゃあぁぁーっ!!」」

そこへ、ビッグ・ボンバーズが飛び出た。
前屈みに構えて悟空を受け止める。
だが…

_ドンッ!ザザーーッ!
「お、もい!?」
「身体が止まらねぇッ!?」

なんと二人が、悟空の勢いのまま後方へ押し流されるではないか。
驚愕に満ちた二人は、しかし辛うじて踏ん張って立ち続ける。

「「止まれェーーーッ!!」」
_ザァー…ゴトンッ

数m程押し込んだ所で速度が落ち始め。
結果、壁に背を付けた辺りでギリギリ止まったのだった。
一息付くビッグ・ボンバーズに、意識が回復した悟空が礼を言う。

「ハァー…わりぃ、カナディ…イテテテテッ…!」
「気にすんな、それより自分の心配をしろよ。」
「だね。けどあの人、とんでもない力だ…」

少し震えた声でそう零すスペシャルマン。
超人が二人掛かりで抑えた上で、こうも後ろに追いやられたのだ。
それも、悟空を蹴った後の慣性の力のみで。
ターレスが今持つ力が想像を絶する事だけは、二人にも理解できた。

「ククク…パワーが違い過ぎて、戦いにならないようだな。」

甲板に降り立ったターレスは、不敵に嗤う。
悠然と歩を進め、余裕に満ち溢れていた。
そんな絶望感漂う状況の中_

_ドォー…ォン!!
『_まずった、フレシェットだ!』
「な、何だ…?」

不意に、上空から轟く声音。
一同が見上げた先で目に映ったのは、空を埋め尽くさんばかりの黒点。
紫煙の雲を背後に広がるソレに、誰もが悍ましい物を感じた。

「…チッ、ありゃあガルードの分裂する矢か。」

ターレスが正体をぼやいて答え合わせをしたかと思うと、飛び跳ねて一気に後退。
すれ違いざまに、邪気を感じる無数の矢が迫りくる。

「不味いな、ありゃ船まで遣っちまうぞ…!」
『ガ、ガルードの奴、俺達ごと遣る気か!?』

CH一行は勿論の事、魔界の者達ですら慌てふためく。
壁の如き矢の密度は、黒い空が堕ちてくるかのようだ。
絶望が戦場を掻き消す…その時だった。

『私に、任せて貰おうッ!!』

戦場に響く、警告の声。
直後、アビダインに巨大な影が差す。

「今の声…まさか!?」
『_肉のカーテンッ!』

アビダインの前方で聳え立つ、肌色の巨人。
他でもない、キン肉マンだ。
防御技たる『肉のカーテン』を構え、矢を迎える。

_ズガガガガッ!!
『えぇい、矢がなんぼのもんじゃい!』

衝撃と風圧が、戦場を席巻する。
しかしキン肉マンはビクともしない。
まさに鉄壁。
誰もが彼の背を見上げ、感嘆の声さえ漏らしていた。

『へのツッパリは要らんで_うぐぅっ!?』

_だが。
突如として、キン肉マンが苦悶の声を上げる。
すると『肉のカーテン』が解け、身体を捩りながら元に戻り始めているではないか。
左脇腹から、血を散らしながら。

「しまった、あそこは古傷が…!」

『肉のカーテン』でも、傷は十全には塞げない。
キン肉マンが幼い頃に負った左脇腹の古傷を、呪矢が抉ったのだ。

「ぬわぁーーー!?」

縮みながら落下するキン肉マン。
そして呪矢の雨は、聖暈船へ向かう分こそ凌いだが、アビダインを襲う程度はまだ在る。
今度こそ絶対絶命か、という時だった。

『_総員、陸に降りたまえ。』
「っ皆!降りるぞ!!」

気付けば回転していたアビダイン後部から、サイレンが響いた。
CHの面々が急いで陸へと飛び降りると、そこから伸びた巨腕がキン肉マンを掴み、"爆発を起こしながら"矢を受ける。

『アビダイオー、アクション。』

黒煙を振り払いながら露わになる、白亜の機兵。
呪矢を受けた筈の装甲には、傷一つ無かった。



爆発反応装甲。
通常の装甲に張り付ける、爆薬を内包した使い捨ての装甲。
敵の砲弾等を受けた際に爆発し、弾の威力を削ぐ効果を持つ。

7人目

「最後の葬儀屋」

 砕けた世界の残響が黒い虚無を漂っていた。
光の破片、ひび割れた空、軋む音もなく消えていく物語の断片。
その中央に立つのは、黒い鎌を肩に担いだ青年――禍津星 穢(まがつぼし けがれ)。

「……僕はね、葬儀屋なんだ」

 赤い瞳がかすかに笑う。
指先でそっと触れると、光の破片が静かに砕け散った。

「積み木の城をそっと倒す。作りかけの世界を壊す。完成寸前の世界を壊す。
それが、僕の役目。その積み木が高ければ高いほど良い。崩れた時、良い音がする」

 禍津星穢は、修復されず棄てられた異世界の“核”から生まれた。
感情を持たず、秩序を知らず、ただ壊れゆくものの中で目覚めた存在。

 初めて触れた世界は未完成の物語だった。
誰にも読まれず、救われず、放置されて消えるはずだった場所。
触れた瞬間、音を立てて崩れ去った。当然だ。存在強度など最初から無いに等しい。

「……楽しかった。はじめての感情だった。何物にも代えがたい感覚。
崩落する建物。断末魔の悲鳴。助けてくれと僕の足にしがみつき、消えたくないと
言いながら足先から炭になっていく人間の顔は傑作だった。また壊したいと思った」

 それが穢の生まれの証だった。自分は他者を壊すために生まれたのだと。
憎しみ、哀しみ、苦しみ……それらを貪って生きる事こそが至福。
歴史の裏側で暗躍する巨大な影――グランドクロス。
暗い円卓に集う皺だらけの老人たち。その背後には、異世界の巨悪たちの影が潜む。
ショッカー大首領。皇帝ジークジオン。竜王。マモー……

 アベレイジがリ・ワールドにて組織を裏切ったペルフェクタリアと
その仲間たちによって壊滅、最後の手段としてグランドクロスの統合思念体たちが
レベラ・リブラの肉体を乗っ取り、巨大な怪物と化したものの、
それも神子の力に覚醒した平坂たりあとペルフェクタリアによって退けられた。

『魔殺少女ペルフェクタリアは失敗だった。感情を得て、裏切った。
魔の力を以て、万物を殺し尽くすための存在であったはずのものを』
『ペルフェクタリアの本体である平坂たりあ共々、彼奴らを分断させよ』

『仮面ライダーディケイドがオーマジオウによって消されたのは好都合だった』

『暁美ほむら。奴もディケイド同様、様々な世界を渡り歩いてきた厄介者だ。
刺客を次々に送り込んで消耗させ、ソウルジェムとやらを濁らせてしまえば、
無力化出来る』

『大召喚によって並行世界の邪魔者共を一挙に始末する計画も頓挫してしまった。
その生き残りである日向の退魔師の娘も後々障害となるやも知れぬ。
まだ未熟である前に一族郎党すべて殺せ』

 老人たちの声が飛び交う中、集うグランドクロスの幹部たち。
完全機械化の人型兵器、オルデ・スロイア。
異世界の技術を解析する、オーバーテクノロジー収集者、ネブラークス。

『次が必要だ。くだらぬ情に左右されぬ、純粋な破壊の器――禍津星 穢。ここに』

 そして、穢が笑みを浮かべる。黒い鎌を差し出す皺の手。穢は迷わずそれを受け取った。

『わかったよ、じいさま』

 こうして穢は、世界を終わらせる老人たちの“指”――葬儀屋となった。

『終わりの使者は僕だ』
『ならば行け』

 影の中、老人たちの声が響く。

『並行世界の技術を回収し、破壊し、支配せよ』

 ――老人たちの命令通り、穢は世界を次々と滅ぼした。
本来なら、彼の目論見通りすべてが終わったはずだった……なのに。
まだ生き残っている者たちがいる。
 
 アベレイジを壊滅させた一員、そして今は自らの世界・偽りの見滝原を生み出し、
グランドクロスと睨み合いを続ける悪魔、暁美ほむら。
交響界事件の生還者で、時空を渡る奥義を一族に伝承する日向の退魔師・日向月美。
そして、裏切り者の魔殺少女、ペルフェクタリア。

 彼にとって、その存在は――葬儀屋としての仕事の汚点だ。
葬った者の亡骸を捨て置く葬儀屋などは何処にもいないだろう。

 ――そして、現在。オルデもネブラークスも戻っていない。
恐らくは何処ぞの任務先で朽ち果てているのだろう。
いなくなった奴らの事などどうでもいい。
穢の背後、積み木のように並ぶ並行世界の断片が並ぶ。

「魔殺少女、ペルフェクタリア。日向月美。君らが何度立ち上がっても、
何を守ろうとしても――最後は僕が、指先で壊してあげる。
それが終われば、次は暁美ほむらだ」

 そして穢の赤い目が鋭く光る。すべてを焼き尽くす業火が如く。

「だって僕は、世界を終わらせる者。選ばれし、最後の葬儀屋だから」

 ぺた、ぺた、と裸足の足音が聞こえる。
有機物と無機物の融合、アベレイジの最後の遺産。無垢なる殲滅少女、ブーゲンビリア。
赤いの花弁を髪に飾り、半身が植物、その幼い身体の至る箇所を兵器に変化させる
無垢なる侵食の兵器。青い瞳を細め、くすくすと笑う。
穢は背を向けたまま、鎌を肩に担ぎ、語る。

「……クソガキか。随分派手に『喰ってきた』ようだな」
「バイキング、たべほうだい」

 それは、アベレイジがまだ組織として存在していた最後の時期。
グランドクロスの監視下で、アベレイジは極秘の研究プロジェクトを進めていた。
コードネームは――プロジェクト・ブーゲンビリア・モデル。

「完全兵器の創造」
「自己修復能力を持つ生体侵食体」
「敵を無差別に飲み込み、同化する戦闘兵器」

 アベレイジはあらゆる超技術を収集・管理し、世界の均衡を保つ天秤としての
役割を果たそうとした。だが、リ・ワールドに蔓延る悪しき存在とのコネクションを
確立し始めてから組織は次第に歪み始めた。

『次は、人間でなくていい。次は、感情を必要としない』

 そうして作られたのが、ブーゲンビリアだった。
彼女のベースとなったのは、実験体B-13。遺伝子改造と生体侵食技術を融合させ、
花のように増殖する修復細胞と、人の形を模した外皮を与えられる。
加えてその遺伝子の持ち主はは超能力者の素養も持ち合わせていた。
青く透き通った瞳は未来を予見し、赤い花弁に覆われた髪。小さく、華奢な少女の姿。
人の養分を吸収し、傷つけば再生し、戦えば戦うほど強化される。
その無垢な笑顔の奥には、兵器としての冷徹さと飢えが宿っている。

 計画に参加していた研究者のひとりが、ある日ぽつりと呟いた。

『ブーゲンビリア。
――花言葉は『情熱』『あふれる魅力』。そして、『あなたしか見えない』。
何とも皮肉なネーミングだな』

 ペルフェクタリアの裏切りにより、アベレイジは壊滅した。
残されたのは、最終兵器として凍結されていたブーゲンビリアだけ。
彼女は、アベレイジがグランドクロスに捧げた最後の遺産となった。

 再起動の日。
氷のように冷たいカプセルの中で、小さな目が、そっと開いた。
その時の彼女はまだ知らなかった。
自分が、誰かに愛されるためではなく、ただ破壊のために生み出された兵器であることを。

「けがれくんも、すこしつよくなった?」
「じいさまたちに言われて、あちこちの世界を崩してきたからな。その褒美さ。
あの世界も、そろそろ終わる。メサイア教団の馬鹿どもが、自らの世界を捨てる事で」

8人目

「勇者対勇者その2、偉大な勇者参戦」

リ・ユニオン・スクエアにてメサイア教団の兵器ユートピア・アイランドとCROSSHEROES達が戦う中、ついに魔界に突入し暗黒魔界との戦いが始まったアビダイン隊。
2つの世界で新たな激戦が繰り広げられる中でも、特異点でのミケーネとの戦いは、まだ終わりを見せることはなかった。



「はぁ!」

勇者アレク&バーサル騎士ガンダムVS勇者ガラダブラは互角の状況が続いていた。

「見事な腕だ、2人がかりとはいえこの勇者ガラダブラと互角とは……だが」

「ぜぇ…ぜぇ…」

「生身の身体である貴様らでは機械の身体である我らと違って長期戦になれば体力の限界が来る……そこだけが惜しいところだな」

「くっ…!」

「さて、そろそろ終わりとさせてもらおう…!」

勇者ガラダブラが2人にトドメを刺そうとしたその時…!

「サンダァァァブレェェェェェク!」

「っ!」

ガラダブラに向けて落雷が落ちる!

「ぬぅ!?なにやつ!?」

ガラダブラが空を見上げると、そこにはグレートマジンガーの姿があった。
そう、今の落雷はグレートマジンガーの放ったサンダーブレークだったのだ!

「勇者同士の戦い、この剣鉄也と偉大な勇者グレートマジンガーも参加させてもらうぞ」

「貴様……話に聞いてたもう一体のマジンガーか。
いいだろう、貴様も相手してやる!はぁ!」

ガラダブラはダブラスm2の二つの頭からビームを放ってグレートマジンガーを攻撃する。

「ブレストバァァァン!」

それに対してグレートマジンガーはブレストバーンを放って相殺!

「今度はこちらの番だ!アトミックパンチ!」

続けてグレートマジンガーは反撃として片方の腕でアトミックパンチを放つ。

「そのような攻撃!」

ガラダブラはアトミックパンチを撃ち落とそうとするが

「グレートブーメラン!」

「なに!?」

グレートマジンガーはアトミックパンチを放った後、すぐさまアトミックパンチを放ってない方の腕で胸の放射板を取り外し、ブーメランのように投擲する!
これにより正面からまっすぐ飛んでくるアトミックパンチと曲がって横から飛んでくるグレートブーメランで2方向からの同時攻撃が可能!

「うぐっ!?」

たった1機で2方向からの同時攻撃をしてくると予想してなかったガラダブラにアトミックパンチとグレートブーメランの両方が直撃する!

「まさか、たった1機で2方向からの同時攻撃を行うとは……中々やるではないか…!そうなくては面白くない…!」

「……お前達、まだいけるな?」

「あぁ、当然だ」

「我々の後ろにはこの街の人達がいるのだ。民を守るためにも、決して最後まで諦めるつもりはない」

「ふっ、それでこそ勇者だ。マジンガーブレード!」

グレートマジンガーはマジンガーブレードを取り出し構える。

「いくぞ!」

「「あぁ!」」

「さぁ来い!この時代のCROSSHEROESの勇者達よ、まとめて相手してくれるわぁ!」

勇者アレク、バーサル騎士ガンダム、そしてグレートマジンガー。
CROSSHEROESの3大勇者がミケーネの勇者ガラダブラに立ち向かう!

9人目

〈第一次魔界大戦:Second wave〉

『何だ、ありゃ…船じゃなかったのか?』

変形し、船の形を規則正しく崩していくアビダインを前に驚愕し、呆然とする魔界の者達。
退避が間に合わなかった魔界人を跳ねのけながら、ずっしりとした質量を岩肌に伝え、足跡を線状に残しながら地面と垂直になり、二つの艦首が…否、脚先が陸地に立ち…
特異点でも見せたその変形を経て、白亜の機兵『アビダイオー』が、その姿形を露わにした。

「ほぅ、船の形を模したロボットだったか。」

上空でターレスがそう呟き、興味深そうにアビダイオーの巨躯を眺める。
特異点ではベジータ達を相手取った為、変形する事は知らなかった。
そのまま目線を移し、ある一点を見遣る。
キン肉マンを庇い呪矢を受けた、青い装甲部位。
黒い煤こそ僅かばかり見られるものの、傷跡となると遠目からはまるで見つからない。
つまりは、ほぼ無傷。

「確か、ガルードの矢は分裂する時しか爆発しなかったな。となると_」

未知の現象を前にしても、ターレスの思考は極めて冷静だった。
クラッシャー・ターレスとして、幾つもの星を渡り歩いた経験と知識を以て、仮説を組み立てていく。
そして…

「…戦場で考え事とは、随分と余裕を見せる様になったな?」
「_チッ、お前達か。」

纏まりかけた思考へと入った横槍に舌を打ち、その相手を見る。

「こっちの台詞だ。この俺が直々に倒してやったのに、性懲りも無く出てきやがって。」
「…相変わらず鼻につく傲慢さだな、ベジータ王子。」

そこにいたのは、嘗ての特異点でターレス達を葬りかけたベジータとピッコロ。
因縁を匂わせる不穏当な言動に、悟空との闘いを経て得た余裕が、憎悪混じりの物に変わる。

「生憎、こっちは死んだ覚えが無くてな。しかしそうか、やけに硬いと思ったが、お前が食ってるアレだったか。」

ベジータが目を向けた先には、最初に戦いを挑んだグラキアの姿。
抉れた岩場の中心で、荒い息をしながらベジータを睨んでいる。
ただの魔界人ならばとっくにくたばっている筈だが、まるで超人の様にまだまだ戦えるといった様相を醸し出していた。

「あぁ、また随分と力をばら撒いたな?」

次いで問い掛けたピッコロに、ターレスは鼻を鳴らす。

「グラキアめ。多少は出来ると思ったが、無様なもんだ。」

そして、さも残念そうに…しかし、何処か嗤っている眼で蔑む。

「全く、あぁ全く以て残念だ、グラキア。」
『テメェ、そりゃどういう…』

グラキアが何か問う前に、片手へ紫色の気を溜めるターレス。
今までとは比べ物にならない程に重い気弾が、瞬く間に出来上がる。
ブロリーを想起させる圧迫感に、ピッコロが目を見開くも束の間。
気を溜めた腕がグラキア目掛けて振るわれ…

『クソッタレッ!?ターレ_』

グラキアの怒声は、爆ぜる火焔を前に途絶えた。
放たれた気弾が着弾した瞬間、巨大な火球が花開き、天まで貫かんばかりの紫炎が立ち登る。
一帯は例外無く灼き尽くされ、溶解した岩石が飛沫を上げて辺りに降り注ぐ。
いっそ美しささえ覚える光景だ。
後に残る溶岩の雨と紫煙を余所に、ターレスは堪え切れないといった様相で嗤いだす。

「クックックック…」
「貴様、何を笑っている?」
「なぁに、アレでも鍛錬相手だったが…そんな奴の死に様が、あまりにも滑稽だったモノで。」

一頻り嗤い終えると、声を上げたピッコロに瞳を向ける。
ナイフの様に鋭く細められた目は、残虐と愉悦に歪んでいた。
…しかし。

「おい、何時までヘラヘラ笑ってやがる?」
「_あ?」

享楽の時に水を差す一声。
瞬間、ターレスは瞳に殺意を宿してベジータを見る。
対するベジータは、何でもない様に飄々として。

「死に掛けの雑魚を殺すのが、そんなに楽しいか?下品な趣味だな。」
「……」

安易な挑発めいた言葉に、ターレスはしかし、宿した殺意を消さなかった。

「ベジータ、お前…」
「勘違いするなピッコロ。あの時とは違う、今のプライドを気に入ってるだけだ。」

嘗て地球に襲来した日、倒れた仲間のナッパを敢えて消し去る外道だったベジータ。
だが様々な闘いを経た『地球の戦士ベジータ』は、そんな趣味等捨て去ったと、ベジータは言外に述べた。

「_面倒な問答は、今日までで腹一杯に慣れたと思っていたが。」

酷く冷たい声色で自嘲気味に呟きながら、ゆっくりと向かってくるターレス。
彼の表情からは何時の間にか怒りの色が消え、代わりに好戦的な笑みが浮かんでいた。

「これまた、嗤い甲斐のある意地が出てきたもんだ。」

"サイヤ人の本性(悪に満ちた志)"を振るうべき時が来たと。
悍ましさを湛えて、告げる。

「来いよ、王子様。この前の仕返しと行かせて貰おう。」
「俺はカカロットの様にはいかんぞ、ハァッ!」

答える様に、ベジータが閃光に包まれる。
次の瞬間には黄金の気が立ち昇り、その気を覆う様にプラズマがスパークする。
その特徴的な気の弾け方に、ターレスは見覚えがあった。

「ほぅ、『超ベジータ』とやらか。」
「生憎予定が押していてな。お前に構う時間は、端っから無い。」

今、手加減する理由は一つも無い無い。
ターレスを超えた先に待ち構えている魔界の実態と、それに抗う悪魔超人達が本題故に。

「ハァーッ!」
「っ!」
_ズドォ…ォン!

