ハンバーグ

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2000文字以下 20人リレー
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  • 現代ドラマ
  • 自由に続きを書いて
  • 暴力描写有り
  • 登場人物が死ぬの有り
  • 楽しんだもの勝ち
1人目

事件は、瀟洒な洋館で起きた。資産家の老女が毒殺されたのだ。現場に現れたのは、警察組織とは一切関わりのない、一匹狼の私立探偵。
「やあ、ハンバーグ。また奇抜な名前で登場か」
警部が皮肉を込めて挨拶する。彼の本名を知る者はほとんどいない。しかし、その肉々しい不可思議な名前は裏社会でも探偵業界でも有名だった。
ハンバーグという名前は、彼が過去に解決した猟奇的な連続殺人事件の犯人が、遺体に添えたメッセージから生まれたと言われている。

ハンバーグは、その名前に似つかわしくない、痩せた長身の男だった。

2人目

警部の挨拶にも、ハンバーグは平然とした様子で対応した。
「警部こそ、また現場に登場ですか?」
と、冗談交じりに言う。それに対し警部は「当たり前だろ」と軽く言い返す。
「感謝しろよ?本来殺人事件に立ち会う探偵なんて、必ず警察から嫌われる。俺が警部じゃなかったら、お前は捜査に関わること自体出来ないのだから」

そう。
本来探偵が殺人事件の現場に立ち会うことはめったになく、もし立ち会えば警察からすれば捜査に割って入って来る厄介者だろう。
この人が警部で良かったと心底思うハンバーグ。
「で、捜査の進捗はどうだ?」
警部が本腰を入れると言わんばかりに話を切り替えて来た。

「今回は毒物ですからね。殺傷とは違って、少し時間が掛かるかと」
「まぁ、言ってしまえば頭脳犯だからなぁ……。鑑識の方に情報を共有するよう伝えてくるよ」
さすが警部。本業だから当然と言えば当然だが、よく分かってる。
「あ、歩行帯以外の場所は歩くなよ。ゲソ痕が付いちまう」
「えぇ、分かってます」

そうして、捜査が本格的に始まった――。

3人目

事件現場となった館の二階 西の端、角部屋の客室の前でハンバーグは立ち止まった。
「ドアが壊されてる?」
「館の使用人と被害者の彼氏が、中々 起きてこない被害者を起こしに来たら中で助けを呼ぶ声が聞こえて来て。マスターキーを取りに行くよりドアを壊した方が早いと思って体当たりで壊したらしい」
「つまり部屋は密室だったのか?」
「ああ…扉も窓も鍵がかかっていたし、今の所もコレからも隠し通路や隠し扉が見つかる事は絶対に無い」
「断言できるのか?見逃してる可能性が…」
「無い。最近、館のリホームをしたらしく図面を見たが間違いなく100%無いと言える」
警部から捜査情報を聞きながら部屋の中を歩き回る。
テーブルにはオレンジジュースの瓶とグラスが2つ…床の人型のチョーク・アウトラインに近い方のは減っている。
北側の窓はハメ殺しで…端の方のガラスが わずかに欠けて隙間風が吹き込んでいて、
西の出窓は開けられるものの鉄格子が付いていた。
外を見れば昨夜 降った雪の上に足跡は全く無い。
「…助けを呼ぶ声が聞こえたって話は本当なのか?」
「扉の前にいた使用人の"三田琴 イワン"と被害者の彼氏の"虻内 庄源"は、そう証言しているよ。ちなみに、2人とも被害者を殺す動機は無い」
アゴに手を当てて思考の海に潜り答えを探す、
「…部屋の中に隠れていて、2人が警察に通報するためにいなくなった所で…」
「警察への通報はイワン君が この部屋から携帯でしたし、警察が来るまでイワン君は部屋の前でショックを受けている虻内氏を慰めていたので無理だな」
(頭が煮込みハンバーグになりそうだ…。)
更に深く思考の海に潜ろうとしたが、お腹が"くぅ~"と「朝食を寄越せ!」と叫ぶ。
「…今、言える事は犯人は とても頭がイイって事だ。
計画的に被害者を毒殺し、煙のように消えて、部屋を密室にしたんだからな。
まるで宇宙人だよ!」
「仮に犯人が宇宙人だったら逮捕状を取るのが大変そうだ。
この事件…解決できそうかね?」
「警部…ハンバーグとは"アメリカへ移民するドイツ人が、船内で「タルタルステーキが食べたい!」と要望した事に対して、肉とクズ野菜を混ぜた物を焼いて出した事"が始まりだそうです…」
「それで…?」
「さしずめ探偵とは、真実という肉と偽りというクズ野菜を混ぜたハンバーグ…。
謎って奴が三度の飯より好きな度し難い連中って事なのです。
この謎…完食してみせますよ!」
「ちょっと何言ってるのか分からんな…」
やれやれと肩をすくめながら、(案外、お前の方が宇宙人なんじゃないのか?)という視線で警部はハンバーグを見ていた。
咳払いをしてハンバーグは、
この事件のレシピ…トリックを見抜くためのピースについて考える。
(鑑識に話を聞いてみるか?それとも使用人と被害者の彼氏とやらに会ってみるか?
あるいは…)
しばし考え…ハンバーグは