排泄管理施設
入所の日。
十五歳の私は、ぎゅっと握りしめたトートバッグの中に、お弁当と水筒を忍ばせて施設の門をくぐった。見慣れない建物の前には、同じ年頃の子どもたちが、無言で親に連れられて集まっている。数えてみれば四十人近く。誰もが緊張と不安を抱えている顔つきで、私もその中に溶け込むように並んだ。
玄関ホールで行われた「持ち物チェック」は意外と簡単で、用意してきた弁当や水分は見つからなかった。胸を撫で下ろしたのも束の間、施設見学の途中で、付き添いの母にあっさりと荷物を取り上げられ、すべて持ち帰られてしまった。
「ここでは必要ないのよ」
そう告げる母の声が、なぜかやけに冷たく響いた。
与えられたのは二人部屋。ベッドには高い柵がついていて、まるで病院の入院病棟のようだ。机と床頭台、そして壁際には「替えのおむつ保管棚」が設けられていたが、その扉にはしっかりと鍵がかかっていた。鍵を持つのはスタッフだけで、入所者自身は触れることすら許されないのだという。
午後になると、入所者全員がホールに集められ、施設長によるオリエンテーションが始まった。
「ここでは、排泄はすべてスタッフの管理下で行われます。トイレを使う際は必ずスタッフが付き添い、個室内でも見守りを行います。もしオムツを汚した場合は、その場でスタッフが交換を行います」
ざわめく空気の中、私は喉の奥がひゅっとすぼまるような感覚を覚えた。
食事についての説明もあった。栄養管理のため、食事内容は一人ひとり異なるという。配布された紙には名前ごとのメニューが記されていて、私は自分の欄を食い入るように見た。
――離乳食、哺乳瓶。
どうして、十五歳の私に。
紙を握りしめた指先が震える。周囲の視線が気になって顔を上げられない。ここから先の生活が、どんな意味を持つのかも分からぬまま、私はただ深く息を吸い込んだ。