先手必勝、と初手から全力一閃。
腕に打ち込まれた拳が、風切り音と合わさって耳鳴りめいた甲高い打音を鳴らす。

「ほう、反応出来たか?だが終わりでは無い。後悔するなよ、ハァーーーッ!」

直後に無数の殴打が奮われ、何度も鈍い音を立てていく。
悟空の時とは一転して、ベジータが攻勢だ。

「お前が!カカロットに、やった様にッ!」
「……」
「この俺が、完全に、叩き潰してやるッ!だぁありゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

絶え間無く風を切って振るわれる四肢。
重厚な打撃が生み出す衝撃波、連続して鳴り響く痛々しい打音。
その渦中でターレスは抑え込まれ、口を開かない。
まさに一方的とも言える戦いだった。

「ふん、この前から多少は強くなっていると思ったが…期待外れだな!」
「ぐぅっ…」

牽制打を打ち、即座に回り込み。
ターレスが振り向くと同時、叩き込まれるオーバーヘッドキック。
衝撃波を伴って墜落するターレスへ、ベジータが両手を構え。

「何と言ったかな…そう、思い出した。」

両の手に溜めた一際大きな気弾を、突き出す様に振るった。

「フニッシュバスターだ…食らいやがれぇーーーッ!」

凄まじい連射力で撃ち出される気弾の雨霰が次々と着弾。
無数の爆発音と共に、ターレスを瞬く間に爆炎で包み込む。
壮絶極まりない蹂躙だった。

「…フン、口ほどにも無い奴だったな。どれ、死に顔でも拝んでおくか。」

燃え盛る火焔を前にしても、まるで涼しそうに呟くベジータ。
そのままターレスを包む黒煙へと足を向け、歩み出し。

「ッ避けろ、ベジータ!!」
「ッ!」

咄嗟に、横へと地面を蹴る。
直後、一瞬前までいた場所をリング状の気弾が通り過ぎていく。
その気弾が掻き消した黒煙の中からは…

「おっと、随分勘の良い…」

まるで無傷のターレスがいた。

10人目

「王の選択」

 空を裂く炎と衝撃の奔流が、地平の果てからも見えた。
その中心に浮かぶ巨大要塞――ユートピア・アイランド。
それはまさしく、天より降る終末の使者の如く、静かに、
だが確実に人類を見下ろしていた。

 「……上に行ったみんなは大丈夫かな」

 常磐ソウゴ――仮面ライダージオウは、トゥアハー・デ・ダナンの甲板から空を仰いだ。

「やちよさん……」

 隣に立つのは、環いろは。彼女の瞳は静かに揺れ、
ユートピア・アイランドを取り囲む機雷やバミューダ・クリスタル対策のために
上空高くへと向かったパートナー・七海やちよに思いを馳せる、優しい光を湛えていた。

「守るんだ。ここを、今は……」

 ソウゴは低く、しかし確かな声音で言い切る。
リ・ユニオン・スクエアにおけるCROSS HEROESの拠点トゥアハー・デ・ダナン――
メサイア教団の暴走が留まる事を知らない今となっては、人類最後の希望のひとつ。
それを守ることこそ、今のジオウに託された『王の務め』だった。

 敵は空だけではなく、海を渡りやって来る。

「敵機、トゥアハー・デ・ダナンへ向かい、接近中!!」

「敵の小隊、北東から接近。クルーゾー機、迎撃体制に移行」
「了解、援護砲撃用意。クルツ、狙撃支援準備OKだよ」
「あいよ、マオ姐さん、迎撃部隊を甲板に展開。来るぞ!」

 特異点に向かった宗介と千鳥かなめを欠くウルズ小隊の戦闘配備。
緊張の中、ソウゴは深呼吸し、懐からライドウォッチを取り出す。
彼が立つのはもうひとつの戦場の最前線。その背には確かに『仲間の未来』がある。

 空の彼方――ウルフマンが、ルフィが、承太郎が、悟飯が、CROSS HEROESが。
それぞれの戦場で、信じる正義を懸けて戦っている。ならば、自分もまた。

「メサイア教団……アンタらだって、この世界で生きる同じ人間だろうに……!!」

 メサイア教団・水雷戦隊の襲来。爆音。閃光。そして始まる、もうひとつの攻防戦。

 その刹那、風が吹いた。
海面を割る潜水艇の艦首に立ち、静かに現れたのは、神罰を担う異形の巨兵。

「王を名乗る者よ――我が教団の理に逆らう異端者よ。ここにて裁きを受けよ」

 メサイア教団の“審問官(インクイジター)”だった。
ヘイルメス同様、黄金の鎧に身を包むホムンクルス、聖典の如き封印書を掲げる彼は、
神の代行者を自認する存在。

 最高最善の王となる。それがソウゴの夢。
ならば、異なる王を、異なる神を信じる民を前にした時。
ソウゴは、如何なる道を選ぶべきか……その傍ら、涼しげに笑いながら現れる
外套の男・ウォズ。

「我が魔王。王とは孤独なのです。それはたったひとり、頂きに立つものであるが故に。
そのためには、互いの譲れぬものを賭け、相容れぬ者と戦う事も致し方なき事」

 ウォズが預言書――逢魔降臨暦を持っていたはずの空の手を掲げる。
クォーツァーの最終決戦において、ウォズが自ら破り捨てた預言書。
それは過去との決別。そしてこれからの未知なる道を歩むための覚悟。

「魔王誕生までの道を書き記した予言書はもはや無い。
つまり、この先の未来は誰にも分からない。誰が真なる王の座に君臨するのかさえ。
すべては、これからの君の行動にかかっていると言う事だよ」

「……」
「……らしくもない、難しい顔をするな、ソウゴ。お前には似合わん」

 鋭い眼差しが風を裂く。明光院ゲイツ。

「支配でも裁きでもない……俺たちは、お前の信じる未来のために戦ってる」
「あなたは一人じゃない。私たちは、あなたと共にある“未来”を選んだんだから」

 ゲイツに続く、ツクヨミの静かな言葉。

「ゲイツ……ツクヨミ……!」

 
『“彼方より、双つの偽王来たりて、真の王を問う”――まさしく今、この舞台に』

 
 メサイア教団の「王」。一人は、支配による秩序を説くカール大帝。
もう一人は、そんなカール大帝を担ぎ上げ、神の名を騙る裁きの使徒・魅上照。
すべての頂点に立ち、すべてを手中に収めんとする「王」は彼らだけではない。

「メサイア教団こそ、この世界を統べる王の使徒!」
「仮面ライダージオウ! 頂点に君臨する王はふたりと要らぬ!」
「この醜き世界を純化にて一掃し、選ばれた者による理想郷を築き上げる!」

 メサイア教団はこの二人を戴冠し、“新たな神王”を選ばんとしていた。
クォーツァーを退けた今も、常磐ソウゴの王道を阻む者は依然として存在している。
彼らの眼前に立つ少年の答えは……

「……ウォズの言う事、半分は分かったけど、もう半分はちょっと違うかな」
「……は?」

「王ってのは、誰かの上に立つもんじゃない。誰かと一緒に未来を歩いていくものだよ」

 そう言って、ソウゴはジオウライドウォッチを掲げる。
未来を見つめる王として――真の意味で「選ぶ」ために。

【RIDER TIME】

「変身!」

 光が爆ぜた。真の王を決する戦いが、今始まる。

「フ……そうでしたね。そう言って君は、クォーツァーを……常磐SOUGOを打ち破った」

「メサイア教団。俺はアンタらが望むような王じゃないかも知れない。
もしかしたら、アンタらにとっては「最低最悪の魔王」……なのかもね」

「はっ、そいつは良い。救世主気取りを蹴散らす最低最悪の魔王か。
だったら、奴らにとっての悪夢そのものになってやろうじゃないか」
「らしくなってきたじゃない、ソウゴ」

「祝え! メサイア教団!! 王の凱旋である!
歴史の管理者・クォーツァーを凌駕し、時空を超え、過去と未来を知ろしめす時の王者!
その名も仮面ライダージオウ! ……新たな歴史の幕が開きし瞬間である!!」

「ほざけえええええええええ!!」
「粛正! 粛正! 粛正!」
「メサイア教団、バンザーイ……どわあああああああっ……」

 進軍を開始しようとするメサイア教団・水雷戦隊の艦艇に銃撃を撃ち込んだのは……
クルツであった。

「王様のパレードにゃ、礼砲が付き物だろ? ま、空砲じゃなくて実弾入りだがよ!」
「悪いけど、こっちはプロの傭兵なんでね……銃を向けてくる相手なら
誰だろうが情けはかけないよ!」

「メサイア教団……悪意はゆっくりと醸成されるものだ。
まず自分を偽り、次に周囲を恨み、最後は世界のすべてを冷笑するようになる。
ゆっくりとな。時計の短針のような、遅々とした変化だ。だからこそ恐ろしい。
そしてそうなった者たちが最後に行き着くのが、貴様らのような愚劣なテロリストと
言う訳だ」

 ベルファンガン・クルーゾーの辛辣なメサイア教団評。

「わ、我らの崇高なる理想を解せぬ愚者どもめ!」

「……理解する必要もないな。強いて言えば、貴様らのような勝手な理屈で
続編待ちのシリーズ最終回が観られなくなるなど、あってはならん事。
貴様らを駆逐する理由など、その程度のことで十分だ」

 通信を切り、ファルケのコクピット内で独りごちるクルーゾー。
間違いなくプロフェッショナルの軍人である彼であったが、それと同時に
実は重度のアニメフリークでもあった。

「俺達も行くよ、ゲイツ、ツクヨミ、ウォズ!」
「いろはちゃんも無茶はしないで」
「はい!」

11人目

「集いし藁、月のように燃え尽きよ その1/第一次魔界大戦:隕なる血弓」

『何を考えているアルキメデス、まさか宝具を――――!』
「ああ、切らせてもらう。」
 アルキメデスの宝具。
 それがどういった性能のものなのかはまだ分からないが、どうも広範囲を攻撃するものであるらしい。
 そんなものをここで撃つ?明らかに地上にも影響が出る。
 公衆の面前で超大型爆弾の解体作業をしているようなものだ。
 しかも解除方法がなく、何かすれば絶対に爆発する爆弾を。

『今お前の宝具を外に向けて放ったらどうなるか考えたことはあるか!ユートピア・アイランドをあの場所に移動させる計画が水泡に帰す!他軍からの反撃を避ける手前、迎撃以外で地上への攻撃は控えろと言ったはずだ!』
「ならばどこで撃てばいい!宝具を撃たなければどのみち我々の敗北だ!それでもいいというのか!」

『怒るなこのかんしゃく玉が!いいか、ここより北400メートル先の戦闘試験区画に連中をおびき寄せろ!あそこの装甲は分厚いからな、そこでなら宝具を撃ってもいい!』
「ふん!それなら既に誘導している!」
『しからば「アレ」も準備させる!時間を稼げ、いいな!』
「理解した!」
 仲がいいのか悪いのか、お互いに罵り合いながら作戦を練っている。
 そんなアルキメデスの顔には、悪い笑みがあった。

 後方より迫る17号たちに追い回されながら、どこかへと誘導する。
 気がつくと、17号とガンマたちは分厚い甲板装甲に守られた広いエリアへと到着した。
 巨大空母の甲板のような堅牢さを搭載している、。
「どうやら、お前たちも一枚岩ではなかったらしいな。」
「さあどうでしょうか?事実あなた方をこの場所に誘導したのには、深い理由があるのですよ。」
「何を言っている。」
「私は何もあなた方を無為に殺したいわけじゃない、せめて実験台として利用しつくしてから処刑をしたい!」
 その瞬間、アルキメデスの足元のシャッターが開く。
 そこから地上に出現するは――――あまりにも巨大な兵器だった。

 一言で形容するなら、それは要塞だった。
 主砲一門、五十数門の機銃軍団、ガトリング砲六門、巨大なチェーンソー付きクレーン、ミサイルポッド――――。
 それを巨大な装甲と威容を持った機械に装備させ、さらにピューパやクリサリスに装備されていたAIポッドもある始末。
 もっと言うなら、それは自立思考型超巨大要塞だ。
「あれは……!」
 遠きコスタリカの地にて破壊されたはずのそれが、ここにいる。
「この『コクーン改』と私、アルキメデスを相手にどこまで足掻けるか!見せていただきましょうか!」



 暗黒魔界

「流石に一撃では死んでくれんか。」
 ガルードは続矢をつがえ、構える。
 先の一矢は、範囲内の船を沈めるものではあったが同時に彼らの力を測るためのもの。
 あくまでも、この一撃は実力試しの牽制に過ぎない。

「では、これならば――――!」
 昏き天めがけて、巨大な矢を三本同時に放つ。
 今度は炸裂矢などという生易しいものではない。
 赤き鉄剛矢、それを大地めがけて隕石の如く叩きつけるつもりだ。
 強力な魔力と質量でならいかに強固な甲板であっても貫徹できるはず。

 それを何本も、何本も、何十本も。
 放たれた魔鉄の巨矢、その数実に三百本。
 ガルードの真髄は、人間では絶対に放てない重量の矢を連続で発射し続ける体力と筋力、そして予測不能の事態にも臆さない精神力か。
「空か!」
 真っ先に気づいたのはサイクス。
 だが、もっとヤバいのはそんなものではない。

「ザルディンは……間に合わない!」
 当のザルディンは龍の形に変形させた槍に乗り、雑魚敵の殲滅につきっきり。
 とても迫る鉄矢に対処できない。
「受け止めるしかないか!」
 腹をくくる。
 今、隕石を受け止められるのは自分しかいない。
 だが、どうする?
 このクレイモアを投げる?
 ――――だめだ、鉄塊の投擲では上から凄まじいエネルギーで迫る隕石を破壊できない。
 自分もとびかかって攻撃するか?
 ――――それもだめだ、重力の影響で押し負ける。
 バーサクさせるか?
 ――――もっとだめだ、溜めている間に貫かれる。

 彼が思案し、身動きが取れない状態でも矢はどんどん速度と威力を高めて迫る。
 聖暈船はアビダインとは違い倉を基にして作った、悪く言えば木製のボロ船。
 そんなものが鉄の砲弾を防ぐなら、自分達で持ち込んだ武装でどうにかするしかない。
 だが彼らに防御兵装を用意する時間など、今さらなく――――。
「転覆『道連れアンカー』!」
 だが、ここに例外が存在する。
 天めがけて放たれる、巨大な錨。
 錨は鉄の矢と激突し、互いをあらぬ方向へと吹き飛ばした。

 そうだ、サイクス一人が乗っているわけじゃない。
 この船の主だって、戦闘能力はある。
「村紗!」
「この船の船長は私だ!だったら自分の船くらい自分で守らないとな!」

12人目

「第一次魔界大戦:復活の凶戦士たち」

――暗黒魔界。

「野郎……!!」

 超ベジータの猛攻を受けながらも、然程のダメージを負っている様子もなく、
あらゆるものを斬り裂くエネルギー光輪「キルドライバー」を放って来たターレス。
違う。以前、クォーツァーとの最終決戦に向かったCROSS HEROESの前に立ちはだかり、
そして敗れていったターレスとは明らかに違う。別人なまでの戦闘力の向上。
しかも、前回の戦いからはそう日も空いていない。
また例の神精樹によるパワーアップなのか、それとも……

「少しは効いたぜ……くくく、グラキアなんかより余程愉しませてくれる。
さすがに惑星ベジータの“王子様”ってだけはあるな」

 皮肉を込めてターレスが口元を歪める。
 
「気に入らんぜ……そのヘラヘラしたニヤケ面がな……!!」

 しかしベジータは既に、再戦の態勢を取り直していた。
ピリついた空気が再び膨れ上がろうとした、その時。

 ズゥ……ン……ッ!

「……!? なんだ、この…重圧は……」

 ベジータが眉を顰める。ピッコロがすぐに背後を向いた。
どこかで感じたことのあるこの気。異様に濁り、粘つくような暗黒の気。

「……まさか……!」

 漆黒の瘴気が噴き上がり、まるで墓標の如くその中央に現れた影。

「むおっ……!?」
「かあああああああああああああッ!!」

 緑色の破壊光弾が、調査隊のメインシップであるアビダイオーへと飛来する。

「――ちいィィィィッ!!」

 ピッコロがいち早く察知し、高速移動で射線上に割って入った。

「ぬええええええええええええええいッ!!」

 気合一閃、渾身の力を込めた手刀で破壊光弾を打ち払う。弾き飛ばされた光弾は
暗黒魔界の森に着弾し、ドーム上の爆発光を発生させた。

「い、今の攻撃は……!」
「がはははは、よくぞ反応した! 褒めてやるぞ、ピッコロ!!」

 土煙が晴れると、そこには——『最凶の超ナメック星人』スラッグがいた。

「ば、馬鹿な……!!」

 ターレス同様、特異点にてピッコロに討たれたはずの邪悪なナメック星人。
しかし、その肉体はまるで死の淵から蘇ったように再構成され、体躯は以前よりも
一層禍々しくオーラを纏っていた。

「スラッグ……貴様、生きていたのか!?」

 ピッコロの声が、怒気を孕んで響く。あの時。追い詰められ巨大化したスラッグが
多重残像拳からのフルチャージ魔貫光殺砲を喰らい、その姿も、気も、
完全に消滅したのを確認したはずだった。だが、スラッグは構わず高らかに嗤った。

「くくくくく……気とやらで全てを知ったつもりになっていたのが仇となったなァ……!
それにしても、この暗黒魔界の風。空気。心地良いとは思わんか、ピッコロ。
まるで故郷にでも帰ってきたかのような……」
「何を言っていやがる……!? そんな事よりも、ターレスと貴様が
生きていたことの方が余程業腹だぜ……!!」

「一体どう言うこった……!? ターレスも、スラッグも、ベジータとピッコロが
倒したんじゃねえんか……!?」
 
 眼光をギラリと光らせ、悟空に目をやるスラッグ。

「ベジータ、ピッコロ……そして孫悟空。くくっ……ぐははははは!!
今日は最高の日だぞ! 恨みつらみ募る貴様らが雁首揃えてこの暗黒魔界に
集まって来てくれたのだからな!!」

 スラッグの気分高揚と共に、禍々しい気が膨れ上がっていく。

「な、何て気だ……!? おめえ、ホントにスラッグか……!?」
「くそったれめ……!」

 ピッコロが一歩、前に出る。
スラッグの気に負けぬように気を昂らせ、マントを脱ぎ捨てた。

「貴様がどれだけ化けて出ようと、俺がナメック星人の誇りに賭けて、
何度でも叩き潰してやる……!」
「ぐふふふふ……今度はそう上手くいくかなぁ……!?」

 ピッコロとスラッグ、両者の気が激しくぶつかり合う。

「じゃあ、こっちもやるか……」
「イライラしやがるぜ……何度も何度も出てきやがって……! かあああああッ!!」 

 ターレスとベジータもその余波を弾くように、気を開放。
再び、戦場は四者四様の火花を散らし始めた。

「ヒャッハーッ!!」

「ケケケ、グラキアの奴が死にやがった!」
「あいつ、偉そうで前から気に入らなかったんだよなァ!!」
「グラキアの空いた座には俺が着く!」
「バカ言え、俺だ!!」

 現れたのは、ターレスとスラッグの攻勢に便乗する異形の悪魔たち。
歪な翼、ねじれた角、装甲のような皮膚を持つ者たちが、次々と姿を現し、
アビダイオー――正義と希望の象徴である白亜の機兵に殺到してくる。

