危険な夜道~忍び寄る人影~
ここは、東京の小さな喫茶店で、奥の座席に座る二人の女性がいた。一人は、杉村希望で、もう一人は、学生時代の頃からの大の仲良しである柊木真純だった。
「ねえ、希望が誰かにつけられているって、本当なの?」
「うん。夜帰宅しようとしていたら、背後から気配を感じるの……誰かに見られている感じもするの」
「警察には相談したの?」
「警察に相談はしたけど、誰につけられているのかが、わからないから気のせいかもしれないって、危険な夜道の独り歩きは避けて、人通りの多い道を通ることをおすすめします。って言われたわ」
「そう……誰につけられているのか、はっきりしたら良いんだけれど」
「本当に気のせいなら、良いんだけれど、足音が聞こえる日もあるから、怖くて怖くて、何度も振り返りながら帰宅するし、帰宅しても、恐怖と不安でなかなか、眠れなくて、声をかけてくれたときは、正直ホッとしたの……」
希望は身体を震えさせながら、涙を流していた。
「他に誰か私達の気持ちを理解してくれて、できれば、女性の人で相談できる人いれば良いんだけれど……うん?」
真純は、希望をなんとかしてあげたいと思うが、内容が内容なだけに、誰に相談したらいいか考えていると、希望の後ろに誰か立っていることに気づき、顔を上げていた。
「真純……真純……」
「あっ……」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。ちょっと、急に見えてた光景と違った光景が見えちゃったから」
真純は、疲れのせいかと思って、気を取り直していた。
「どこまで、話したっけ?」
「誰か女性の人で、相談できないかなって、話してたじゃない」
「そうだったわね。それで、確か……キャッ!?あなた誰ですか?」
「ようやくですか……私は、困っている方の声が聞こえてきたので、現れたんですよ」
現れたのは、帽子を深く被った男性だった。男性は、椅子に座っていた。
「しかも、隣に座ったよ……」
「それでは、話に戻りますが、希望さん、あなたはストーカーに悩まされているんですね」
帽子を深く被った男性は、話を進めようとしていた。
「ええ……その通りです」
「そして、誰か女性の人に相談したいと思っている?」
「はい」
「かしこまりました。では、あなたの望みに応えてくれそうな女性の方を3人紹介します。その3人の中から、あなたが選んでください。その方にあなたのストーカーの相談に乗っていただきます」
男性はそう言うと、3枚の女性の写真を見せて来た。
「まず、一人目は峰不二子。男女共に惹かれてしまうほどのスタイルの持ち主。
二人目は、来生泪。彼女は三姉妹の長女で、峰不二子に負けず劣らずなグラマラスな女性で、男性を虜にするでしょう。
そして、最後に三人目は、佐藤美和子。彼女は、警視庁捜査一課強行犯三係の警部補で、捜査一課のアイドル的存在で、男勝りの女性です。この三人の中から、あなたが相談したい女性を選んでください。あなたに選ばれた方があなたの悩みを解決していただきます」
「私は……」
希望は、三人の女性から誰に相談したいか、するべきか、しやすいか思考を巡らせていた。
「私は、この佐藤美和子さんにお願いしようかなと思います。女の刑事さんなら、私の気持ちわかってもらえるかもしれないし、他のお二人は、引き受けて受けるかもしれないけれど、高嶺の花というイメージが強いから……」
「希望、それじゃ、佐藤さんに失礼じゃない?」
「でも、佐藤美和子さんは、美というよりも、男勝りな一面の方が強く感じるのよ」
希望は、写真から見た感想を真純に話していた。
「確かに、他の二人は見た目からして、醸し出すフェロモンが色気を感じさせるけど、佐藤さんは、強くてかっこいいっていうのが、写真からも伝わってくるわね」
「では、この佐藤美和子さんでよろしいですね?」
「は、はい。佐藤美和子さんで、よろしくお願いします」
「わかりました。では、一週間後、彼女をこの喫茶店にお呼びしておきます。その時は、何が問題が起きない限りは、私は居なくて、彼女一人ですので、ごゆっくり相談されると良いでしょう……」
帽子を深く被った男性は、写真を回収すると、彼女達の目の前から消えていた。