海の怪異

0 いいね
3000文字以下 30人リレー
5日前 49回閲覧
  • ファンタジー
  • ホラー
  • 性的描写有り
1人目

帆船の甲板では、兵士たちが異変に気づき始めていた。海面が不自然に盛り上がり、赤い触手の影が揺れているのが見えたのだ。
「なんだ、あれは!」
一人の兵士が叫び、弓矢を構えるが、その矢は触手の粘液に絡め取られ、あっけなく海に落ちた。船長は舵を切り、逃げようと試みるが、触手の動きはあまりにも速かった。海中から無数の触手が一気に突き上がり、船を包囲するように絡みつく。
「助けてくれえ!」
船長の叫びも虚しく、触手は帆船を再び高く持ち上げて木材が軋む音と共に船体を歪ませていく。

2人目

船長も全員も諦めた瞬間……
「ドーン、ドーン……」
と、何発もの砲丸が触手に向かって飛んできていた。

「い、いったいどこから!?」
船長が砲丸が飛んできた方向を眺めていると霧の中に大きな船の影が見えていた。

「お前たち、あの霧の向こうの船に向かって、合図を送るんだ。急げ……」
船長の指示のもと、合図を送っていた。

そして、次第に霧の中から、くっきりと船の姿が見えてきていた。その船は、船長の船より一回り大きい船で、旗にはドクロのマークが描かれていた。

「ドクロのマークということは、あの船は海賊船か!?海賊ならこの触手達をなんとかできるかもしれない……」
船長は、どんな海賊かはわからないが、海賊達に頼るしかないと決断していた。

3人目

その海賊船の甲板に、一人の男が立っていた。鍛え上げられた褐色の肌を露わにし、腰には簡素な布一枚を巻いているだけだ。顔には深い皺が刻まれ、長い黒髪が潮風になびいている。彼は巨大な触手に苦戦している帆船を静かに見つめ、鋭い眼光を放った。
「よう!お前ら、助けてほしいなら、それなりのものを渡してもらおうか!」
その言葉に、帆船の船長は顔を青くした。しかし、迷っている場合ではない。
船は持ち上げられて今にも真っ二つにちぎれそうだ。
「助けてください!何でも渡します!」
帆船の船長が叫ぶと、男は冷ややかに笑った。
「お前たち、随分と運がいいじゃないか。この『海の闇』に助けてもらえるんだからな」
その言葉と同時に、男が両手を広げると、海面に奇妙な光が瞬く。すると、触手はまるで何かに怯えるかのように動きを止め、海中へと戻っていった。
「な、なんという力だ……」
船長は、その光景に言葉を失う。彼らが遭遇したのは、呪文を操り、海の魔物を手懐けるという伝説の海賊だった。
「さあ、このまま俺の船に乗り移れ。お前たちには聞きたいことがたくさんあるからな」
船員達はその指示に躊躇する。
しかし、大破した帆船は陸地に着く前に沈没するだろう。