 「面白れぇ! でっかいオモチャだなぁ! ぶっ壊して中身も見てやろうぜ!」

 魔界の悪魔が狂笑とアビダイオー目掛けて共に大量の爆弾を撒き散らす。

「クッ……来るぞ、正面防御を強化しろッ!!」

 アビダイオーの外郭に設置されたガンナーシートにて、
霧雨魔理沙が魔符を取り出した。

「こっちだって、弾幕には自信あるんだぜ――魔符「ミルキーウェイ」!!」

 まばゆい魔力の星弾が螺旋上に放たれ、爆弾を次々に撃ち落とす。
それだけにとどまらず、その勢いは魔物の群れにまで及び、一挙に殲滅していった。

「ぎゃあああああああッ!!」
「ぐわあああああああッ!!」

「星空のショーライトってところだ」

 ジョーカーはワイヤーアクションでミルキーウェイの弾幕の隙間を滑るように
避けながら、愛用銃のKSC TT33で翻弄される悪魔たちを華麗に狙い撃ち。

「うぎっ」
「ぎゃわっ」

 その横を、素早く駆け抜ける影。

 「星屑と硝煙、幻惑と爆破の共演だ。流石だな、ジョーカー。創作意欲が
メキメキ湧いてくる!」

 青いスーツに狐面、ペルソナ使いの怪盗【フォックス】――、
周囲にわらわらと現れ、包囲してくる悪魔兵たち。

「ヒャアーッ!!」
「はっ、雑魚にしては囲みが早いな……だが――こちらの方が、速い!!」

 さらに加速し、悪魔兵たちを突き抜ける。

「一箇所に集まってくれたのは好都合だ……ゴエモンッ!!」
「ヒョォォォォォォォッ……」

 ペルソナ「ゴエモン」を顕現させ、吐き散らした氷のブレスで
一網打尽にした敵の大群をまとめて氷柱の中に凍結させる。

「抜けば玉散る、氷の刃……」 

 目にも止まらぬ居合抜刀。フォックスが剣を鞘に収めると同時、
悪魔たちが氷柱ごと真っ二つに斬り裂かれた。

「ぐぎゃああああああああああああああッ……」
「斬り捨て、御免……」

 かくて、CROSS HEROES・アビダイオー暗黒魔界調査団と
ターレス・スラッグ・悪魔軍団の戦いはさらなる混沌へと突き進む。一方……
スラッグの光弾が着弾した森の近く……

「何やら上が騒がしいな……」
「暗黒魔界の外から余所者が殴り込みをかけてきた模様で候」
「か、カチコミなんだな!」

「余所者……ほぉう、人間にも少しは歯応えのありそうなのがいるみてえだな。
どぉれ、ちぃとばかしツラを拝みに行こうじゃねえか」
「御意に!」
「た、たのしみなんだな!」

 広大なる暗黒魔界は一枚岩ではない。3つの怪しげな黒い影が動き始めた……

13人目

「第一次魔界大戦:仏の顔も何とやら/蒼月のかぐや姫」

 天から隕石が降り注ぐ。
 無数の巨大な矢がなりふり構わず降り注ぐ。
「ガルードの野郎、無茶苦茶しやがって……ぐぁ!」
「絶対に許さ……痛ぁ!?」
 周囲の悪魔どもが、次々に降り注ぐ矢やその衝撃波に飲まれて落ちてゆく。 

「!」
 悪魔どものように、ターレスの脳天をかち割らん勢いで迫る矢。
 本来この一撃は彼を破壊するためのものではなく、あくまでもアビダイン……否、アビダイオーを破砕するためのもの。
 だが彼は手から放った光弾の一発で、二メートルはあろう魔鉄の矢を蒸発させてみせた。
「無差別攻撃とは、粋がった雑魚がよくやる。」

「どこを見ている!お前の相手は俺だ!」
「ふん!貴様こそ精々頭上に気を付けることだな!」
 ベジータの挑発を気にすることもなくターレスが迫る。
 そればかりか、ターレスの方がこちらを気遣ってくる始末。
 この男、やはり何かがおかしい。

「矢……!」
 同時刻、ジョーカーは思い出していた。
 特異点でのあの出来事。
 永遠に続くと思い込んでいたあの戦いをついぞ終わらせてしまった、源為朝の無数の矢。
「流石にあの時ほどではないか。」
 為朝とガルード。
 両者の弓の実力には正確性の面で明確な差がある。
 撤退こそはせど、一万は撃ったであろう降り注ぐ一矢を地上の教団兵や芥には一撃も当てなかった為朝。
 アビダイオー並びに聖暈船を破壊するためなら雑魚に構っている暇はないガルード。

 しかも今撃ち落とされている矢は巨大で重いものではあるが、数だって少ない。
 油断しなければ避けれるし対処できる。

「……対処できるといいな。」

 そんな矢を天空に放ちながら、ガルードは考えていた。
 ここまでしてもなお、敵艦の貫通はできない。
 理由は明確、こちらの武装が弱いから。
 どれだけ強力無比な鉄矢をつがえようとも、複合装甲は貫通できない。

 だが、この矢の標的を戦艦ではなく人間に変えたら?
 それをするなら頃合いだろう。
「一列に並んでくれよ、虫けらども。」
 狙うは艦そのものではなく、その指令室の船長。
 しかも一番武装が貧弱な聖暈船の中に居座っている長。

 村紗水蜜?違う、彼女には少なくともこちらの矢を叩き落せる戦闘能力がある。
 彼女よりも重要な存在、矢が落ちてきても対処できようがない人物。
 アビダイオー並びにCROSS HEROESを暗黒魔界にある目的地に迷うことなく誘導できる人物。

 つまるところガルードが狙っていたのは、魔界の地形や存在を知っている上で現時点で自分の存在に最も気づいていない聖白蓮であった。
「この一矢を以て、精々絶望するがいい。」

 マッハ25の速度で迫りくる、重量3トンはあろう魔鉄の矢。
 標的の聖白蓮が人智を超えた魔人であることを、ガルードはある程度は識っている。
 だが相手が如何な魔人であろうとも、限界はある。
 超速度で、凄まじいショックウェーブをまき散らしながら迫る超重量の鉄の塊を人間のみで受け止めきれるか?
 無理だ、ショックウェーブに殺されるか受け止めきれずに肉体が爆砕する。

 真っ先に、そんな悪魔の代物に気づいたのは。
「!!」

 こちらを唯一見ていたザルディン、ただ一人であった。



 特異点

 戦いが激化する。
 死闘が燃える。
 町が、区画ごと燃え尽きる。
「ああ……恐ろしい。」
「どうなっちまうんだよ俺たち……!」
 特異点の住民たちはただただ畏れるしかなかった。
 自分達も死んでしまうんじゃあないか、と戦争の恐怖を目にしていたからだ。
 もはや避けようのない、終わることはないんじゃあないかと錯覚してしまうほどの戦争問う名の地獄。
 ――――その時だった。

「もーっ、喧嘩するのはめっ!だよ?」
 可憐な声とは裏腹に、苛烈なまでの青黒い光が戦場を貫いた。
 光は触れた地上の機械獣どもを一挙に圧壊させる。
 まるで深海に空き缶を投げ込んだかのように、押しつぶされていく。

「だ、誰だ貴様は!」

 まるで月のように浮かび立っていたのは、水色の長い髪をたくわえた兎耳の可憐な少女であった。

14人目

「合体攻撃! マスタースパークかめはめ波!/アクマイザー3対心の怪盗団」 

 天より、災厄が降り注ぐ。

 ガルードが解き放った無数の魔矢は、悪魔さえ容赦なく貫き、地を穿ち、艦を揺らした。その標的はアビダイオー……否、その奥深くに座す、聖白蓮という存在である。

 鋼鉄の矢は、一発三トンを超える魔鉄製。速度はマッハ25。
並の防御では砕け散る一撃だ。そう、並の防御であれば……

「ホァァァァァァァーッ!!」

 だがその刹那、風が割れた。

「飛翔!! 龍尾脚ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 聖白蓮目掛けて飛びゆく矢を蹴り砕くは、ラーメンマン。

「ウォーズマン! タッグフォーメーション・A!!」
「イエッサー!!」

 ロビンマスクと、ウォーズマン。互いの足裏を重ね合わせ、
それぞれを蹴り上げた反動で超人師弟が左右へと翔ぶ。

「スクリュードライバー!!」
「超人ロケットォォォォォォォォッ!!」

 両手のベアクローと、自らの肉体そのものを武器と化すロビンマスクが
次々と矢を破壊していく。

「ば、馬鹿なァッ……!! 何だこいつらはァ!?」
「暗黒魔界とやらには、まだまだ俺達の名は売れていないらしいぜ!」

 ベルリンの赤い雨で矢を切り払うブロッケンJr。

「なかなか面白い見世物じゃないか。なあ?」
「ほざいていやがれ!! でぁららららららららららららァッ!!」

 ターレスとベジータは、矢の雨を弾除けの遮蔽物扱いにしながら
エネルギー弾の撃ち合いの応酬。

「がはははははははははははは!!」

 力任せに矢を薙ぎ払いながら突っ込んでくるスラッグを利用し、
ピッコロは巧みに様子を窺う。聖白蓮の防衛と、スラッグへの応戦を同時にこなしている。

「よし……この調子で少しでも奴を疲弊させる……!」

 しかし、それでも矢の一波が防衛線を突破してしまった。

「しまった……!!」
「任せろ!!」

 その正面に立ちはだかるは、悟空と魔理沙。

「やるぞ! 魔理沙!」
「おうよ!!」

「か……! め……!」
「恋符!!」

 重ねた両の掌に気が凝縮される。
マジックアイテム「ミニ八卦炉」に莫大なる魔力がチャージされる。

「は……! め……!!」
「マスタースパーク!!」

 そして一気に解き放たれる!!

「波あああああああああああああああああああああああああーッ!!」
「ぶっ放すぜえええええええええええええええええええええーッ!!」

 悟空のかめはめ波と、魔理沙の恋符マスタースパーク。互いの代名詞とも呼べる
必殺技が同時に発射された。
 
 嵐のような衝撃波と、超エネルギーの奔流による轟音と光が戦場を支配する。 
かめはめ波とマスタースパークが空を裂き、交錯した瞬間、
戦場が震えた。暗黒魔界を貫くかの如き光線は、矢の群れへと一直線に突き進む。
矢はその巨躯ゆえに軌道修正が効かず、次々と蒸発し、破砕され、霧散していく。

「うおおおおおおおおおっ!!」
「ふんばれええええええっ!!」

 空が裂ける。
二つの極限エネルギーが、一本の線になって融合した。
蒼と白の奔流は、まるで銀河の軌道のように矢の群れへと伸び、
悪しき呪詛の鉄矢を次々と焼き尽くしていく。

「……凄い……」
 
 ジョーカーが呟いた。

「孫悟空……あれほどの傑物が俺達の世界にいた事を今まで知らずに生きていたとは」

 フォックスこと喜多川祐介も、思わず、空を見上げる。だが。

「……それでも、一本残っている」
 
 その声は冷ややかにして鋭く、クロウ――明智吾郎が静かに歩み出る。

「汚れた“刺”は、排除されるべきだね」

 その言葉と共に、クロウのペルソナが召喚された。

「標的は一点、呪矢の核そのものだ。打ち抜くぞ」
「俺たちの出番だな」
 
 ジョーカー、フォックス、クロウが同時に翔ぶ。

「総攻撃だッ!!」

 ジョーカーが拳銃、クロウがビームソード、フォックスが刀を抜く。

「行けッ!!」
「タルカジャ!!」

 ジョーカーの銃弾の連射が、攻撃力を倍加させる魔法を孕んだロキの黒炎に乗って走り、
矢の速度を下げる。

「追いついたッ!!」
「叩き込めッ!!」

 矢に肉薄した三人による怒涛の連続攻撃が矢の表面を削り取っていく。
ズドン――――ッ!! 凄まじい衝撃と共に、呪矢の中核が砕けた。

 心の怪盗団による精密連携総攻撃――
それは、悟空と魔理沙の必殺の融合光線に応えるようにして放たれた、必中撃。

「やった……撃ち抜いたぞ!」
 
 フォックスの口元に、ほんの少し笑みが浮かぶ。

「……気持ちいいくらいに決まったな。これぞ“会心の一撃”ってやつか」
 
 ジョーカーも仮面の奥で微笑んでいた。
呪矢の核を砕き、束の間の静寂が戦場を包んだ。だが、それも長くは続かない。

 ザザザザザァンッ!!

「!?」

 突然、空間が破けるような爆音と共に、魔界の大地が盛り上がった。
砂煙を裂いて、三つの影が爆発的に飛び出す。

「何事だ……!?」
「あ、あっちでなんだか面白い花火が上がってたんだな」

 何処か呑気な声で空を見上げる、頑丈な筋肉を蓄えた巨漢・ガーラ。

「何にせよ、“遊び相手”はまだいるようでござるなぁ」

 侍言葉を話し、軽く肩を回す、黄一色、側頭部から蝙蝠の翼を生やした戦士――イール。

「ふはははははは……本当に人間じゃねえか。この暗黒魔界で大した暴れっぷりだ。
気に入ったぜ。俺ァ、人間は大嫌いだが……強ええ奴ぁ、
誰だろうが何だろうが差別しねえ。俺たちが来るにゃ、相応しい舞台ってわけだ」
 
 そして、その中央。漆黒の戦闘服に身を包み、悪魔の微笑を浮かべた
豪放たるリーダー格・ザタンが、一歩前に出た。
爛々と輝くザタンの赤き双眼が、怪盗団の3人を見据える。

「面白そうな場面に立ち会えたな。俺達とも遊んでくれ」

「新手か……!?」
「気をつけろ。さっきまでの雑魚悪魔たちとは明らかに違う。手練れだぞ」

 名探偵としての明智の直感が告げる。この3人が只者ではない事を。

「その通りだ。我ら、アクマ族……ザラード!」
「イラード!」
「ガラード!」

 掲げる長剣・ジャンケルを頭上で重ね合わせる。それは揺るぎなき三位一体の誓い。


「「「我ら、アクマイザー3!!」」」


 アクマイザー3。魔界の“反英雄”……かつて、その異形の姿から人間たちに忌み嫌われ
魔界の果てに追いやられた者たち……

「ふん……さしずめ三銃士とでも言うところかな」
 
 クロウが構えを低くし、警戒を強める。

「いいだろう、相手になる」
 
 ジョーカーがアルセーヌを召喚。

「ふふ、上等。やるからにゃあ……命懸けで来いよ」
「お命頂戴ッ!!」

 瞬間、イールの高速突撃が炸裂する。残像すら残さぬ一閃を、ジョーカーが寸前で回避。

「速い……!」
「ほう、避けるとはな、見事にござる。ならば、もう一撃――!」

「させるかッ!」

 フォックスの斬撃が割って入り、イールのジャンケルと激突。
刃と刃の火花が戦場を照らした。

「ジョーカーたちが何者かと交戦を……!?」

15人目

〈第一次魔界大戦:魔の渦中へ〉

紫煙の空を舞う、緋色の鉄くず。
無数の矢は、ガルードの目論見諸共、CHの面々に打ち砕かれた。

「全く、皆変わらず強いや…いや、もっと強くなったか。」

艦橋で見ていたアビィは、満足気に操縦席に深く座り込む。
数の脅威が一斉に消し飛ぶ様は、脱帽物だった。

「けど蓮君達、新手に捕まったみたいだね。」
「だね、アクマイザー3だっけか。」
「どうにも、手強そうだ。」

突如として現れた謎の3人組が、ジョーカー達と交戦している。
実力が未知数の相手に、アビィは少しばかり不安を覚えた。
それを感じ取ったのか、丸喜は立ち上がる。

「僕は蓮君達の援護に回るよ。」
「…蓮達を唆すなよ?」
「うーん、前向きに検討するよ。」

どこかおどけた口調で返し、丸喜は艦橋を出る。
少しして、ジョーカー達へとサイバーチックな根が伸び、丸喜が駆けていった。

「…ハァ。」

溜息を一つ、吐く。
かと思うと、またいつもの薄ら笑いを浮かべて艦橋の窓へと視線を向けた。

「やぁ二人とも。傷を塞いだ所で悪いんだけど、もう一仕事頼めるかい?」
「全く、忘れられたかと思ったぞ?」
「まさか。君の話が軸なんだよ、ザルディン君。」
「…小僧に君付けされる謂れは無いわ。」

その先には、アビダイオーの手に収まっていたキン肉マンとウーロン。
そして雑魚が散らされフリーとなった、ザルディンの姿があった。

「ザルディン君の言っていた、あの矢の主の元に向かう。直接の介入を君達に頼みたい。」
「おぉそうか!なら_」
「オイ、待てって!今出来た傷を治したばっかなんだぞ!?」

快諾しようとしたキン肉マンを、ウーロンが咄嗟に制する。
彼の言う通り、先程射抜かれた左脇腹は、ウーロンが応急処置を施したばかりだ。

「うぅむ、まさか豚の妖怪に治療を受ける日が来るとは…」
「もうやったんだよそのネタは2回も。それより、古傷なんだろ?」

ある豚を思い出してか複雑な顔付きのキン肉マン。
対しウーロンは天丼だと返しつつ、ぶっきらぼうながらに心配する。
古傷を上書きする一撃は、普通ならば戦線離脱物だろう。

「なぁに、ウーロンよ。超人にとって傷の一つや二つ、勲章の様なもんじゃい!」

が、キン肉マンは傷も何のそのと、声を張り上げる。
強がりや痩せ我慢などでは無い、そう理解は出来た。
だからこそ、ウーロンは呆れる他無かった。

「…たく、超人ってタフだなぁオイ。」
「この程度で倒れていたら、とっくの昔にくたばっておるわい!それに…」

重々承知と、重い声色で宣言するキン肉マン。
彼は一息溜めて、告げる。

「仲間諸共殺そうとする真似は、この私がやらせはせん。」

確固たる決意の顕れ。
退かぬ理由が、そこにあった。
それを聞き届けたアビィは、満足げに頷き。

「OK、その返事が聞きたかった。じゃあ、しっかり掴まってて。」
「「へ?」」
「飛ぶよ。」

瞬間、アビダイオーが跳躍する。
驚愕するキン肉マン達に御構い無く操縦桿を押し込み、スラスターから蒼炎を噴かす。
瞬く間に上空高くへ舞い上がったアビダイオーが、見下ろす先には…ガルード。

『なっ_』

自らを覆う巨影に、冷や汗を浮かべ呆然としかけ。
しかし直ぐに意識を切り替え、魔矢をつがえてみせる。

『_これは僥倖。寄って来るなら撃ち抜けるという物よ!』

マッハ25で穿てる弓矢と言えど…否、だからこそ空気抵抗による減速を強く受ける。
ソニックブームこそ証拠だ。
だが至近距離なら、減速前の力を与えられる。
邪悪な闘志の灯った眼が、アビダイオーを文字通り射抜かんと睨み付けていた。

「リアクティブジェル展開。肩部ミサイル用意。」
『命令を実行します。』

だがアビィとて、それは百も承知だ。
矢継ぎ早に出された指示を受け、電子モニター上のアビダイオー各部から無数の情報が表示されていく…

『ハッ、まさか腕だけで止める気か?』

ガルードの目には、胴体を庇う様に両腕を交差させ、頭から急降下してくるアビダイオーの姿。
眼に見えて何かが動いている様子は無い_

『…何だ?突起が生えておる。』

否、射手の目を以て漸く見える変化が起きている。
装甲表面から無数の円柱が突き出て、そこから青いジェルが噴射、瞬く間に装甲を覆う。
何が起きているかは、ガルードには分からない。

『どうでもいい。射貫くのみよ。』

だから変わらず撃てば良い、という結論に落ち着く。
躊躇いも無く、魔矢をアビダイオーへ向け放つ。
その初速はマッハ25を優に超え、瞬きの間すら無く腕を射抜く_

_ドォーン!
『…またあの爆発か!』

寸前で、装甲のジェルが一斉に爆発。
指向性を持った爆風が、矢を一挙に弾いた。

『成程な、先の連射も爆発で防いだか。だが二射目には間に合わんぞ。』

そう言うと、ガルードは部下から奪い取った3本の矢を即座につがえる。
あのジェルが再展開される前、黒煙越しに射抜かんとし_

_ドシュゥーッ!!
『何だ、鉄の筒_!?』

黒煙から、無数の白煙が線を描いて伸びていくのが目に映った。
花火の様に広がった『ミサイル』が、ガルード達へ向けて殺到し、次々に爆発。
宙に放り出され、部下…つまり残りの矢と寸断された。

『_オォォ!!』

そこに、キン肉マンの声が轟く。
見れば、巨人化したキン肉マンが肉のカーテンを構え急降下していた。

『成程な、その巨体で潰す気か。』

常人ならば、矢をつがえる事すら覚束ない状況。
その中で、ガルードは。

『_舐めるなァ!』

吼えた。
吼えて、矢を2本つがえて放つ。
1本は、肉のカーテンに防がれ。

『がっ…!!』

その硬直を狙い、隙の出来た左脇腹を2本目が射抜く。
再び呻き、縮小していくキン肉マン。
残るは、アビダイオーのみ_

「_甘いわぁ!」
『…なに?』

否、その背後から、連結した槍に乗ったザルディンが露わになる。
これまでのは陽動であり、本命は彼なのだ。
残る矢は、1本_!

