愛の売買
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2日前
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新橋
2人目
最近じゃコンピュータを使って、これまでの人生で一番素晴らしい愛を再現する方法まで開発されたらしい。
死ぬまでには一般化してるといいなぁ、とニュースを見ながらラーメンを啜る。
隠し味の愛情入りという新商品だが、さぐってもさぐっても、そのかけらも感じられない。
大衆向けに喧々諤々と宣伝されたあけっぴろげな愛では、さもありなん。
ごくごく個人的な関係から、密やかに生み育てられたものとは別物だ。
しかし如何せん、個人制作ではコスパが悪すぎる。学生ならまだしも、あくせく働く庶民にはぜいたく品だ。
書通端
3人目
愛の不足しがちな現代、養殖が成功した。そしてそれは当たり前のように広く実売された。
スーパーには大衆向けのチープな愛が並び、金持ちは良質な愛を買いながら、投資の価値をも見出しはじめている。
一番素晴らしい適切な瞬間に即した愛をうり買いする。自らの体験ではない人造の愛を溜め込む人間も少なくないので、愛はいつも売り手市場。どんなに不味くても、どんなに脆くても、愛が入っているというだけで飛ぶように売れた。
そんな社会でも、心の奥底で人々は渇望していた。作り物でなく、ただただ自分に向けられた天然の愛を。
*
4人目
天然の愛が枯渇したこの時代、それはもはや自然発生するものではなく、「誰かから削り取るもの」へと変貌していた。 街角のハローワークには、自らの「親愛」や「慈しみ」を脳から直接抽出して売る、生気のない若者たちが並んでいる。彼らは一生分の愛情を数ヶ月で売り払い、二度と人を愛せない抜け殻となって、その日暮らしの金を稼ぐ。
私が啜ったこの不味いラーメンの「隠し味」も、そんな絶望した誰かが、生活のために切り売りした感情の残りカスなのかもしれない。そう思うと、胃の底から泥のような不快感がせり上がってきた。