非公開 とうひゅリレー小説

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1000文字以下 30人リレー
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1人目

【あらすじ】
ひゅーいのマジ暴発により、迷い込んだのは……自分たちを崇めるお祭り騒ぎの薔薇園?!
二人は一体何を見てしまうのか。それと、無事にここから出られるのか?!
↓以外本文スタート

2人目

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視界が、やけにピンクだった。

「···ここ、どこ···?」

ひゅーいが ぽつりと呟く。

足元には花びら、見上げても花びら、風が吹けば···さらに花びら。
薔薇。薔薇。薔薇。
しかも普通の庭園じゃない。
やたらと広い。やたらと整っている。
やたらと──···

「いや、おかしいだろ···」

橙真の声には警戒が混じっていた。
それもそのはず···
直前の記憶ははっきりしている。
ひゅーいのマジが、ほんの少し暴発した。
ステージ裏で笑って、いつものように、ほんの おふざけで···
 
『マナマナ···!』

次の瞬間、閃光。
で、ここ。

「···ごめん。」
「ここは、魔法界なのか···?」
「わかんないよ···こんなの初めてだし···」

しゅん···と、ひゅーいは眉を下げる。
本当に現状を理解していないという顔だった。

そのとき。

「「「おおおおおおおおお!!!!」」」

突然、地鳴りみたいな歓声。
二人が同時に振り向く。
薔薇のアーチの向こうから、ぞろぞろと人が走ってくる。
はたして【人】と呼ぶのは正しいのか。
全員、ギラギラと目が輝いている。
しかも手には旗。横断幕。花束。

「橙真ー!!!」
「ひゅーいー!!!」
「尊いーーー!!!」

「······は?」

橙真の表情が固まる。
ひゅーいも開いた口が塞がらない。
横断幕にはでかでかと書かれていた。

《ふたりの本気(マジ)ハート》

「······なんだよそれ」
「し、知らないよ···!」

さらに奥からは神輿まで出てきた。

「ちょっと待て···」
「···あれ、僕たち···だよ、ね?」

神輿の上。金の装飾。薔薇のアレンジ。
そこに飾られているのは──···
橙真とひゅーいの等身大のオブジェ。
しかも。
距離が近い。
見つめ合ってる。
甘い雰囲気。

「············」
「············」

沈黙。

「···ひゅーい?」
「な、なに···?」
「なにやらかした···?」
「これ絶対、僕のせいじゃない気がする!!」

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3人目

先頭を走っていた一人が、震える指でこちらを指差した。

「式場までご案内して差し上げましょう!!」

それを合図に、人々の視線が一斉に二人に突き刺さる。
ギラつく瞳。荒い鼻息。
薔薇の園が、一瞬にして狩り場へと変貌した。

「ひゅーい、走るぞ!」
「え、わ、わあっ!?」

橙真がひゅーいの手首を強引に掴み、走り出す。
背後からは、怒涛の足音と「尊い」コールが津波のように押し寄せてくる。
わけがわからない。
けれど、捕まったら絶対にタダでは済まないことだけは本能で理解できた。

「こっちだ!」

薔薇の生垣を飛び越え、噴水の裏を抜け、二人は迷路のような庭園を疾走する。
橙真の背中が、いつになく焦っている。
繋がれた手から伝わる汗と熱が、事態の異常さを物語っていた。

「はぁ、はぁ……ここなら……!」

人気のなさそうな東屋の影に滑り込む。
狭い空間。
追っ手の視線を避けるため、橙真がひゅーいを壁際に押し付け、覆いかぶさるようにして身を隠した。
密着する身体。
早鐘を打つ互いの心臓の音が、痛いほど響き合う。
ひゅーいが橙真の胸元で息を潜めて囁く。

「……バレて、ないかな」
「たぶんな。……くそ、なんなんだよここは」

橙真が顔を上げ、周囲を警戒しようとした、そのとき。
東屋の柱に貼られた、一枚の絢爛豪華なポスターが目に入った。
『本日開催! 聖なる誓いの儀式』
そこには、超美麗な橙真とひゅーいのイラスト。
そして、二人が祭壇の上で──『誓いの口づけ』を交わしている図が、詳細な手順と共に描かれていた。

「「…………」」

二人の思考が停止する。
外から、興奮した群衆の声が近づいてくる。

「式の準備は整っておりますぞ!!」
「さあ、お二人の愛で、この世界に祝福を!!」

橙真とひゅーいは顔を見合わせ、同時に顔を赤くする。
ここから出る条件、もしかして──?