「…ここからが正念場か。」

ザルディンがガルードへ仕掛ける直前。
地平線に薄っすら浮かぶ巨大な大樹を見据えて、アビィは呟いた。



〈楽園内燃〉

楽園島の中枢。
そこでサーバを弄る『ブルマ』の姿があった。

(『トランスボール』って凄いなぁ。ブルマさんに変身出来て、機械を弄れるなんて。)

ブルマ…否、彼女に変身した『プーアル』は、なんと楽園島の機能を停止させていた。

「バックドアを削除、で他からのアクセス拒否?を行って…終わり、かな?」

人知れず、サーバと繋がってない自立兵器以外の機能の殆どが無力化された楽園島。
そのまま、部屋を後にしようとした…その時だった。

『_上位命令の途絶を確認、緊急自立AI起動。』
「へ_?」
_ドォーン!!!

窓から電子音声が聞こえたかと思うと、部屋に砲撃が撃ち込まれた。
同時に破壊されるサーバ群。
黒煙の中、衝撃で変身を解除されたプーアルが見上げると。

『非教団信者を確認、排除開始。』
「ヒ、ヒエェー!!?」

無骨な蜘蛛の兵器が、無機質な殺意を露わにしていた。

16人目

「アクマ族とペルソナ使いと」

「どっせーいッ! なんだなッ!!」

 空が割れたかのような咆哮と共に、巨体が落ちてきた。
アクマイザー3の破壊担当、ガーラ。その重力すら味方にするヒップアタックが、
地を砕き、破片を撒き散らす。だがその着弾点は──空っぽだった。

「パワーがご自慢のようだな」

 軽やかな足運びで横に跳び退きながら、クロウが銃口を向ける。
パンッと乾いた音が響くが、弾丸はガーラの鋼の装甲に傷一つ付けられない。

「ぐふ、かゆい、かゆい」
「それに、打たれ強い。典型的な脳筋タイプ……」

「のーきん? って何だ?」
「君のような者を表現するのに相応しい言葉さ」

「難しい事、分かんないんだな!」
「だったら一生抱えていると良い!」

 突進。裂かれる空気と震える大地。ガーラの右拳が唸りを上げ、地を薙ぎ払う。

「うがっ! うがっ! うがあーっ!! ちょこまかすんな!!」
「そうもいかない」

 クロウはその動きを見切るように、ビームソードを引き抜く。

「はああああッ!!」

 つま先から跳躍。鋭い弧を描く斬撃が、ガーラの胴を掠めた。

「ぬおっ……!」

 かすかに走る火花。傷は浅い。だが、確かに届いている。

「遅い。重い。そして粗い」
「お前えええぇぇッ! 今のは分かったぞ!! 俺を馬鹿にしたんだなぁあ!?」
「そして熱しやすい。そう言う輩は、御しやすいね。
無駄に頑丈なのはどうにかして欲しいが」

 怒りに燃えたガーラが腕を振るい、クロウが再びかわす──

「お、怒ったら、喉渇いたんだな……んぐっ、んぐっ……ぷはあーっ!
生き返ったんだな!!」

 水をエネルギー源とするガーラは、自前の水筒を取り出し、一気に飲み干した。

「やれやれ、どうにも調子が狂う」

 その戦場の横、別の一騎打ちが始まっていた。焼けた瓦礫が積み重なる木の根の上から
差し込む薄光が、ふたりの影を際立たせていた。

 片や、仮面の芸術剣士。
 片や、蝙蝠の翼を背にした異形の斬撃者。

 その視線が交錯した刹那、空気が鋭く張り詰めた。

「ふふん……いざ尋常に、勝負でござる」

 そう一言告げ、翼を広げたのはアクマイザー3の一員、イール。
赤い瞳に映る殺意には、だが妙な“遊び”が含まれていた。

 背中から生えた蝙蝠のような漆黒の翼が、一度羽ばたくと砂煙が舞う。
手にするのは、鋭く曲線を描いたサーベル、ジャンケル・イラード。

「ならばこちらも……美をもって応えよう」

 フォックス――喜多川祐介もまた、鞘から刀を抜いた。
白銀に光る刃が、沈黙の中に静けさを湛える。

「かかってこい」
「心得た!」

 その号令のような一声で、空気が裂ける。
先に動いたのはイール。翼を羽ばたかせ、弾丸のごとく宙を駆ける。
ジャンケルの斬撃が、空気ごと断ち切る。

「せいッ!」

 フォックスは真っ向から受けて立つ。一瞬だけ弾かれるが、すぐに反撃に転じる。
斬り返し──二人の剣が火花を散らす。交差。跳躍。着地。そして再び交錯。
スピードこそイールが上。だが、フォックスの剣筋もまた、太刀筋を見切らせない
変幻自在さで対抗する。

「ほほぅ……拙者の速さを、ここまで見切るとは!」
「その動き、まるで踊り子のようだ」

 フォックスは静かに、芸術家特有の“直感”で相手の動きを見抜く。

「面白い……拙者、久々に心が沸き立つでござるッ!」

 叫ぶや否や、イールは地を蹴った。翼を折りたたみ、低空スレスレを疾走。

「空の斬撃、喰らうがいい!」

 旋風のような回転斬り。ジャンケルの刃が回転軌道を描き、
フォックスを斬り刻まんとする。

「ふはは、どんなもんじゃいッ!!」
「ッ……!」

 フォックスは防御を選ばず、踏み込み。狙いはただ一つ──イールの“中心”。
ヒュッと音が鳴る。フォックスの刀が、回転中のイールの左肩を掠めた。

「くっ……抜かりなき男……! 我が回転斬撃の軌道を見切ったと……!?」

 イールは反転して着地。肩から赤黒い蒸気が噴き出す。

「それが“舞”ならば、俺は“筆”で応じよう。白きキャンバスに筆を走らせるは、
瞬間に魂を込めた一発勝負。おおおおおおッ!!」」

 今度はフォックスが仕掛けた。
刃先が描くのは、まるで絵画の筆致のような流麗な曲線。

 攻撃ではない。“描くような構え”。イールは一瞬、読み取れずに守りを余儀なくされた。

「なんと……この太刀筋、芸術の域にあるのか……?」
「俺にとって、戦いも表現なんだ」

「ならば、拙者はその“美”とやらを斬り伏せるまで!」

 天蓋が焦げ、地が割れる戦場の中心。
フォックスとイールの刃が交錯するすぐ傍で、空気は一転して“重さ”を増していた。

「ふはははははッ! さあやろうか、仮面の兄ちゃんよ!!」

 アクマイザー3の首魁、ザタン――“裏切り”の果てに堕ちた、最強の魔戦士。
一歩ごとに、大地が軋みを上げる。その声は、まるで空間そのものを震わせるような
重低音で満ちていた。

「兄ちゃんが付き従えてるの……それも悪魔か? 人間が悪魔を下僕に? 
生意気してくれんじゃねえの」

 あざけるように、ザタンが指差す。対するは、心の怪盗団の主柱、ジョーカー。
白き仮面の奥で、その双眸は炎にも似た静かな意志を燃やしていた。

「……アルセーヌは、俺自身だ」

 その一言に、ザタンの顔がほんの僅かに歪んだ。

「なに?」
「俺の心の奥底に眠る、もうひとりの自分。その具現……」

「ほぉう……面白れぇッ!」

 ザタンのバイザーの奥底が赤黒く燃え盛る。
同時に、地面がうねり、黒き魔力が四方に奔った。

「だったら見せてみなァ!! “お前自身”ってやつをよォ!!」

 噴き上がる炎の勢いに乗った跳躍。ザタンの魔力で生成された巨大な拳が、
地を砕きながら振り下ろされる。

「おおおおぅらあああああッ!!」
 
 ジョーカーは即座に横跳びで回避、さらにワイヤーを射出し、
大樹の枝に絡みつけて飛翔。距離を取りつつの射撃。さらに空中でペルソナを召喚する。

「来い、アルセーヌ!」

 紫の炎を纏い、帽子の怪人・アルセーヌが空を飛行し、怪盗ステッキでザタンを強襲。

「なるほどねえ……!!」

 ジョーカーからの銃弾を斬り落とした上で、向かってくるアルセーヌをも相手取る。

「その剣に込めた怒り……誰に向けてる?」
「テメェら人間の“偽善”全部だッ!!」

 地面が爆ぜ、黒い杭が数本、魔力の波動と共に地中から伸び上がる。
ジョーカーは滑るようにその間を抜け、反撃に出る。

「ハァッ!」

 刃が突き出される。だが、それをザタンは掌の魔力場で弾いた。

「おっそいんだよ兄ちゃんよォ!」

 怒涛のラッシュ。拳、蹴り、膝蹴り、肩撃ち。ザタンの高速の打撃が
嵐のように襲いかかる。まともに喰らえば致命傷。
ジョーカーはそのすべてを紙一重で躱しながら、一撃を差し込むタイミングを
探っていた。しかし……

「強い……! 暗黒魔界にはこんな連中がゴロゴロしているのか……」
「今更後悔しても遅いぜェ!? 俺等の領域に足を踏み込んじまったんだからなあ!」

17人目

「第一次魔界大戦:絶望烈風」

 魔界の赫空を、龍が駆ける。
 似つかわぬ蒼い龍が風を纏いながら、大地に立つ弓兵を見据えて駆け抜ける。
 後ろは振り返らない。
 仲間は頼っている。
 ⅩⅢ機関のノーバディだった時と何ら変わらない。

 自分は無心に、何も考えず敵を屠り去るのみ――――。

「来るか。」

 既に背中は預けた。
 今の自分には仲間がいる。
 ⅩⅢ機関の時とは比べ物にならない数の仲間が。
 かつての同胞だって、今もこうして戦っている。

 ならば背中は預けよう。
 万全の信頼を込めて、今はただ一つの槍として強敵に突貫しよう!

『たった一人で矢雨に突貫とは、愚かしい!』
「無数のキーブレードと突貫という訳には行かんが!こっちには風という武器がある!」
 そう。
 ザルディンに扱える武器はキーブレードにあらず、風と剛槍のみ。
 それらが彼の背を押す、力を与えてくれる!
『今度は先ほどの如き生ぬるい威力ではない、魔力も速度も威力も段違い!避ければ後方の仲間も衝撃波で吹き飛ぶ!受けざるを得んぞおおおおおお!』
 そんな彼を嘲笑うように、更なる威力と魔力を矢の弦に籠めるガルード。
 そうして放たれた矢の速度はマッハ25なんてものではない、もっと速い。
「この程度の矢、一撃ではじいてくれるわ!」
 そうして槍の一本を投げつける。
 だが、そんなもので迫るマッハ30の矢を防ぎきれるのか?

 衝撃と爆音と共が、炸裂する。
『がははははははは!!音もなく散っていったわ!』
 狂笑轟く魔界。
 音もなく散りと化したザルディン。

 ――――かに、思われた。
「随分と、楽しそうだな。」
 そこにいたのは、六本の槍をまるで自身を囲うバリアのように展開したザルディン。
 その矢ははるか上空で粉々に爆散している。
 旋風の六槍、今以て健在。
『ば、馬鹿な!粉みじんになったはず!』
「得物とは、こう使うのだ!」
 六槍を、まるでSFアニメのビット兵器の如く展開される。
 その五本が、それでも射抜かんと放ち続けられる矢を交わし、弾き、いなし続け。
 やがてはガルードの魔の心臓を――――貫通した。
『ごばぁッ……!?』
 だが流石は魔族というべきか。
 この程度でも息を絶やさないばかりが弓の弦に満身の力を込めて、今まさにザルディンを撃とうとしている。
『バカな…あの威力だぞ……あの衝撃だぞ!?なぜ……生きている!?』
「貴様にタネを教えるつもりはない。」
 というか、タネなんてものはない。
 単純な話。迫る超絶威力の矢を、遠隔操作した槍の一本で上にいなしただけだ。

 いかに強力な銃弾、それこそ捕鯨砲の砲弾でも覆しようのない定理がある。
 それが『横からの攻撃には、弾丸は無力』であること。

 例えば、そこは自然が支配する森の中。
 超絶の速度で迫る狙撃手(スナイパー)の弾丸。 
 標的の心臓を妨害するように立つは、一見すると無害な木の葉や細い枝。
 だがそれが、標的の生命をいともたやすく守ってくれるのだ。
 何しろその葉や枝が、超スピードで迫る弾丸をいなして軌道をずらしてしまうから。

 それも高威力であればあるほどそうなりやすいというから始末が悪い。
 実際それで助かった兵士がかなりの数いるし、スナイパーという軍職に相当の才能を必要とするのにもこの要素が一因となっているという。
 ただし、そんな奇跡を起こすのには条件がある。
 その位置から『動いていない』事だ。

 ザルディンがやったのはそれ。
 迫る高威力の矢の軌道上に、投げつけた槍の一本を空中に固定するかのように止めて『置く』ことで軌道を上に逸らしたのだ。
『こんな……馬鹿な……。』
「相手が悪かったな、強弓の使い手よ。」
 魔の血を吐きながら、ついに息絶える。
 だが同時にザルディンは、妙な恐れを感じていた。
「だが、本当にこの程度か?拮抗したままで終われるのか?厭な予感がしてならない……。」
 このザルディンの『予感』は、的中することになる。

18人目

「千の神の祈りも正義の意味も知らず」

 海上を黒い機影が迫ってくる。メサイア教団・後続部隊、接近。
巨大空母トゥアハー・デ・ダナンのレーダー上に、いくつもの反応が波状に現れる。
艦橋からその全容を確認した艦長、テレサ・テスタロッサの表情が、微かに引き締まる。

「敵、大型空中戦艦三隻、輸送艦型二隻、護衛ドローン艦隊多数」
「大丈夫……彼らが迎っています」

 その時だ。

「チェェェェンジ……ゲッタァァァァァァァァッ――」

 若い命が真っ赤に燃えて。烈風の中で雄叫びを上げると共に、蒼天を裂いて現れた
三機の戦闘機、ゲットマシンが空中合体。
流竜馬・神隼人・武蔵坊弁慶――三人の男たちが操るスーパーロボット、ゲッターロボ。

「――1ッ!!!」

 三機のマシンが、空中で回転しながら融合し――メサイア教団の増援艦隊の甲板上に
ゲッター1がゲッタートマホークを肩に担いだ格好で荒々しく落下してくる。
激しく傾く艦体……その威容はさながら、地獄の赤鬼だ。
燃えるような赤の機体。操縦桿を握るのは、豪放にして苛烈な男――流竜馬。

「うおおおおおおおおッ!?」
「良いタイミングで来てくれたなァ。留守番食らっちまったもんでよ……暇してたんだ」

 ユートピア・アイランド……激しい衝撃や熱源に反応し、爆発を起こすと言う
バミューダ・クリスタルの特性上、ゲッターロボのような圧倒的な火力での制圧は不向き。
そのためにゲッターチームはトゥアハー・デ・ダナンの直掩に回っていたのだ。
メサイア教団のドローン艦隊を一睨みすると、竜馬の怒号が響いた。

「ゲッタァァァァァッ! トマホォォォォォゥクッ!!」

 鋼鉄の戦斧が空母のブリッジごと真っ二つにし、瞬く間に撃沈させる。

「ぐぎゃあああああああああああッ……」

「悪いが、俺達はCROSS HEROESの連中のように優しくはない。ダナンへは行かせんぞ」
「向かってくる奴はぶっ殺す。メカならぶっ壊す! 覚悟しやがれよ、メサイア教団!!」
「お前らの所業、およそ許されるものではない。因果応報。南無阿弥陀仏……」

「お、おのれ、ゲッターロボ……撃て! 撃てぇぇぇぇぇい!!」

 ドゴォォォォォン!! 海面が爆ぜた。水柱が上がる。

「オープンゲェェェットッ!!」

 沈みゆく空母を足場代わりにし、ゲッター1がゲットマシンへと分離。
四方から打ち込まれる艦砲射撃を回避、海中へと飛び込んでいく。

「クッ……!? 敵機体、直下から突撃してきます!」

 海中から、さらに巨大な影が突き上げる。
轟音! 荒波の中から現れたのは、三機のゲットマシンが合体した――

「ゲッタァァァァ!! スリィィィィィィィ!!!!」

 ゲッター3、起動!! 海を割って浮上するその姿は、海を主戦場とする
“水中の巨神”。伸縮自在のゲッターアームを唸らせながら、豪快な咆哮が戦場に響く。

「名乗るぞォ!! 武蔵坊弁慶、見参ッッ!! そぉぉぉぉうりゃあああああああ!!」

 弁慶の叫びと共に、ゲッター3のアームが砲撃艦に幾重にも絡みつく。
見る見る内に圧壊し、渦を巻いて沈んでいく敵艦。

「ぐああああああああっ……」

「我らが王は神の代行者! この世に神罰をもたらす“剣”なり!」
「全軍、聞けィ!! かの機体に宿るは、“外道の力”ゲッター線! 神をも超えんとする
異端に、天誅を!!」

 戦意高揚の演説が海に響く。兵士たちは「メサイア教団、バンザーイ!」と叫び、
狂気の勢いで突撃を開始。ゲッター3の操縦席内、武蔵坊弁慶が鼻で笑う。

「天誅ぅ? 神の代行者ぁ? ……こちとら、とっくに神も仏も鬼も悪魔も
ブン殴ってきた破戒僧よ!!」

 スピーカー越しに怒号が響く。

「いいか、神がいたって、仏がいたって、結局“守りてえもん”を守れるのは
この拳だけだッ!!」

 仏門に入った過去のある弁慶……しかし、恩義を感じていた和尚も同門の仲間たちも
鬼の魔性に狂い、弁慶は泣きながら彼らを最後まで説得し、救おうとし……そして……

「貴様ッ……愚かなり、堕落せし者よ……!」
 
 メサイア幹部が叫ぶ。

「愚かで結構。だがな――」

 弁慶は大写しの映像カメラに向かって、一切の神聖さを踏みにじるかの如く、
豪快に口角を吊り上げた。パァァァァァンッ!! 空気を震わす力強い合掌と共に……

「無辜の民の生命を面白半分に奪う貴様らメサイア教団はそれ以下の鬼畜生よッ!!
陣雷ッ!! ゲッタァァァァァァッ! ミサイィィィィィィィルッ!!」

 ゲッター3の両肩から発射される、大型ミサイル。左右に散開し、2隻の艦を同時に
轟沈させる。

「おい、神の使徒共ッ! このゲッターを甘く見ると、地獄見るぜ!!」

 その怒涛の勢いに、クルツが口笛を吹いた。

「ったく、あのゴツい奴……相変わらず海では無双だな」
「これが……ゲッターの力……!」
 
 いろはが目を見開く。

「……すごいな、弁慶さん」
「信じることと、捨てること……両方を抱えて、それでも前に進んでる」

 ジオウやツクヨミも同様だった。ゲッターの鉄腕が、神の名を掲げた“正義”を砕く。
――それは、偽りの信仰に囚われた愚者たちを揺るがす、真の“破戒”の一撃だった。
弁慶の操縦するゲッター3が、その巨体を活かし次々と敵艦を打ち砕く。

「竜馬、弁慶、油断はするなよ。こいつら、ただの宗教軍隊じゃない……」
 
 冷静に分析するのは神隼人。

「ゥア、アア……」

 燃え盛る戦艦の瓦礫の中から這い出てくるホムンクルスの教団兵。
体の結合が崩れ、タンパク質の塊となって海に溶けていく。

「使い捨ての人形ってわけか。何処までもふざけた連中だぜ……」

 隼人が冷たく吐き捨てる。戦いのために造られ、使い捨てにされる偽りの命。

「お前ら、ゲッター線の力が欲しいのか? 人類を進化させる光の真理を?」 

 ゲッター線――無限の進化の光、生命の源たる波動。
その異質なエネルギーをメサイア教団が欲しがらない筈はなかった。

「ゲッター線を掌握し、我らが新世界の動力源とする!」
「その秘奥こそ、神王の証たるべし!!」

 メサイア教団の叫びに、隼人が怒声を放つ。

「――貴様らのような俗物に、ゲッター線の何たるかを理解できるものか!!」

 その言葉に、竜馬の眼が燃えた。

「だったら見せてやろうぜ、ゲッターを、いや、俺達を敵に回した事の怖ろしさをよ!!」

 ゲッタービームが咆哮のようにほとばしる。敵軍ごと、戦艦の砲台を吹き飛ばす一撃。
そして神隼人は、さらに冷ややかに続ける。

「ゲッター線は進化の光。だが、それは力に溺れ、驕り高ぶる者に対しては
破滅の光ともなる。それでも貴様らは、神の代行者を気取るつもりか?」

 ドカアアアアアン――! 敵戦艦の一角が炎上する。

「チェンジ! ゲッター2!!」

 咆哮を上げるゲッター2。3形態の中で最速を誇る俊敏さで戦艦の上を飛び回っては
破壊していく。

「ゲッタァァァァァッ! ドリルゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 ドリルの連撃が、神罰艦隊をまとめて撃破。
波濤の中、ボロ雑巾のように蹴散らされていく“神の兵”たち。

