光の庭
アンデールは光の庭に取り残された湿生の菌類のように、柔らかな拒絶に抗っていた。
彼は人付き合いの下手な――誰かを求めながら侮る悪癖と共に歩んだ十数年が黴の根のように心を黒ずませている――学生であり、実際誰もが彼の名を知っていたが、誰も彼のことをよく知らなかった。
マディソンが彼と真に出会ったのは、創作の授業で彼の作品を評価した時である。その詩は、ルサンチマンとナルシシズムと背伸びをしようと必死な幼さと、つまりどこにでもいる年頃の男子のカンバンだった。
「ミスタ・マディソン。僕の詩はどうですか?」
賞賛を求めながら、教師を侮りさえしている眼。マディソンは自らの嗜虐心が頭をもたげるのを感じる。彼は愛する(彼の愛という言葉に対する理解は少々奇妙であった)者を自分に依存させ、傷つけることを好んでいたが、それを社会に発露させたことは無かった。今は。まだ。
「技術的には言うことが無いよ。アンデール。私の授業をよく聞いているし、それ以上の予習もしているようだね。素養もある。」
マディソンは目の前の少年の首筋が賞賛に赤くなる様子を目を細めて眺めながらそう言った。
「だが、が続きそうですね。」
少年の目が挑戦的な光を帯びる。
「そのとおり。だが、詩に君がいないと続けるつもりだったよ」
マディソンの言葉にアンデールの眉間に皺がよる。
「僕がいない、とはどういう意味ですか。これは僕が書いた詩です」
「そう。君が書いた。だが、君自身はいない。技巧を凝らし、言葉を積み上げ、誰かの詩を真似て、どこにでもある『らしさ』で塗り固められている。君の心から溢れ出た感情が、熱が、何もそこにはない。詩は君自身であるべきだ。なのに君は、世間の評価という名の『鏡』を覗き込むことでしか自分を表現できないようだね」
「まるで僕『らしさ』が何かわかっているような口ぶりですね」
「わからないさ。私はただの教師で、ただの物書きだ。君『らしさ』は自分の中から見つけなければならない。だが、私は教師だからね。表面を取り繕ったものと、心の臓を抉り出さんとして組み上げられたもの、その二つは見分けることができる」
アンデールは、まるで話にならないとでも言いたげに首を振る。
「僕は僕のことを理解しています。先生が理解しているよりもはるかに深く」
マディソンはアンデールの憤慨とプライドを、目の前に存在するかのように引きずり出した。
「ふむ……それでは、特別授業はどうかな?」
「特別授業?」
「ああ。と言っても、受けようが受けまいが成績は優等を付けよう。君にはその資格がある。だが、これは真に芸術家を生み出すための授業だと言っておこう」
後はそれを少しくすぐってやればいい。特別扱いされることが彼にとってどれほどの意味があるか。
「君に、君『らしさ』を滲み出させて見せよう」
「期待はしません。ですが、解りました。暇ではありませんが、そこまで仰るのであれば、受けましょう」
「決まりだ。木曜の放課後、この教室で。手ぶらで構わない」