4人目

「と、とにかく! マナマナ!」

ひゅーいはいつものように魔法を使ってみる。使えたのは使えたが、思った効果とはやや違う効果が出た。

「わっ! 体が透けた!」
「落ち着いて! たぶん、ゴーストモード? みたい?」
「なんだそれ……」
「なんか、頭に直接流れ込んできて……」

闊歩する群衆を横目に、ひゅーいと橙真はこそこそ話し始める。

「たぶん、僕のマジとあの人たちの……想い? 情熱? 熱狂? がぶつかっちゃって、ここに連れてこられたんだと思う。だから、ここから出る条件ってのは、……たぶん……」
「ここにあるお題? をクリアしていって、この人たちを満足させられたらいいってことか?」
「うん……」

オブジェの甘い感じとか、人々が叫ぶ「尊い!」と、式の準備、2人の愛。

さっき目に入ったイラストは、祭壇の上で、誓いの、誓いの……

「と、とにかく!!!!」

ひゅーいはまた気迫あるささやき声で橙真に言った。今日はとにかくがとにかく多い日らしい。

「もうちょっと簡単そうなの探してみよう。1個クリアすれば出られるのかもしれないし」
「そ、そうだな」

2人は周囲を警戒しつつ、次のイラストを探すのだった。

5人目

「……あったよ橙真!!」
「よし!どんな絵……」

二人は固まってしまった。
そこにあった絵は先程と同じイラスト……の別画角。
先程のものよりも少し遠めから描かれているものだった。


「いや同じじゃん!!」
「ひゅーい、落ち着こう。」


ひゅーいは目を擦って見るが、絵の内容は変わりを見せない。
どうしたってここにいる人達は二人をそういう距離感にしたいらしい。


今二人はこの空間から出ることに必死で、反対にここにいる人達は二人を口付けさせようと必死なのだ。


「なに……!?」
「どうした?」
「ねぇ橙真、なにか聞こえない……?」


ひゅーいにそう言われて、橙真が耳を澄ますと遠くの方から聞こえてくる声があった。



『……ス……ス……』


「何だ……?」


橙真は気になって声のする方に少し近づく。
先程より鮮明に聞こえ、何を言っているのかはっきりわかった。


『キース!!キース!!キース!!キース!!』


リズミカルな手拍子と共に聞こえるそれは、群衆によるはっきりとしたキスコールだった。

6人目

その瞬間。
東屋の屋根の上から、ばさり、と大量の薔薇の花びらが降ってきた。
「うわっ!?」
空間が、ざわりと震える。
地面が淡く光り出し、二人の足元を円形に囲った。 遠くで誰かが叫ぶ。
「第一関門、開始ーーー!!!」
ゴーストモードがいつの間に溶けたのか、すさまじい数の群衆が自分たちを囲んでいた。
次の瞬間、空中に文字が浮かび上がる。
《MISSION 1:あと10cm》
「は?」
橙真が低い声を漏らす。二人は無意識にお互いを見つめた。
「近寄ればいいのかな?」
キース!キース!
コールが一段と大きくなる。 足元の光が、じわじわと狭まってきた。
気圧されるがまま、ひゅーいはそっと橙真に寄り添う。
《CLEAR》
ぱぁん、と空に光が弾けた。安堵しかけたその瞬間、表示が書き換わる。
《MISSION2:誓いの口づけ》
「最初からそれ狙いじゃん!」
円の光が強くなる。 逃げ場がない。群衆の歓声が渦を巻いていた。このカオスな空間から出るには……。
「橙真、これは悪い夢だよ」
「えっ」
「だから、我慢してね」
両頬を掴み、そっと唇を寄せる。二人の影が重なった。周りからは、轟音に近い歓声が響き渡る。
天に祈りを捧げるもの、その馬に倒れ込むものもいた。
《CLEAR》
ひゅーいの胸元が淡く光る。 自分のマジが正常に巡る感覚にほっと息をついた。
「マナマナ……!」
《元の世界へ帰還します》
世界にひびが走る。
「いやっ!尊みが足りぬ!!」
「まだ披露宴がーーー!!」
悲鳴のような歓声。
「今だ!」
二人は同時に円の外へ飛び出す。 薔薇園がガラスのように砕け散った。
音が途切れ、白い光が身を包む。そのまま硬い床に放り出された。 見慣れた天井……ステージ裏だった。
「戻ってきた……?」
「らしいな」
橙真は大きく息を吐く。
「死ぬかと思った……」
「うん……でも、1mmはセーフだったね」
ひゅーいがいたずらっ子の笑みでそっと唇に指を立てる。
そう、ひゅーいはギリギリの距離で動きを止めていたのだ。
全ては、橙真のファーストキスを守るために。
「今日はもう帰るよ、休みたい……じゃあ、また明日ね」
「あっ……」
疲労していたひゅーいは、颯爽と去っていた。その場に残された橙真の手が宙を舞う。
「……別に、してもよかったのに」
足元に、ひらり。一枚の赤い花びらが落ちていた。