19人目

〈第一次魔界大戦:邪悪と魔の境目〉

周囲が歪んで見える錯覚さえ引き起こす、紫煙の空よりもなお禍々しく膨大な鬼火の如き気。
生物として異質な威圧を前に、しかしピッコロは瞬時に宙を駆け、全体重を乗せた拳を打ち込む。

「ほう、威勢は変わらずだな。」

だがスラッグは仁王立ちのまま、片手で受け止める。
そのまま握り締め、ピッコロの左手がミシリと軋む。
左手からポタリと流れる、ピッコロの血。

「ぐっ…はぁ!!」
「おぉっと。」

ピッコロは吼え、即座に残った手足を上半身に振り放つ。
寸でで避けられたが、左手の拘束は外させた。

「ぐふふ、痛かろう?」
「クソッ、戦闘力共々化けやがって…はぁ。」

飄々と嘲笑うスラッグに、愚痴の一つも出るピッコロ。
だが、一息吐くと冷徹な顔付きに戻る。
直後、圧壊しかけている左手はそのままに連撃を仕掛けた。

「はぁーーー!!」

牽制、フェイント、大振りが入り混じった攻撃の数々
しかしスラッグは全て躱し、或いは捌いて見せる。
一歩たりとも動かす事叶わず、まるで人型の要塞を思わせた。

「成程な、やはりその力は見てくれだけでは無いか。」

が、ピッコロとて破れかぶれの攻撃では無い。
何処までも冷静な眼付きで戦い、スラッグの実力を見極めようとする。

「気に入らんな、その眼。」

苛立ちを見せながらも、変わらず防御に徹するスラッグ。
ピッコロもまた果敢に攻め続け、思考を巡らせる。

(多少持ってかれても構わん、奴等の強さをもっと引き出して_)
「_オレを前に考え事とは。」

だが、少々思慮が過ぎた。

「舐めているのかぁ!!」
_ドッゴォォン!!
「なっ…がぁ!!?」

砲撃めいた風切り音。
思考によって生じた僅かな隙を狙い、連撃を突っ切った鋭い膝蹴りが放たれる。
十全に伸縮する皮膚さえ突き破り、僅かだが膝先が文字通り刺さっている。
めり込む、等という生易しい物では無い。
恐ろしく鋭利な一撃だった

「かっ…は…」

僅かに吹き出る血飛沫。
痛みに耐える嗚咽に交じって 、血反吐が漏れる。
スラッグは血濡れの膝を抜きながら、言い放つ。

「弱い…これが、一度はオレを殺しかけたナメック星人かぁ!!」
「がぁーーーっ!?」

拳一閃。
剛腕が撃ち込まれ、衝撃がピッコロの左頬を突き抜け、全身を巡る。

(が、ぁ…目が…)

錐揉み回転し、紙切れの様に吹き飛ぶピッコロ。
明滅する意識と視界の中、それでも無意識に体勢を取り戻さんとする。
歴戦の経験が成せる技だ。

「ナメック星人の誇りだと?笑わせるなぁ!!!」
「しまっ、た…!」

だがそこにスラッグの腕が伸び、巻きつく。
怪獣の如き怪力が、ピッコロを圧殺せんと全方位から加わりだした。
先程の比ではない軋轢音が鳴り響く。

「が、ああぁぁ!!?」
「このまま、全身を砕いてやろう!」

叫びながら、なおも身体を締め上げるスラッグ。
未だ底知れぬ力に、ピッコロは顔を強張らせた。

(逃れ、られん…こいつは、想像以上の、化物か…!)

生殺与奪の権利すら奪われたと言っても良い。
腕越しに伝わる力の差を思い知らされ、ピッコロに焦燥が募り…
ふと、何かを感じた様にスラッグの腕を見遣る。

「…この気、は、まさか。」
「ほう、気付くか。」

感心した様子のスラッグの声。

(覚えがある。この、神聖な気の質は…)

瞬間、脳裏を駆け巡った思考に身を震わせるピッコロ。
その『想像』への確信は、気を知る程に強固となり、呼吸が震えだす。
そして、スラッグが無慈悲に『真実』を突き付ける。

「ま、さか。貴様、神を…」
「ぐっふっふ…あぁそうだ、オレの世界にいた地球の神は、オレが取り込んだ。」

スラッグが居た…スラッグが悟空達に勝った世界における地球の神を、スラッグは吸収したのだ。
愉快そうに嘲る、『超』ナメック星人スラッグ。
その眼が、動揺に揺れ動くピッコロの眼を見据えて嗤う。

「地球人に手を出すなと言って、自らを差し出しおったわ。」

そうだろう。神様なら、きっとそうした。
ピッコロにも、想像だに容易かった。
…そして。

「最も、地球人共は邪魔になった故、殺したがな!ハーッハッハ!!!」
「__。」

この男が、そんな慈悲など欠片も持ち合わせていない事も。
少なくとも、スラッグにとって過ぎた過去でしかない。
嗤いながら力を籠めるスラッグ。
骨肉が潰れる音が鳴り響く中、ピッコロは一瞬、沈黙し。

「ふざけるな。」

底冷えた声が、スラッグの鼓膜を揺らす。
ピッコロの眼には、激しい怒りが渦巻いていた。
怒りの形相を一層強く強張らせ、口元を歪ませる。
苦しげではある。
だが、それ以上に強大な業火の如き激情が、ピッコロの意識を覚醒させ始め…

「なっ、何だ…?」

一瞬、全身を巡った悪寒に拘束を緩ませてしまうスラッグ。
ピッコロの決断は、その刹那に決まった。

「かああぁぁぁ……!!!」

生命力さえ注いだ、膨大な気の奔流がピッコロを包む。
同時に巻き起こる凄まじき謎の引力に、身体が引かれ始める。
半端に腕を緩めてしまったせいで、スラッグは押すも引くも出来ない。

「何が起きている…!?」
「俺は…強敵と当たる度に、己の力の無さを恨んだ。」

静かに、しかし内に激情を宿したピッコロの眼には、憤怒と憎悪の入り混じったドス黒い殺意が宿っている。
その眼が映すモノは_

『_そうかぁ、神様ぁもういねぇんだな。』

嘗てピッコロは、人造人間18号達に対抗する為、己の半身たる神と同化した。
神も、『今必要なのは強者なのだ』と。
そして融合した時、神の記憶を見た。

「だがな…今はそれ以上に、貴様を恨んでいる。」

マジュニア…戦闘タイプのナメック星人として生まれたピッコロは、神としての権能を受け継ぎきれず、ドラゴンボールは一度石になった。
後に悟空の機転でデンデが神となり、ドラゴンボール自体は復活。
当時の『己』はそれで満足であったと、『ピッコロ』は定義していた。

『ピッコロは変わった。』
『嘗ての様な邪悪な心は、もう随分消えておる。』
『…融合すれば、再び別れる様な事はもうあるまい。』

…だが、変わった。
スラッグが踏みにじった、『神』が融合する決意をする上で託した『想い』を、『ピッコロ』は改めて認識し。

『貴方の作られたドラゴンボールが無ければ、今の孫悟空やここにいる者たちの成長や出会いは無かった。』

『神様のドラゴンボール』が生んだ軌跡と物語…その全てを背負って『ピッコロ』はここにいるのだと。

「貴様が…貴様如きが、踏みにじって良い代物では無かったなっ…!」

そしてその誇りを、スラッグは二度踏みにじろうとしているのだと、そう認識した時。
ピッコロの決意は、完全に決まった。

(…気迫だけで、戦闘力を凌駕せんとするか。)

対するスラッグもまた、焦燥と冷徹の入り混じった思考を巡らせていた。

(…これだ。こんな奴が平行世界にいると知ったからこそ、オレはクォーツァー共の思惑に載ってまで、世界を跨いだのだ。)

あの日、スラッグはクォーツァー…『世界の壁を破って行き来出来る者』の存在を知った。
故に。

(この手で、排除する為にな。)

20人目

「理想郷の落日」

 ――ユートピア・アイランド。

 サーバルームへの潜入工作に成功したプーアルであったが、対侵入者用蜘蛛型マシンが
起動し、襲い来る。黒煙が立ち込めるサーバルームの中央で、
プーアルが咳き込みながら必死に後ずさる。背中には壁……

「た、助けて〜っ!!!」

 巨大な金属の足音が間近に迫る。蜘蛛型兵器の赤く点滅する複眼が、
まるで死刑宣告のように冷たく輝いていた。

『対象:変身生命体。排除プロトコル起動――』
「うぉりゃあああああああああああああッ!!」

 突如、蜘蛛兵器の胴体に炸裂音。部屋の壁をぶち破り、ひとりの男が飛び込んで来た。

「――そこまでだッ!!!」

 その声は、風のように軽く、雷のように鋭い。
爆煙の中から現れたのは――ロンリーウルフ・砂漠のヤムチャ。
そう呼ばれていた時代を共にしたプーアル。

「って……プーアル!? お前、何だってこんなところに……」
「ヤ、ヤムチャ様ぁ〜〜っ!!!」

 プーアルが涙目でしがみつく。

「僕も、ヤムチャ様のお役に立とうと思って~~~っ……!!」
「そうだったのか……まったく、無茶しやがって……」

 蜘蛛兵器がガシャリと前足を構える。

「……下がってな、プーアル。
お前みたいな雑魚機械に、プーアルをやらせるかよってな!!!」

 だがその瞬間、ヤムチャの気が爆発的に高まった。

「喰らえッ!! 狼牙! 風風拳ッ――」

 ヤムチャの突進と、振り上げた蜘蛛兵器の前足が地面を砕くのはほぼ同時だった。

「――裏ッ!!」

 蜘蛛兵器の攻撃を躱しつつ、ヤムチャが素早く敵の背後に回り、奇襲攻撃。

「連ッ!! でぇあららららららららッ……」

 さらに、追撃の連続打突。

「旋風爪ッ!!」

 高速回転しながら上昇し、蜘蛛兵器を巻き上げながらの爪撃。
蜘蛛兵器の装甲が砕け、飛び散る。

「トドメだッ!! はいいいいいいいいいいいいいいいいーッ!!」

 重ね合わせた両の掌底が風を巻き、閃光のように敵のボディを貫く!

『――!! ――――!!!!』

 蜘蛛兵器がギギギと火花を散らしながら崩れ落ちた。

『……機能……停止……』

 ヤムチャはその残骸を背に、プーアルに微笑みかける。

「もう大丈夫だ、プーアル。こいつは俺がぶっ壊した」
「うわああ〜〜ん! ヤムチャ様ぁ、カッコいいですうううう!!」

 涙を浮かべながら抱きつくプーアル。その後ろで、再び別の電子音が鳴り始めていた。

「……何事だ?」

 プーアルの活躍により、ユートピア・アイランドの制御中枢の殆どの機能が
停止していく。

「ビショップ……しくじりましたね?」
『この巨大構造体のシステムダウンを確認』

 それを最も的確に理解していたのが、ガンマ1号だった。
眼前のモニターには、島のメインAIがエラーを吐き続けている。

『中枢システム――沈黙を確認』
「何だかよく分からんが……お前たちの野望も、ここまでだな」

『……!!』

 コクーン改の五十数門の機銃、ガトリング砲六門、ミサイルポッドの一斉掃射。

「んんんっ……!! 効かねェッ!!」

 ルフィのゴムの肉体が銃弾を受け止め、

「そぉぉうりゃああああッ!!」

 飛来するミサイルポッドの弾頭のみを斬り落とすゾロの三刀流。

「ゴムゴムのォォォォォォォォォォッ……!! 攻城砲(キャノン)ンンンンンンッ!!」
「ルービックキューブ張り手えええええええッ!! おりゃりゃりゃりゃあああッ!!」

 大技を同時に繰り出し、コクーン改を食い止めるルフィやウルフマン……
形勢は完全にCROSS HEROESに傾いている。

「ここまでだ。観念するんだな……」

 王手をかける承太郎。残すはアルキメデスの無力化……
ユートピア・アイランドの機能を破壊され、計画の根幹を砕かれた……
しかし、尚も彼の表情には諦めがない。

「まだだ……! 我が宝具を放てば……!!」

 彼は焦燥に駆られながら、ユートピア・アイランド北東の指定ポイントΩへと
向かっていた。

「野郎! 逃げるか!?」
「逃げる? ご冗談を! 既に準備は整った!!」

 そこは、島内でも最も魔力と演算資源が集中する戦闘試験区画にして――
“宝具詠唱特化構造区画”。

「ここまで良く戦いました……君たちのような研究素材を抹消するのは実に、
実に惜しい……その健闘を評して、我が宝具、ご覧に入れよう!!」
「!? 魔力の異常な高まりを感じる……!」

 やちよのソウルジェムが強く反応する。アルキメデスが切り札を切ろうとしている事を
瞬時に察する。

「気をつけてください! 彼は……!!」
「もう遅い! 遅いのですよ、何もかも!! 叡智の力とは何たるかを
知らしめてくれる――!!」

 アルキメデスの背後に巨大な六角形の鏡が彼を取り囲むように出現する。

「この上空5000mならば、さぞかし膨大な太陽エネルギーが集められる事でしょう」
「太陽……鏡……まさか!?」

「完璧なる円、完璧なる光を見せよう! 万物万象、尽く焼き尽くせ――」

 その時だった。

「!?!?!?」

 アルキメデスの足元から、ユートピア・アイランドを穿つ光の一閃が放たれた。

「な、何だ、これは……!?」

「へっへぇ……上空5000mを狙い撃ったアーム・スレイブなんぞ、後にも先にも
俺くらいのもんだろうぜ。サンキューな、いろはちゃん。メサイア教団の連中、
今頃泡食ってる頃だろうよ」

 それは、いろはの魔力供給を受けて発射されたクルツ・ウェーバーの
M9ガーンズバックの76mmAS用対物狙撃砲であった。

「この魔力反応……いろはね……!」

 弾丸が纏った魔力の残滓がいろはのものであると、やちよは感じ取っていた。

「やちよさん、頑張って……!」
「おのれ……!! よくも……!!」

「今だッ!! レオパルドンッ!! ソードビッカー!!」

 まさかの不意討ちを受けて狼狽するアルキメデスの宝具に向け、
スパイダーマンの借るレオパルドンの必殺剣……モンスター教授の差し向けた怪人
マシーンベムの尽くを撃退した常勝無敗の剣が投擲された。

「うっ、うおおおおおおおっ……!?」

 理解不能。理解不能。如何なる数式もこの異常事態を証明できない。
それは世紀の天才・アルキメデスにとって、宝具の持続を保てないほどの
挫折と衝撃だった。

「こ、こ、この低級低能共などに、この私が後れを取るなどと言う事があって……
たまるかあああああああッ!! うあああああああああああッ……!!」

 すっかり理性と正気を失ってしまったアルキメデスは、無理矢理に
半壊した宝具を起動し、ユートピア・アイランド全土に破滅の光を撒き散らした。

「うわっ……!?」
「危ないっ、避けろっ……!!」

 デタラメに発射される光は、逃げ遅れたメサイア教団兵たちを飴細工のように溶かした。

「ぎゃぶっ……」
「あぼっ……」

 断末魔の悲鳴を上げる間もなく蒸発していく命。これがもしも真名開放された
完璧な状態で撃たれていたら……

「アルキメデス……! なんと愚かな事を……!!」
「まずい、まずいぞ……!!」

21人目

「BELIEVE YOURSELF,明日へ」

 空が裂け、かつて神の座と謳われた空中要塞――ユートピア・アイランドが
崩壊の兆しを見せていた。

 時同じくして、 地上での激戦……ゲッターロボ、環いろは、ウルズ小隊、
ジオウチーム……CROSS HEROESの仲間たちが連携し、メサイア教団の外郭部隊を撃破。
海上に浮かぶトゥアハー・デ・ダナンを防衛するソウゴたちは、
神罰を執行し、異端を焼き尽くす鉄の処刑人――審問官(インクイジター)と
交戦していた。黒金の重装甲を纏い、背に十字架を模した諸刃剣を携えた巨躯。

「神への反逆。万死に値する」

 機械音を含んだ冷徹な声。しかしその奥底には、狂信にも似た執念が見え隠れしていた。
ソウゴは一歩も引かず、ジカンギレードで審問官の諸刃剣を受け止める。

「――俺は王になる。誰かに“許される”ためじゃない。自分の意志で、未来を選ぶ!!」
「愚かな……ならば、審判を与える!」

 審問官はジャッジクロスを展開し、神罰の槍を形作る。赤い雷鳴が空間を裂いた。
時の王と異端審問官。未来と信仰、意志と断罪を掲げて、二人の激突が始まった。

「おおおおおおおッ!!」
「むんッ!!」

 幾度となく刃がぶつかり合い、火花を散らす。

「でぇやあああああああああッ!!」

 別エリアでは、ゲイツが咆哮と共に時間厳斧・ジカンザックスを振るっていた。

「があああああッ……」

 胴を斬り裂かれた教団兵がもんどり打って海に落下。タンパク質の塊となって
溶けていく。

「かつての俺はソウゴを倒すために戦っていた……だが今は、守るために戦っている!」
「数で攻めろ!!」

 無数の教団兵が襲いかかる中、ゲイツはライダーゲイツリバイブへと進化。

【ゲイツリバイブ! 疾風 スピードタイム!!】
【リバイ×3! リバイ×3! リバイブ疾風!!】

 疾風の名と共に蒼き装甲を身に纏ったスピード特化の形態。

「ついて来れるかッ!!」

 速さの極致で敵を圧倒していく。

「は、速いッ……」
「ぐぉわああああああっ……」

 知覚する暇も無く、殺到する敵の陣形を突き抜け、ゲイツリバイブ・疾風が
蒼き雷を引き連れながら再びその姿を現すと同時に次々と教団兵が爆風に呑まれて
連鎖爆発していく。

 さらにその隣では、ツクヨミが時間を止め、敵の動きを封じていた。

「……時間は、私の意志に従え」

 白銀のライダーへと変身したツクヨミは、静かに手をかざし、時間停止の結界を張る。
ファイズフォンXで敵を打ち払いながら、彼女は強い眼差しで仲間の方角を見据えていた。

「私も、未来を選びたい。だから……私は戦う」

 一瞬のうちに敵陣を切り抜ける姿は、まさに月の名を冠するにふさわしい美しさだった。
その少し離れた場所。空間を操り、飄々とした笑みを浮かべるウォズがいた。

「祝福の時は来た! 我が偉大なる魔王の時代が始まる!
メサイア教団、君たちの名も王の覇道の礎として新たなる歴史の書に記されるであろう」

 詠唱を唱えながら、空間そのものを支配する。冗談めかした口調の奥に、
信念と忠誠が宿る。その姿は、最もジオウの王としての資質を信じる者の風格を
纏っていた。光の渦が彼の周囲を覆い、次々と敵を吸い込み虚空へ消していく。

「むんッ!!」
「くあああああッ……!!」

 ――そして再び、ジオウと審問官の戦い。
刃と刃がぶつかり合い、力と意志が拮抗する中、決着の時は訪れた。
ソウゴは静かに、もう一つのライドウォッチ――グランドジオウライドウォッチを
取り出す。

「俺は未来を守る王になる。誰かに選ばれなくても、俺が、“そうなると決めた”んだ」

【祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオウ!!】

「歴史の王……その器、見せてもらおう!」

 黄金の光が迸り、歴代ライダーたちの幻影がソウゴを包み込み、
グランドジオウが光の中に立ち現れる。

【AGITΩ!】

 右腕のレリーフにタッチすると、闇の神々・アンノウンと戦った仮面ライダーアギトが
召喚される。

「誰も、人の未来を奪う事は出来ない!!」

 神を脅かす存在、「アギトの種」を宿す人間を根絶やしにする事を目的としていた
アンノウン。メサイア教団もまた、選ばれた人間のみを残し、己の愉悦のためだけに
人の生命を弄ぶ者たち……

「はああああっ……!!」

 漆黒と金の神秘的な装甲。人間の進化の果てに辿り着いた“光の存在”は、
静かに敵を見据えていた。

「かかれぃ!!」

 対するは、メサイア教団数体の黒衣の信徒たち。浮遊する魔導柱を背に詠唱を始める。

「我らこそ選ばれし者……神の声を聞きし存在……」
「選ばれぬ者どもを粛清せよ!!」

「……人の運命がおまえたちの手の中にあるなら、俺が……奪い返す!」

 叫んだ瞬間、アギトが地を蹴った。 ――ドンッ!! 風が爆ぜる。
肉眼では追えぬスピードで、一気に距離を詰めると――

「はあああああああ!!」

 一体目の信徒の懐に潜り込み、重い肘打ちを側頭部へ叩き込み、地面を転がって
海に沈没。

「おおおおっ!!」

 二体目には、風を纏った回し蹴り。がら空きになった胴に追撃の蹴りを叩き込み、
装甲ごとへし折る。

「……!!」

 残る者たちが詠唱を完了させ、魔導柱から破滅の光を放とうとした刹那。

「死ねィ! 仮面ライダー!!」
「まだだ――!!」

 信徒が両腕を突き出し、焔の波動をアギトに叩きつける。

「……」

 爆炎の中、アギトの身体がバーニングフォームの赤に包まれていた!  

