深夜に
深夜1時。公園で待ち合わせ。その公園は住宅地からはかなり離れているため夜は人気がなく、一方でそれなりに照明は点いている。僕はベンチに座って待つ。
約束の時間は過ぎていく。
1時間が経ち、2時間が過ぎ、3時間経過する。さすがにおかしいと思い携帯電話を見るが連絡は来ていない。もう一度電話をし直そうとしたときだった。
ざっざっという足音が聞こえ、振り返る。しかし誰もいない。聞き間違いかと思ったけれど、足音はまた響く。やはり誰かいるのだと確信する。
しかし、その姿を未だ目で捉えられずにいた。妖怪や幽霊の類のものではないかと不安になり、身体の震えが止まらないでいた。
「そうだ……眼で姿を捉えられなくても、足音が聞こえるのだから、足跡が残るかもしれない」
僕は、恐怖に怯えながら、公園内の地面に水を撒いて、足跡が残りやすいように泥濘を作った。
「これで、姿を眼で捉えることができなくても、足跡が残れば、そこにいるに違いない……」
僕は、両手で身体の震えを抑えながら、相手が行動するのを待っていた。
足跡を待つ。だが、そもそもその行動自体が不可解だった。
なぜ、恐怖に震えながらも、わざわざ相手の存在を証明しようとするのか。その矛盾が、僕の思考を支配し始める。
怖いなら逃げればいい。
この公園から走り去れば、足音の正体など知りようがないまま、ただの気のせいとして片付けることができる。それが一番安全で、一番合理的な選択だ。しかし、僕はそれを選ばなかった。
しばらく待機していると、足音が近づいていた。すると、先程まで作った泥濘に近づいていた。すると……
「足音が付いた。やっぱり、誰かいるんだ……えっ!?これは、どういうことだ!?足跡が不自然すぎる……」
彼が驚くのも無理はなかった。彼の想像通り、足跡は付いた。しかし、その足跡自体が想像を超えていたのである。
「足跡が一つじゃない!?」
そう、彼が観たのは、一人の人物の足跡ではなかった。大人の足跡から、子供の足跡、そして、人間ではない足跡まで、泥濘全体に付いていたからである。
「この公園はなんなんだ!?」
怖くなり、携帯電話を取り出して、電話をかけようとするが……
「電波がない!?ありえない。さっきまで、三本立っていたはずなのに……」
彼は電話しようにも電話が繋がらない状況に追い詰められてしまっていたのである。
それどころかどこを見回しても道が無い!!
「う…嘘だろ!!」恐怖で僕は叫んでいた。
さっきまであったはずの道も木も何もかもが消えてしまっていた。そしてそこには暗闇だけがあったのである。
沢山の足跡はだんだん円を書くようにぐるぐる回りながら僕に近づいてくる。