無許可ワインソムリエ

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私の名前は、無許可 祖無理絵(むきょか そむりえ)。無許可でワインソムリエをやってる者だ。

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無許可祖無理絵の元に、一人の黒服の男性が、ワインを持ってきた。

「このワインが、本物のワインかどうか見極めてもらいたい」

その男性は、シャトー・ペトリュスだと聞き、高値で買ったが、味わいに違和感を感じたために、近くでワインソムリエをしている無許可祖無理絵を紹介してもらい、会いに来たとのことだった。

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その言葉を聞いた瞬間、私の胸は高鳴った。
「シャトー・ペトリュス、だと…?」
偽物のワインを見抜くのは、私にとって最高の腕の見せ所だ。だが、それだけじゃない。シャトー・ペトリュスは、言わずと知れたボルドーワインの最高峰。もしそれが偽物だとすれば、その裏には巨大な闇が潜んでいるに違いない。
私は目の前の男に尋ねた。
「このワインをどこで買ったんだ?」
男は、新宿の雑居ビルにある、会員制のワインバーだと答えた。男の言葉を聞き、私は、過去の記憶を思い返していた。

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「もしかして……無許可でソムリエをしていることがバレているのか!?」

男が言った会員制のワインバーは、かつて自分がソムリエとして、働かせてもらったことがある店だった。そこで、何回かテイスティングをしていたが、とある一度のミスを犯してしまい、自分がソムリエの資格をもっているかどうか怪しまれることを恐れ、店を辞めて、離れた地域でワインソムリエを無許可ですることになったのである。

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男の視線が一瞬だけ鋭く光った。
「…あの店のことを知っているのか?」
その言葉に、背筋が凍る。やはり、これは偶然の訪問ではない。

私はワインのコルクを慎重に抜き、香りを嗅いだ。
——甘すぎる。ペトリュス本来の複雑な香りではない。
「これは…偽物だな」そう告げた瞬間、男の口角が僅かに上がった。

「だろうと思った…そして、お前がこれを見抜けると分かっていた」
次の瞬間、背後から足音。黒服の男たちが部屋を囲み、私の退路を塞ぐ。

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「これは、どういうことだ!?」

「実は、私がこのワインを買った会員制のバーは、裏社会の人間との関わりが判明して、一斉に検挙されたんだ。その際に、とある書類を見かけて、調べたら、もうその店にはいないとわかり、その人物を探していたんだ」

そうワインを持ってきた男が、話している間にも、脱出の経路を探ろうとするが、堅いのいい男達に囲まれ、身動きがとれずにいた。

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私の脳裏に浮かんだのは、かつての同僚の顔だった。彼は、私のミスを庇って店を辞め、以来行方知れずになっていた。彼の名は、許可 守(きょか まもる)。ソムリエとしての腕は、私よりも遥かに上だった。

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「その探していた人物なんだが、実は昨日遺体で発見された。どういうことかわかるか?」

「なんのことでしょうか?」

「またまた惚けやがって、あんたに逮捕状が出ているんだよ。つまり、あんたを逮捕しに来たのさ」

「そ、そんな!?」
衝撃的な発言に顔を青ざめながら、膝から崩れ落ちていた。