「か、変わった……」
「むんッ!!」
 
 バーニングアギトの燃える拳で魔導柱が溶解し、同期していた信徒にもそのダメージが
ダイレクトに伝わる。

「ぎ……ぎゃぎゃあああ……」

 メサイア教団の信徒が断末魔を上げ、光となって霧散する。

「アギト……まさに神殺しだとでも言うのか……否! そのようなことがあってはならぬ!
我が神は不変! 我が神は不滅!!」

 まだ蒸気の残る瓦礫の中で、アギトは振り返る。そして、グランドジオウに向けて一言。

「……ソウゴ。行くぞ」
「うん!!」

「こおおおおおおッ……」

 怒りを孕む呼吸が力に変わり、すべてを焼き尽くす灼熱の必殺撃となる。

【FINISH TIME!!】

「たああッ!!」

 グランドジオウとバーニングアギトが同時に飛び上がった。

「むおおおっ……!?」
「でやああああああああああッ!!」

 神罰の槍を突き破り、歴史と意志を乗せたダブルライダーキックが審問官を貫く。
爆発音。崩れる十字架。インクイジターの装甲が砕け、鉄の神官は地に堕ちた。

「ごほぇあッ……メサイア教団に……栄光あれ……!!」

 両手を大きく広げ、全身を紅蓮の炎に包まれながら海へと落水。
そのあまりの温度によって水蒸気爆発が発生し、空まで届く水柱が立ち昇った。

「……」

 役目を終え、頷くようにしてバーニングアギトも消えていく。

「ソウゴ……やったか……!」
「水雷戦隊は壊滅した……だが……」

 ウォズは見上げる。均衡を失い、傾きを見せ始める偽りの理想郷を……

22人目

〈完璧なる管理の為に:その2〉

特異点、杜王町。
不幸にも火の手が及んだ外周の住宅地区画の一角。
そこでは水色の長髪を携えた少女が空に浮かんで、ミケーネの軍勢を一蹴していた。
余りの一方的な蹂躙ぶりに、救われた筈の住民は歓喜より困惑が勝っている様子だ。

「あんた、一体…?」

住民に声を掛けられ、ゆっくりと身を翻す少女。
その仕草の一端から、この世のモノとは思えぬ妖美さと、幼子の様な愛くるしい可憐さが同時に垣間見えた。

「あたしはね、人間の味方だよ!」

笑みを浮かべてそう語ると、彼女は再び空を舞う。
機械獣の爆発によって巻き起こされた強風の中、まるで散歩でもするように。
飛び散る火の粉や破片は、まるで彼女を避ける様に軌道を逸れていく。

「天女…?」

その後ろ姿に、人々は御伽噺を想起した。
竹取物語の最後、かぐや姫を迎えた月の民を。
逸話において、彼等は武士の攻撃をまるで受け付けなかった。
どころか、一方的に無力化してみせたという。
そんな存在と同一視出来る程に綺麗で、浮世離れしており、何より恐ろしかった。

『おのれ、我等の戦いを邪魔をするか…!』

しかし生き残ったミケーネスは、残骸の中から立ち上がる。
最も賢いやり方は死んだふりでもする事だろうが、彼等なりにも理由があった。
故に、問う。

『貴様、どのような大義を以て我等と相対する気だ?』
「そんなの決まってるよ、人に手を出しちゃメッ!でしょ?」
『…我等の聖戦に、そんな子どもの如き理屈で立ちはだかると?ふざけているのかぁ!!』
「_おふざけな訳、無いじゃん。」

空気が、張り詰める。
彼女の一転した口調に先程までのあどけなさは一切無く、別人が彼女の口を借りて喋っているかのようだった。
憤りの入り混じった鋭い眼光に射抜かれ、ミケーネスは思わず固まる。
本能が、これ以上は自らの滅びを意味すると訴えたのだ。
そんな畏怖を気に留める事も無く、少女は言葉を紡ぐ。

「子どもっぽくても、人を愛したいあたしの想いは本気。誰かの悲しむ姿を、あたしは見たくない。」

_だから、許せない。
少女は静かに、しかしながら義憤を宿した目でミケーネの軍勢を睨め付ける。
同時に放たれる威圧は、死すら霞む程に濃密だった。

(何だ、これは。機械の身たる、我等神が、恐怖を覚えるだと?)
『そうか。貴様、ビルスの同類か…!』

ミケーネの神々は悟った。
嘗て立ちはだかった破壊神ビルスの様に、彼女もまた超越者だと。

『だがこの聖戦…貴様も、ビルスも、いずれは越えねばならぬ敵!』

それでも尚、彼等は愚かであろうとも立ち向かわんとする。
神としての矜持と意地が、そうさせた。
機械獣の残骸を乗り越えながら、ミケーネスは高らかに宣言する_!

『我等ミケーネに敗退の二文字は、無い_』

『黙れよ。』

不意に聞こえた、子どもの声。
底冷えた電子音声と共に、幾つもの閃光が空を切り、ミケーネスに降り注ぐ。
刹那の後、彼等の全身が灼熱に包まれた。

『…は?』

驚愕の余り漏れた声。
それが、遺言となる。

_カァァ…ドォーーーン!!!

周囲一帯を迸る爆発
地面諸共赤熱したミケーネスが爆炎に変わり、塵すら残らず燃えていく。
やがて出来た灼熱の風は、残った機械獣やミケーネの神へと吹きすさび、鋼の身体を焦がしていく。
再び起きた蹂躙劇を前に、件の少女は。

「っなに…!?」

身を庇い、目を丸くしていた。
その反応から、彼女の仕業ではないと住民の一部は悟る。
ならば、誰が…と、警戒する彼等の頭上に、巨大な影が差した。

「何だあれは。」
「宇宙船、か?」

見上げて呟く彼等の視界には、SFアニメに出てきそうな鋼鉄の飛空艇が浮かんでいた。
曲線の装甲を全身に纏った、有機的なシルエットをした軍艦らしきもの。
眼を凝らしてよく見れば、下部に開いた穴から排熱めいた陽炎が揺らめき立っていた。
残ったミケーネ神もまた、自らを襲ったソレを見上げて怒声を上げる。

『貴様ァ!我等の聖戦に水を差すとは、無礼千万_』
『もう駄目だよ、お前達。』

その怒声をわざと遮る様に、底冷えた声が響き渡る。
先ほど光線が降り注いだ時にも聞こえた、子どもの声だ。

『どうしようもないよ、お前達。丸喜の救いにケチを付けようとしたんだ。』

子どもらしさとは真逆のドス黒い意志が、電子音声越しに感じられる。

『…は?救いだと?何を_』
『邪魔さえしなきゃよかったのに、もう終わりだよ。生きる資格も自分で捨てたんだからさ_』

次々に突き付けられる言葉には、対話の意志は欠片も無い。
決まった台本を声に出すが如く、ただひたすらに非を責めるのみ。
さながら、公開処刑における罪状読上げのようだった。
そして…

『消えちゃえよ。』

拒絶を告げると同時、一条の光がミケーネ神の頭上を照らした_



〈第一次魔界大戦:魔の鎗客、天を穿つか〉

空前絶後、まさにそう言って差し支えない激昂を露わにしたピッコロ。
かの形相を前にスラッグが抱いた感情は…

「_やはり、『正解』だったッ!」

確信。
困惑と畏怖の入り混じった表情を浮かべながらも、その眼は確信に満ちていた。

「クォーツァー共と…他の世界線という存在と出会った時から。」

その確信が染み渡る様に、狂った様な喜びの色が、先程までの表情を上書きしていく。

「奴等の思惑に載ってまで…『世界の外からオレを脅かしえる者全て』を潰す為に、ここまで来たのだっ!」

内を満たす歓喜に打ち震えるスラッグ。
思慮深くはあるが、その根幹を成す感情は、骨の髄に至るまで利己的。

「下衆が。」

ピッコロは断言する。

「_貴様だけは必ず、倒す。」

勝てるかどうかという相対的な結果等、どうでもいい。
そんな、絶対的な決意。
ソレが己の、自分という種の誇りを賭けた使命だと定義した。
意志を新たに、ピッコロが叫ぶ。

「ナメック星人の戦士として、貴様を討たねばならんのだっ!」
「ははっ、面白い!お前こそ塵芥に変えてくれるわっ!」

対しスラッグは悪辣な嗤いを返し、今一度腕を力ませ膨張させる。
再びピッコロを捉える巨腕。
だが…

「…なっ、潰せん!?」

ピッコロの身体は、軋むどころかびくともしない。
先程までとは、硬度がまるで違う。
寧ろ、締め付けんとする腕の方が軋みを上げる始末だ。
ピッコロもまるで気に掛けず、全身を力ませる事に全力を注いでいる様子である。

「かああぁぁぁぁ…!!」

ピッコロの全身を巡り膨れ上がる、気の奔流。
一寸遅れてスラッグはその意図を悟り、咄嗟に腕を離そうとするも、一層強まる引力めいた風に引っ張られ、戻せない。

「今更気付いても遅い!貴様には、この俺の『今まで』を食らって貰うぞ!!」
「クソ、貴様_!」

逆に、ピッコロがスラッグの腕を自身に巻き付けるよう回転しだす。
腕を絡め取られ、ピッコロに接近させられるスラッグ。
同時に、気の奔流が最大限まで高まっていく。

(二度と使わんと思っていたが…)

そしてピッコロの全身が輝き出す。
スラッグ諸共包み込む、眩い光が一気に広がり…!

「_ばっ!!!」
_ドォーーーーーン!!!

23人目

「衝撃の決着! 魔法陣アタック!!」 

 ――暗黒魔界。
 ジョーカー、クロウ、フォックス対アクマイザー3。
三位一体の連携プレイ……特にリーダーであるザタンの剣技は群を抜いており、
苦戦を強いられる。

「はあああああッ!!」 
「うわっ……!!」  

 ジョーカーのダガーと、ザタンのサーベル型のジャンケルでは
圧倒的にリーチの差がある。加えて剣技の技量差……精神の力が全てを決する
ペルソナ使いと言えども、如何ともし難い劣勢。
押し負け、地面を転がるジョーカー。そしてダガーが手から弾かれてしまった。 

「しまったッ……!!」

 その致命的な隙を、ザタンが見逃すはずもない。悪魔の咆哮が空間を裂いた。  

「地獄を見せてやるぜえッ! 来ォい、イール! ガーラ!!」 

「御意!」
「なんだな!!」

 ザタンの号令で、疾風のごとく動きだす忠臣たち。

「何をする気だ……!?」

 まんまと出し抜かれてしまったフォックスとクロウ。

「気をつけろ、ジョーカー! 奴ら、何かを企んでいるぞ!」
「もう遅えッ!!」

 ザタンの両肩から、無数の魔力弾ザタンノヴァが発射され、クロウとフォックスの
追撃を阻む。

「ぐああああっ……」

「行くぜ! 魔法陣アタックだッ!!」
「おう!! アーム・クロォォォォォォス!!」  
「なんだな!!」

 イールとガーラが両腕を重ね合わせ、その上にザタンが飛び乗る。

「ホップッ! ステップ!!」 
「ジャアアアアアアアアアアアンプッ!!」 

 カタパルト式に上空高く打ち上げられたザタンが、まだ体勢が整わずにいる
ジョーカー目掛けて急降下。
  
「……!!」

 そしてジャンケルの凶刃が、ジョーカーの左胸を深々と突き刺した。 
時が止まる。その場にいる誰もに、衝撃の稲妻が走る。

「ジョ、ジョーカアアアアアアアッ……!!」 

 フォックスの慟哭が木霊する。 

「……ごふっ……!!」
「終わったな……楽しかったぜ、兄ちゃんよ……」 

 勝利を確信したザタンが、ジャンケルの切っ先を引き抜いた……まさにその時だった。

「――!!」

 心臓を突き貫かれたはずのジョーカーの瞳に再び光が宿り、銃を抜いた。

「ぐあっ……!!」

 ゼロ距離。一発の銃弾が、ザタンの懐に撃ち込まれる。 
さらにザタンの肩口に、一発。続いて左脚にもう一発。

「ぐおおおおおっ!!」

 その銃弾は、祝福属性を伴うハッピーボムの中身を薬莢に込めたもの。
アクマ族にとっては劇薬にも似た苦しみであろう。

「ザタン様!!」
「……なるほど、三位一体の合体攻撃。魔界の悪魔もなかなかどうして、
互いを信頼し合う心を持っているようだ。素晴らしい事だと思うよ。その気持ちを 
すべての人間が得られる世界を築けたら、どんなに良いことか」

 空中から、丸喜のペルソナ・アザトースの触手がイールとガーラを足止めする。
魔法陣アタックの特色にして弱点。それは、クロスアームの陣形を組むために 
3人が一箇所に密集する必要がある、と言う事。

「どわああああっ……」 
「おのれ、曲者……!!」

「ちいいっ……魔法陣アタックをまともに喰らって、立ってやがるだとぉっ……!!  
どんなイカサマを使いやがった、仮面の兄ちゃん……!!」
「……」 

 ジョーカーからの予想外の一撃は、ザタンに肉体的、精神的に激しい揺さぶりをかけた。
無言で、ジョーカーがコートの懐から取り出したのは……

「あれは……確か……」

 ホムンクルス。シャドウからの即死攻撃に対し、一度だけ身代わりになってくれると言う
貴重な魔法アイテムだ。

「深夜の怪しい通販サイトで買っておいたのが、今になって役に立つとは。 
結構高かったんだ」

 雨宮蓮がジャンクショップで購入した中古のノートパソコンを
自室の屋根裏部屋に設置した日の夜に検索ヒットしたサイト「闇ネットたなか」で
気まぐれに購入したモノ。何故そんなものが流通していたのかは定かではない。

「全く……あの男は……」
「そう言う男さ、彼は。以前にもまんまと欺かれてしまったからね……」

「俺のコードネームはジョーカー。その名の通り、道化師だ」

 心の怪盗団のトリックスター。彼はこれまでにも、幾度となく奇跡を起こし、
絶体絶命の危機を鮮やかにひっくり返して見せてきた。

「化かされた、ってわけかい。ふっ……ははははははは……てめえみたいな
巫山戯た野郎は初めてだ! はっはははははははははは……」 

「ザタン様が……大笑いしてるんだな……」
「なんともはや……あの黒尽くめの男……ただのうつけ者か、傾奇者か……」
 
 ガーラとイールも、主であるザタンをこれほどまでに揺るがせて見せた
ジョーカーと言う男の底知れなさに、しばし息を呑んだ。

「だが、危なかった。こうまでしなければ、お前に一矢報いる事は出来なかっただろう」

 役割を追えたホムンクルスが、黒い灰となって跡形もなく崩れ去っていく。
奇跡は2度起きぬから、奇跡。改めて痛感する。暗黒魔界と言う場所が、未だ嘗て無い 
難所である事を。  

「……はああ……」 

 笑い続けるザタンの顔に、戦意が戻る。いや、それは戦意というより、
剥き出しの愉悦だった。

「兄ちゃん。いいや、ジョーカー……脚にいいもんもらっちまったからな…… 
これじゃあ、全力の魔法陣アタックはチトキツい。それも計算って奴か?」
「そう言っておいた方が、カッコいいかもな」 

「けっ、ほざきやがる」 

 ザタンは舌打ちし、イールとガーラを目で呼び寄せる。

「帰るぞ! 次に会う時は、テメェら全員の“心の奥底”をぶち抜いてやるぜッ!!」

「ザタン様の命とあらば、致し方なし。だが拙者、次こそは本気を出すでござる!」 
「俺もまだ全然、暴れ足りないんだな!!」

 三人は魔界の裂け目へと跳躍し、深淵へと姿を消した。
残されたのは、静寂。そして、硝煙の残り香。

「ふぅ……」

 ジョーカーは銃を収める。その横で、クロウが肩を竦めた。
  
「まさか、即死防止アイテムで切り抜けるとは。まるで……
悪運だけで生き延びているような男だな」
「いや、それは“信念”だよ」

 丸喜拓人が穏やかに呟く。彼もまた、ジョーカーの奇跡に敬意を込めていた。

「最後まで“諦めなかった”。それが、彼の強さだ」

 風が吹いた。魔界の空気は未だ淀みを緩めていない。

「……どうする? 追うか?」
「いや、今は無理だろう。あれは暗黒魔界の奥深くへと帰っていった。
下手に踏み込めば、次は“命”だけでは済まない」
「命を拾った、と言う事か。奴らは本当に最初からお遊び気分だったわけだ……」

 クロウが静かに言い、マントを翻す。ジョーカーもまた、それに頷いた。

「CROSS HEROESのみんなと随分離れてしまった。アビダイン隊のみんなが心配だ、
急いで戻ろう」

 アクマイザーとの激しい戦いで、気づけばアビダイン隊の主戦場から
分断される格好になっている。アビダインが駐留しているであろう方角では、 
森を焼く爆発光と地を揺るがす振動……未だ激しい戦いが続いているのが見て取れた。

24人目

「絶叫するほどの怒りを」

「この低級のクズどもがあああああああ!!」
 アルキメデスがかつてないほどに猛っている。
 怒り狂い、己の本性たる冷徹などう猛さをむき出しにして、全方位に宝具の光線をまき散らしている。
 その時だった。

『サーヴァント・アルキメデス、我が「オモヒカネ」の令呪を以て命じる。 撤退せよ。』
「!?」
 貴重な令呪を用いた「撤退命令」。
 ここで暴れられるのはビショップにとっても不本意なのか、やむを得ず切ったといったところか。
 彼らの視点からすれば、島の爆発という最悪の事態を避けるという点で賢明な判断ともいえるが。
「ビショップ、貴様……!!」
『「コクーン」と貴様の命ごと全てを破壊する気か?そもこの島はかの女神の魔力炉心として献上すべきものであった。それが不可能になった今、』
「だが連中を此処で葬り去らなければ……!」
 ビショップはあくまでも冷静に、状況と撤退司令を伝えた。
『リベンジの機会はいくらでもあるし、そも私はお前を失いたくない。』
「っ……!」

『落ち着け。今は下がり、復讐の時を待て。』
 歯ぎしりをしながら念話を終える。
(光線が止んだ……?)
 人造人間たちが考察する暇もなく、アルキメデスは消えた。
 吐き捨てるような捨て台詞を残して。
「……貴様ら、次は殺す。」



 存在しなかった世界

 地上のアルキメデス以上に気が立っていた人物がいた。
「……大帝が、逃げきっただと?」
「……はっ。」
 兵士の一人が、まるで申し訳なさそうな声で玉座に座る魅上に報告した。
 その報告は「カール大帝」の逃走成功というもの。
 こんな内容、とてもじゃないが言えない。
 ていうか言ったら殺される。
 魅上は肩をわなわな振るわせて、絞り出すような声で説明を求めた。
「言い訳はいらない、詳しく聞かせろさもなくば殺す……ッッ!」
「は、はい……カール大帝猊下と彼直属の親衛騎士団『エーイーリー剣の友騎士団』547名は対応した他兵士をなぎ倒し、特異点に派遣予定であった『ケムダー救世騎士団』の第二部隊300名の転移準備に紛れ、装置から地上へと転移を……。」
 大帝は兵士数百名を連れて特異点へと消えた。
 やはりその目的は丸喜たちとの合流か。

