黒いバッグ
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20人リレー
2週間前
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*
1人目
「…バッグだ」
ニコラスは思い出した。
あの喫茶店の廃墟の便所、床に転がっていた黒いボストンバッグ。
そこから漏れ出していたのは、死体を迅速に処理するための苛性ソーダ、あるいは強力な洗浄剤の類だったのではないか。
飛躍した嫌な想像にニコラスは冷や汗がでた。
未定
2人目
ニコラスが背筋に冷たいものを感じて振り返ろうとしたその時、背後の扉が「ギィ」と嫌な音を立てて閉まった。
「…気づくのが、少し早すぎたね」
聞き覚えのある穏やかな声。それは、先ほどまでニコラスに「この廃墟の歴史」を親切に説いていた案内人の男だった。男の手には、先ほどのバッグから取り出したであろう、異臭を放つ濡れたタオルが握られている。
「苛性ソーダは便利だよ。骨すらも脆くして、すべてを『なかったこと』にしてくれる。君もその一部になりたいのかい?」
*
3人目
ニコラスの冷や汗が止まった。彼はゆっくりと両手を挙げ、男と対峙するように向き直る。その瞳には、先ほどまでの怯えではなく、冷めた観察者の色が宿っていた。
「…なるほど。案内人というのは、獲物を処理場まで運ぶ『羊飼い』のことだったわけだ」 「理解が早くて助かるよ。無駄な抵抗は苦痛を長引かせるだけだ」
男がじりじりと距離を詰める。しかし、ニコラスは動かない。