パイロット版アニメ
スクリーンに映像が映し出される。
何かのテレビドラマのようであるが、ホームビデオの様にチープな映像だった。少なくとも出演俳優に、今をときめく人気スターは一人も居ない。
「これは、この春から放映される予定の『アポロ戦記コードネーム12』というアニメのプロモーションビデオです」
映像が切り替わり、今度はアニメによるプロモーションビデオが映し出される。
「この『アポロ戦記コードネーム12』は、従来のロボット物とは異なり、一人の少年の成長物語として展開していきます」
映されたアニメ版のプロモーションもやはりいまいちパッとしない名前ばかり、今回もハズレかと肩を落とした直後、放たれたナレーションの言葉は有り得ない物だった。
「主人公が見初めた者、実写ドラマ…アニメそれぞれ計12人。バランス?そんな物知りません、倫理観?〇ソ食らえです。少年の成長…うら若き少年のリアルな成長こそ私達の活力!…コホン、失礼しました」
ナレーションは機械音声寄りながら感情は幾分私情が含まれている事は確かだ。なんじゃラージャパンだの光源氏の逆バージョンとでも言うべきか、果たして結果は分からないが私は出資を心に決めたのであった。
尖った「風の」作品なんて沢山見てきた。
世間じゃ囃し立てられる藝大出身も、エログロに頼り切ったアングラ作品ばかり出してくる。見かけだけ奇抜、ストーリーは空っぽ。ロボットアニメといえば薄味のエヴァン〇リ〇ンを、我が物で出された時は苦笑いすら出来なかった。(薄めても名作は名作だがあれは随分酷かった)
というわけで、今回のコンペもまあ期待しては無かった。まして、右も左も分からない新人ばかりで、とりあえず熱意のある奴に唾付けとこうって算段だった。
アニメーション業界ってのは、いつだって人手不足だ。加えて近年の離職率の高さ。新人育成ってのは手広くやるべきなんだ。
期待はしてなかった。
でも、出会ってしまった。