「あの裏切り者の特使はどうした?」
「あの後、白黒の服を着た謎の超人と共にそのままどこかへと消えました……恐らくは大帝猊下を迎えに行ったものかと……!」
 怒りのあまり顔がゆがむ。
 魅上が激しく唇を噛みしめ、血が出るほどに憤る。
「猊下猊下と、貴様もまさか……!?」
「それは被害妄想にございます!」
「雑魚の分際でよくもそのようなことを言えたものだな!!」
「しかし!」
「次に口答えをしたら殺すッッ!!!」
 怒りのあまり絶叫する。
 もはやここまでくると独裁者の域だ。
「すまない……落ち着かせてくれ。」
「はっ……。」
 魅上はいったん落ち着こうと、そのまま化粧室へと駆けこんだ。

「かはっ……ごふっ……!」
 便所で吐き出すほどの衝撃だったという事だったのだろうか。
 或いは、狂気に飲まれた者ゆえに思い通りに事が運ばず、身勝手にも胃を痛めてしまったという事か。
「私は、救わなければならない……純化(ほろび)による救済を為さなければ……腐りきった世界を救えない……!」
 化粧室で涙と血を噴きながら、魅上は怨嗟の声を吐き出す。
 そこにはすでに、過去キラとして世界を救おうとした狂喜と狂気はなかった。
 ただ純粋に、キラをむざむざ殺され世界に絶望した者の願いと呪いだけがあった――――と、後の兵士は語ったという。

25人目

「Until the dying day」

 崩壊の予兆に軋むユートピア・アイランド。地下から吹き上がる爆圧と
断続的な振動が構造体を歪め、建造物が次々に崩れ落ちていく。

「誰か! 助けてくれッ!!」
「我が神よ、ここに! 我々を、我々を見捨てないで――!」

 瓦礫の山の中、教団兵たちが必死に声を張り上げ、伸ばした手をもがくように動かす。
だが、彼らの絶望に応える者はもういない――いや、一人だけいた。

「……騒ぐな。君たちもまた、「神に選ばれなかった者だった」、と言うだけの話だ」

 声がした瞬間、静寂が降りた。
大司教・ビショップが、無表情でその場に立っている。

「……えっ?」
「っ……そんな……」

 信仰と忠誠を捧げてきた者たちの顔が、愕然とした色に染まる。

「無駄に死ぬな。せいぜい奴らを足止めし、瓦礫の下で“神の糧”となれ。
なに、替えはいくらでも利く。そのために造ったホムンクルスなのだからな。
言うなれば、『死ぬために生み出された者』。君たちはどう死ぬか、価値はそこにしか無い」

 それだけを言い残すと、ビショップは軽く指を振る。
転移術式が足元に展開され、黒い螺旋が身体を包む。

「さらばだ。君たちの犠牲は、我々の未来の礎となろう。
メサイア教団の名の下に殉じられるのだ、光栄に思うが良い」

 爆発の衝撃が最後の礼拝堂を吹き飛ばした瞬間、彼の姿は空間の歪みに
飲み込まれて消えた。残された兵士たちは、天を仰ぐ。
そこには、もはや神も救いもなかった。

 燃え上がる島。
 崩れ落ちる神殿。
 飲み込むは、濁流のような火と煙。

「……クソが……」
 
 血塗れの兵士が、うつろな瞳で呟いた。

「俺たちは……ただの燃料だったってわけかよ……奴らだけがぬくぬく
暖を取るためだけの……!」

 消費されるだけの、無碍なる命。
ビショップにとっては、脱出のための時間稼ぎにでもなれば良い。
轟音と共に、理想郷が崩れ落ちる。瓦礫が雨のように降り注ぎ、断崖のようになった足場が音を立てて砕けた。

「うわあああああっ!! 誰か、た、助け……!!」

 宙を舞う教団兵――

「ぬえええええええいッ!!」

 獣の咆哮のような声と共に、ウルフマンがその腕を、しっかりと掴む。
度重なる戦いでボロボロになった傷だらけの身体で、だ。

「お、お前……助けてくれたのか……?」
「へへ……この肉体はな……敵をぶっ壊すためだけに鍛えてるわけじゃねえ……
眼の前で助けを求める者の腕を掴むためにあんのよッ……くああああああ……!!」

 ウルフマンはそのまま兵士を強引に引っ張り上げ、さらに次の救助へと向かっていく。
全身に瓦礫が降り注ぎ、血に染まっていたが――その目だけは決して淀んでいなかった。

「あいつ……」

 島全体が傾きながら、ゆっくりと地上へと落下を始めていた。
それはまるで、巨大な隕石のように。

「くそったれが……!! メサイア教団の野郎ども、とんでもない置き土産を
していきやがって……!! 地球がどうなろうとお構いなしか……!!」
「まずいな、時間がねえ……!」

 その時、空を裂いて現れたのは――

「チェェェェェェェェェェンジ!! ゲッタァァァァァァァッ!! ワンッ!!」

 爆音と共に大気を割って降下してきたゲッターロボ。赤く輝く巨体が、
崩れゆく島の重心部へと接近していく。

「ゲッターロボ!」
「地上の方は片が着いた! で、このデカブツかよ!」

【タイムマジーン!】 

 そして、ゲッターの後方から現れたのは――
ジオウとゲイツのタイムマジーン。その中から次々と飛び出してくるシルエット。

「ツクヨミ、操縦よろしく!」
「わかったわ、ソウゴ」

 ツクヨミに操縦を代わったグランドジオウ、ウォズ、環いろはの三人が
タイムマジーンの外装に躍り出る。

「私たちだって――希望を捨てていない……!」

「おい、島を止めるぞォッ!!」
「了解! ここで止めなきゃ、下にいる人間が全員ミンチだッ!!」

 各陣営が連携し、一つの意志で立ち向かう。
“ユートピア・アイランド落下阻止作戦”、ここに発動――!
地上では、避難していた人々が空を見上げ、涙ぐみながら祈っていた。

「ちっきしょう……M9の狙撃砲もいろはちゃんとのコラボ技で
ぶっ壊れちまった……俺らは見てるだけかよ」
「弾薬もメサイア教団とのドンパチで使いきっちまった……けどね、ここで
指咥えて見てるだけじゃ、ミスリルの名折れさね!」
「軍人の役目は、一般市民の保護でもある。この海域の住民を一人でも多く避難させる」

「頼みます、皆さん……」

 満身創痍のトゥアハー・デ・ダナン。
巨大な島が落ちれば、この区域一帯が壊滅する――その寸前。

「どっせええええええいッ!!」

 ゲッターが機体の腕を突き立て、落下速度を抑えようとする。

「むおおおお、ゲッターのパワーでも押さえきれるかどうか……!?」
「押さえるんだよォォォ!!」

「血は人間の絆……愛の証! 愛のために血を流す男! スパイダーマンッ!!
行くぞレオパルドン、パワー全開!!」

 スパイダーマンの切り札、巨大戦闘メカ・レオパルドンが
ゲッターと並び、島を支える砦となる。

「へへ、ゲッターと力比べってかい。何処の誰だか知らんが、やったろうじゃねえか!
おおおおりゃあああああああッ……!」
「……お願い、私の中の「ワタシ」……あなたの力が必要なの!」

 希望と絶望がせめぎ合う中、魔法少女の祈りが放たれた。

「何だ……!?」
「いろは……ドッペルを……!!」

 その名は、沈黙。醜く臆病な自分までをも覆い隠すために
耳を閉じ、目を閉じ、口を閉ざす。髪の毛が凄まじい速度で伸びゆき、
呼子鳥の化身を顕現させる。

 だが、それはもはや過去……言いたいことも言えない、声も上げられない
かつての環いろはではない。

「私の全てを、私が成し遂げたいことのために!」

「うおっ……」
「わあああああ……」

 いろはの髪の毛の先端が布となり、逃げ惑う教団兵たちを包み込む。
何千、何万の束となって無限に拡散。
いつしかいろはの五感を封じていた戒めも解けていく。

「なんと……」
「これではまるで、すべての衆生を救う、菩薩のようではないか……」

 環いろはの魔力が限界を超え、落下する島全体を慈愛の光で包み込み、
浮遊を維持する補助フィールドを展開。
同時に、周囲にいた教団兵たちがその様子を見て立ち尽くしていた。

「俺たちは、何も知らず、何も疑わず、ただ“神”に従っていただけだったのに……」

 一人、また一人と膝をつき、武器を置いた。

「……こいつら……何故そこまで出来る……元はと言えばビショップが放置していった
この島を止めようとして……」
「っ、くそ……!」
 
 若い兵士が立ち上がる。

「――魔法少女! オレたちにも、何かできるか!?」

 いろはが振り返り、微笑む。

「……もちろん。あなたたちの手で、未来は変えられる!」
「よぉし、ユートピア・アイランドの内部にまだ使える物が残ってるはずだ!!
ありったけかき集めてくるぞ!!」

 時は満ちて。おお、メシア……

26人目

「ユートピア・アイランド落下阻止作戦」

 ユートピア・アイランド落下。
この時ばかりは人間も、ヒーローも、かつての敵さえも、
己の手で未来を掴み取ろうと、一つになった瞬間だった。

「やらせない……!」

 七海やちよが、渾身の力で水の魔力を放出し、島の下層部を凍結させる。
バミューダクリスタルの冷却効果を最大限に引き出し、
島全体を包む炎と瓦礫の落下エネルギーを封じようと奔走する。

「いろはもドッペルを出してまで頑張ってるのよ……!」

 やちよの周囲に、氷の柱が次々と聳え立つ。
その魔力が、崩落の加速を食い止める盾となる。

「島は落とさせない!」

 時の王が放ったその力は、時間の狭間より二人の仮面ライダーを呼び寄せた。

【OOO】【プテラ! トリケラ! ティラノ!!】
【WIZARD】【ウォータードラゴン! ジャバジャバ、バシャーン、ザブンザブーン!】 

 グランドジオウのレリーフから、仮面ライダーオーズと仮面ライダーウィザード。
氷属性の能力を持つフォームの姿となって召喚される。

「この手を伸ばして届くもの全てを……俺は守りたい!」
「ショータイムだ」

 青い魔法陣が空中に展開され、水のように流れ落ちる魔力が形を成す。 
水竜を纏う青の魔法使い――仮面ライダーウィザード・ウォータードラゴンが
姿を現す。

「水の力……こいつで、島を冷却する!」
「!? 海が……」
 
【Special】

 ウォータードラゴンは両腕を組むと、海に大渦が発生し、が
まるで天を昇る龍が如く立ち上る水流。やちよが張った氷結領域と共鳴して
周囲一帯に猛烈な冷気と水流を放った。島全体を覆う事で
バミューダクリスタルの冷却効果も最大化され、崩落の勢いがさらに鈍化した。

「おおおおおおおおおおおッ!!」

 もう一体……紫の氷嵐が時空を割り、暴竜の力を纏った仮面ライダー――
オーズ・プトティラコンボが咆哮と共に降臨する。
 
 プトティラの巨大な翼の羽撃きによって発生する全てを凍てつかせる冷気。
生物の食物連鎖の頂点、恐竜。そしてそれを絶滅に至らしめた氷河期の極寒。
それらを併せ持つプトティラの巨大な尾が島の支柱となる部分を一気に凍結破壊。
崩壊のルートを人為的に制御し、沈下を防ぐように破壊と凍結を繰り返す。

 紫の冷気竜巻が島の内部構造を貫き、重力異常を打ち消し、巨大質量を空中で固定させる一撃となった。

「ええいッ!!」

 チャオズのサイコキネシスが、崩れ落ちてくる破片を空中で堰き止める。

「気円斬ッ!!」

 その隙に、クリリンの気円斬が唸りを上げて破片を細かく切断。

「新! 気功砲おおおおおおおおおおッ!!」

 両手で組んだ四角形の空間に大型の破片を捉え、天津飯の奥義が発射される。

「はああああああッ!!」

 空間そのものを削り取る光の奔流が、破片を跡形もなく消し去る。
召喚された仮面ライダーたちに並び、Z戦士たちも奮い立つ。 
それぞれが全力の気を練り上げ、島の各部に集中砲火を浴びせる。

「爆発しない……凍らせてしまえば、こっちのもんだな」
「ああ。エネルギーを一点に叩き込めば、崩落を遅らせられるはずだ!!
手を休めるな!」

 次々と放たれる光線が、島の重量を分断し、落下の速度を抑える。

 黄金の時の力が降り注ぎ、崩壊寸前のユートピア・アイランドを一時停止させる。
その間隙を縫い、ゲイツやツクヨミ、ミスリルの部隊が内部からの避難を完遂させていく。

「銃を撃つばかりが能じゃねえ。潜入任務も、俺達の仕事ってね」
「よし、全員、退避完了!!」

「ツクヨミ、離脱準備を急げ!!」
「わかってるわ、ゲイツ!!」

「お前たち……」
「メサイア教団。貴様らは赦されない事をした。
一生を費やしても贖い切れるものではない。それでもか?」
「ああ……戻ってもゴミのように始末されるだけだ。だったら……」
「……そうか。貴様のその決断に敬意を示そう」

 クルーゾーは救助支援したメサイア教団兵に対し、それ以上言葉を語らなかった。

「ぬおおおおおおっ……」

 満身創痍のウルフマンが叫ぶ。彼が支えるその背に、助けられた兵士たちがしがみつく中
必死にさらなる仲間を引き上げようとしている。

「これが……これが人間だッ!! 使い捨てでも、道具でもねえ! 
生きて、未来を掴む生き物だッ!!」 

「――!」

 逞しい二の腕に引き千切れんばかりに血管が浮き出る。ウルフマンのその姿勢に、
オーズとウィザードが加わった。

「お前ら……」
「俺の目の前で、誰一人泣かせやしない。俺が最後の希望だ」

 オーズがウルフマンを支え、ウィザードが魔法陣のバリアで降り注ぐ破片を弾く。

「ギア……サード!!!」

 大気を割って現れたのは、ギア3状態のモンキー・D・ルフィ。

「ゴムゴムのォォォッ……象銃乱打(エレファントガトリング)ゥゥゥゥッ!!」

 巨大な拳の乱打が、島の崩れかけた支柱をぶん殴り、ぐらつきを一時的に立て直す。
反発するように空中で島が揺れ、さらなる崩壊を抑えた。

「みんなを……救いてェんだッ!!」

『オラオラオラオラオラオラッ!!』
 
 空条承太郎がスタープラチナを解き放つ。
神速の拳が、島内部で暴走しはじめたエネルギー炉の制御パネルを的確に破壊し、
暴走の連鎖を止めた。

「メサイア教団の好きにはさせねえ……!」

 拳が最後の装置を砕くと同時に、内部でうねっていた重力異常が収束し始める。
 いろはのドッペルが最後の輝きを放ち、島を宙に押し上げた。
限界を迎え、光が霧散していく……そこへ。

「あいつら……この世界の人間でもないイレギュラーだろうに……」

 ゲッター、レオパルドン、Z戦士、ジオウ、ルフィ、承太郎、魔法少女――
全ての英雄たちが、最後の一押しをかけた。

「――いっけぇぇぇええええッ!!」

 その咆哮に呼応し島は遂に水上に落水する。
崩壊は免れた。海面に浮かぶ新たなる大陸となり、そこに僅かに残る生命たちが
息を吹き返す。
 
「……やった……助かったんだ……」

 ミスリルの兵士が、呆然と空を仰ぎ言った。涙が、その頬を伝う。

「ありがとう……」

 祈りにも似た、震える声が響く。

「ありがとう……ありがとう……!!」

 その声はやがて、大合唱となり、空へと昇っていった。
誰のためでもなく、己たちの未来を繋ぐために戦った全ての者へ。
崩壊は、阻止された。
希望は、確かにそこに残った。

「よう、助かったぞ」
『スーパーヒーローとして、当然の事をしたまでだ』

 人造人間17号が、軽く肩を回しながらガンマ1号に語りかける。
その背に大量の教団兵たちを抱えながら。ユートピア・アイランド内に残っていた
ホムンクルスたちの瓦礫の下敷きになりそうな群れを、
光速の移動で次々と救出して行ったのだ。

『悪は裁かれねばならない……だが……』

 腰元の光線銃に手をかけるガンマ1号。だが、その指先には躊躇いが残る。
造られた生命。偽りの生命。ガンマ1号とホムンクルス。善と悪。その境界線とは。

『……メサイア教団の空中要塞の無力化、完了。補給のため、一時撤退する』

27人目

「聖なるかな、邪なるかな」

 存在しなかった世界 通称「女神を孕む鉄塔」

 カルネウスの最期の抵抗によって一度は崩落した鉄塔ではあったが、彼らの努力もあってかすぐに建て直された。
 何しろこの塔こそが、彼らの最終目的たる「女神計画」の重要基地。
 そこをこんなくだらないことで潰されてはままならない。
 兎にも角にも、復旧したての研究施設たる塔内部で
「しかし……いつ見ても麗しい姿だ。」
「そうか?俺には怖く見える。」
「そんなこと言うな、魅上に殺されるぞ。」
「そういうお前はどうなんだ?」
「かっこよく見える。」
「なんだそれ、ははははは……。」

 談話をしながら、研究員たちはその中心に安置された培養槽を見ていた。
 内部に収められた結晶体。
 しかし、前の時とは異なり内部には人型の何かが納められていた。

 ――――美しくも怖ろしい、人間。
 否。人間というにはあまりにも女神的で悪魔的だった。
 およそ人とは思えぬ巨大な悪魔的双角。
 黄金比と白銀比を掛け合わせたような女神的肢体。
 されどその姿はまるで、人の形をした巨大な銀河かブラックホールを思わせる。
「ところで……大帝猊下、逃げてしまったようだぜ。」
「そうか……そうなれば俺らも終わったら、逃げるか。」
「それがいい、他の連中は知らんが俺らツァーカブ聖別騎士団は大帝猊下について行ったのであって、魅上について行ったわけじゃないんだよなあ俺らァ……。」
 どうやらメサイア教団という組織も一枚岩ではなかったのか、教団内部でも大帝派閥と魅上派閥に分かれている様子。
 彼ら研究株のうちツァーカブ聖別騎士団と呼ばれるのは前者、カール大帝に忠誠を誓った者達。
 女神鋳造のためにこの存在しなかった世界を出ることはできなかったが……。

「なあ、魅上のやり方はどう思うよ。」
「最悪というよりほかはない、何しろ人使いが荒い!」
「そうだよな!だがそれを面といえば殺される。黙々と働くしかないんだよなァ俺らみたいな奴ァ!」
「全くだ、大帝が三日以内に帰ってこなかったらボイコットしようぜ。」
「それがいい。」
 まるで飲み会のような雰囲気すら醸し出してくる様相であったが、その話を聞き逃すほど教団は甘くはなかった――――。

 存在しなかった城 謁見の間
「魅上様、ツァーカブ聖別騎士団の連中がボイコットを……。」
「そうか。即刻潰せ。ツァーカブ聖別騎士団は今日を以て解体だ。」
 兵士の一人が、魅上に報告していた。
 その内容は、やはりというべきかツァーカブ聖別騎士団の『謀反』について。
 魅上は激情をできるだけ表に出さず、彼らへの裁きを下した。
 解体、即ち――――死。
「し、しかし来たる聖戦の時に戦力を減らすのは些か愚策かと……私の意見としましてはまだ折檻や制裁でいいのではないかと!ええそれが一番良いと思われますが、如何でしょうか?」
 その兵士は咄嗟に反論した。
 焦っているせいか一部言葉遣いや態度がおかしい点もある。
 確かに今まさに裏切ろうとしている者は、即刻処断しなければ組織がガタガタになる。
 それは同時に、感情に任せたやり方をせずあくまでも理知的な処置をすることが前提。
 だが、それよりも魅上は。
「何だ、今私に意見をしたのか?」
「え?そうですが……。」
「この新世界の神である私に意見したのかって言っているんだッッ!」
「そうですハイッ!申し訳ありませんでしたッッ!!」
「即刻解体せよ!あんな奴らはいらん!」
 感情任せに全員の処刑を命じた。

(草葉の陰のカール大帝猊下も泣いているだろうに……!)



