寂れた村
山奥にひらけた小さな盆地に、その村があった。
人気の無い村には、あちこちに廃屋や空き家がある。
滅びを待つようなこの村で、一人の若者が日々畑を耕し、野菜や穀物を栽培している。
村を流れる細い川の清流が、畑に水を潤して豊かな実りを与える。
他に誰もいないこの村で、彼はただ一人畑を耕し作物を育てて生きていた。
褌一丁で鍬を振り下ろす彼の名は、太郎といった。
汗に濡れたたくましい肉体が、健康的に陽の光を反射している。
「ふう」
一息ついて、太郎は鍬を地面に突き刺した。もうすっかり畑は耕し終わり、あとは種まきだけだ。
「そろそろ飯にするか」
太郎は額の汗をぬぐいながら、家路についた。
彼の家は小さくみすぼらしいが、それでも雨露をしのぐには十分なほどしっかりしている。
太郎が家の戸に手をかけようとした時。「なんだ?」と彼は呟いた。
玄関の戸が、少しばかり開いている。太郎は眉根を寄せた。
この村には誰も人がいないはずだ。泥棒か? それとも獣か? いずれにせよ、警戒するにこしたことはない。太郎は鍬を手に持ち、いつでも振るえるように構えながら玄関に近づいた。
玄関の扉を開くと、そこには一人の女性が倒れていた。女性の服は、獣に襲われたかのようにボロボロになっていた。
「怪我をしているみたいだな。息はあるみたいだし、玄関で力尽きて気を失ったってところか……」
太郎は、看病をするために、家の中に運ぶために、抱え上げていた。
「まさか、こんな村に人が来るなんてな……一体何があったのか、目が覚めたら聞いてみるか……」
太郎が女性を抱きかかえると、その身は驚くほど軽かった。まるで綿か紙風船のように思えるほどに軽いのだ。
家の中に運び入れ横たえようとした時、女性はふいに身じろぎ、うっすらと目を開けた。
濡れた瞳が太郎の鍛えられた上半身を捉え、ゆっくりと視線を下へと向ける。汗ばんだ筋肉、そして股間に巻かれた白い褌。女性の口元に、妖しげな微笑みが浮かんだ。
「…助けてくれたのですね」
かすれた声は、しかし不思議と甘く響いた。女性は弱々しい手で、太郎の胸板に触れる。その指先が触れた瞬間、太郎の体内に電流のようなものが走った。
「はあ……な、なんだこの感じ。胸の高鳴りが聞こえて来る」
太郎は、心臓に手を当てると、鼓動が速くなっていることを感じていた。
「どうかしましたか?」
「い、いや……なんでもない」
太郎は、女性に様子を聞かれ、冷静に返答していたが、動揺はしてしまっていた。
「それなら、良いのですが……」
女性の方は、太郎の返事に笑みを浮かべていた。
彼女はふいに身を起こし、太郎の褌を掴んだ。
「あの、どうかしましたか?」
戸惑う太郎の問いかけに、彼女は応えず、じっとその濡れた瞳で太郎を見つめる。
その眼差しには、甘い誘いと、燃えるような熱情が混じり合っていた。
「助けてもらったお礼に…少し、妖力を分けてあげます」
そう呟くと、彼女は褌を掴んだ手に力を込めた。
褌がずるりと下ろされ、男根が露わになる。かなりの巨根だ。
彼女はためらうことなく、それを口に含んだ。
熱い吐息と柔らかな舌が絡みつき、太郎の思考は白く染まっていく。
「はぁっ…」
驚きと快楽に、太郎は腰を震わせる。
太郎の熱を貪るように、彼女は何度も唇を動かす。
やがて、その先端から熱いものが溢れ出すと、彼女はすべてを飲み干し、満足げに微笑んだ。
「ああ…力が満ちていく…」
太郎は恍惚とした表情で呟き、自らの意思とは関係なく、大胆に腰を突き上げた。その動きは力強く、男根を彼女の口に深く突き刺す。彼女は驚いたように目を見開いたが、すぐに官能的な笑みを浮かべ、さらに深くそれを啜り始めた。
「はあ……たまらないです。なんて、素敵な巨根なんでしょう……」
彼女は、無意識に太郎の巨根を身体を求めていることを理解しているのか、彼女自身の思考も変わりつつあった。
「ああ……身体全身で力を強く感じる」
太郎は、身体全身に熱が籠り、脈も強くうち、血管は目でわかるぐらい、はっきりと浮き出ていた。
「フフ……アハハハ…………」
「はあ……はあ……うっ!?イヤァァァァァ……………」
太郎は力を感じて、笑みを続けていると、彼女の悲鳴が聞こえてきたのだった。
「ど、どうかしたのか!?」
「はあはあ…………妖力が……妖力が……分け与えるつもりが、あなたに全て吸い取られてしまいました」
彼女は、自分でも気づかないうちに、分け与えるつもりが、全て吸い取られてしまい、力が抜けてしまっていた。
彼女の悲痛な叫びは、太郎の耳には届かなかった。太郎の全身を支配しているのは、とめどなく溢れ出す途方もない力だ。それは熱となって体中を駆け巡り、血管を沸騰させる。視界が赤く染まり、彼女の顔が歪んで見える。
「アァァ…」
太郎は喉を鳴らし、彼女の身体から一気に引き抜くと、四つん這いになり、頭を抱えて唸り声を上げた。背中を突き破るように骨が軋み、肉が盛り上がる。鋭い爪が指先から伸び、毛が全身を覆っていく。顔は醜く、鼻面が突き出し、耳は尖り、鋭い牙が口からこぼれた。
「ガアアアァァァァ!」
もはや人間の言葉ではない咆哮とともに、太郎は完全な狼男へと変貌を遂げた。
彼は四つん這いから立ち上がると、獣の本能のままに彼女を置き去りにして、障子を突き破って家から飛び出した。
闇夜に紛れ、太郎は街道を駆ける。土を踏みしめる足は、もはや人間のものではなかった。鋭い爪が土煙を上げ、強靭な筋肉がしなやかに躍動する。
彼の全身を支配する発情が、獲物を求めて暴れ狂っていた。
そのとき、ふいに彼の鼻が何かの匂いを捉えた。それは、男の匂いだ。興奮がさらに高まり、喉がうなる。
民家の跡地で、彼は獲物を見つけた。酒に酔った若い男が、壁にもたれかかっている。追っ手から逃げてきた山賊らしかった。
太郎は男の存在に気づくと、ゆっくりと男に近づいていった。
「う…ん?」
男はうわごとのように声を上げ、ぼんやりと目を開ける。その視界に、月明かりを背負ったおぞましい獣の姿が映った。男が恐怖に凍りつき、悲鳴を上げようとした瞬間、太郎は電光石火の速さで男に飛びかかった。男の着物は一瞬にして引き裂かれ、太郎は獣の熱情のままに男に襲いかかった。