プライベート テスト
昼休みのチャイムが鳴り終わっても、教室の一角にはまだざわめきが残っていた。窓際の席で、私は机にひじをつきながら、クラスメイトたちの笑い声をぼんやりと聞いていた。転校してきてから一週間。話しかけてくれる子はいても、どこか壁のようなものがあって、輪の中に入る勇気が出なかった。
そのとき、廊下の向こうから「だれか〜、手伝ってくれる人いませんか〜?」という声が響いた。図書委員の女子、佐久間さんだった。山のように積まれた本を抱えて、バランスを崩しかけている。思わず立ち上がった私は、気づけば駆け寄っていた。
「手、貸そうか?」
「え、いいの?助かる!」
本を運びながら、私たちは自然と話し始めた。どんな本が好きか、前の学校ではどんなことをしていたか。ぎこちなさの中にも、笑い声が少しずつ混じる。
図書室に着くころには、私の胸の中の緊張は、ほんの少しだけほどけていた。
その日から、昼休みに図書室へ行くのが、私の日課になった。
毎日図書室に行くことで、佐久間さんとだんだん仲良くなってきた。今日も図書室にいって佐久間さんと話していた。すると佐久間さんが
「なんか距離感じちゃうから、お互い下の名前で呼ぼ!私達もう友達でしょ?」
と言ってくれた。やっと友達と呼べる子ができ、とても嬉しかった。
「ほんと!?じゃあこれから華恵ちゃんって呼ぶね!」
「私もこれから百合ちゃんって呼ぶね!」
華恵ちゃんが良かったと心の底から思えた。
ある日華恵ちゃんの幼馴染で、私と同じクラスの室松君と初めて話した。その日からクラスで自分から話せるようになれた。
ただそれから数日後、授業終わりにトイレに行ったときに、同じクラスの木原さんたちの私に対する陰口を聞いてしまった。
「ねぇ思ってたんだけど、転校してきた福本って子なんか暗くて怖くない?」
「わかる〜そういえば気づいちゃったんだけど、その福本って子、なんか最近室松とよく一緒にいるくない?翠大丈夫?」
「え?嘘?なんで陰キャが優紫と仲良いわけ?」
「仲良いってほどじゃないけど、自分から話しかけにいってるのは見たことある。」
「ねぇちょっと福本に、優紫のことどう思ってんのか聞きに行こ!」