寂れた村

0 いいね
3000文字以下 30人リレー
5日前 28回閲覧
  • 性的描写有り
1人目

山奥にひらけた小さな盆地に、その村があった。
人気の無い村には、あちこちに廃屋や空き家がある。

滅びを待つようなこの村で、一人の若者が日々畑を耕し、野菜や穀物を栽培している。
村を流れる細い川の清流が、畑に水を潤して豊かな実りを与える。
他に誰もいないこの村で、彼はただ一人畑を耕し作物を育てて生きていた。
褌一丁で鍬を振り下ろす彼の名は、太郎といった。
汗に濡れたたくましい肉体が、健康的に陽の光を反射している。
「ふう」
一息ついて、太郎は鍬を地面に突き刺した。もうすっかり畑は耕し終わり、あとは種まきだけだ。
「そろそろ飯にするか」
太郎は額の汗をぬぐいながら、家路についた。

彼の家は小さくみすぼらしいが、それでも雨露をしのぐには十分なほどしっかりしている。

太郎が家の戸に手をかけようとした時。「なんだ?」と彼は呟いた。

玄関の戸が、少しばかり開いている。太郎は眉根を寄せた。

この村には誰も人がいないはずだ。泥棒か? それとも獣か? いずれにせよ、警戒するにこしたことはない。太郎は鍬を手に持ち、いつでも振るえるように構えながら玄関に近づいた。