自己否定

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1人目

「この作品を見てはっきりした。殺されてくれ」
読後、私はそうつぶやいた。しかし、それは決して殺意の表明ではなかった。いや、違う。殺意はあった。ただし、それは私自身に向けられたものだった。

その小説は、ひどく醜い人間の業を描いていた。保身のために嘘をつき、弱者を食い物にし、それでも自分は正しいと信じて疑わない人間たち。それは、まぎれもなく、これまでの私自身の姿だった。この醜い私を、社会で通用する無難な人間を演じ続けてきた私を、私は殺さなければならない。

2人目

私は立ち上がり、部屋の窓を開けた。
外は夜。
東京のネオンサインの光が、まるで生き物のようにドロリと流動してアスファルトの上を這っていた。
その赤、青、緑の光は、私の中の「醜さ」を照らし出し、増幅させる。