 同時刻 エジプト地下遺跡
「それでどうする、もう逃げられんぞ。」
 藍神は追いつめられていた。
 低次元に消そうとした海馬は消えないばかりか、強固なるエゴによってプラナの集合意識に勝って見せた。
 だが、それでも藍神。
 否、ディーヴァは。
「面白い、ならば魔術の札で裁きを下すまで!」
 魔術の札。
 即ち、デュエルモンスターズによる決着を望んだ。
 海馬はデュエリスト、挑むよりほかはない。
「良かろう、オレに挑んだことを後悔させてやる!!」
「後悔?キミを招待してあげるよ、ボクたちの『次元領域デュエル』にね!――――今からここを、異次元へと場所を移す!」
 その一言と共に、遺跡内部の空気が変わった。
 何かヤバい、そうおもってモクバが上を見ると―――。
「ああっ!!」
 空が、赤い渦を巻いていた。

 そうこうしているうちに、二人ともデュエルディスクを構えた。
 近未来的ながらもシンプルな形状の、海馬のデュエルディスク。
 対するディーヴァのは、まるで立方体を複数組み合わせて作り上げたような異形のものであった。

「「決闘(デュエル)!!」」

28人目

〈第一次魔界大戦:魔王の意地、神の誇り〉

ピッコロを中心に巻き起こる、大爆発。
真っ赤な火球が強大に膨れ上がり、凄まじい熱量が吹き荒れて、大気を震わせる。
直後に吹きすさんだ爆風は紫煙の雲を晴らし、薄黒い空を露わにしていく。
立ちどころに登る、巨大なキノコ雲。
スラッグどころか周囲一帯さえ消し去るその猛威に、悟空は覚えがあった。

「ありゃあ、天下一武道会で使った…!」

嘗てマジュニアを名乗り天下一武道会に参加したピッコロが、最後に使った全身に溜めた気を一挙に解き放つ技。
フルパワー衝撃波、或いは超爆裂魔波とも呼ばれる、当時のマジュニア最大の一撃だ。

「あん時より、ずぅっとパワーが上がってる…」

直に迎え撃った悟空の見立て通り、嘗てとはまるで比較にならない威力だ。
これほどの恐るべき攻撃、恐らく屈指の実力者であろう倒しきるに足るだろう。
余程の化け物でも無ければ…

「_っ!」

そう思案した時だった、悟空が膨大な気を感じ取ったのは。
同時に浮かぶ、嫌な予感。
視線を爆心地に向けるとソレは確信に変わり、冷や汗が浮かび上がった。

_ドゴォン!

答え合わせめいて、黒焦げた地中から緑色の腕が突き出る。
ピッコロでは無い、ピッコロの気を纏ってはいない。
即ち、それが示す事実は。

「_グッフッフ、今のは効いた、確かに効いたぞ。」

スラッグが余程の化け物の側である、という恐ろしき現実だった。
地中から這い出たスラッグの四肢はズタズタに傷付き、薄っすらと黒焦げてはいる。
だが逆に言えば、ダメージらしきモノはそれだけでしか無かった。

「ピッコロの奴は、アレで蒸発したか。」

対し、ピッコロの姿は何処にも見当たらない。

「やっぱり…オラに放ったあん時より、ずぅっとパワーが上がってるんだっ!そんな状態で、フルパワーを出しちまったら…!」

悟空は先程のフルパワー衝撃波を見て、その威力が秘めた"リスク"にも気付いていた。

「グッフッフ、自身を死に追いやるだろうなぁ?」

嘗ての天下一武道会の時でさえ、放った後は防御すらままならなくなる反動があった。
それから長い時を経て鍛錬と進化を積んだ今、その威力は自身の命すら脅かしても不思議では無い。
だが…スラッグは生きている。

「コイツ、まるで効いてねぇのかっ!?」
「当然だ。この程度の傷なぞ、放っておいても治るわ。」

その唯一の傷跡も、無視できる程度だとスラッグは言ってのけた。
これでは、ピッコロは_

「正しく、無駄死にとはこういう事_」
_ガコン…ガシッ!
「_を?」

否、と言わんばかりに、地面から伸びた手がスラッグの足を掴む。
その手もまた緑色であり、悟空にとっては朗報に他ならなかった。

「_勝手に殺されては困るな。何せ、貴様にくれてやる命は無くてなぁ!」
「貴様、生きて_ぬおぉぉ!!?」
「ピッコロッ!」

叫びを上げ、腕を振り回すピッコロ。
技の反動で全身がズタボロだが、それでもまだ活気に満ちた目付きだ。
一泡吹かせられたスラッグは、なすがままに振り回される。

「おぉぉぉ…りゃあぁぁッ!」

そして真上に向け、瞬く間に大空へ身を投げ出されるスラッグ。
かと思えば、いつの間にかスラッグの前方にいたピッコロの蹴りが、どてっぱらに炸裂。
鋭いバニッシュアタックにより180°ターンし、スラッグは再び地の底に叩き込まれた。

「ガッ!?くそ、ピッコロ、貴様ぁ!!」
「間抜けな油断だったな。技を半端に知っていたせいで、返って威力を見誤っただろう?」
「ぐぅ…!」

ピッコロの指摘通り、スラッグ神と融合して得た記憶にある「嘗ての天下一武道会の時の威力」を元に、今の威力とその反動を推し量っていた。
故にこの油断は当然であり、ピッコロからすればこの上無い好機だった。

「い、今のフルパワーなら、間違いなく死んでいた筈だ…!」
「全力なら、だろうな。だが何時、全て出し切ったなんて言った?」
「な、に?」

答えてやるとばかりに、ピッコロは自らの両腕をスラッグへと突き出し、両手の指を全て合わせる。
天津飯の気功砲を思わせるポーズに、スラッグが疑問符を浮かべる。
だが次の瞬間、手の内で光り輝く膨大な気が目に映り、悟った。

「_まさか、貴様。腕のパワーだけ一切使わずに!?」
「ご明察。さっきのは6割といった所か。だが、コイツは違うぞ!」

急激に膨れ上がる気。
鼓動の様に波打つ膨大な気は煌めき、周囲に残光を残す程にどこまでも高まっていく。
気を感じ取れないスラッグですら、目には見えるその脅威に顔を青ざめさせた。

「ま、不味い…コイツは不味い!!先の爆発すら、コレの前では生温いッ!!」
「今の今まで溜めた本当のフルパワーだ!コイツで消し飛ばしてやる!!」

咄嗟に動こうとするも、既に遅く。

「激烈光弾ッ!!!」

放たれた人間大の光弾が、スラッグへと瞬く間に飛来_

_ズッドォォーーーォン!!!

そして、閃光が満ちた。
途轍も無い轟音と爆発が、衝撃を伴って巻き起こる。
眼を焼く程の輝きが岩石を抉り取りながら広がり、逆立った風の刃が小山を斬り裂く。
衝撃波の速度は生半可では無く、ソニックウェーブがドーム状に巻き起こった。

「ハァ…ハァ…!」

白く染まった風に吹かれる中で、肩で息をするピッコロ。
真のフルパワーを出した事によって吹き出た汗が、風に流されていく。
後に残るのは…先程の比にならない黒煙のキノコ雲と、スラッグが立っていた周囲一帯が底なしに抉られた大地のみ。
その後方で、悟空が土煙に咳き込みながら言う。

「ケホッ…なんちゅー威力だよ。スラッグの気が跡形もねぇや…!」

驚嘆と歓喜の入り混じった声色を浮かべる悟空。
今度こそ、スラッグを消し去ったと確信が持てた。
先に想定された、自滅という最悪の事態から一変したのが、喜びを加速させたのもあった。
…だが。

「…いいや、奴はまだ生きている。」
「えっ?」

そう断言したピッコロの眼付きは、極めて険しかった。
そのまま爆心地に目を向け、口を開いた。

「出てこいスラッグ!気が消えていても、お前が生きているのは分かってるぞッ!」

瓦礫の軋轢音が僅かに木霊する中、彼の叫びが響き渡る。

「ちょ、ちょっと待てよ!アレで生きてるって…」
「耳が良いからな。地面に潜っていても、その汚い咀嚼音はよく聞こえるぞ!」
「咀嚼…ってぇと、まさかっ!?」

ピッコロの提示した咀嚼という言葉に、一つの仮説を見出した悟空。
直後、それを裏付ける様に爆心地から気が溢れ、キノコ雲を晴らす。
晴れていく黒煙から、その影が露わになる…

「グッフッフ…地球のことわざで、確か『備えあれば患いなし』と言ったか。」

やはり、スラッグだった。
その全身は先程の比ではない程にボロボロに朽ちており、血塗れの死体と見間違うレベルだ。
だが、彼の手には。

「やっぱ、神精樹か…!」

禍々しい色の、神精樹の実。
仮説通り、スラッグは神精樹の実によって生き延びていた。

「チクショウ、不死身か…?」
「いや、奴は確実に追い詰められているぞ、悟空。」

しかし、ピッコロの見解は、冷静さを欠いていなかった。

29人目

「ヒーローズ・ライジング」

「レッドリボン軍の人造人間にしちゃ、随分と変わった奴だったな。
まさかあの連中がホントに正義のヒーローなんてもんを造ったとは思えんが……」

 戦線を離脱するガンマ1号。かつて世界征服の野望のために17号や18号を
無断改造したドクター・ゲロが所属していたレッドリボン軍は、
その組織構造を大きく違えていた。

 その日、巨大な影が海に浮かんだ。
数時間前まで空中に存在していた要塞「ユートピア・アイランド」は、
崩壊の危機を乗り越え、巨大な海上島と化していた。
鉄と魔力と重力制御によって構築された遺構。その中央管制区跡にて、
ひとりの仮面の兵士が両手を上げ、降伏の意を示していた。 
かつてのメサイア教団兵――生き残った兵士たちが、次々に武器を投げ捨てて
膝をついていく。  

「俺たちは……もう戦う意思はない」
「命を救ってくれたのは、敵のはずだった連中だった……皮肉だよな」

 彼らの表情には戦いの放棄と、諦念が混ざっていた。
 
「……投降兵は本部へ引き渡す。だが、不当な扱いはさせない」

「ミスリルより国連へ通達済み。ユートピア・アイランド跡地における避難民・投降兵への人道的処置を要請済みだ。これから、メサイア教団の脅威は世界が周知することに
なるだろう」
 
 クルーゾーが端末を確認しながら報告する。

「決定を感謝するわ。憎しみの連鎖を、ここで断ち切りたいの」
 
 七海やちよが静かに言葉を添える。すると――空間が微かに震えた。 

「む……スパイダー感覚に感知アリ」

 スパイダーマンが遥か遠くの空を仰ぎ見る。彼の持つ超感覚が
何かを指し示している。遺構の端、残骸の裂け目からきらめく蜘蛛の糸模様、
重なり合う並行世界の軌跡。

「これは……俺がこの世界に来る時に感じていたものと同じ……どうやら、
別れの時が来たようだ」

 新たなる戦いが彼を呼んでいる。
そこに現れたのは――
 
「行っちまうのか」
「ああ。名残惜しいが……この世界の事は君たちに託した。必ず平和を掴み取ってくれ」
「あばよ、世話になったな、スパイダーマン」

「マーベラァァァァァァッ!!」

 左手首に巻かれたスパイダーブレスレットで呼び出せば、
水中に待機していた宇宙戦艦マーベラーがすぐさま浮上してくる。

「とうっ!!」

 空中にホバリングしていくマーベラーに飛び乗り、異邦の世界からやって来た
スパイダーマンは新天地……「スパイダーバース」へと続くゲートを目指して
旅立っていく。 

『ゲート反応、確認。時空座標:スパイダーバース・ニューヨーク・アース1610。
レオパルドン、ゲート突入準備』
 
 AIボイスが鳴り、黒鉄の機体が軽やかに天を翔ける。
その巨体を見送りながら、ルフィが叫ぶ。

「また会おうな! 次は肉、たらふく食わせてやる!」

 スパイダーマンは手を振って応え、コクピット席で最後にひとこと。

「ヒーローとは――どこにいても、誰の心の中にもいるもんさ」

 そのまま彼とレオパルドンは次元の狭間へと飛び込んでいった。
ゲートは静かに閉じ、波音だけが残った。

 そして、日暮れ。
ユートピア・アイランド跡地には国連軍の輸送機と支援艦が到着し、避難民・投降兵たちの保護と搬送が進められる。
島の中心部では、CROSS HEROES及びミスリルが合同で復旧支援を進めていた。
仮設の医療ベース、給水設備、そして避難民の避難区域が整備され、
かつて“悪”に属していた者たちも、静かに協力の意志を示していた。 
 
「……復帰戦にしちゃ、随分としんどい戦いだったぜ」

 ウルフマンは治療用の包帯を巻いた腕を見つめながら、呟く。
その背後には、静かに作業する元・メサイア教団の若い兵士たちの姿があった。 

「父さん、ピッコロさん。みんなのおかげで、何とか守りきれましたよ……」

 今も暗黒魔界で戦っているのであろう父と師に思いを馳せる悟飯。
夕陽が海面を照らし、島を黄金色に包む。その光は、島に残された命たちを祝福するように広がっていった。  


【特別報告書:ユートピア・アイランド事件・終結報告】

件名:第零特異災害指定案件「ユートピア・アイランド」
状況:落下阻止・構造安定化完了。避難者救出率97.3%
関与組織:CROSS HEROES/ミスリル/Z戦士/魔法少女陣営/仮面ライダー
特記事項:敵対勢力構成員の一部、協力的転向を確認。今後観察対象。
結語:本作戦において、ヒーローによる超常対応は顕著な成功を収めた。


「滅ぼし合うだけじゃない戦い……今回の戦いには、大きな意味があったと思う」
「はい。私も、そう思います」

 そう言って、いろはは静かに空を見上げた。
風が、彼女の髪を優しく撫でた。

「ドッペルまで使って……ホント無茶するんだから。身体は大丈夫なの?」
「はい。ウワサの私も力を貸してくれましたから」  

 ――レッドリボン軍・秘密基地。

 険しい岩山に囲まれた、一大拠点。その静寂を破って、格納ゲートが開いた。

 鋼鉄の重い扉の向こうから、戦いの痕跡が残る戦闘服を纏った影が一歩ずつ、
ゆっくりと歩み出る。赤いマントが、風もないのに揺れた。 
 
『……ただいま帰還いたしました、Dr.ヘド』

 ガンマ1号は無感情な口調のまま、眼前の男に敬礼する。

「おかえり、1号!  よく……戻ってきてくれた……!」

 Dr.ヘドは、弾かれたように椅子から立ち上がり、ガンマ1号に駆け寄った。

「損傷は軽微……けど、それより何より、無事で良かった!
見ていたよ、君の戦い!」

 その和やかな空気を切り裂くように、重厚なブーツの音が響く。 

「感動的だな、ガンマ1号君」

 姿を現したのは、スーツ姿の男――マゼンタ。
その背後には冷徹な目の副官・カーマインが控えていた。

「素晴らしい戦いだった。君はまさに、“我々の正義”を体現するモデルだ。
その義務を果たしてくれたことに感謝するよ」

 口ではそう言いながら、その視線はどこか冷たく、値踏みするようだった。

「戦闘データの抽出は済んでいます、これでより優れた“次世代”を開発できるでしょう」
 
 カーマインが言った。

「我々には人類を導く“真のヒーロー”が必要なんだ。メサイア教団のような
悪を駆逐するためにね」
 
 マゼンタは口元だけで笑う。彼の背後のホロモニターに、新たな設計図の初期データが
映し出される。そこに記された開発コードは――
  
《GAMMA-02(試作段階)》

 ヘドは静かに背を向け、ガンマ1号の肩を軽く叩いた。
 
「行こう。君のメンテを優先しよう」

 ふたりが去った後、薄暗い部屋に残されたマゼンタとカーマインは、
再びディスプレイを見つめる。

「ふん、正義のヒーローなどと言う余計な設定を除けば、ヘドの人造人間は
戦力としては使えるようだな」
「はい。あれが量産化出来れば、21号派やメサイア教団、
CROSS HEROESらのような不穏分子の粛清も夢ではないかと」

「そして、Dr.ゲロが遺した最高傑作を超える究極の超戦士……ヘドならば、
実現出来るやも知れん……ふふふふ」  

30人目

「Epilogue.終戦の特異点」

「……む?」

グレートマジンガー、勇者アレク、バーサル騎士ガンダムがガラダブラと戦っていたのだが、突然そのガラダブラが動きを止めたのだ。

「なんだ?急に動きを止めたぞ?」

(……これは……この町に展開していた戦闘獣の気配が急激に減った…?それもかなりの数が今の一瞬のうちに……それにこの大きな2つの気配はいったい…?ビルス?いや違う……やつとは異なる気配だ……)

ガラダブラが感じた2つの気配、それはカグヤとシャドウアビィのものであり、杜王町に展開していた戦闘獣の気配が突如として急激に減ったのはこの二人

『……ガラダブラよ……』

(っ!ハーデス様!)

『特異点に展開している全ての部隊を引き上げて一時退却しろ。我らも知らぬそれもビルスに匹敵する力を持っているようだ。恐らくは我々が眠っている間に誕生日した別世界の超越者だろう。
これ以上損害を受ける前に今は撤退しこの特異点とやらには日を改めてまた侵攻するぞ』

(……わかりました)

「……この時代の勇者達よ、本当ならば今ここで貴様らと決着をつけたいところだが、これ以上戦力を無駄に消耗するわけにはいかんのでな。貴様らと次会う時を楽しみにしているぞ…!」

ガラダブラはそう言い残すと特異点の上空に巨大なワームホールを生み出しそこへ飛び込んだ。
そしてそれに続くように特異点各地で戦っていたミケーネの軍勢が次々とワームホールの中へと撤退していく。

「敵が撤退していく…?」

「勝てた……のか…?」

「……これを勝ちと言えるのならな」



一方その頃、リビルドベースの防衛線では

「な、なんですか…?」

「ミケーネの奴らが……」

「撤退している…?」

「これは、どういうことだ…?」

リビルドベースを防衛戦していたメンバーは突如として撤退していくミケーネに対して戸惑いを見せる。
そんな最中……

「っ!お、おい!見ろよあれ!」

「モンスターまでもが……撤退していく…!?」

ミケーネだけではなく、ジオン族竜王軍連合のモンスター達までもが撤退を始めたのだ。

「いったい……なにが起きているんだ…?」





場面は代わり特異点の別の場所。
そこではアルガス騎士団の4人がジオン族の騎士ゼノンマンサ、呪術師ビグザムと交戦していた。

「はぁ!」

「ガハッ!?」

「思い知れ!我が炎の魔法を!」

「うぐっ…!?」

「つ、強い…!」

「この強さ……これがジオン族の騎士と呪術師の力か…!」

「どうした?その程度かガンダム族よ」

「もはやジークジオン様が手を下すまでもない。我々が貴様らを葬り去り、残りの一人も始末してやろう…!」

「くっ…!まだまだ!」

ジオン族最強の騎士と最強の呪術師の力に押されつつあるもののそれでもアルガス騎士団は最後まで諦めずに立ち上がる…!

「無謀なことを……ん?」

戦っている中、一同はミケーネが撤退を始めたことに気づく。

「あれは……ミケーネの軍勢が撤退しているのか…?」

「ひょっとして、バーサル騎士殿やCROSSHEROESの皆殿がやったのか…?」



『騎士ゼノンマンサと呪術師ビグザムよ…』

「っ!」

「この声は…!」

「ジークジオン様!?」

『未知の脅威がこの特異点に2つ現れた。どちらも超越者と呼んでも過言ではない力を持っている、ミケーネが撤退したのもそやつらを警戒してのことだろう』

「なんと…!?」

『……奴らが撤退した以上、我々がこの特異点各地に襲撃するための大義名分はなくなったも同然。
完璧超人共もこの戦いに参加している以上、これ以上人間共を襲えば奴らと同盟を組んでいる龍王に迷惑がかかる……例の物を手に入れるための準備をするためにもここは一旦引き下がれ』

「しかし…!」

『ガンダム族の奴らを倒すチャンスはこの先いくらでもある。今貴様らがそこにいるアルガス騎士団とやらを追い詰めているのがなによりの証拠だ』

「くっ…!」

『むしろミケーネよりも先にアレを手に入れられればもはやガンダム族など敵ではない。
全ての超越者や邪魔となる他の勢力諸共殲滅するためにも、今は引くのが得策だろう』

「……わかりました」

「ガンダム族の者共よ、命拾いしたな」

騎士ゼノンマンサの呪術師ビグザムは魔法陣を生み出し、その中に入って撤退した。

「クソ!舐めた真似をしおって…!」

「……だがこのまま戦っても勝てるかどうかは怪しかった……」

「騎士アレックス……」

「……今は皆と合流するとしよう。
(……しかし、ジークジオンが言ってた例のアレとはいったい…?)」

カグヤとシャドウアビィの乱入によるミケーネの撤退という形で終わった特異点での一大決戦。
……しかしこの戦いが後にリ・ユニオン・スクエアで行われるさらなる激戦に繋がることになろうとは、この時はまだ誰も知らなかった……